(Photo:Guadalupe Pardo/AP Photo/picture alliance)
ペルー司法当局は2026年6月5日、大統領選挙の決選投票を2日後に控える中、統一ペルー(Juntos por el Perú:JPP)の大統領候補であるロベルト・サンチェス(Roberto Sánchez)について、約6年前の政党資金をめぐる虚偽申告の疑いで公判に付すことを決定した。
サンチェスは右派候補のケイコ・フジモリ(Keiko Fujimori)との決選投票に臨む予定である。司法判断に対しては控訴手続きが進められる見通しであり、決選投票の実施自体には影響しないとされる。
またサンチェスが57歳の国会議員で元閣僚でもあることから、当選した場合にはペルー憲法に基づき在任中の免責特権を有することになる。
公判開始決定と審理の経過
アドルフォ・ファルファン・カルデロン(Adolfo Farfán Calderón)判事は、2日間にわたるオンライン審理の後、サンチェスに対して公判開始決定を言い渡した。
同判事は、サンチェスに対して口頭審理に進む十分な根拠があると認定した。
検察当局は、控訴裁判部の指摘に従い起訴内容を修正したとして、中間審理を省略し、口頭公判への移行を認めるよう求めた。しかしファルファン・カルデロン判事は、起訴内容に変更が生じた以上、刑事訴訟法に基づき新たな審査を実施する必要があると判断し、検察の請求を退けた。
これにより、当該段階は既に終了しているとする検察側の主張は認められなかった。
裁判所は、起訴内容の形式面および実体面の審査に加え、口頭公判で使用される証拠についても審査を行うこととなった。このため、刑事手続は長期化する可能性がある。
検察の求刑と起訴内容
検察は、サンチェスに対して禁錮5年4か月を求刑している。
起訴内容では、サンチェスが政党の献金情報を国家選挙手続局(Oficina Nacional de Procesos Electorales:ONPE)へ虚偽報告した疑いが指摘されている。
6月4日に行われた審理では、地方検察庁副検察官グラディス・ウエテ・グティエレス(Gladys Huete Gutiérrez)が、行政手続における虚偽申告および政党の献金・収入・支出に関する情報の虚偽記載の罪で起訴内容を提出した。
サンチェスは審理開始時にオンラインで出廷し、アドルフォ・ファルファン・カルデロン判事による本人確認を受けた。
検察は、控訴裁判所の指摘に従って起訴内容を修正したとして、中間審理を省略し口頭公判の開始を求めたが、同判事はこれを退けた。
また検察は、法人運営における詐欺罪に関する起訴部分を取り下げた。これは、控訴刑事裁判部(Sala Penal de Apelaciones)が当該罪について訴追不適法の抗弁を認めた決定を履行したためである。
事案の概要
サンチェスには、2018年の年次財務報告に関して国家選挙手続局(ONPE)党資金監督局へ虚偽の情報を提出した疑いがある。さらに検察は、サンチェスが2019年および2020年の財務諸表、ならびに2020年議会選挙の選挙運動における収入・支出について不正確な申告を行ったと主張している。
また、政党事務所として使用された施設の現物寄付について、2万7400ソル相当の寄付が申告されていたものの、監査時に寄付者とされた人物がこれを否定したとされる。
このため検察は、サンチェスに対して禁錮5年4か月の刑を求刑するとともに、統一ペルー(JPP)党首職を含む政治団体の役職に就く資格を永久に剥奪する資格停止処分を求めている。
サンチェスは現時点で司法判断について公式なコメントを出していない。一方で、2026年4月に自身のXへの投稿で、政治的に信用を失墜させるための虚偽が広められてきたと主張している。
また、詐欺容疑の捜査について、証拠不十分により2025年に不起訴判断が下されていたと主張している。
さらにサンチェスは、対立候補であるフジモリが政治マフィアを形成していると非難し、それが2016年以降に8人の大統領が就任した政治的不安定の一因であると主張している。
決選投票に向けて
ペルーでは日曜日に大統領選挙の決選投票が実施され、保守派のケイコ・フジモリと左派のロベルト・サンチェスが対決する。この選挙は、社会的緊張の高まり、犯罪増加、政治制度への信頼低下が進む中で行われるものである。
過去10年間で9人の大統領が交代するなど、ペルー政治は慢性的な不安定状態にあるとされる。今回の決選投票では、政治的分断と制度不信が深まる中、有権者が次期大統領を選択する構図となっている。
第1回投票では35人の候補が乱立する中、ケイコ・フジモリが約17%の得票で決選投票に進出し、ロベルト・サンチェスは約12%を獲得した。両候補とも広範な支持基盤を欠いたまま決選投票に臨む状況である。
専門家の分析
政治学者アロンソ・カルデナス(Alonso Cardenas)は、支配層に対する広範な不信が存在すると指摘し、国会、政府、司法への信頼低下が進行していると述べている。
ドイツ・グローバル地域研究所(German Institute for Global and Area Studies:GIGA)の研究者ヨハンナ・パイパー(Johanna Pieper)もまた、政治への不満と信頼喪失が継続していると分析している。また、首都リマとアンデス高地など周縁地域との社会的分断も指摘されている。
ケイコ・フジモリは、1990年から2000年にかけて統治したアルベルト・フジモリ(Alberto Fujimori)元大統領の娘である。フジモリ政治勢力は長年ペルー政治に影響を与えており、支持者は経済安定化や反政府武装組織センデロ・ルミノソ(Sendero Luminoso)への対処を評価している。一方で批判側は、権威主義的傾向、汚職問題、人権侵害を指摘している。
ケイコ・フジモリは市場経済体制の維持を重視する立場を示している。また、司法への政治的影響拡大や汚職リスクに対する懸念も指摘されている。
ロベルト・サンチェスは知名度が比較的低い候補であり、選挙戦を通じて政策姿勢を変化させている。当初は国家の経済関与拡大や新憲法制定を主張していたが、その後は財政安定性、中央銀行の独立性、民間投資の重視へと姿勢を修正している。
サンチェスが勝利した場合でも、議会は保守勢力およびフジモリ派が多数を占める見通しであり、政権運営は困難になる可能性があるとされる。
現在の最大の争点は政治問題に加え、治安悪化と組織犯罪の拡大である。検察関係者は、恐喝、殺人請負、違法採掘の拡大とともに、医療や教育など公共サービスの低下を指摘している。
外交面では、サンチェスはブラジルやメキシコなど左派政権との協力強化を志向する可能性がある。一方、ケイコ・フジモリは米国やアルゼンチンのハビエル・ミレイ(Javier Milei)、エクアドルのダニエル・ノボア(Daniel Noboa)など保守政権との関係強化を重視するとみられている。
専門家は、いずれの候補が勝利しても短期的な政治安定は保証されず、政党制度の弱さが継続する可能性が高いと分析している。
ケンジ・フジモリ、ケイコもサンチェス氏も支持しない
国民勢力党(Fuerza Popular:FP)の大統領候補ケイコ・フジモリの実弟であるケンジ・フジモリは、大統領選決選投票を前に、統一ペルー(JPP)の大統領候補ロベルト・サンチェスについても、実姉ケイコ・フジモリについても支持しない意向を明らかにした。
元国会議員のケンジ・フジモリは、「私は政治活動をしておらず、どの候補も支持していない。経験してきたすべてを踏まえ、いかなる政治的状況においても再び利用されることはないと決めた」と述べた。
さらにケンジ・フジモリは、「私はペルーにとって最善を望んでいる」とした上で、「Tampoco tan podcast」「Kenji sin GPS」「Detrás del éxito」といった自身の活動を通じて情報発信を行っていると説明し、SNSのフォローを呼びかけた。
2021年との立場の違い
今回の表明は、2021年の決選投票時の対応とは異なるものである。当時ケンジ・フジモリはSNSでケイコ・フジモリへの支持を表明し、選挙運動にも参加していた。投票呼びかけの動画制作なども行い、積極的な支援を示していた。
当時は、対立候補ペドロ・カスティジョがもたらすと考えられた「共産主義的」脅威への対応を理由に支持を正当化していたほか、国民勢力党(FP)会派が関与したとされる「ママニビデオ事件(Mamanivideos)」に関する刑事手続にも言及し、個人的な対立を超える必要性を主張していた。
ママニビデオ事件では、ケンジ・フジモリは第一審で禁錮4年6か月の判決を受けたが、執行は確定まで停止されていた。その後、最高裁判所(Corte Suprema)常設刑事部は判決を支持したものの、収監には至らなかった。さらに控訴手続の進行中にディナ・ボルアルテ(Dina Boluarte)政権が立法令第1585号を公布し、刑法を改正したことで、一定条件下で執行猶予が認められる制度となった。
その後、ケイコ・フジモリとケンジ・フジモリは和解した。
ケイコ・フジモリの選挙活動
ケイコ・フジモリは決選投票前日の選挙活動として、リマ(Lima)市のアテ区(Ate)にあるモヌメンタル競技場(Estadio Monumental “U”)で数千人の支持者を前に演説を行った。
同氏は国民的団結を呼びかけるとともに、政党所属にかかわらず専門家を起用するテクノクラート型政権の構築を約束した。
また、若者の雇用拡大を目的とする教育改革、医薬品アクセスを保障する医療制度強化、中央準備銀行(Banco Central de Reserva)の独立性維持による経済安定などを公約として改めて示した。
ケイコ・フジモリは、政権運営において専門性を持つ人材を重視する姿勢を強調し、閣僚は首都にとどまらず各地域を直接訪問すべきだと述べた。
また、「平和をもたらし、秩序を回復し、信頼を築き、法律と憲法を尊重する政府を望む」と語った。
選挙戦終盤においては、元大統領ペドロ・パブロ・クチンスキ(Pedro Pablo Kuczynski )からの支持や、人民刷新党(Renovación Popular:RP)党首ラファエル・ロペス・アリアガ(Rafael López Aliaga)からの支持表明に謝意を示した。さらに、昨年死去したノーベル文学賞受賞者マリオ・バルガス・ジョサ(Mario Vargas Llosa)の息子アルバロ・バルガス・ジョサ(Álvaro Vargas Llosa)による支持表明にも言及した。
ケイコ・フジモリは「私たちは和解を体現している。彼らはペルー国民を分断しようとしている」と述べている。
ケイコ・フジモリは今回で4回目の大統領選挙決選投票進出となる。
2011年はオジャンタ・ウマラ(Ollanta Humala)に敗北し、得票率は48.6%対51.4%であった。
2016年はペドロ・パブロ・クチンスキ(Pedro Pablo Kuczynski)に僅差で敗北し、49.88%対50.12%であった。
2021年はペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)に敗北し、49.87%対50.13%であった。
過去15年間、「反フジモリ票」は、フジモリの勝利を阻止する目的で左派、中道派、右派の一部を結集させる否定的連合として機能してきたとされる。
2026年のペルーは過去の選挙時とは状況が異なるとされる。治安悪化が国民の最大の懸念事項となり、長期的な政治危機が蓄積している。
フジモリに対する拒否感は相対的に低下しており、英通信社ロイター(Reuters)は不支持率が約40%であり、依然として高水準ではあるものの過去の選挙サイクルより低いと報じている。
極めて断片化した政治環境の中で、フジモリは右派および中道右派の票の取り込みを進めているとされる。
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参考資料:
1. Fiscalía formaliza pedido de más de 5 años de prisión contra Roberto Sánchez por falsear aportes
2. Kenji Fujimori revela que, “después de todo lo que vivió”, no apoyará a Keiko: “Decidí no volver a ser usado”
3. Candidato izquierdista de Perú enviado a juicio dos días antes del balotaje presidencial
4. Fujimori or Sanchez? Peru vote marks 10 years of turmoil


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