エクアドル:持続的な発展を目指すPROAmazoníaイニシアチブとは

プロアマソニア(PROAmazonía)とは、エクアドル・アマゾンにおける森林破壊の削減と、劣化した生態系の回復、さらこの土地での農林業をより持続的なものへと転換させることを目的とした5年間のイニシアチブである。環境・水・生態系移行省(Ministerio de Ambiente, Agua y Transición Ecológica:MAATE)、農業畜産省(Ministerio de Agricultura y Ganadería)によるプログラムは国連開発計画(United Nations Development Programme:UNDP)の支援を受け行われる。持続性のある製品づくりとともに有効な経済市場の確立を目指すとともに、この土地に暮らす最も貧しい人々の生活改善や気候変動への対策を講じていくことは持続可能な開発目標(SDGs)に向けたコミットメントでもある。特に 1.貧困のない社会、5.ジェンダーの平等、13.気候変動対策、15.土地での生活 に直結する。

セクター横断的かつマルチステークホルダー型の包括的イニシアチブは、エクアドルREDD+行動計画 「Bosques para el Buen Vivir 2016-2025」で特定された要件にも直接貢献すし、上述の通りプロアマソニアは森林破壊のみならず、国家気候変動戦略にも貢献するからだ。エクアドルにおいては土地利用変化及び林業(Land use, land-use change, and forestry:LULUCF)分野はエネルギー分野の次に大きな温室効果ガスの排出源である。環境省が2012に発表した内容によると国家温室効果ガスインベントリーの割合は25.35%にも及ぶ。一方プロアマソニアが実施・強化する取り組みにより、2016年から2025年の間に1,500万トンのCO2排出量が削減される見込みだ。

持続可能な土地管理のためのインセンティブやグリーンクレジットの利用、新しいバイオ企業への誘致と支援は、貧困率の高いコミュニティにおいて大きな社会的インパクト、具体的には雇用の増加、貧困の削減、公正な移行などを促すとされている。ジェンダーに配慮したアプローチの採用、すべてのプロジェクト活動においてFPIC(Free, Prior and Informed Consent)の原則を適用することは「誰も取り残されない」活動にも通じる。

プロアマソニアは緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)および地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)からの償還不要の資金で賄われるが、炭素排出量と森林破壊を削減するための金融および土地利用計画手法の促進に向けGCFは41,172,739.00 米ドルを拠出し、GEFはエクアドル・アマゾン地域の持続可能な開発のための複合的利用と高い保護価値のある土地の統合管理のために12,172,739.00 米ドルを提供する。また、環境省 と 農業畜産省およびその他のパートナーから 9200 万ドルの協調融資と現物支給、そして多くの機関、学術、コミュニティの協力者とのパートナ ーシップ協定によって資金を調達する。

REDD+の実施にあたっては地域コミュニティや先住民族、市民社会の参加がカギとなるが、これについては同国の憲法第57条第7項および第100条において、先住民族もそれへの参加が権利として定められている。

 

プロアマソニアにおいては技術支援、イノベーション、環境ベストプラクティスの導入を通じて、アマゾン地域で最も栽培面積の大きい4つの製品(パーム、ココア、コーヒー、家畜)のバリューチェーンにおいて、持続可能で森林破壊のないシステムへと生産形態を移行することを推進している。また、森林管理の強化、林産物のトレーサビリティシステムの導入、持続可能な森林管理の推進、バイオビジネスの誘致にも取り組む。

2018年には以下のマイルストーンが達成されたと報告されている。
1. ソシオ・ボスケ・プロジェクト(Proyecto Socio Bosque)を通じて、157,000haの原生林の保護した。
2. 自治体による水文保護区を4つ、新たに設定した。規模は136,000haに及ぶ。
3.積極的な植え替えと家畜からの囲い込みの実施で南部乾燥林の2,447ヘクタールを再生した。
4. 5,022の小規模生産者が持続可能な土地管理を実践するための協定に署名した。その総面積は15,066ヘクタールに及ぶ。
5. アマゾンのコミュニティから830人(男性55%、女性45%)が研修を受け、保全、再生、気候変動に関する能力と知識を強化した。

 

アマゾン流域に位置するスクンビオ(Sucumbíos)、ナポ(Napo)、オジェナ(Orellana)、パスタサ(Pastaza)モロナ・サンチアゴ(Morona Santiago)、サモラ・チチペ(Zamora Chinchipe)の6県、17郡、5教区で実施されるが、ここにに加え乾燥林を抱えるロハ(Loja)、エル・オロ(El Oro)も実施地として加えられている。本イニシアチブは包括的なコミュニケーション戦略を通じて、プロジェクトの認知度を高めている。ソーシャルメディアやプロジェクトのウェブサイトでもプロジェクトの最新情報を定期的に発信している。また、公開フォーラムやワークショップ、地域スタッフが定期的な仲介を通じて、エクアドルが気候変動と戦い、2030年アジェンダを遵守するための世界的な取り組みに尽力している国であることを周知している。

 

森林破壊と気候変動を食い止めるには、関係省庁が自治体などの他の機関と連携し、協調して取り組むことが重要であることもありプロアマソンは開発・地域計画計画(Plan de Desarrollo y Ordenamiento Territorial:PDOT)と生活計画の強化を行っている。PDOTは憲法、計画・財政法(Código de Planificación y Finanzas Públicas:CPYFP)、地域計画・土地利用・管理法(Ley Orgánica de Ordenamiento Territorial, Uso y Gestión del Suelo:LOOTUGS)によって定められている地方分権レベルでの計画であるが、ここに気候変動や持続可能な生産に関する基準を満たした基準を盛り込むなどしている。PDOTの作成は、各領域の特性、住民の関心とニーズに関する知識と分析に基づいており、選出された当局の作業計画に含まれる提案によって補完される。地方自治政府の開発計画や土地利用計画の策定・更新プロセスは、土地利用・管理技術委員会(Consejo Técnico de Uso y Gestión del Suelo:CTUGS)が発行する技術規則によって規定されている。一方、地域計画における能力の強化や組織間の協調のための地域・セクター間プラットフォームの構築なども行なっている。この観点においてもプロアマソニアは28のPDOTが気候変動、持続可能な生産、REDD+の基準で更新されることに寄与し、また、4つのコミュニティにおいてライフプランの構成基準を、領土、バイオエコノミー、多様性、コスモビジョン、自治と統治、聖なる源流という要素で定義するのにも貢献した。国際労働機関(ILO)の第169号条約では、人民と民族は自らの開発を計画する権利を有すると定義されており、アマゾン特別地域圏法は共通基金に関して、先住民族と民族は彼らの生活設計を計画し実行するために、彼らの代表組織を通じてこの基金の資源にアクセスすることができると定めていることによる。

エクアドル憲法は、その第14条において、健康で生態学的にバランスのとれた環境の中で生活する国民の権利を認めており、持続可能性と良好な生活を保証している。また、第57条では、コミュニティ、先住民、民族などが、生物多様性とその自然環境の管理手法を保存し、促進する集団的権利を認めている。また、憲法第 61 条 (2) および (3) は、エクアドル人が公共の利益に関わる問題に参加し、協議を受ける権利を有すると定めている。現在国民は気候変動などのグローバルな課題に直面している。これらへの対策として気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)に由来する天然資源の回復、保全、持続的利用を通じた森林減少や森林劣化を削減する取り組みを行なっている。2016年の大臣合意第116号により正式決定したREDD+行動計画を実施するための統治機関、管理者、調整者であり、REDD+の実施に貢献する戦略的アクターの関与と能力開発プロセスを促進することがプロアマソニアの役割である。

 

 

 

プロアマソニアによる取り組みはここから確認のこと。

※REDD+(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)とは森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出を減らすための仕組みのこと。

 

参考資料:

1. Programa Integral Amazónico de Conservación de Bosques y Producción Sostenible (PROAmazonía)
2. 
41 organizaciones forman parte de la Mesa de Trabajo REDD+ “Bosques para el Buen Vivir”
3. PROAmazonia – Utilizing forest conservation and sustainable production practices to address climate change and strengthen local livelihoods in Ecuador
4. Adaptive management of jurisdictional REDD + programs: a methodology illustrated for Ecuador
5. 
ECUADOR PRESENTA SU PLAN DE ACCIÓN REDD+: BOSQUES PARA EL BUEN VIVIR
6. El PDOT, qué es, cómo y cuándo formularlo

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