エクアドル:エスメラルダス県に非常事態(2023年3月3日〜60日間)

(Photo by Rinaldo Wurglitsch/Flickr)

共和国大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)は、2023年3月3日(金)夜、エスメラルダ(Esmeraldas)県に非常事態を発出した。この措置により3月3日から60日間、時間21:00から05:00まで住民の行動は制限される。大統領令第681号の目的は暴力事件を防止し、市民の生命と身体の安全を守ること、そして国内の治安を守ることである。非常事態宣言を受け国家警察と軍隊はそれぞれの権限の範囲内で、公共の秩序を維持するための行動を行うこととなる。政府によると「この宣言は、組織的犯罪集団の活動により、その行動、脅迫、犯罪行為が、ここ数ヶ月間、より大きな証拠とともに激化しており、その激化により、市民と法執行機関の安全、その完全性、生命が危険にさらされている」。

https://twitter.com/ComunicacionEc/status/1631840467477209088

 

今年1月と2月、同県は殺人、殺傷、ヒットマンによる抗争の惨状となっており、「エクアドルで最も治安が悪い県のひとつ」となった。「エスメラルダ県の位置と地理的条件は、麻薬取引、燃料取引、武器取引、違法採掘に関する犯罪行為の拡散を助長し、犯罪集団の定住に望ましい領域となっているため、暴力が増加し、市民の安全と平和に影響を与える」と、政府は述べている。エスメラルダ県はコロンビアと国境を接している。

 

直近でもバイクで走行をしていた警察官が自宅から5ブロック先で襲われる事件が発生している。監視カメラからの情報を分析した結果未成年者を含む3人が容疑者とされた。内務省のデータによると、2023年のこれまでのところ、意図的な殺人が70件、地域警察部隊への襲撃が4件、異なる警察官への脅迫が数件発生している。

またこの2ヶ月間でも家宅侵入による強盗36件、経済単位への強盗30件、強盗114件、バイク強盗180件、車強盗8件、車両付属品強盗4件、路面強盗2件が発生している。これらの数字を合計すると、全県で合計314件の犯罪事件が発生したことになる。麻薬取引についても今年にはいって81件の捜査が開始され、94人が拘留されている。

2022年、エクアドルの治安は最悪な状態だった。人口10万人あたりの殺人件数が25件と史上最高となり、エスメラルダにおいては人口10万人あたりの殺人件数が63件と最も暴力的な県だった。上述の通りこのような状況は、麻薬取引の支配権をめぐる国内外のカルテル間の抗争に端を発する。また、その戦いへの国家による非効率な介入が故とこの分野の専門家は考えている。コロンビア国境の町の住民は貧困、失業、国家の怠慢に対する不安があり、これもまた原因として指摘されている。エスメラルダは地理的に言って太平洋を通る不正取引ルート上にある。

エメラルドで着飾った先住民をスペイン人征服者が発見したでエスメラルダと名付けられたこの土地は自然も豊富で美しく広がる海岸もある。奴隷制から逃れることのできたアフロ由来の人々の多く住むこの土地は商業・観光の中心地でもあった。しかし昨今の麻薬取引はその様相を一変させた。エスメラルダでは幼児の麻薬組織への勧誘も盛んに行われている(詳細はこちら)。

ラッソは日頃から犯罪組織との取引はしない、市民の安全のために戦うと言及している。なお昨年11月も同県はグアヤス(Guayas)とサント・ドミンゴ・デ・ロス・ツァチラ(Santo Domingo de los Tsachilas)とともに非常事態宣言下にあった。

 

参考資料:

1. Guillermo Lasso declara estado de excepción en Esmeraldas
2. Guillermo Lasso decreta estado de excepción en la provincia de Esmeraldas por ‘grave conmoción interna’

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