エクアドル:憲法裁判所、古川拓殖による現代奴隷制を認める

(Photo:Luis Argüello/ La Barra Espaciadora)

「50年以上もの間、古河はその農園で農奴制として知られる奴隷制度に類似した慣習を維持していた。この制度は、極めて弱い立場の人々を利用して、農園内のキャンプに住まわせ、古河の利益のためにアバカを収穫させるというものであった。」

 

これは2024年12月5日木曜日に発表された歴史的な判決文の最初の一行であり、この繊維の生産を担当する大富豪企業古川拓殖が、労働者の労働権と人権を侵害したことを憲法裁判所が初めて認めたものである。

裁判所は農場で半世紀にわたり、基本的なサービスの欠如を含む、不安定で品位に欠ける状況に置かれていた奴隷労働の犠牲者342人を支持する判決を下すとともに、予防措置や保護措置を採らなかった公的機関を挙げ、国と企業の公的謝罪、経済的賠償や土地の割譲、「企業の不処罰を避ける」ための法改正やその他の「措置」を含む包括的な賠償を要求している。

裁判所は本判決に向けて複数の被害者が古川拓殖や労働省、厚生省、経済・社会的包摂省、教育省、政府に対して起こした保護訴訟を分析している。裁判所はまた、農場に住む人々の「アバカレロと社会基盤に対する一般的な損害」の存在も確認している。

裁判官たちは古川が2019年まで「グレバの農奴制として知られる奴隷制に類似した慣行」を維持していたと判断した上で、原告が求めていた保護措置を認めた。グレベの奴隷制は、電気、飲料水、医療、教育などの基本的なサービスを提供することなく、アバカレロ(アバカ採取者)を不衛生なアシエンダのキャンプに閉じ込めることによって行われていた。保護具の提供もなく「初歩的な機械」を使用していたため(※)、多くの労働者が慢性疾患や手足の変形、切断にも苦しんでいた。これらの労働者は世代が変わってもアバカ栽培からは抜けられないよう義務づけられていた。この義務は強制されたものではないにせよ、被害者の大多数がアフリカ系で読み書きができないなど、極めて脆弱であったからこそ、具体化した。また、幹線道路から離れている農場から労働者が現場を離れることを不可能にする要因だった。

女性たちに対する不正義や暴力も際立っていた。法廷によれば、女性たちは「アバカの生産量を最大化」させるため、家族や他のアバカレロのために料理を作り、子供の世話と子育てをしなければならないという長時間労働にさらされていた。一方女性たちは一切の給与を得ておらず通常は一家の主がこの収入を得ていた。アシエンダで働いていた女性の証言によると「息子を連れてテンダルに行くことを余儀なくされ、アバカから発散される粉塵のために呼吸器系に何度も問題を起こした」。裁判所によると医療へのアクセスもなく不安定での生活は「彼女たちの生殖に関する健康に深刻なダメージを与えるものだった」。女性たちは時には農場で助産師の助けを借りながら、あるいは最寄りの保健センターまで移動して出産することを余儀なくされていた。裁判所は、農場が遠隔地にあったため、何人かの女性は「流産と死産」も経験していた。さらにこのことは、「多くの女性が子供の頃、12歳か13歳、あるいは思春期に妊娠し、何人もの子供を産んだ」ため、より深刻であると裁判所は指摘している。アシエンダの「グループリーダーやその他の階層的な上司による」性的暴力も受けた少女たちの中には妊娠した者もいた一方、彼女たちは医療も司法も受けることができなかった。一方少女たちの妊娠は教育を受ける機会も少なかったことも原因である。

判決によると奴隷制度は「アフロ系出身者」に対する「構造的人種差別」によって動機づけられている。ここで働くアフロ系出身者は平等な人間としての尊厳を持つ人間ではなく、生産の対象として認識されていたと述べている。この奴隷制の特徴は、「極めて弱い立場にある人々を利用して、数世代にわたってアシエンダ内のキャンプに住みこませ、古河の利益のためにアバカを収穫させる」というもので、「見かけ上の合法性」を持たせるために、同社は一種のリース契約のようなものを締結させている。エクメニカ人権委員会(Comisión Ecuménica de Derechos Humanos:Cedhu)の弁護士であるアレハンドラ・サンブラノ(Alejandra Zambrano)は、によるとこのような見せかけは「農業産業が君臨するこの国において」象徴的なものであると述べている。今回の判決は「同じようなやり方をする他の企業への警告でもある」。サンブラノがEL PAíSの取材で強調するのは「この構造的な人種差別を覆すには、まずその存在を認識することだ」。

 

La Barra EspaciadoraとPlan Vによる調査

古川に関する事件は、デジタルメディア「La Barra Espaciadora」と雑誌「Plan V」による調査とその発表後、2019年に明るみに出た。報告書では、古川の労働者の何人かが、その不安定な条件と、ナタやナイフを扱うための保護がないために、足、前腕、指などを失っていることを明らかにした。一方当時の同社経営者マルセロ・アルメイダ・スニガはこれを否定し、労働者は保護具を受け取っており、実際に受け取っていると述べていた。

La Barra EspaciadoraとPlan Vによる調査では同社の労働者の月給は200~300ドル(当時375~386ドルだった基本給を下回る)で、従業員たちは同社の32のアシエンダ内の古い建物に住み、浴室、電気、飲料水を利用できなかったと述べている。人権団体連合によると、労働者たちは労働契約も結んでいなかった。

 

裁判所裁定

– フルカワが憲法の奴隷制禁止に違反したことを宣言する。
-労働省、厚生省、経済・社会的包摂省、文部省および政府は、古河電工の奴隷制禁止違反に対する予防措置および保護措置を講じなかったことを宣言する。
-フルカワの労働者に対し、以下を含む包括的な補償措置を提供する。
  - 342人の被害者に対する非金銭的損害および金銭的損害に対し一人12万ドルの賠償金支払い
  - 被害を受けた人々への公式謝罪

– 国土安全保障省と労働省は、グレバ農奴制の構造的原因を克服するために、組織横断的な公共政策を立案・実施する。
– 経済財務省は、国土安全保障省と労働省とともに、公共政策の実行に必要な資源を配分する。
– 共和国大統領は公的謝罪をする。
– 労働省、保健省、国土安全保障省、教育省および政府は、グレバの農奴制に関するドキュメンタリーを作成する。
– 文化省は、サント・ドミンゴ・デ・ロス・ツァチラス自治分権政府とラ・コンコルディア自治分権政府とともに、奴隷制度に類似した慣習が二度と起こらないよう、記憶を喚起し、意識を高めるための芸術表現を創造する。
– 国民議会は、グレバの農奴制を記念する日を宣言する。
– 国民議会は、農奴制やその他の不安定な形態の農業労働を排除し、企業の不処罰を防止するための法改正を行う。
– フルカワが不動産や株式を市場で処分することを禁止する。
– 会社・証券・保険監督庁に判決を通知し、古河電工への介入を命じる。
– 奴隷制に関連する犯罪の存在を調査するため、この判決の内容を国の検事総長に通知する。

 

 

古川拓殖の主張

古河はサント・ドミンゴ・デ・ロス・ツァチラス県、ロス・サイオス県、エスメラルダス県に26の農園、2,000ヘクタール以上の農場を所有していて、アバカの栽培と工業化に専念している。

12月7日土曜日に古川は声明を発表し、裁判所による4100万ドルの賠償金の支払いは「会社の持続可能性を危うくし、会社の存続に生活がかかっている何百人もの現在の労働者の権利を脅かす」ものであり会社の「閉鎖」を意味するものだと非難した。また、裁判所が被害者を「富ませている」と非難した。その数日前、彼らは判決の強引さを感じ取り、すでに反対を表明していた。

「現在の選考と見直しの過程で、最終的な救済措置が講じられるのであれば アシエンダに対する侵入も考慮すべきである。なぜなら、現在エクアドルの司法制度が奴隷制を「強制された」ものとして認定している被害者たちは抵抗集落に住む者たちであり「そこにいる人々は、5年以上にわたって117ヘクタールを搾取し、十分な収入を得ている」からである。

「我々は可能な限り判決に従わなければならない」と語るマネージャーであるアドリアン・エレラのAFPに対するインタビューによると、農場には約600万ドルの資産はあるものの、全財産、全車両、会社の全資産を売却しても、4,100万ドルには届かない。

 

世界第2位のアバカ輸出を誇る古川はエクアドルにアバカを導入し、2023年までに約2,300万米ドルを売り上げる。一方上記を理由とし賠償額の下方修正を求めた。原告側の弁護士であるアレハンドロ・モラレスによれば、アバカレロたちは、会社による収容所の破壊や証拠の抹消を防ぐため、土地に留まることを認める判決によって保護されている。

エクアドル高裁はまた、労働省、厚生省、教育省、経済・社会的包摂省といった公的機関の側にも不作為があったと認定した。

 

#古川拓殖   #caso 1072-21-JP/24

参考資料:

1. La Corte Constitucional de Ecuador confirma que hubo esclavitud moderna en las haciendas de Furukawa
2. Corte Constitucional de Ecuador falla contra empresa japonesa en inédito caso de esclavitud moderna
3. El caso Furukawa, explicado

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