(Photo:Infobae)
クエンカ市(Cuenca)にあるアマル生物公園(Bioparque Amaru)は、アンデスコンドル(Vultur gryphus)のヒナが誕生したと発表した。同施設で誕生した個体としては2025年6月11日に生まれたキムサ(Kimsa)に続く2羽目となる。
今回誕生した雌のヒナは、2026年5月11日に63日間にわたる管理下での人工ふ化を経て誕生した。現在57日齢を迎え、順調に成長している。
一方で、この個体はエクアドル国内で初めて、人工ふ卵器を使用し、専門技術チームによる管理を受けながら誕生したアンデスコンドルとなる。
キムサは自然ふ化によって誕生した個体であるのに対し、今回のヒナでは卵を人工ふ卵器へ移し、獣医師、生物学者、飼育員らがふ化までの過程を管理した。
ヒナの名前は、市民参加による投票によって2週間以内に決定される予定である。
今回の誕生は、南米で絶滅リスクが高い鳥類の一つであるアンデスコンドルの保全に向け、遺伝資源の保存を目的とした域外保全型プログラムの発展につながる取り組みとなった。
母鳥による抱卵から人工ふ化への移行
繁殖プロセスは、アンデスコンドルのペアであるパチャ(Pacha)とインティ(Inty)の間で始まった。2羽はそれぞれ19歳と21歳である。アンデスコンドルは野生下では最長70年生存でき、保護下では73~75年まで生きることがある。
今回の卵は、母鳥による自然抱卵の状態で2日間管理された後、アマル生物公園の技術者によって慎重に取り出された。
この判断は、カリフォルニアコンドルの保護事業など、国際的な保全プロジェクトで活用されている科学的手法に基づいている。
アマル生物公園運営責任者のビクトリア・アルベラエス(Victoria Arbeláez)は、母鳥が自然ふ化を始めてから最初の3日以内に卵を取り出すことで、母鳥が再び産卵できる可能性が高まり、年間で2羽のコンドルのひなを確保できる可能性があると説明した。
アンデスコンドルは繁殖が難しい種であり、通常は1回の繁殖で1個の卵しか産まない。その後、ひなを育ててから再び巣作りを行うまで最大2年間を要する。
繁殖ペアが抱えていた課題
今回の人工ふ化には、繁殖ペアが抱えていた過去の課題も影響している。
パチャはキト動物園(Zoo de Quito)で生まれた個体であり、インティはカハス国立公園(Parque Nacional Cajas)で長年前に救助された個体である。インティは人間への強い刷り込みがあり、アマル生物公園で実施された5回の繁殖試験のうち、過去3回は成功しなかった。
失敗の要因の一つは雄のストレス反応であり、過去にはインティが卵を割ってしまうこともあった。そのため、雌のパチャは単独で長期間にわたりふ化作業を担う必要がある状況に置かれていた。
今回の人工ふ化技術は、こうした繁殖上のリスクを軽減し、安定的に個体を増やすための取り組みとして導入された。
63日間にわたる人工ふ化管理
巣から取り出された卵は、アメリカ国立鳥類園(National Aviary)から寄贈された専用ふ卵器へ移された。ふ卵期間中、専門チームは温度、湿度、胚の発育状況、卵の重量減少などを継続的に管理した。期間中には15回の検卵が実施され、胚の発育過程全体で253回以上の技術的確認が行われた。
ふ化の瞬間は、獣医師、生物学者、飼育員にとって重要な工程となった。スタッフは数時間にわたり状態を監視し、必要に応じて殻の一部を慎重に開ける補助を行った。また、へその緒の処理も実施し、ヒナが安全に誕生できるよう対応した。
誕生後の繊細な飼育プロセス
ふ化後、ヒナは新生児用の保温ケースへ移された。
アマル生物公園は、市販の鳥類用設備を購入する予算が不足していたため、施設内のチームが独自に飼育設備を開発した。製作された木製の保温ケース2台には、清掃しやすい膜素材、一方向ガラスの窓、厳格な管理基準に基づく温熱装置が組み込まれている。一方向ガラスは、ヒナが外部環境を確認できる一方で、人間の姿を直接認識しにくくするために使用されている。
生後2か月を迎えた時点で、ヒナはより大型の2台目の保温ケースへ移される。この設備では、生後6か月まで飼育することが可能である。
飼育期間中は、獣医師、生物学者、飼育員による継続的な監視が行われ、体重、行動、健康状態、成長過程が確認されている。
人間への刷り込みを防ぐ人工飼育
将来的に他のアンデスコンドルと社会的に適応できるようにするため、アマル生物公園では、人間への刷り込みを防ぐ人工飼育プロトコルを導入している。この方法では、親鳥を模した人形を使用してヒナを育てる。10人のチームが毎日3つの時間帯に分かれて監視と給餌を行い、ヒナが人間への過度な依存を形成しないよう管理している。
アマル生物公園運営責任者のビクトリア・アルベラエスは、今回のヒナが2025年に誕生したキムサよりも早い成長を示していると説明した。アルベラエスは、「2日目にはすでに首をまっすぐ立てていた。キムサの場合、それには4~5日かかった」と述べた。
給餌管理と成長状況
現在、ヒナには厳密に管理された食事が与えられている。主な餌はクイ(cuy、テンジクネズミ科の家畜)の肉であり、クエンカ・カトリック大学(Universidad Católica de Cuenca:UCC)から提供されている。給餌は1日2回行われ、朝400グラム、夕方400グラムが与えられている。給餌量は、毎日の体重とアンデスコンドルの成長曲線を照合するソフトウェアによって算出されている。
また、体重測定は人間への刷り込みを防ぐため、視覚的な接触を避けた状態で実施されている。
アマル生物公園では、人工飼育によって生存率を高めるだけではなく、将来的に自然環境へ適応できる行動を維持することを重視している。
アンデスコンドル保全国家作業部会の方針に基づく取り組み
今回の取り組みは、アンデスコンドル保全国家作業部会(Grupo Nacional de Trabajo para la Conservación del Cóndor Andino:GNTCCA)の方針の一環として実施されている。域外保全プログラムの最終的な目的は、個体を飼育下に留めることではない。
将来的にアンデス地域における個体数回復戦略を支援できるよう、自然環境で生存する能力を備えた個体を育成することを目的としている。
アマル生物公園は、エクアドル国内でアンデスコンドルの繁殖と人工飼育を行う専門施設として、科学研究、技術開発、保全活動を進めている。
将来的な野生復帰を見据えた保全計画
今回の取り組みは、アンデスコンドル保全国家作業部会(GNTCCA)の方針に基づく域外保全プログラムの一環である。
アマル生物公園は、人工繁殖によって飼育下の個体数を増やすことだけを目的としていない。将来的にアンデス地域における個体数回復戦略を支援できるよう、自然環境で生存する能力を備えた個体を育成することを目指している。
アンデスコンドルは、南米を代表する大型鳥類である一方、生息数の減少が続いている。エクアドル国内の野生個体数は120羽未満と推定されており、繁殖技術の確立や生息環境の保護が重要な課題となっている。
域外保全では、飼育環境で生まれた個体が将来的に他の個体と関わりながら生活できるよう、成長段階に応じた管理が行われている。
キムサは次の保全段階へ移行
2025年6月11日に誕生したキムサは、今後、アマル生物公園を離れ、コトパクシ県のイリティオ救護センター(Centro de Rescate Ilitío)へ移送される予定である。移送後は、他の若いアンデスコンドルとの交流を通じて、同種に必要な社会的能力を発達させる。
アンデスコンドルは社会性を持つ鳥類であり、同種との関わりを通じて、飛行や行動など自然環境で生存するために必要な能力を身につける。
今回誕生したヒナについても、成長段階に応じてキムサと同様の保全計画が適用される予定である。
アンデスコンドルの繁殖を支える科学的取り組み
アマル生物公園によると、今回の人工ふ化成功は、アンデスコンドルの繁殖管理に関する技術や知識の蓄積につながる。同施設では、卵の管理、人工ふ化、出生後の飼育、人間への刷り込み防止など、複数の段階で専門的な管理を実施している。
また、今回の取り組みでは、繁殖が難しいアンデスコンドルに対して、母鳥の負担軽減と繁殖機会の確保を両立させる技術が用いられた。
通常、アンデスコンドルは1回の繁殖で1個の卵しか産まず、ひなを育てた後に再び繁殖するまで長期間を要する。そのため、人工ふ化によって繁殖機会を増やすことは、個体数回復に向けた保全手段の一つとなっている。
保全には社会全体の協力が必要
アマル生物公園運営責任者のビクトリア・アルベラエスは、アンデスコンドルの絶滅を防ぐためには、繁殖活動だけではなく、生息環境の保護や地域社会との連携が必要だと述べた。
アルベラエス氏は、域外保全を支援し、国内で管理プロトコルを確立することには重要な意味があると説明した。
また、コンドルを繁殖させるだけでは十分ではなく、政府による自然環境の保護や、地域社会による狩猟・毒殺被害を防ぐための理解促進が必要だと述べた。
アマル生物公園は、今回のヒナ誕生について、エクアドル国内におけるアンデスコンドルの繁殖・保護能力を高める成果としている。
アンデスコンドル保全に関する主な数値
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人工ふ化期間 | 63日間 |
| 新生児期の監視 | 1日3回 |
| 検卵回数 | 15回 |
| 技術的確認回数 | 253回以上 |
| 人工給餌 | クイ肉を1日2回給餌 |
| 朝の給餌量 | 400グラム |
| 夕方の給餌量 | 400グラム |
| 国内野生個体数推定 | 120羽未満 |
| アマル生物公園で成功した人工繁殖個体 | 2羽 |
参考資料:
1. Ecuador registra el primer nacimiento de un cóndor andino por incubación artificial
2. Video: Nace en Cuenca el primer cóndor andino de Ecuador bajo incubación artificial




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