(Photo:PRIMICIAS)
エクアドル国民議会(Asamblea Nacional)は6月9日火曜日、地域決済統一補償システム(Sistema Unitario de Compensación Regional de Pagos:SUCRE)を創設した条約の破棄を賛成86票で承認し、エクアドルが同制度から正式に離脱する手続きに入った。地域決済統一補償システム(SUCRE)は2009年にボリバル同盟(Alianza Bolivariana para los Pueblos de Nuestra América:ALBA)加盟国によって創設された域内貿易決済メカニズムであり、米ドルを使わず加盟国間の取引を決済する仕組みとして設計されたもの。エクアドルは2010年にラファエル・コレア(Rafael Correa)政権下で加盟し、ベネズエラ、ボリビア、キューバ、ニカラグアなどとともに運用に参加していた。
今回の離脱手続きはダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領が2026年5月21日に議会へ提出した要請に基づいて開始され、その後、外務関係委員会(Comisión de Relaciones Internacionales)の審査を経て賛成報告が本会議に提出された結果、議会は行政府に条約破棄手続きを進める権限を付与した。議会審議では、地域決済統一補償システム(SUCRE)はすでに本来の域内貿易促進機能を喪失しており、2019年以降はエクアドルの貿易事業者による取引も発生していないため、実質的に運用停止状態にあると評価された。過去には加盟国間で数千件規模の取引決済を担ってきた実績もあったが、制度の透明性や実務上の有用性の欠如が問題視されてもいた。また、制度そのものを個別企業や事件と短絡的に結びつけるべきではないという意見も出されている。
SUCRE-FOGLOCONS事件再調査と国会監査の再始動
離脱承認の前後には、国民議会が賛成86票で監査委員会(Comisión de Fiscalización)に対し、SUCRE-FOGLOCONS事件に関する立法調査の再開と監査報告の更新・拡充を命じる決議を可決している。この更新作業は最大60日以内に実施され、対象は2021年から2023年の立法期間に作成された既存報告であり、既存内容を基礎としつつ新たな情報や文書を追加して分析を拡充することが目的とされている。背景には、地域決済統一補償システム(SUCRE)制度を通じた取引に関する不正疑惑が継続的に指摘されてきた経緯がある。
2021年の監査報告では、地域決済統一補償システム(SUCRE)創設以降2018年までの取引が調査対象とされ、エクアドル国内外の公的・民間主体が関与した資金移動の構造が検証された。同報告は、エクアドル、ベネズエラ、米国の司法当局による刑事捜査対象となり得る行為の可能性を指摘し、輸出取引の実態確認を含む広範な調査を行っている。この中で特に焦点となったのがコロンビア企業フォンド・グローバル・デ・コンストルクシオン(Fondo Global de Construcción:FOGLOCONS)であり、同社はアレックス・サーブ(Alex Saab)およびアルバロ・プリド(Álvaro Pulido)と関連付けられている。
FOGLOCONSの取引構造とエクアドル側の捜査内容
FOGLOCONSは2012年にエクアドル・グアヤス県で設立され、ベネズエラ向け建設資材輸出を名目として活動していたとされるが、エクアドル検察庁(Fiscalía General del Estado:FGE)および税関(Servicio Nacional de Aduana del Ecuador:SENAE)の記録では、申告内容と実態の間に大きな乖離が確認されている。2013年までに165件の輸出申告が行われ、そのうち88件が却下、77件が承認されたが、承認された輸出額は本船渡し条件(Free On Board:FOB)価格で約319万ドルに過ぎない一方、実際には約1億5,990万ドル規模の支払いが行われたとされている。
さらに取引の一部では76件の請求書が重複使用され、住宅用プレハブ建設パネルの価格が1枚170ドルと申告されていたのに対し実際の供給価格は19.95ドルとされるなど、過大評価や虚偽申告の疑いが指摘された。家宅捜索では改ざんされた請求書や白紙の原本が押収され、輸送についても申告重量16,000キログラムに対して実際は2,000キログラムしか存在せず、輸送業者が運搬を拒否した事例も確認されている。また2013年1月から4月の間に合計4,483万ドルがパナマ、米国、ペルーへ送金されていたことも記録されている。
こうした疑惑は当初エクアドル検察庁長官ガロ・チリボガ(Galo Chiriboga)によって指摘され、地域決済統一補償システム(SUCRE)制度そのものが不正取引に利用された可能性が問題視されたほか、エクアドル中央銀行(Banco Central del Ecuador:BCE)も地域決済統一補償システム(SUCRE)経由取引の異常性を警告していたとされる。さらに通常の輸出統計と地域決済統一補償システム(SUCRE)経由の決済額には大きな乖離があり、制度全体での資金移動規模は26億9,751万ドルに達したとされている。
米国司法によるサーブ・プリド捜査と国際的評価の分岐
FOGLOCONSおよびSUCRE関連取引については、アレックス・サーブおよびアルバロ・プリド(Álvaro Pulido)が関与した企業ネットワークとして米国司法省(United States Department of Justice:DOJ)による捜査対象にもなっている。米国側では、2011年から2015年にかけてベネズエラ政府との契約を利用し、存在しない建設資材輸出を装った架空請求によって約3億5,000万ドルを移動させたとされ、タックスヘイブンへの資金流出が指摘されている。
また米国当局は、外貨管理制度(CADIVI)や税関、軍関係者への贈賄なども含めた広範な汚職構造を主張しており、最大20年の懲役刑に相当する重大犯罪として追及している。一方でエクアドル司法では2015年の審理において最終的に不起訴処分が下され、2016年には控訴も退けられ、凍結されていた資金約5,338万ドルも解除・返還された。このため、同一のFOGLOCONS関連案件でありながら、エクアドルと米国で司法判断が大きく分かれる構図となっている。
国会での再評価と地域決済統一補償システム(SUCRE)制度の終焉
今回の国会審議では、地域決済統一補償システム(SUCRE)取引において架空輸出や過大評価輸出が用いられ、決済の正当化に利用されていた可能性が改めて指摘された。またアレックス・サーブに関連する企業ネットワークが資金移動に関与していた疑いも論点となっている。サーブは米国で資金洗浄容疑により起訴・拘束されていたが、2023年12月に米国とベネズエラ間の合意により釈放されている。
この問題は国会監査委員会(Comisión de Fiscalización)を率いていたフェルナンド・ビジャビセンシオ(Fernando Villavicencio)らの過去の報告にも遡り、地域決済統一補償システム(SUCRE)制度については横領、資金洗浄、不正蓄財、関税詐欺などへの利用可能性が指摘されてきた。制度は過去10年以上にわたり加盟国間の貿易決済を担ってきたが、近年は実質的に機能停止状態にあるとされる。
国会では与党・民主行動党(Acción Democrática Nacional:ADN)を含む複数会派が離脱を支持し、市民革命(Revolución Ciudadana)は制度の地域統合機能を理由に反対したが、最終的に条約破棄は賛成多数で承認され、エクアドルは地域決済統一補償システム(SUCRE)制度からの離脱手続きに正式に入った。
Ahora | @FiscalizacionAN instala la sesión con la finalidad de conocer y aprobar el informe sobre el proceso relacionado con el #FONGLOCONS y del denominando Sistema Unitario de Compensación Regional, #Sucre. pic.twitter.com/7L87CSDBbO
— Asamblea Nacional (@AsambleaEcuador) December 10, 2021
#ALBA #FernandoVillavicencio #RafaelCorrea
参考資料:
1. Ecuador inicia su salida del sistema Sucre mientras el congreso reactiva pesquisas sobre la trama de Alex Saab
2. Pleno de la Asamblea Nacional ordena actualizar el informe de fiscalización del caso SUCRE-FOGLOCONS
3. Informe de Fiscalización apunta a Rafael Correa en supuesto esquema de corrupción por el caso Sucre-Foglocons
4. El SUCRE convirtió a Ecuador en una lavandería para el dinero sucio proveniente de Venezuela



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