日本:弟子屈の「オハウラーメン」を食べてみる(北海道)

郷にいれば、その郷土料理を食べることは当たり前と考える。例えば北海道でアイヌ文化と触れると言う観点から、伝統食を口にしたいと考えるのは当然である。その一方、残念ながらアイヌ料理なるものと触れ合える機会は極めて少ないのが実情だ。毎日2回はそれを食べたいと考えるものの、理想からは程遠い。なぜならアイヌ料理を提供する場所が少ないからだ。それはアイヌが比較的多く住むとされる地域によっても言えることである。和人による同化政策、生活様式の変容から食文化が変わっていることもあるだろう。文化は変わって然るべき。それでも観光者としての私としては、郷土料理を食べたいとつい考えてしまう。エゴだとは十分認識している。

検索をしていたらオハウ・ラーメンなるものを見つけた。プリミティブなものでないことは認識している。そもそもラーメンはアイヌの常用食ではない。それでも人気ラーメン店「弟子屈」によると、アイヌの監修のもとこのラーメンと開発した。アイヌの理念や、彼らが慣れ親しんだ食材を採用したと言う。

 

弟子屈発寒店改め「RAMAT」として生まれ変わった同店のみでオハウラーメンは味わえる。鹿肉、鮭、豚肉の3種類のラーメンが用意されているとされていたものの、私の訪問時には豚肉のそれの用意はなかったようだ。

 

店長の佐々木には「アイヌ民族の、素材に感謝し大切に食す姿勢、その土地でとれた素材を用いた調理法は、現代にも広がるスローフードの考え方に通ずるものがあり、学ぶべきことが多い。麺料理を通して、アイヌの方々の食文化と伝統、考え方などを発信していきたい」と商品のリリースと共に語っている。

 

私が選んだのは蝦夷鹿、アイヌ語でユクのオハウラーメンである。しっかりと味付けされた鹿肉は臭みもなければ、溶け出す餡と優しい味のスープとのコラボレーションが楽しめる。餡作りには魚々紫(ととむらさき)という醤油が使用されている。

アイヌとエゾシカは切っても切り離せない。内臓は生で食べ、膀胱は脂肪を溶かしたシカ油を保存する入れ物として利用した。角は刈りのための槍や農具に、毛皮は防寒着として、そして陰茎は占いに利用した。

アイヌ文化におけるシカの存在は独特だ。生あるものは神(カムイ)が形を変えたものであるものの、シカの神は存在しない。シカはユㇰコㇿカムイ(シカを司る神)が人々の祈りに応じて地上に放す獲物だったことによる。ユクとは元々獲物を表す言葉だったとされている。それが転用されエゾジカを表す言葉となった。ユクを与えてくれた神に捧げられるのはユㇰコㇿカムイにカムイノミ(神への礼拝)で、この儀式を通じアイヌは謝意を表した。

アイヌがユクを特別扱いしていたことはその呼び名からも知ることができる。彼らは年齢別にその名を細分化し呼んでいる。ポイユク(1歳)、リャポイユク(2歳の雌)、リャウ(2歳の雄)、トゥパリャユク(3歳)、ピンネラウ(3歳の雄)、モマンペ(3歳以上の雌)、レパポナプカ(4歳の雄)、アプカ(5歳以上の雄)などがその例である。もう少し粗い分類としては「ピンネラウ(若雄)」「メマンペ(若雌)」「アㇷ゚カ(老雄)」などが挙げられる。

ちなみに北海道にはエゾジカに因んだ地名が数多くのこっている。例えば鹿追町(アイヌ語でクテクシ)は「シカ追い柵のあるところ」を表す。また、「ユクトラシペッ」は南富良野町の幾寅を言うが、シカがのぼる川を意味する。門別町の幾千世は「ユクチセ」と呼ばれるがシカの家を表す。

 

お店の内装もアイヌ調で整えられているから、いわゆる観光客は楽しめる。札幌駅からは少々距離あるものの、オハウラーメン然り人気のラーメンを食べに足を伸ばすのも悪くない。地元の食材、こだわりの詰まったラーメンに記憶も胃袋も満足するだろう。

 

なお店舗名「RAMAT(ラマッ)」はアイヌ語で「魂」「命」を表すと言う。RAMAT好きにはたまらないグッズ売り場もある。北海道の土産ともなるだろう。

 

 

弟子屈ラーメン発寒店 RAMAT(札幌)

 住所
  札幌市西区発寒9条13丁目9-1 (13-9-1, 9Jo, Jassamu, Nishi-ku, Sapporo-shi, Hokkaido)
 電話
  011-668-0505   
 価格帯
  
 営業時間
  火〜金曜日11:00~15:00・17:00〜20:00
  土曜日 11:00〜20:00
  日曜日 11:00〜15:00
  月曜日定休
ホームページ
  http://www.teshikaga-ramen.com/shop/hassamu/

 

参考資料:

1. 鹿・鮭・豚の3種食べ比べ!アイヌの伝統食”オハウ”がラーメンに…こだわり道産食材&手仕込み
2. アイヌ語で自然かんさつ図鑑>エゾシカ

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