エクアドル:ギジェルモ・ラッソ政権、選挙敗北で内閣改造

ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)大統領政権は、就任から約21カ月で最悪の政治危機を迎えている。国民投票の敗北と社会・政治部門の反発により、行政府は8つの閣僚ポストを変更せざるを得なくなった。今回の騒動の引き金となったのは国民投票の選挙結果にある。つまり政府主導で進めてきた開発や安全保障等に伴う8つの提案が国民から拒否され、大統領からの国民統合の呼びかけも完全否定されたことに基づく(詳細はこちら)。内閣の変更については、2月9日の木曜日の午後、キトのカロンデット宮殿で発表された。

Secretaría de Comunicaciónのトップだったレオナルド・ラソ(Leonardo Laso)から国民投票敗北の要因として指摘され退任することになった政府大臣フランシスコ・ヒメネス(Francisco Jiménez)と大統領顧問アパリチオ・カイセド(Aparicio Caicedo)は、「自分の使命は果たした」と述べている。今回の辞任は、内閣が大きく変わる中で決まったものだ。

コラム「Quo vadis, Guillermo」で、ラソは大統領に手紙を書き、政治的再軍備を提案している。その第一歩は、凡庸で腐敗さえしている役人を選んだイバン・コレア政権秘書官・参謀、政治的交渉役として「測定不能」のヒメネス、政権を「一掃」した国民投票の首謀者であるカイセド顧問を側近から解任することを求めたと言う。

ラソによれば、コレアの場合、「従順で、従順で、常に “一線に並ぶ “準備ができている大臣や役人を選ぶ(…)からこそ、公共事業も象徴的なプロジェクトも何もない」のだという。一方、ヒメネスについては、「彼は自分の失敗を見たがらず、自分のすることすべてを誇張したがる(中略)彼は大統領の偉大な交渉人にはなれない、この仕事に向かない」と書いている。カイセドは、「協議、質問、カレン・シシェル(Karen Sichel)がスポークスパーソンであることから、あなたが掃除する論理のメンタリストだっただけだ」と述べた。

更にカイセドに地方選挙と同時に住民投票を行うことの「リスクの高さ」を警告したにも関わらず国民投票を実施し、結果失敗したと批判している。「住民投票は常に政府の運営に対する国民投票であり、これだけ低い支持率では否決されるリスクが高い」と述べていた。これに加えて投票が感情的な行為であることを考慮せず、「合理的なキャンペーンを訴えていた」し、「これだけ国民に受け入れられていないのだから、執行部の提案に反対票を投じることは想定内だ」と説明した。

ファビアン・ポソ(Fabián Pozo)の後任には、アルメイダ・ビイジャシス(Jhossuet Almeida Villacís)が大統領府の法務総長として就任し、フランシスコ・ヒメネスに代わっては、エンリー・クーカロン(Henry Cucalón)が新政府大臣に任命された。行政長官イバン・コレア(Iván Correa)に代わって、セバスチャン・コラル(Sebastián Corral)がに就任する。ちなみに変更となる交換はレオナルド・ラソからパフォーマンスの低さから変更すべき政治的要素として名が上がっていた。

ヒメネスは辞任に際し、「政敵が常にクーデターを起こそうと待ち構えている国を率いるのは容易ではない」と述べ、「私の能力、忠誠心、誠実さを最大限に発揮して政府に奉仕しようとした」と付け加えた。2022年3月に政府省に就任したヒメネスは、昨年6月に国を麻痺させた先住民族を含む市民社会の暴動に直面し、対話円卓会議を主導しなければならなかった。就任して1年近くが経過しての退任となった。

カイセドが自身のソーシャルネットワークを通じて公表した手紙にはエクアドル大統領と一緒に仕事ができたことを光栄に思うと言うこと、「ラッソの使命であるサービス、倫理的誠実さ、国の幸福のために働くという強迫観念を目撃する特権を得た」と断言している。

グアヤキル出身の若き政治学者カイセドは、ギジェルモ・ラッソ大統領に最も近い人物の一人である。2018年からカイセドは、2005年にラッソが「自由の原則に基づく公共政策の調査・分析・普及」を目的として創設した組織「エクアドル・リブレ(Ecuador Libre)」のエグゼクティブ・ディレクターを務めている。カイセドは元々名誉職として務めていたが、最終的には「政府顧問の資格を持つ公務員」として任命された。カイセドは辞表の中で、「この地位での使命は尽きた。政府と国にふさわしいエネルギーの注入を可能にするため、辞職する時が来た」と記した。

政府大臣に就任するエンリー・クカロンは新閣僚を代表し「私たちがここにいるのは、常に国が最優先だと考えるからだ 」と語った。キリスト教社会党の元議員は「我々は、新しいステージを開始するために我々を導く人々の声に耳を傾け、行動と変化を追求していくが、野蛮なことを代替案だと考えている人たちの不安定化や悪化への欲望には決して屈しない」と述べた。また、政情不安は混乱と制度の劣化を招くと強調するとともに、政府運営はサービスや仕事を遂行することで市民の生活の質に反映させなければならないと強調している。市民の安全保障については「国家的な大義名分がある」と述べ、この状況は構造的な問題によるものであり、循環的なものではないこと、これが基本的な合意事項であることを繰り返し述べている。また、「軍隊が警察を支援できるように、憲法の一部改正の立法手続きを行うことも合意のテーマのひとつにすべきだ」と述べた。司法権の保障は「司法機能の悪しき要素によって」歪められ、犯罪者の道具にされてきたと言うコメントも出している。また汚職についてはその余地がないこと、市民は免罪符ゼロを要求するだろうことを述べている。

クカロンは、2013年から2017年、2017年から2021年の2期にわたり、グアヤス県の議員を務めた。議員時代には、司法委員会、分権自治委員会の委員を務め、グアヤキル市では、2002年から2012年までハイメ・ネボット政権下で秘書官と次官を務めた経歴を持つ。2021年に議員任期を終えた後、クカロンは政治分析と自由な運動に専念し、政党政治から切り離された。厳しいガバナンスの危機の中で、政府の最重要政務官に就任することになったクカロンはラッソ政権下4人目の政府の大臣となる。

エクアドル大統領が議会を早期に解散し、大統領選挙を前倒しで実施するよう各政界から求められていることについて、レオナルド・ラソは、ワクチン接種キャンペーン後の大統領の支持率が80パーセントだったときも、大統領には「刺し違え(Muerte Cruzada)」を求める機会を持っていた。しかし国民の支持率が20%を切っている現状では、「今さら選挙に勝てるわけがない」としている。また、政府は非常に複雑な状況に陥っていることを、コラムを通じ「大統領が集中治療室で、ある種の “政治的昏睡状態 “にあり、そこから復帰するのは非常に難しいだろう」と語った。

レオナルド・ラソが危機から立ち直るために挙げているアクションは3つあるという。それは、行政が中流階級に対しおこなった増税を減らすこと、不平等と貧困に対抗する象徴的なプロジェクトを立ち上げること、そして政治チームの変更を行うことだ。2月9日に新しい閣僚は就任したものの、それ以外の変化がどのようにして起きるのかがレオナルド・ラソの観点では必要になる。

大統領ギジェルモ・ラッソは新閣僚の宣誓にあたって国民が語るとき、耳を傾けるのが自分の義務であることを述べた。「今日、政府は、路線を一新するだけでなく、民意へのコミットメントを批准するために、必要な変更を加えている」と述べた。また、今回のチーム刷新の目的は、行動、計画、プロジェクトを強化し、必要な調整を行うことにあると説明している。ラッソは、対話を呼びかけたことを振り返り(詳細はこちら)、「国民的理解は一朝一夕には生まれない」とコメントした。だから「そのためには、まず信頼関係を築くことが必要であり、今日私たちが発表しているような明確なサインと行動によって、確実かつ堅固なステップで、日々構築されていくだろう」とヘンリー・クカロンの政治能力を強調した。

民族事務局(Secretaria de Gestión y Desarollo de Pueblos y Nacionalidades)の責任者もグレティ・バルガス(Gretty Vargas)からホルヘ・コルドバ(Jorge Córdova)に変更となっている。

新閣僚は以下の通り:

– Secretario de la Administración Pública:Sebastián Corral
– Ministro de Gobierno:Henry Cucalón
– Secretario Jurídico:Jossueth Almeida
– Secretario de Pueblos:Jorge Córdova Castro
– gobernador de Guayas:Francesco Tabacchi
– gobernadora de Cotopaxi:Tania Vásquez
– gobernador de El Oro:Fernando Apolo
– gobernador de Esmeraldas:Frickson Erazo

参考資料:

1. Ecuador: renunciaron el ministro de Gobierno y el consejero presidencial de Guillermo Lasso que impulsaron el referéndum
2. Ex secretario de comunicación de Guillermo Lasso dijo que el Presidente de Ecuador está en “coma político”

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