(Photo: Presidencia)
2026年4月17日、ダニエル・ノボア大統領(Daniel Noboa)は2026年第1四半期の総括として、経済成長、カントリーリスクの低下、暴力的死亡の減少を強調し、全体として楽観的な評価を提示した。同時に本期間を「建設の年」と位置付け、経済および治安分野における進展を強調し、国家状況に対する前向きな認識を示した。
これに対しアナリストや専門家は、停電に象徴されるエネルギー危機や医療危機について政府側の言及が欠如していると指摘している。また「現実との乖離」が懸念されるとして、保健およびエネルギー分野における重大な危機が意図的に語られていない可能性も指摘されている。
ノボア大統領は政策成果を強調するため、複数の定量的指標に基づく説明を行っている。まず経済面では、国内売上高が2025年の577億ドルから2026年には632億ドル以上へ増加し、9.4%の成長を記録したとされる。さらに金融リスク指標であるカントリーリスクも、2025年3月時点の1630ポイントから416ポイントへと大幅に低下したと説明されている。加えて建設部門についても20%の成長があったと強調されている。一方で治安面では、第1四半期における暴力的死亡が14%減少したとされ、この改善は非常事態宣言の発動および治安部隊の活動強化による成果であると位置付けられている。
公共事業への支出についてノボア大統領は、「2025年第1四半期から2026年第1四半期にかけて、全国すべての州の公共事業に約5億ドルが投入された」と述べている。
しかし経済財政省(Ministerio de Economía y Finanzas)の記録は、この説明と一致していない。2026年第1四半期には公共投資として5億4030万ドルが割り当てられている一方で、発生主義ベースの支出、すなわち実際に執行された額は3140万ドルにとどまり、執行率は5.81%に過ぎない。
このため、予算配分としての「投入額」と、実際の執行実績との間に大きな乖離が存在することが示されている。
なお公共財政の評価においては、予算配分ではなく発生主義ベースの支出が重要指標とされる。これは、資源の実際の使用状況を直接反映するためであるとされている。
エネルギー分野の空白と停電問題
こうした大統領の楽観的な姿勢にもかかわらず、市民生活に直結する重要課題として医療危機およびエネルギー問題が存在しているが、政府はこれらについて明確な説明を行っていないとされる。
特にエネルギー分野では、国内で日常的に発生している停電が問題となっているにもかかわらず、ノボア大統領の説明は不十分であるとの批判が出ている。
こうした状況について、戦略分野アナリストであるダリオ・ダバロス(Darío Dávalos)は、エクアドルがコカ・コド・シンクレル水力発電所(Coca Codo Sinclair)に関連するリスクの高い状況に直面していると警告している。
同氏によれば、同発電所では制御および監視プログラムの変更に加え、豪雨などの気候条件が重なることで土砂の堆積が発生し、発電所の運転停止につながる可能性があるとされる。
さらにダバロスは、「コカ・コド・シンクレル水力発電所(Coca Codo Sinclair)が稼働停止すれば、国家経済に深刻な影響が生じるだろう」と述べている。そのうえで、エクアドルが現在コロンビアへの電力輸出を行っていないため、電力不足時の対応余地が限定されている点を指摘している。
加えて、発電能力の低下は既存の全国的な停電をさらに悪化させ、電力供給の中断が拡大する可能性があると警告されている。
ダバロスはこの一連の問題の背景として、電力セクターにおける計画履行の不備を挙げている。技術報告によれば、電力マスタープラン(Plan Maestro de Electricidad)で予定されていた優先事業が実施されておらず、その結果として電力システム全体が脆弱な状態に陥っている可能性があるとされる。
医療システムもまた解決の見えない危機
エクアドルの医療は、もはや基本的権利ではなく、国家の脆弱性を常に示す象徴となっている。
現在の状況は、物資不足の病院、無期限に延期される腫瘍科診療、解体された一次医療ネットワークといった形で表れているが、これらは偶発的なものではなく、長年の怠慢の蓄積による結果であるとされる。現政権の対応は過去の政策失敗の連鎖の最終局面にすぎないとの見方もある。
患者や家族は、本来であれば制度が保障すべき医薬品を求めて街頭で抗議せざるを得ない状況にあり、医薬品や医療機器の不足は自己負担を強いている。これは失業や経済困難の中で持続不可能な負担となっている。
政府は「体制の立て直し」や内部不正の排除を主張しているが、社会保険庁(IESS)および公衆衛生省(Ministerio de Salud Pública:MSP)の現場では、麻痺した官僚機構、不十分な予算執行、そして人命よりマクロ経済指標を優先する構造が続いているとされる。
構造的問題としての医療危機
この問題は現政権のみの責任ではなく、構造的であるとされる。
過去の政権では大規模な病院インフラが整備された一方で、医療システムの持続可能性は軽視されてきた。設備更新や専門医育成よりも建設が優先され、制度運用の基盤が弱体化したとされる。
また資金が潤沢であった時期にも汚職が広がり、医療物資調達が政治的利権化したことが現在まで影響している。
その後、「緊縮」や「効率化」を名目とした予算削減により保健監督体制は弱体化した。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックは、既に危機的状態にあった医療システムの実態を可視化したに過ぎないとされる。
さらに歴代政権は、医療資源を仲介業者の利得や行政非効率から守る透明な運営モデルの構築に失敗してきたと指摘されている。
一方現政権は、医療政策において発表は繰り返される一方で実行が伴わないとして、「恒常的な約束の状態にある」と批判されている。
薬局の外部委託や中央集約型調達計画は発表されているものの進捗は遅く、調整不足により機能していないとされる。その結果、政策はメディア向けの発表にとどまり、現場では依然として患者が処方薬を受け取れない状況が続いている。
問題の本質は資金不足ではなく、調達や供給プロセスを技術的かつ公正に運用する行政能力の欠如にあるとされる。
さらに医療従事者の雇用契約解除も進められているが、これは過去にも繰り返されてきた措置である。
また制度再設計の議論もあるが、その主導責任は共和国副大統領(Vicepresidenta de la República)が担っているとされる。
医療専門家による構造批判
医師カルロス・セデーニョ(Carlos Cedeño)は、政府の国内状況認識に疑問を呈し、公的医療システムが構造的危機にあると警告している。
同氏は、政府が経済成長や商業活動、殺人件数の減少といった指標を優先し、社会問題を軽視していると指摘する。
「そのデータは冷たく、『変化』を語るには意味を持たない」と述べ、統計は実際の国民生活への影響を反映すべきだと主張している。さらに「社会的実感を伴わない政府指標は有効ではない」とし、「台本を読むのではなく、現実を生きるべきだ」と批判している。
セデーニョによれば、医療システムは政府・財政・医療提供の全側面で弱体化している。この状況は予算削減によって悪化しており、公衆衛生省(Ministerio de Salud Pública)では2024年に12億4900万ドル、2025年に20億3000万ドルの削減が行われたとされる。
また医療管理モデルの再編により、ゾーン調整機関や地区組織が廃止され、県レベル管理へ回帰したことも問題視されている。この変更はタイシャ(Taisha)などの地域における医療提供困難と関連しているとされる。
医療人材とアクセス格差
人材面では、効率性を理由とした医療従事者の解雇が批判されている。
医療システムは構造的不足に直面しており、特に看護分野で深刻である。農村部では人口1万人あたり医師5人未満という状況があり、最大で人口の30%が十分な医療保障を受けていない可能性があると指摘されている。
人員削減は会計上は効率的に見えるが、臨床的には非効率を生むとされる。医療サービスの過密化、待ち時間の増加、医療の質および安全性低下といった影響が指摘されている。
さらに腎疾患患者の腎代替療法では、病院内環境(温度など)が治療効果や安全性に影響するなど、インフラ不備が直接的リスクとなっている。
システムの本質的問題
セデーニョは問題の本質を人員規模ではなく運営システムにあると結論付けている。
物流不備、物資不足、透明性ある技術基準の欠如が構造的特徴であるとされる。
また政府の「技術的効率性」を強調する言説は、現実の構造的証拠の前では脆弱であり、「実態とは異なる物語を正当化するプロパガンダを用いている」と批判している。
エクアドルは「食料危機リスク国」としても位置付けられる
2026年4月20日、ディアナ・ダビラ(Diana Davila)による報道で、世界的な食料危機の拡大とエクアドルの状況が取り上げられた。写真はハンガー・マップ(Hunger Map)より引用されている。
国連難民高等弁務官事務所(United Nations High Commissioner for Refugees:UNHCR)は、この状況が紛争、経済危機、極端な気候現象、強制移動といった複合的要因によって引き起こされていると指摘した。
また国連世界食糧計画(World Food Programme:WFP)は、「ハンガー・マップ・ライブ(HungerMap Live)」を立ち上げた。このプラットフォームは予測モデルを用いて食料安全保障に関するデータと分析にアクセス可能とするものであり、50か国以上での飢餓対策を目的としている。
エクアドルの位置付けと国際比較
このプラットフォームにおいてエクアドルはフェーズ3に分類されている。このレベルにはガザ、カメルーン、シエラレオネ、ジンバブエなども含まれており、急性の食料不安および子どもの栄養不良の増加が確認されている。
同様の問題は世界的に拡大しており、2024年には国連世界食糧計画(WFP)が53か国で2億9500万人以上が急性の飢餓に直面していると警告した。2025年にはこの数は3億1800万人に増加している。
さらに国連世界食糧計画(WFP)は、2024年9月から2025年3月までの分析に基づき、エクアドルでは280万人以上、すなわち人口の約15%が食料危機に陥るリスクにあると報告している。
危機要因と政策的意味
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、これらの食料危機が紛争、経済危機、極端な気候現象、強制移動といった要因によって引き起こされていると改めて指摘している。
また国連世界食糧計画(WFP)は、この種のデータ分析が各国において地域ニーズに基づく公共政策を推進するための早期警戒として機能するとしている。加えて、1ドルの投資により危機対応コストを最大7ドル削減できる可能性があると強調している。
食料危機の対象国リスト
ハンガー・マップ・ライブ(HungerMap Live)は、少なくとも16か国で既に壊滅的な飢餓状態にある人々が存在すると警告している。対象国には以下が含まれる:
ナイジェリア、コンゴ共和国、スーダン、イエメン、バングラデシュ、アフガニスタン、ミャンマー、南スーダン、シリア・アラブ共和国、パキスタン、コロンビア、ハイチ、ソマリア
国連世界食糧計画(WFP)の事務局長であるシンディ・マケイン(Cindy McCain)は、データがなければ飢餓との闘いは「暗闇の中で行われる」ことになると警告している。そのうえで新たなプラットフォームは、各国が国民の利益のために、より情報に基づいた効果的な意思決定を行うための基盤になると述べている。
参考資料:
1. Daniel Noboa destaca crecimiento económico, pero evita referirse a la crisis sanitaria y problemas eléctricos
2. Ecuador, entre los 50 países con población en riesgo de enfrentar crisis alimentaria
3. HungerMap Live
4. Crisis sin solución en el sistema de salud




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