(Photo:Martín Mejía / AP)
ペルーのオジャンタ・ウマラ(Ollanta Humala)元大統領は、選挙運動資金をめぐる資金洗浄事件で科されていた懲役15年の有罪判決が取り消されたことを受け、2026年7月31日夜、首都リマの刑務所から釈放された。これは憲法裁判所(Tribunal Constitucional)が、ウマラに対する刑事手続を無効とする判断を示したこと受けたもので、刑事裁判所が釈放を命じた。
ウマラは、2011年から2016年までペルー大統領を務めた人物であり、2025年4月から、2006年および2011年の大統領選挙運動において、当時のベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chávez)政権およびブラジルの建設会社オデブレヒト(Odebrecht、現ノボノル〈Novonor〉)から違法な資金提供を受けたとされる事件で服役していた。
#Mundo | El expresidente peruano Ollanta Humala fue liberado luego de que la justicia anulara su condena de 15 años por lavado de activos tras recibir dineros de la constructora Odebrecht.
— ÚltimaHoraCaracol (@UltimaHoraCR) August 1, 2026
Al salir de prisión, Humala aseguró haber sido víctima de persecución política y… pic.twitter.com/oYxusjszm3
2025年4月の有罪判決
ペルー司法当局は2025年4月15日、オジャンタ・ウマラ元大統領に対し、加重資金洗浄罪で懲役15年の判決を言い渡した。ペルー国家最高裁判所(Corte Suprema Nacional)第三合議法廷(Tercer Juzgado Colegiado)は、ウマラ元大統領が2006年および2011年の大統領選挙運動において、ベネズエラ政府やブラジル建設大手オデブレヒトから違法な資金提供を受け、その資金を選挙活動に利用したとして有罪と判断した。
判決を言い渡したナイコ・コロナド(Nayko Coronado)判事は、「オジャンタ・ウマラ・タッソ(Ollanta Humala Tasso)被告に対し、懲役15年を科す。この刑は暫定的に執行され、これまで拘束されていた期間を刑期に算入する。被告は国家刑務所庁(Instituto Nacional Penitenciario:INPE)が指定する刑務所で服役しなければならない」と述べた。ウマラ元大統領は判決直後に拘束され、刑務所へ移送された。
コロナド判事は、裁判を通じて「違法な資金を取得する複数の行為によって資金洗浄罪が成立したことが立証された」と説明した。また、ウマラ元大統領の選挙運動についても、「犯罪組織の存在を構成すると考えられる要素が認められた」と指摘した。
この判決により、2022年2月21日に開始された3年以上にわたる裁判は終結した。検察による捜査は2015年から2019年にかけて実施され、2019年5月に起訴。その後、2021年12月まで司法審査が続き、公判へと移行していた。裁判所はまた、判決の中で、この事件に関連する民事賠償額についても1,000万ソル(約267万米ドル相当)と決定した。
裁判所が認定した選挙資金
コロナド判事は、大統領選挙運動における資金の流れについて、「保有する資金に正当性を与えることを目的としたものであり、虚偽または実在しない献金が確認された」と説明した。
2006年の大統領選挙運動では、裁判所は約150万ソルの資金提供があったと認定した。この資金については、ベネズエラを起源とし、同国大使館を通じて提供されたものと判断した。裁判所は、証拠から資金が違法なものであることが確認され、実在しない虚偽の献金を複数の手段によって正当な資金であるかのように偽装していたと指摘した。コロナド判事は、こうした行為について「資金洗浄罪に典型的かつ特徴的な行為」と述べた。
2011年の大統領選挙運動については、裁判所はブラジルの建設大手オデブレヒトを通じて約300万米ドルの資金提供があったと認定した。裁判所は、これら一連の行為について加重資金洗浄罪が成立すると判断し、被告らに刑事責任があるとの結論を示した。
さらに裁判所は、ウマラ元大統領夫妻が資金の出所を隠すため、100人以上を実際の献金者であるかのように届け出るなどの工作を行ったと認定した。名義を利用された人々の中には経済的に困窮している者も含まれており、司法当局による事情聴取を受けた際に、自身が献金者として登録されていた事実を初めて知った者もいた。
ナディネ・エレディアらへの判決
ウマラ元大統領の妻で、元ファーストレディのナディネ・エレディア(Nadine Heredia)も、選挙運動を主導した責任を問われ、同じく加重資金洗浄罪で有罪判決を受け、懲役15年を言い渡された。また、エレディアの弟であるイラン・エレディア(Ilán Heredia)には懲役12年の刑が科された。
裁判所は判決の即時暫定執行を命じ、オンラインで公判に参加していたエレディアとイランについても、国家刑務所庁(INPE)が指定する刑務所へ収監するよう指示した。しかし、エレディアは当時判決言い渡しの場に姿を見せず、夫妻の15歳の息子とともにブラジルへ移動した。その後、同国で政治的保護を求め、現在もブラジルに滞在している。
なお、ウマラ元大統領夫妻は2017年から2018年にかけて、逃亡の恐れがあるとして検察が請求したことを受け、裁判所の決定により保釈前勾留を受けていた。
ウマラ元大統領の主張
ウマラ元大統領は2025年2月、EFE通信の取材に対し、仮にオデブレヒトが自身の選挙運動のためにペルーへ資金を送っていたとしても、その資金は当時オデブレヒトのペルー法人責任者を務めていたホルヘ・バラタ(Jorge Barata)によって横領されたとの見方を示していた。
ウマラ元大統領は、マルセロ・オデブレヒト(Marcelo Odebrecht)がバラタに対し、自身の選挙運動への資金送金を指示したという説明について「そのような事実は存在しない」と否定した。そのうえで、仮に送金が行われていたとしても、資金はバラタ氏が不正に流用したものだと主張していた。
また、ウマラ元大統領は、ベネズエラおよびブラジルから選挙資金を受け取ったこと自体も否定していた。ナディネ・エレディアも裁判で、「チャベス大統領からも、ブラジルのルラ大統領からも、さらにブラジル企業からも資金を受け取ったことは一度もない」と証言していた。
憲法裁判所による有罪判決の取り消し
ウマラ元大統領は2026年1月、弁護団を通じて、不法な拘束から個人の自由を守る司法救済制度であるヘイビアス・コーパス(habeas corpus)を申し立てた。人身保護令状として知られるヘイビアス・コーパスとは、不当に自由を奪われた人の身柄を裁判所に出すよう命じる、大切な法律の仕組みを指す。この申立てを受け、ペルー憲法裁判所は7月31日木曜日、ウマラ元大統領に対する資金洗浄事件の有罪判決を無効とする判断を示した。
憲法裁判所は、ウマラ元大統領が2025年に「資産収受型」の資金洗浄罪で有罪判決を受けたと説明した。この犯罪類型は2016年に初めて処罰対象となったもので、犯罪によって得られた財産であることを認識していた、または認識すべき状況にありながら、その財産を受領・保有した者を処罰する規定である。
しかし、同裁は、ウマラ元大統領の選挙運動に関連する資金提供について、当時の法制度では資金洗浄罪として処罰することはできなかったと判断した。
判決では、起訴の対象となった事実が発生した時点において、「資産収受(receptación patrimonial)」は資金洗浄罪の構成要件として法律上規定されていなかったと指摘。そのため、ウマラ元大統領に対する起訴は、刑法における罪刑法定主義の原則に反すると判断した。さらに憲法裁判所は、人身の自由に対する適法性の原則および犯罪構成要件の明確性の原則が侵害されたとして、ヘイビアス・コーパスの請求を認めた。この判断により、ウマラ元大統領およびナディネ・エレディアに対する刑事手続は無効とされた。
また、憲法裁判所は9か月前にも、ケイコ・フジモリ(Keiko Fujimori)に関する別件の資金洗浄事件について、同様の法的判断に基づき刑事手続の終了を命じていた。同裁は、選挙運動における不正な資金提供について、資金洗浄罪を適用して処罰することはできないとの判断を示し、ウマラ元大統領および当時のペルー民族主義党(Partido Nacionalista Peruano:PNP)幹部に対する捜査を終了させた。
釈放とウマラ元大統領の発言
憲法裁判所が有罪判決を無効としたことを受け、刑事裁判所は金曜日、ウマラ元大統領の釈放を命じた。裁判所はSNSを通じて、「刑事手続全体が無効となったことを踏まえ、本日中の釈放を命じる」と発表した。これにより、ウマラ元大統領はリマにあるバルバディージョ刑務所(Barbadillo)から釈放された。
現地時間午後7時40分頃、ウマラ元大統領は警察の警護を受けながら、支持者らに囲まれて銀色の車で刑務所を後にした。釈放後、同氏は報道陣に対し、自身や家族、民族主義党(Partido Nacionalista)が政治的・司法的迫害の被害を受けてきたと主張した。
ウマラ元大統領は、「国家および司法制度の手先によって拉致された」と述べ、2025年4月15日の拘束について、国家による不当な措置だったとの見方を示した。また、声を詰まらせながら、一連の「迫害」によって妻が亡命を余儀なくされ、子どもたちも国外へ避難する状況になったと語った。
さらに、自宅に戻った際には義母と未成年の息子が待っていたと述べたうえで、ベネズエラやブラジルから選挙資金を受け取ったとの疑惑について改めて否定した。
次期外務大臣の反応
次期外務大臣に就任予定のカルロス・エスパ(Carlos Espá)は、ウマラ元大統領に関する憲法裁判所の判断について「公正な判決」と評価した。エスパは、ケイコ・フジモリ大統領の政権に加わる予定であり、報道陣に対し「この司法判断を非常に喜ばしく受け止めている」と述べた。
一方、ウマラ元大統領の弁護士であるサンティアゴ・ガスタニャドゥイ(Santiago Gastañadui)も判決を歓迎し、Xへの投稿で「司法が政治的迫害の手段として二度と利用されてはならない」と述べた。
歴代大統領専用刑務所
ウマラ元大統領が収監されていたバルバディージョ刑務所は、リマ東部に位置する歴代大統領専用の収容施設である。同施設には、アレハンドロ・トレド(Alejandro Toledo)元大統領、マルティン・ビスカラ(Martín Vizcarra)元大統領、ペドロ・カスティジョ(Pedro Castillo)元大統領らも収監されている。
トレド元大統領は資金洗浄罪で懲役20年、ビスカラ元大統領は汚職罪で懲役14年、カスティジョ元大統領は反乱共謀罪で懲役11年の判決を受けている。
また、ケイコ・フジモリ大統領の父である故アルベルト・フジモリ(Alberto Fujimori)元大統領も、10年以上にわたり同刑務所に収容されていた。
オデブレヒト事件の広がり
オデブレヒトは、ラテンアメリカ各国に広がった大規模な贈収賄・汚職事件「オデブレヒト事件」の中心となったブラジル企業である。同社は2016年、21世紀初頭以降、ペルー国内で数千万米ドル規模の賄賂や違法な選挙資金を提供していたことを認めている。
ウマラ元大統領の裁判では、民族主義党の創設者である同氏が、オデブレヒト元最高経営責任者(CEO)マルセロ・オデブレヒトの証言などを根拠に起訴された。検察によると、オデブレヒト事件をめぐる捜査では、2006年から2011年まで大統領を務めたアラン・ガルシア(Alan García)元大統領の関与も指摘された。ガルシア元大統領は2019年、逮捕を前に自ら命を絶った。また、2016年から2018年まで大統領を務めたペドロ・パブロ・クチンスキ(Pedro Pablo Kuczynski)元大統領についても、オデブレヒト関連の捜査が続けられている。
さらに、現職のケイコ・フジモリ大統領も、オデブレヒトなどからの選挙資金提供をめぐり捜査対象となった。フジモリ大統領は2016年の大統領選挙運動で違法な資金を受け取ったとして起訴され、2018年から2020年にかけて合計16か月以上にわたり勾留された。その後、憲法裁判所は同事件について刑事手続を無効と判断し、捜査および公判手続は終了した。
ケイコ・フジモリ大統領の見解
ケイコ・フジモリ大統領は、ウマラ元大統領に関する憲法裁判所の判断について、同裁の独立性を強調した。同大統領は、中部フニン県(Junín)を訪問中に報道陣に対し、「私たちは法治国家に生きている。賛成であれ反対であれ、司法判断は尊重しなければならない」と述べた。また、自身も資金洗浄事件の捜査期間中に長期間勾留された経験があり、その後、憲法裁判所(同裁)が事件手続を無効とし、事件が終結した経緯を振り返った。
さらに、「今回の判断には異論を持つこともできるが、私にはそれを尊重する責任がある」と述べた。同大統領は、検察が十分な立証活動を行えなかった結果として、憲法裁判所が今回の判断を下したのだろうと語った。
参考資料:
1. Expresidente peruano Ollanta Humala queda libre luego que Tribunal anuló juicio que lo condenó
2. Perú: expresidente Ollanta Humala fue liberado tras anulación de su condena por caso Odebrecht
3. El expresidente peruano Ollanta Humala queda en libertad tras la anulación de condena de 15 años por lavado
4. El expresidente peruano Ollanta Humala es condenado a 15 años de prisión por lavado de activos

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