(Image:Radio Pichincha)
調査報道メディア「ラ・ポスタ(La Posta)」の記者らが、ギジェルモ・ラソ(Guillermo Lasso)政権とアルバニア系マフィアとの関係を追及した調査「エル・グラン・パドリーノ(El Gran Padrino)」の資料や調査結果を公開していたウェブサイトが、オンライン上から消えた。
この事件は、当時エクアドル大統領だったギジェルモ・ラソの義兄であるダニロ・カレラ(Danilo Carrera)が関与したとされ、当時の政権に大きな影響を与え、ラソ政権下での「死の交差(muerte cruzada)」による国会解散と大統領選実施につながった。
直近では、ラ・ポスタの元職員の一人がこの調査の正当性に疑問を呈した。一方、この調査を主導したジャーナリストのアンデルソン・ボスカン(Andersson Boscán)は、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」上で反論し、「私はモンテネグロを否定するつもりはない。彼の行動が彼自身を否定することになる」と述べた。
現在消失したサイトには、ウェブセキュリティ事業者クラウドフレア(Cloudflare)による通知が表示されており、設定ミスまたは手動停止によって、サイトが禁止されたIPアドレスを参照していると説明されている。
このウェブサイトは1218日間、つまり3年以上公開されていた。その間、調査内容は国会で取り上げられ、その後、警察内部での人事異動や離脱にもつながった。
ラジオ・ピチンチャ(Radio Pichincha)は、2023年2月14日に公開された元のサイト全体を保存したアーカイブにアクセスし、現在も別の情報源から内容を確認できることを確認した。
調査の執筆者によると、この調査には「ラ・ポスタ調査チームの10人のジャーナリストが参加し、630時間の作業、1500件の公的契約の確認、数百件の非公式取材を行った」とされている。
「エル・グラン・パドリーノ」事件
「エル・グラン・パドリーノ」事件(後に検察によって「エンクエントロ(Caso Encuentro)」事件と呼ばれる)は、エクアドルの公企業を舞台にした汚職疑惑に関する事件である。
この疑惑では、ギジェルモ・ラソ前大統領の政権下で、電力部門や石油部門における影響力行使、賄賂、公職人事の不正操作を行う組織的なネットワークが存在したと指摘された。
主な関係者は以下の通りである。
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ダニロ・カレラ(Danilo Carrera)
エクアドル人実業家で、ギジェルモ・ラソの義兄。ネットワークの政治的仲介役、または「パドリーノ(後見人)」と呼ばれる中心人物だったと指摘された。 -
エルナン・ルケ(Hernán Luque)
公企業調整会社(Empresa Coordinadora de Empresas Públicas:EMCO)の元代表。戦略分野の主要ポストへの人事を操作した疑いが持たれた。 -
ルベン・チェレス(Rubén Cherres)
カレラに近い仲介役とされ、公的機関での取引調整や賄賂の回収を担った疑いがあった。2023年3月31日、サンタ・エレナ県で殺害された。
この事件は2023年1月、デジタルメディアのラ・ポスタ(La Posta)が報じたことで明るみに出た。
調査では、音声データ、チャット記録、組織図などが公開され、国家電力公社(Corporación Nacional de Electricidad:CNEL)、エクアドル電力公社(Corporación Eléctrica del Ecuador:Celec)、エクアドル石油船団会社(Flota Petrolera Ecuatoriana:Flopec)などで重要ポストに人員を配置する見返りに金銭を受け取っていたとされる構造が示された。
「エル・グラン・パドリーノ」のサイト消失は、ラジオ・ピチンチャを含む複数の報道機関が圧力を受けているとする状況の中で発生した。ほかの一部メディアについても、政府による取り込みや買収が進んでいるとの批判が出ている。
汚職・麻薬犯罪を追及したジャーナリストが国外避難
エクアドルでは、権力中枢の汚職疑惑や麻薬犯罪を追及してきたデジタルメディア「ラ・ポスタ」の記者らが脅迫を受け、国外に避難する事態が起きている。調査報道を巡る影響力が評価される一方、取材手法や情報源との関係を巡り、ジャーナリズム倫理についても議論が広がっている。
国際メディア団体「グローバル・ボイス(Global Voices)」によると、2024年9月10日、ラ・ポスタ創設者のアンダーソン・ボスカン(Andersson Boscán)と妻でジャーナリストのモニカ・ベラスケス(Mónica Velásquez)は、動画を通じて国外退避を発表した。夫妻は、政府高官や権力者を巡る汚職疑惑の調査報道を行ってきたが、脅迫を受けたとして、家族の安全確保のためカナダへの政治亡命を申請した。
ボスカンらは、国家警察情報局(Dirección Nacional de Inteligencia de la Policía Nacional)と戦略情報センター(Centro de Inteligencia Estratégica)が、自分たちや家族の行動を監視していたと主張した。
検察庁(Fiscalía General del Estado)の記録に基づく報告書には、記者らを標的にした脅迫や殺害計画を示す内容が含まれていると主張している。
一方、警察側は声明で、市民の生命を脅かす迫害や脅迫を否定した。また、元国家警察長官ファウスト・サリナス(Fausto Salinas)も、ギジェルモ・ラソ(Guillermo Lasso)政権が記者監視を指示したとの見方を否定した。
刑務所と犯罪組織を巡る調査
ラ・ポスタは、犯罪組織や治安問題を巡る調査報道を続けてきた。
2020年、アンダーソン・ボスカン、モニカ・ベラスケスらの記者チームは、エクアドルの刑務所内部を取材し、犯罪組織がどのように形成され、収監中の指導者がどのように活動しているのかを調査した。この取材では、犯罪組織指導者から証言を得た。当初は安全上の理由から人物を明らかにしていなかったが、2022年10月に刑務所内の抗争で殺害された後、ボスカンは取材対象者がエクアドルの麻薬組織指導者レアンドロ・ノレロ、通称「エル・パトロン(El Patrón)」だったと明らかにした。報道は、2018年に警察官14人が負傷した襲撃事件後、相次いだ刑務所危機を背景としていた。
ラ・ポスタは、当時の政府省(Ministerio de Gobierno)が担当していた刑務所制度における政策実施の不足を指摘し、当時の政府省トップだったマリア・パウラ・ロモ(María Paula Romo)の対応を批判した。ロモは2020年10月、2019年10月の抗議活動での警察の力の行使を巡り、国会(Asamblea Nacional)から問責され、解任された。
「エル・グラン・パドリーノ」調査
2023年1月、ラ・ポスタは「エル・グラン・パドリーノ」と題する調査報道を公表した。この調査は、ギジェルモ・ラソ政権下で、公企業を巡る影響力行使や汚職疑惑を扱ったものだった。中心人物としてラソの義兄で実業家のダニロ・カレラ(Danilo Carrera)の名前が挙げられた。
その後、検察当局では「エンクエントロ事件(Caso Encuentro)」として捜査が進められ、公企業の人事や電力・石油分野での不正疑惑が焦点となった。
調査では、国家電力公社(Corporación Nacional de Electricidad:CNEL)、エクアドル電力公社(Corporación Eléctrica del Ecuador:Celec)、エクアドル石油運輸公社(Flota Petrolera Ecuatoriana:Flopec)などを巡る契約や人事の疑惑が指摘された。この報道は、ラソに対する国会での弾劾手続き開始につながった。
2023年5月17日、ラソは国会を解散する「死の十字架(muerte cruzada)」を発動し、自身への疑惑を否定した。
レアンドロ・ノレロとの関係を巡る批判
2023年12月18日、検察庁は、殺害されたレアンドロ・ノレロの携帯電話解析結果を公開した。その中には、ボスカンとノレロのやり取りも含まれていた。公開された内容では、両者の間に近い関係性を示す会話があり、ボスカンがノレロに対して、影響力を持つとされた公的機関について「目と耳を動かす(activar ojos y oídos)」ための協力を求めたとされる。一方、ボスカンはノレロに対し、自身が関心を持つのは「政治的な部分」であり、麻薬密輸ではないと説明していた。
この内容を巡り、ボスカンには既存メディア、政治家、SNS利用者などから批判が寄せられた。情報源との距離や取材倫理を巡る議論も広がった。
ボスカンはポッドキャストで自身の立場を説明し、ノレロとの交流、麻薬組織「ロス・チョネロス(Los Choneros)」指導者アドルフォ・マシアス(Adolfo Macías)、通称「フィト(Fito)」との会話、ナイン・マスフ(Nain Massuh)、通称「エル・トゥルコ(El Turco)」との関係について説明した。
報道姿勢を巡る論争
ラ・ポスタの報道活動については、調査報道の影響力だけでなく、手法を巡る批判も起きている。
2021年7月4日、ボスカンとラ・ポスタ運営者のルイス・ビバンコ(Luis Vivanco)は公共テレビ番組内で、エクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)の指導者レオニダス・イサ(Leonidas Iza)を扱った企画を放送した。内容を巡り批判が広がり、レニン・モレノ(Lenín Moreno)政権は番組を終了させた。その後、2人は謝罪した。
また、ボスカンは朝の番組「カフェ・ラ・ポスタ(Café La Posta)」で、国家検察長官ディアナ・サラサール(Diana Salazar)の論文盗用疑惑について発言した。ボスカンは一致率について「40%ではなく6%」と述べ、道徳的に許容される範囲だと主張した。この発言を巡っても議論が起きた。
国外から活動継続へ
ラ・ポスタの記者らは今後も国外から活動を続けると表明している。ボスカンらが生命への脅迫を理由に国外へ出るのは初めてではなく、2023年にも同様の理由でエクアドルを離れていた。
#GuillermoLasso #CasoEncuentro
参考資料:
1. Desaparece de la web la investigación de “El Gran Padrino”
2. Ecuador: Dos periodistas que denunciaron corrupción y narcotráfico, forzados a exiliarse

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