エクアドル:ベラ・プリマベーラ展示会開催「母親の身体は罰せられた身体である」

(Photo:Radio Pichincha)

アルテ・アクトゥアル・フラクソ(Arte Actual FLACSO)は、展覧会『コーパス・マーテル――母体の感情、触覚、変容(Corpus Mater: Afectos, tacto y transformaciones del cuerpo materno)』を開催している。会場はエクアドル・キトの同館(La Pradera E7-174 y Av. Diego de Almagro)で、2026年5月5日19時に開幕した。

本展はエクアドル人アーティストのベラ・プリマベーラ(Vera Primavera)によるビジュアルアートのプロジェクトであり、母性を理想化された単一のイメージとしてではなく、これまで十分に語られてこなかった側面を含む経験として提示するものである。

『コーパス・マーテル』は、母性を感情的影響、変容、矛盾の領域として扱い、生物学的・象徴的・社会的・政治的次元が交差する場として構成されている。そこでは、母性はケアと喪失、力強さと脆弱性、献身と抵抗といった緊張関係の中にある経験として描かれる。

また母体は、絶え間ない接触の空間として位置づけられ、形成されつつある他者の身体から影響を受けると同時に影響を与える領域であるとされる。同時に、文化的規範や集合的記憶が身体に刻み込まれる場としても捉えられている。

表現手法としては絵画、映像、インスタレーションなどが用いられ、触覚は物理的な範囲を超えて感情的・象徴的次元を結びつけるものとして扱われる。その結果、親密な経験は神話的な性格を帯び、母という存在は絶えず変容する混成的な存在として表現される。

ベラ・プリマベーラはビジュアルアーティストであり文化マネージャーでもあり、現在はメキシコ市に居住し制作活動を行っている。彼女の作品は個人的経験と社会的現実の関係を探求し、アイデンティティや女性の経験を多様なメディアで扱うものである。その実践は、身体表象の伝統的モデルに対する批判的視点として位置づけられている。

またコレクティブ「マテルナス(Maternas)」は、ベラ・プリマベーラとともに活動し、母性に関するロマン化された規範に疑問を投げかけている。エクアドルにおける母親の不安定化、孤立、公的政策の欠如といった状況を指摘し、パフォーマンスや絵画、フェミニズム・アクティビズムを通じて母性を政治的領域として捉える視点を提示している。

本展『コーパス・マーテル』は、こうした問題意識のもと、語られにくい母性の側面を可視化し、その複雑性を芸術表現として提示するものである。

エクアドルでは、母性について語ることはいまだに人々を不快にさせる場合がある。特にその語りが、「良き母」という規範的な像、すなわち献身的で幸福であり、沈黙を守り、壊れることなくすべてを支える存在という型に収まらない場合、その傾向は強いとされる。

こうしたロマン化され覇権的な母性の物語に対抗する動きとして、コレクティブ「マテルナス」は、芸術とアクティビズムを、歴史的に沈黙させられてきた経験を言語化する場へと転換しようとしている。そこには、疲弊、罪悪感、不可視化された労働、そしてケアを美化しながらもそれを支えない社会構造の中で母になることの矛盾が含まれている。

「私たちは母性そのものに不満を言っているのではありません」とクリスティナ・アルバレス(Cristina Álvarez)は説明する。「私たちがしているのは、母親の声を政治化することです」。

アルバレスによれば、母性について語ることは、個別の経験ではなく、それを貫く構造について議論することを意味する。そこには、無償の家事労働、ケア労働、経済的不安定、そして女性化された身体に課される社会的期待が含まれる。

「母性を政治化するとは、私たちに押し付けられてきた覇権的枠組みから逸脱する、不都合な事柄について語り始めることです」と彼女は主張する。

この問題は個人レベルにとどまらない。国立統計国勢調査院(Instituto Nacional de Estadística y Censos:INEC)の統計によれば、エクアドルには460万人の母親が暮らしている。そのうち170万人は世帯主であり、44%はシングルマザーである。さらに200万人以上が就労しており、多くが仕事、育児、家事の間で二重あるいは三重の負担を抱えている。

こうした現実は、母性が単なる私的領域の問題ではなく、社会構造と密接に結びついた政治的課題であることを示している。

 

身体的かつ政治的経験としての母性

別の芸術言語から、この語りにくい感情にイメージを与えているのが、ベラ・プリマベーラの作品『コーパス・マーテル』である。本展は、彼女自身の産後経験から生まれたものである。

「これは自伝的作品です」とベラ・プリマベーラは説明する。「多くの母親が経験しながらも、必ずしも容易には語れない集合的感情の鏡になりたいと思いました」。

彼女の絵画には、不穏な存在、混成的な身体、そして優しさと制御不能さの間を揺れ動く場面が描かれている。それらは産後の経験と、アイデンティティの急激な変容によって貫かれた自画像として提示される。

「母親の身体は、非常に監視され、罰せられる身体です」とベラ・プリマベーラは語る。「社会的に罰せられるため、口にできないことがあるのです」。

彼女はまた、「マトレセンス(matricencia)」という概念に着目している。これは女性が母親になる際に経験する心理的・ホルモン的・感情的変化の過程を指すものである。ベラ・プリマベーラは、この概念にたどり着いたのは、息子の誕生後に自らの深い変化を理解しようとしていた時であったと説明する。

「自分が孤立していくように感じていましたし、もしかすると狂ってしまうのではないかと思っていました。そして、多くの女性たちが同じことを経験しているのに、誰もそれを言葉にしていないことを知ったのです」と彼女は振り返る。

専門家によって思春期の激しさになぞらえられるマトレセンスは、アイデンティティの深い変容を伴う。しかし、それはいまだ十分に議論されていないテーマであり、フェミニズムの場や公衆衛生の領域においても例外ではないとされる。

 

不安定化する芸術と疲弊する母性

クリスティナ・アルバレスによれば、女性アーティストは二重の不可視化に直面している。すなわち、芸術活動に従事していることによる不可視化と、母親であることによる不可視化である。

「国が経済危機や社会危機に直面するとき、最初に打撃を受けるものの一つが芸術と文化です」と彼女は指摘する。「そして、芸術が歴史的にすでに不安定化されているのであれば、それを実践するのが母親である場合はなおさらです」。

アルバレスによれば、母であるアーティストたちは複数の役割を同時に担わなければならない。すなわち、収入を得るために働き、ケアを行い、子どもを育て、そのうえで芸術作品を制作するという状況に置かれている。しかも多くの場合、その制作は公的支援ではなく自己資金によって支えられている。

「母親である女性アーティストの大半は、芸術だけで生計を立てているわけではありません。別の仕事で生活を支え、愛情ゆえに芸術を続けているのです」と彼女は嘆く。

コレクティブ「マテルナス」のメンバーにとって、この問題は個人の努力不足ではなく構造的なものである。公的ケア・ネットワークの欠如、家事労働の不均衡な分担、再生産労働に対する経済的評価の欠如が、依然として女性に集中している。

こうした状況について、ユニセフ(United Nations Children’s Fund:UNICEF)および国連人口基金(United Nations Population Fund:UNFPA)の研究は、特に10代の母性において問題がより深刻化することを警告している。

2023年、エクアドルでは10歳から19歳の10代の母親による出生数が3万6277件記録され、そのうち1621件は10歳から14歳の少女によるものであった。

さらに国連人口基金(UNFPA)によれば、10代での妊娠は感情的・身体的影響にとどまらず、エクアドルに年間約2億7000万ドルの経済的損失をもたらしているとされる。

 

「子どもを育てることは孤独な営みであってはならない」

そうした状況に直面する中で、支援ネットワークは緊急に必要とされるものとして浮かび上がっている。

「子どもたちは、すべての人のものです」とベラ・プリマベーラは語る。「子どもを育てることは、孤独な営みであってはなりません」。

しかし、個人主義と不安定化によって特徴づけられたシステムの中で共同体を築くことは容易ではない。それでもベラ・プリマベーラらは、母性について罪悪感なく語ることのできる集団的空間を維持しようとしている。

クリスティナ・アルバレスはまた、母性をめぐる議論において一部フェミニズム内部に存在する緊張関係にも言及する。中絶の権利のような歴史的闘争における前進を認めつつも、母性とケアに関するより強固な政治的アジェンダは依然として不十分であると彼女は指摘する。

「母性は望まれたものであり、自発的なものでなければなりません」と彼女は強調する。「しかし同時に、女性たちがどのような条件の下で母親になっているのかについても語る必要があります」。

さらに彼女は、多様な母性のあり方が存在するにもかかわらず、それらが依然として不可視化され、あるいは社会的に裁かれている現実を指摘する。

「女性たちが子どもを連れてデモに来ると、なぜ家に置いてこなかったのかと問いただす人がいまだにいます。そこにこそ、ケアが依然として個人化された問題として扱われている現実が表れているのです」と彼女は批判する。

 

政治的行為として母性の芸術を消費すること

この芸術的かつ政治的提案の一環として、コレクティブ「マテルナス」とベラ・プリマベーラは、エクアドル・フラクソ(FLACSO Ecuador)において『コーパス・マーテル』をめぐる対話集会や各種活動を実施する予定である。

招待者にはフアナ・グアルデラス(Juana Guarderas)やモンセラット・アストゥディージョ(Monserrath Astudillo)が含まれ、母性、ユーモア、ケアの経験について対話が行われる。

「芸術を消費してください。そして母性の芸術を消費してください」とクリスティナ・アルバレスは呼びかける。「それもまた、良い母の日を願うことの一部なのです」。

本展のキュレーションはタニア・ナバレテ(Tania Navarrete、エクアドル)が担当し、アーティストはベラ・プリマベーラである。展覧会は2026年6月20日土曜日まで開催され、開館時間は火曜日から土曜日の10時から18時(最終入場17時30分)で、入場は無料である。

本展では教育プログラムも展開され、感情の記録ノートや共同制作によるアーティスト・ブックといった参加型装置を通じて、来場者が母性に結びついた感情や記憶を書き留めることができる構成となっている。

さらにメディエーション企画として、ワークショップ、対話集会、交流会、ラボ形式の活動が行われ、身体、記憶、権力、言語、そして現代における母性の緊張関係といったテーマが扱われる。

主なプログラムは以下の通りである:

5月5日(火)
19時:開幕式

5月7日(木)
15時〜17時:ベラ・プリマベーラとの「身体の記憶とライティング」ワークショップ(対面開催・事前申込制)

5月9日(土)
11時〜13時:ベラ・プリマベーラによる実験的絵画ラボ(対面開催・事前申込制)

5月16日(土)
15時30分〜17時30分:対話集会「不満――母性を政治化する」(対面開催・事前申込制)

5月23日(土)
15時30分〜17時30分:交流会「母性的ドラマトゥルギー――ユーモア、経験、逸脱」(対面開催・事前申込制)

5月30日(土)
15時30分〜17時30分:ラボ「継承された身体――先行する者たちの記憶」(対面開催・事前申込制)

6月6日(土)
15時30分〜17時30分:ライティング装置ワークショップ「語られないこと」(対面開催・事前申込制)

6月13日(土)
15時30分〜17時30分:ワークショップ「母を脱学習する――身体、規範、断絶」(対面開催・事前申込制)

このプログラムは、対話、傾聴、批判的省察の場を生み出すことを目的としており、女性、母親、妊娠している人々、ケア提供者、フェミニスト・コレクティブ、大学コミュニティ、一般来場者など、多様なコミュニティを対象としている。

 

アルテ・アクトゥアル・フラクソ(Arte Actual FLACSO)は、エクアドルの首都キトにある現代美術の展示・文化発信スペースであり、社会科学系の国際的高等教育機関であるフラクソ・エクアドル(Facultad Latinoamericana de Ciencias Sociales Ecuador:FLACSO Ecuador)の文化・芸術プログラムの一部として運営されている施設である。

同スペースは主に現代アートの展覧会、実験的アートプロジェクト、社会問題と結びついた文化企画などを扱い、学術的・社会的視点と芸術実践を接続する場として機能している。特にジェンダー、身体、記憶、政治性といったテーマを扱う企画が多く、地域のアーティストや研究者との協働も積極的に行われている。

フラクソ・エクアドルは1974年に設立され、1957年に創設されたFLACSOシステムとエクアドル政府およびユネスコ(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO)との協定に基づいて設置された教育研究機関であり、エクアドルの高等教育法により認可されている。

フラクソ・システムは現在13の中南米諸国に拠点を有しているが、アンデス諸国においてはエクアドルのみに設置されており、同地域における拠点的な役割を担っている。

 

参考資料:

1. “El cuerpo materno es un cuerpo castigado”: artistas que politizan la maternidad en sus obras
2. Lo que no se dice sobre la maternidad llega a Arte Actual FLACSO en la exposición “Corpus Mater” de Vera Primavera

 

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