エクアドル:「レオン・デ・トロヤ」が浮き彫りにする麻薬との関係

議会監視委員会(Comisión de Fiscalización de la Asamblea)のフェルナンド・ビジャビセンシオ(Fernando Villavicencio)委員長は、ソーシャルネットワークのツイッターを通じて注意喚起を行った。本日2023年2月19日(日)、「レオン・デ・トロヤ(León de Troya)」事件を捜査した警察官に対する脅迫があったからだ。同議員は、「何人もの専門家とその家族の命を危険にさらすなんて、無責任としか言いようがない」と述べている。また、コレア派のパメラ・アギレ(Pamela Aguirre)議員への返答として、レオン・デ・トロヤ事件に関して提出する報告書の中で「アルバニアマフィアや麻薬組織チェレスとつながっている同志が何人かいる」と述べている。

レオン・デ・トロヤ事件とは、デジタルサイト「La Posta」を通じて暴露されたもので、ルベン・チェレス(Rubén Cherres)と麻薬取引で捜査中のアルバニア人ドリタン・ジイカ(Dritan Gjika)、およびチェレスと大統領の義兄ダニロ・カレラ(Danilo Carrera)との関係を疑う警察の捜査に与えられた名前である。このポータルサイトはこの事件をEl Gran Padrino(ゴッド・ファーザー)と呼び、後に検察庁の介入によりEncuentro(出会い)と呼ばれるようになった。

超党派議員からなる国会反腐敗戦線は、政府内の腐敗疑惑と麻薬密売に関連する活動の疑惑に関するマンタの検察庁の捜査資料を通じて報告書を完成させた。2023年2月23日(木)に交付された報告書『Caso Encuentro a León de Troya(レオン・デ・トロヤの事件簿)』によるとギジェルモ・ラッソ大統領は2021年7月7日以降、ルベン・チェレスとダニロ・カレラの関係を知っていた。

 

ビジャビセンシオたちは本麻薬操作が突然打ち切りになったことにも注目している。背景には反麻薬捜査の国家長官ジョバンニ・ポンセ(Giovanni Ponce)将軍の指示があったとされているからだ。ポンセは捜査の中断のみならずチーム全体の解散を告げている。2021年9月1日、ポンセは捜査を指揮したホセ・ルイス・エラソ(José Luis Erazo)中佐に電報を送り、当時の警察本部長タニヤ・バレラ(Tannya Varela)の許可を得て、他の地域への捜査員の異動をも通告している。司法省の声明によると、捜査担当の検事が国内消費目的の不正取引対策国家捜査本部から「捜査過程に寄与する有罪の要素を得ることができなかった」ことによる決定だ。「指揮官の知識と許可により、あなたは他の部隊で勤務するよう指定された」と書かれていた通達を受け取ったエラソと他の13人の制服組はジャーナリスト、クリスチャン・ズリタ(Christian Zurita)によると「この捜査責任者と捜査官はリスクの高い紛争地域に配属され、脅されていた」。

ポンセは過去、ラッソから辞任を要求されている。同時期国立警察大学で起きたマリア・ベレン・ベルナルの暗殺事件を受けてのことだ(詳細はこちら)。フレディ・ゴイス(Freddy Goyes)将軍、警察幹部数名とともにポンセは辞職を要求されたものの、誰一人職から去ることはなかった。その上、ポンセは現在も警察の行政・財務調整官を務めている。その理由を超党派は要求するも政府からの回答はない。数人の制服組の証言によるとポンセを含む数人の将官は、本事件の報告書を利用してポストを維持している。

 

La Postaが公開したのはルベン・チェレスがカレラと会い、閣僚の人事について第三者と話をした際の監視や盗聴記録だ。2021年5月5日、エクアドル沿岸のマンタ市にある倒産した会社(当時)で、アルバニア・マフィアが犯罪組織の運営の隠れ蓑として利用していたとされる「Osaka Fish」でチェレスが目撃されていることもわかっているし、ジャーナリズムポータルサイト『Plan V』も、「エクアドルに10年近く滞在し、グアヤキルから、麻薬密売で告発されたアルバニア人輸入業者と関係のあるバナナ輸出業者など、さまざまな事業を運営してきた」ジイカの話を明らかにしている。同時に公営企業での任命や契約と引き換えに毎月数千ドルを徴収していたと見られる音声も流出している。エクアドル大統領の側近が関与する公的ポストの管理について調査する立法委員会に出席したジャーナリストのアンデルソン・ボスカン(Andersson Boscán)によると、チェレスとカレラが管理する役職は、麻薬や武器の自由な通行を可能にする税関などの重要機関、あるいはナルコが資金洗浄を行う鉱山の管理を行うエネルギー省の役職だった。在エクアドル米国大使マイケル・フィッツパトリック(Michael Fitzpatrick )がエクアドルには「麻薬将軍」がいると言及した後、米国ビザが取り消されたビクトル・アラウス(Víctor Araus)を将軍に昇格させるよう主張したこともわかっている。このように数多くの証拠が存在しているにも関わらず、捜査活動は中止されてた。

 

裁判所が事件の終結を宣言する前に行われた解散と、担当警官の配置換え(他の都市で別ミッションを担当)について議員連盟は「麻薬密売との戦いの象徴的な事件の捜査チームを解体することは、麻薬密売が公共の安全に対する脅威であることを考えると、国家の安全に対する攻撃となる」と述べている。また、元指揮官を「多国籍犯罪組織の存在を知りながら、捜査を深めようとする積極性、勤勉さ、関心」がないとその怠慢さを指摘した。ラッソについてもまた「予備捜査の終了を示唆した国家警察のメンバーや、捜査の終了を命じた検察官自身の行為」について、検察庁が包括的な検証を行うことを要求しなかったと避難している。

La Postaの調査に名前はこれ以外にも元大統領顧問のアパリシオ・カイセド(Aparicio Caicedo)、農業大臣のベルナルド・マンサノ(Bernardo Manzano)、警察官のビクトル・アラウス(Víctor Araus)、大統領の息子のギジェルモ・ラッソ・アルシバル(Guillermo Lasso Alcívar)が登場する。カイセドとラッソ・アルシバルの場合、二人ともこの事件やチェレスとは無関係で、一方のマンサノは、チェレスと会ったことはあるが、大臣として会ったことはないと断言し、アラウスは、2年前にチェレスとカレラと会ったことがあるが、「彼らが何かに関与していることは知らない」と述べている。

https://twitter.com/ComunicacionEc/status/1624949025693659140

 

「2021年7月7日、就任から2ヶ月足らずで、大統領は警察総司令官タニャ・バレラと、『レオン・デ・トロヤ』事件の捜査責任者ホセ・ルイス・エラソを執務室に迎え」本件について話している。これについては2023年1月29日にカロンデレットで行われた会談で、ラッソ大統領自身もビラビセンシオにこのことを告白したと伝えられている。ビジャビセンシオはラッソ大統領はこの犯罪組織と直接の関係はないが、この事件とチェレスとカレラのつながりを知っていたことを示している。

提供された文書には、1万件以上の電話の写真と記録も含まれる。その中でチェレスは、2021年5月に大統領に就任したギジェルモ・ラッソの選挙運動に、自身とその関係者が少なくとも150万米ドルを寄付したという内容のものも含まれる。

国会戦線は報告書を司法省に送り、司法省が「違反と犯罪の可能性の有無、その因果関係、責任者を確定するために対応する予備調査を開始する」ようにする予定である。

 

参考資料:

1. Lasso sabía de la investigación policial sobre narcotráfico que fue archivada
2. Por caso León de Troya, policías fueron amenazados
3. Generales de Policía habrían usado el informe Gran Padrino para no ser desvinculados por el caso Bernal
4. Ecuador: revelaron vínculos entre un capo de la mafia albanesa y un influyente cuñado de Guillermo Lasso

 

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