コロンビア:セペダ上院議員、新政権の治安政策に「準軍事的特徴」と警告

(Photo:SERGIO ACERO / REUTERS)

コロンビアの野党指導者で上院議員のイバン・セペダ(Iván Cepeda)は8日、次期大統領に選出されたアベラルド・デ・ラ・エスプリエジャ(Abelardo de la Espriella)が発表した治安政策について、国家機関の「準軍事化」につながる危険性があるとして強く警告した。

セペダはボゴタで発表した国民向け声明で、次期政権が掲げる都市部の治安部隊創設、旧機動対暴動隊(Escuadrón Móvil Antidisturbios:ESMAD)の復活、大型刑務所建設計画などを挙げ、「コロンビアでは準軍事的な政府の形態が形成され始めている」と述べた。

今回の発言は、6月21日の大統領選決選投票で僅差の敗北を喫したセペダが、グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)政権を継承する立場から、新政権への対決姿勢を明確にしたものとなる。

セペダは「極右勢力による過去の手法が再び持ち込まれようとしている」と主張し、生命、民主主義、市民の権利を守るために警戒が必要だと訴えた。

 

退役軍人による都市治安部隊創設を批判

セペダが最も強く問題視したのは、デ・ラ・エスプリエジャが主要都市で導入を計画する「市民治安防衛部隊(bloques de defensa para la seguridad ciudadana)」である。この構想では、地域の安全確保を目的として、退役軍人や予備役兵を活用した組織を形成する案が示されている。

セペダによれば、これらの組織は現役の警察や軍の正式な部隊ではなく、公務員としての資格を持たない人員によって構成される可能性がある。「彼らは公務員ではない。現役の公共治安部隊の一部でもない」。セペダはこう述べ、民間人が武力行使や治安維持に関与することへの懸念を示した。さらに、「武力行使、武器の独占的管理、公共秩序の維持は、憲法と法律の下で国家だけに認められた権限である」と強調した。

同氏は、コロンビアが過去に経験した準軍事組織の拡大を引き合いに出し、国家による武力管理の原則が崩れれば、地域社会で暴力、人権侵害、不処罰が広がる可能性があると警告した。

 

「市民治安防衛部隊」は準軍事組織化につながると主張

セペダは、デ・ラ・エスプリエジャ陣営が提案する市民参加型の治安政策についても批判した。同氏によると、次期政権の構想には、地域住民や元軍関係者を利用した治安ネットワークの形成が含まれているという。

セペダは、こうした組織が十分な法的監督を受けなければ、過去の準軍事組織と類似した役割を果たす危険性があると指摘した。また、次期大統領の側近と、過去に解体された準軍事組織の元構成員との接触を示す資料や録音が存在すると主張した。

ただし、セペダは安全上の理由から、情報源や具体的な資料の内容は公開していない。

 

退役陸軍大将の国防相指名にも言及

セペダは、デ・ラ・エスプリエジャが国防相に指名した退役陸軍大将ホルヘ・エドゥアルド・モラ(Jorge Eduardo Mora)についても言及した。モラは選挙期間中、予備役兵の政治的支援を調整していた人物とされ、セペダは退役軍人を治安政策の中心に据える方向性への懸念を示した。

一方、デ・ラ・エスプリエジャ側は、退役軍人の経験を活用した治安強化策であり、憲法の枠内で実施されるものだとしている。

 

機動対暴動隊復活計画に人権侵害の懸念

セペダは、新政権が現在の「対話・秩序維持部隊(Unidad de Diálogo y Mantenimiento del Orden:UNDMO)」を廃止し、旧機動対暴動隊(ESMAD)を復活させる方針についても批判した。機動対暴動隊(ESMAD)は、過去の大規模抗議活動への対応をめぐり、人権侵害や過剰な武力使用の疑いが国内外から指摘されてきた。

セペダは、「機動対暴動隊(ESMAD)は若者を中心とした市民に対して暴力的行為を行うために作られた部隊だった」と批判した。さらに、同部隊について、

  • 人権侵害
  • 超法規的処刑
  • 拷問
  • 性的暴力
  • 抗議参加者への意図的な眼球損傷

などの問題が報告されてきたと述べた。

その上で、「機動対暴動隊(ESMAD)を復活させることは民主主義への脅威であり、この意図には断固として反対する」と強調した。

 

社会抗議活動の犯罪化を警戒

セペダは、新政権の治安政策が社会運動や抗議活動を制限する方向へ進む可能性があると警告した。同氏は、ペトロ政権下では市民が抗議活動を行う権利を行使できたと主張する一方、デ・ラ・エスプリエジャ政権では抗議行動が「破壊行為」や「治安への脅威」として扱われる可能性があると述べた。

また、メデジン市長フェデリコ・グティエレス(Federico Gutiérrez)、カリ市長アレハンドロ・エデル(Alejandro Eder)についても、社会運動への対応を批判した。

 

大型刑務所10カ所建設計画を批判

セペダは、デ・ラ・エスプリエジャの刑務所政策にも懸念を示した。次期政権の構想「コロンビア、奇跡の祖国(Colombia, Patria Milagro)」では、民間資本や国際投資を活用して10カ所の大型刑務所を建設する計画が示されている。この計画は、エルサルバドルのナジブ・ブケレ(Nayib Bukele)政権による大規模刑務所政策を参考にしたものとされる。

また、現在の国立刑務所・拘置所機関(Instituto Nacional Penitenciario y Carcelario:INPEC)に代わる新たな刑務管理組織を設立し、退役軍人を含む人員によって運営する案があるという。

セペダは、この構想について刑務所制度の民営化だけでなく、国家機関の軍事化につながる可能性があると批判した。

 

憲法22A条違反の可能性を指摘

セペダは、これらの政策がコロンビア憲法第22A条に違反する可能性があると指摘した。同条は、自衛組織、準軍事組織、民間武装組織、警備ネットワークなどについて、

  • 創設
  • 組織化
  • 支援
  • 資金提供
  • 利用

を禁止している。セペダは、国家が民間組織に治安権限を移すことは、民主的制度の基盤を損なうと主張した。

 

コロンビアの過去の暴力を警告材料に

セペダは、現在の政治状況をコロンビアの長い暴力の歴史と関連づけた。同氏は、コロンビアが70年以上にわたり武力紛争を経験し、2016年の和平合意後に設置された真実委員会(Comisión de la Verdad)の資料によれば、少なくとも80万人が暴力によって死亡したと述べた。

さらに、過去の政治的弾圧の例として、

  • 社会運動指導者への違法監視
  • 虚偽証言を利用した司法手続き
  • 左派政党「愛国同盟(Unión Patriótica:UP)」への政治的虐殺

を挙げた。また、アルバロ・ウリベ・ベレス(Álvaro Uribe Vélez)政権時代の「偽装戦果(falsos positivos)」問題や、政治家と準軍事組織の関係をめぐる「パラポリティカ(parapolítica)」にも触れた。

 

平和的市民的不服従を呼びかけ

セペダは、新政権への対応として武器を使わない「平和的市民的不服従」を呼びかけた。同氏は、「憲法は単なる法律文書ではなく、生命、人権、尊厳を守るための社会的合意である」と述べた。

また、農村地域や都市周辺地域の住民に対し、民主的手段による監視と抵抗を求めた。さらに、デ・ラ・エスプリエジャに対して、

  • 米国籍の放棄
  • 米国治安機関との関係についての説明
  • 国家安全保障と司法主権の尊重
  • ペトロ大統領や野党への政治的迫害停止

を要求している。

 

デ・ラ・エスプリエジャ側は反発

これに対し、デ・ラ・エスプリエジャ側はセペダの主張を否定した。デ・ラ・エスプリエジャはSNSで公開した声明で、「平和的抵抗を、クーデターを正当化するために利用することはできない」と述べた。

また、「ペトロとセペダは、自分たちが誰と対峙しているのか理解していない」と発言し、ペトロ大統領が6月21日の決選投票結果を認めていないことを批判した。

 

政権移行を前に政治対立深まる

コロンビアでは、グスタボ・ペトロ政権からデ・ラ・エスプリエジャ次期政権への移行を前に、選挙結果の正当性、治安政策、人権保障をめぐる対立が激化している。

セペダは国際機関による監視を求める一方、次期政権側は治安政策は憲法の範囲内で実施され、準軍事組織を形成する意図はないと説明している。

新政権発足後、治安政策と国家機関のあり方をめぐる論争は、コロンビア政治の最大の争点になるとみられる。

#CIDH #IACHR #OHCHR #IvánCepeda

 

参考資料:

1. Colombia: Iván Cepeda advierte sobre rasgos paramilitares en el nuevo Gobierno
2. SE ESTÁ CONFIGURANDO UN GOBIERNO PARAMILITAR
3. Excandidato colombiano Cepeda alerta sobre «gobierno paramilitar» en Colombia
4. Cepeda advierte sobre bloques paramilitares bajo nuevo gobierno
5. Iván Cepeda rechaza los bloques de seguridad urbanos, el regreso del Esmad y las megacárceles: “Se está configurando un gobierno paramilitar”

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