ラ米:米国による介入批判拡大、中南米で緊張が同時多発的に拡大

(Photo:SERGIO ACERO / REUTERS)

選挙を目前に控える、あるいは選挙期間中にある中南米地域の進歩主義政権は、ホワイトハウス(White House)からの圧力強化を受け、米国による介入への批判を強めている。

2026年5月31日にコロンビア・バランキージャ(Barranquilla)で実施された大統領選第1回投票では、アベラルド・デ・ラ・エスプリエジャ(Abelardo de la Espriella)の支持者らが投票所周辺に集まった。

ドナルド・トランプ(Donald Trump)は6月2日火曜日、コロンビア大統領選挙において極右候補アベラルド・デ・ラ・エスプリエジャに「全面的支持」を表明した。これに対し、6月21日の決選投票で同氏と対決する左派候補イバン・セペダ(Iván Cepeda)は、この行為を「外国政府による選挙運動への介入」と批判した。

デ・ラ・エスプリエジャは2023年から米国市民権を保有しており、コロンビア国籍との二重国籍を有している。こうした状況に加え、トランプによるワシントンと近い立場の候補者への支持表明は、同氏の政権復帰以降、常態化している。

米国外交は長年にわたり介入主義的な側面を有してきたが、従来は特定候補への支持をここまで明確に表明することは避けてきた。しかし現在のホワイトハウスは、アルゼンチンのハビエル・ミレイ(Javier Milei)、チリのホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast)、ホンジュラスのナスリー・ティト・アスフラ(Nasry Tito Asfura)、コスタリカのローラ・フェルナンデス・デルガド(Laura Fernández Delgado)に対し、明確な支持を示してきた。

こうした動きは、トランプ政権の対外政策全般と同様に、中南米を米国内政上の問題として位置付ける戦略の一環とされている。

その視点の下で、トランプ、マルコ・ルビオ国務長官(Marco Rubio)、スティーブン・ミラー大統領上級顧問(Stephen Miller)は、ワシントンからの圧力によって中南米における左派勢力の後退を促すことに躊躇を示していない。

その目的は、米国の利益と理念的に一致する右派政権によって構成された地域的な政治地図を形成することにある。

また、この戦略においては、政治的な振り子現象による自然な政権交代を待つことなく、コロンビア、ブラジル、そして最大の対象とされるメキシコが次の焦点として位置付けられている。

1970年代にリチャード・ニクソン大統領(Richard Nixon)が開始した「麻薬との戦争」と、約2世紀前から「アメリカ大陸は米国人のためのもの」と主張してきたモンロー主義(Monroe Doctrine)の再活性化が、ワシントンが再び自らの「裏庭」と見なす地域に対する戦略の理論的基盤となっている。

こうした考え方は、緊張を伴ってきた米国と中南米諸国との関係の現在と将来を理解する上で重要な二つの文書に示されている。

その一つが、米国国家安全保障戦略(National Security Strategy:NSS)である。2025年12月に公表された同戦略は、「西半球における米国の優位性を回復すること」を優先課題として掲げた。なお、ワシントンではアメリカ大陸を一般に「西半球」と呼称している。

さらに、同戦略には「トランプ補論(Trump Corollary)」と呼ばれる付属文書が含まれていた。同文書は、米国の「力と優先事項」の「現実的かつ断固たる回復」を要約した内容である。

同文書では、必要に応じて親米的な候補者への支持、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(Nicolás Maduro)に対する軍事的拘束、あるいはキューバへの圧力強化などを通じて、これらの国々を米国の利益に従わせることも選択肢に含まれるとされている。

もう一つの文書が、2026年国家薬物統制戦略(National Drug Control Strategy 2026:NDCS 2026)である。2026年5月に公表された同文書は、麻薬の生産・流通に関わる国際的な供給網に対して、より強硬な対応方針を示している。一方で、従来と同様に米国内の需要問題への言及は限定的であり、コロンビアとメキシコに重点を置いている。

同文書は、トランプ政権による一連の措置の正当化根拠としても位置付けられている。その措置には、麻薬密輸船とされる船舶の乗組員に対する超法規的殺害作戦が含まれる。これまでに200人以上が殺害されたとされるが、対象者は米国において死刑適用対象ではない犯罪の容疑者である。また、エクアドルで実施されている麻薬カルテル対策の共同作戦や、グアテマラに対して同様の作戦実施を求める圧力も含まれる。さらに、こうした措置を正当化する概念として「麻薬テロリズム(narcoterrorism)」という呼称の普及も進められている。

2026年5月14日、米国沿岸警備隊(United States Coast Guard:USCG)は、コロンビア・カルタヘナ(Cartagena)沖約145キロメートルで3隻の船舶を拿捕し、約2,760.11キログラムのコカインを押収した。

こうした状況のなか、米国と明確に歩調を合わせていないメキシコ、ブラジル、コロンビアの3か国政府は、米国からの圧力の高まりに伴い、対抗姿勢を強めている。

ここ数週間、米国の介入による主権侵害という問題提起が、程度の差はあるものの、3か国に共通する重要な政治課題として浮上している。コロンビアでは大統領選決選投票が控え、ブラジルでは10月に総選挙が予定されている。メキシコでも来年、議会改選のための選挙が実施される予定である。

 

メキシコ―司法の標的となる「麻薬政治」

トランプ政権発足当初から、メキシコは圧力の対象となってきた。

トランプ政権はメキシコの麻薬犯罪組織6団体を外国テロ組織に指定した。これは指定対象数として過去最多であり、単なる象徴的措置を超える意味を持っていた。この決定により、ホワイトハウスは南の隣国であるメキシコ領内への軍事介入の可能性を制度上開くこととなった。

クラウディア・シェインバウム大統領(Claudia Sheinbaum)は通商や移民問題を含む二国間交渉を進めてきた。

一方で、共和党所属上院議員や閣僚、さらにはトランプ大統領もメキシコ政府の協力の有無にかかわらず問題解決に乗り出す意向を示してきた。

シェインバウム大統領は国家主権の限界線を強調し、「共同責任(shared responsibility)」を提示してきた。

4月19日、チワワ州(Chihuahua)の山岳地帯で米国中央情報局(Central Intelligence Agency:CIA)の職員2人が州検察当局と共同作戦に従事していたことが明らかになった。

シェインバウム大統領は抗議を行い、その後米国司法省(Department of Justice:DOJ)がシナロア州(Sinaloa)知事ルベン・ロチャ(Rubén Rocha)と州政府高官9人を起訴した。

メキシコの政治対応

メキシコ政府は米国側に追加証拠の提示を要求し、独自調査を開始した。

一方で米国側は国家再生運動(Movimiento Regeneración Nacional:MORENA)所属州知事への新たな告発準備を進めている。

与党勢力は「外国からの介入」による選挙無効化を可能にする憲法改正案を可決した。

シェインバウム大統領は大規模集会で疑問を提示した。

 

ブラジル―治安と対外圧力の拡大

ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領(Luiz Inácio Lula da Silva)の政権は関税措置の一部を抑制したが、米国の方針転換は継続している。

トランプ政権は首都第一コマンド(Primeiro Comando da Capital:PCC)および赤い司令部(Comando Vermelho:CV)をテロ組織指定する方針を示した。

さらに追加関税や決済システム「Pix」への措置も検討されている。

ブラジル国内ではルーラ大統領とフラヴィオ・ボルソナロ(Flávio Bolsonaro)の対立が続いている。

イラン(Islamic Republic of Iran)はAI生成映像を公開し、自由の女神像(Statue of Liberty)とキリスト像(Christ the Redeemer)の対立映像を拡散した。

 

コロンビア―選挙介入と外交緊張

トランプはコロンビア選挙に直接介入している。デ・ラ・エスプリエジャは支持に謝意を示した。

現大統領グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)は介入を批判し選挙独立性を主張した。

2026年2月のホワイトハウス訪問により関係改善自体は見られている。

 

Pixとはなんなのか

Pix(ピックス)は、ブラジル中央銀行(Banco Central do Brasil:BCB)が開発・運用する即時決済システムであり、2020年に本格的な運用が開始された。リアルタイムでの送金および決済を可能とする国家主導のデジタル決済インフラとして位置付けられている。

Pixの導入目的は複数の政策的意図に基づいている。現金依存の低減、決済手段の利便性向上、小売決済のデジタル化促進、金融市場における競争拡大、そして金融包摂の拡大が主な目的として設定されている。これらの目標に基づき、全国規模で統一された即時決済システムが構築された。

Pixはモバイルアプリケーションおよびインターネットバンキングを通じて利用される。利用者は事前に登録した識別子、いわゆるPixキー、またはQRコードを用いて送金を実行する仕組みである。Pixは個人間送金、企業間決済、政府機関との支払いなど、あらゆる形態の取引に対応しており、最低取引額の制限は設けられていない。

Pixキーとして登録可能な識別子には、納税者番号、メールアドレス、携帯電話番号、UUID、QRコード、企業登録番号などが含まれる。個人は最大5件、企業は最大20件のPixキーを登録することができ、各キーは単一の銀行口座に紐付けられる構造となっている。

技術面では、Pixは即時決済システム(Sistema de Pagamentos Instantâneos:SPI)を基盤として運用されている。取引データは識別子管理システム(Diretório de Identificadores de Contas Transacionais:DICT)によって管理され、暗号化通信および電子署名によって保護されている。さらに、ユーザー認証、取引の追跡可能性、不正利用防止などの仕組みが組み合わされることで、高いセキュリティ水準が維持されている。

Pixは導入後急速に普及し、1億5,000万人以上の個人利用者と1,300万以上の企業が参加している。ブラジル人口の80%以上が利用経験を有し、従来のデビットカードやクレジットカードを上回る取引量に拡大している。また、約7,150万人はPix導入以前に電子送金を利用した経験がなく、金融サービスへのアクセス拡大、いわゆる金融包摂の進展にも寄与している。

今後については、ブラジル中央銀行(BCB)が「Pix Automático」の導入を計画しており、定期的な支払いの自動化が可能になる見通しである。さらに、国際送金機能の拡張も検討されており、将来的にはクロスボーダー決済への対応が想定されている。

また、Pixの運用には民間技術企業も関与している。PismoはAPI提供や識別子管理システム(DICT)との連携機能を通じてPixの技術基盤を支援している。さらにBTG PactualはPixネットワークへの直接接続を提供し、即時決済システム(SPI)へのアクセスを支える役割を担っている。

Pixは、単なる決済手段ではなく、ブラジルの金融インフラ全体を再構築する中核的な制度として機能している。

#DonaldTrump #主権侵害 #NDCS

 

参考資料:

1. El fantasma de la intervención estadounidense recorre México, Brasil y Colombia
2. ¿Qué es Pix? Una guía imprescindible sobre el sistema de pagos instantáneos de Brasil

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