“TREN MAYA”の行方は

メキシコのロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador:AMLO)大統領が選挙公約で掲げていた東部における鉄道敷設計画に”TREN MAYA”があった。これは豊かなマヤ文化やカンクンなど主要観光地をめぐるもので、最新式で観光的・文化的色を持つ鉄道だという。まずはそのコンセプトムービーを見てみよう。

 

この列車はチアパス州(Chiapas)、カンペチェ州(Campeche)、タバスコ州(Tabasco)、ユカタン州(Yucatán)、キンタナロー州(Quintana Roo)の5州を結ぶもので、17の駅から構成されるという。パレンケを拠点とし、カリブ海に面したリゾート地カンクンからチチェン・イツァを通り、メリダ、カンペチェを結ぶ北部ルートと、カンクンからプラヤ・デル・カルメンへ南下し、トゥルム、カラクムル遺跡を結ぶ南部ルートに分かれる。

鉄道建設に際しては総工費約1,500億ペソ(約8,100億円、1ペソ=約5.4円)必要で、その費用は民間企業による投資と位置付けた。2018年12月16日、チアパス州パレンケで行われた先住民による儀式を皮切りに建設はスタートした。約1,500キロに及ぶ鉄道は4年の建設期間をもってお目見えする予定だ。

 

以下はEL TREN MAYAのコンセプトだ。

 

TREN MAYAを通じてAMLOは周囲の観光開発とそこでの雇用創出を狙っている。個人的な考えを言えば最高時速160 km/hの旅客列車 (貨物列車は120km/h)は、ゆっくりと周辺の土地を巡る機会を与えてくれるというよりは目的地へ急ぐという人のためのように見えて仕方がない。どこまで地域住民の雇用を生み出せるのか、スキップされる土地の文化を学べるのかは謎だ。いずれにしてもTREN MAYAができれば観光者はバス、飛行機以外の手段としての高速列車を選択肢とすることができる今までバスを主な交通手段としていた東部観光ポイントを効率的にめぐることができるという観点においては人気が出るだろう。

建設は着々と進んでいるものの、資金調達以外にも解決しなければならない問題は多そうだ。自然環境の保護についてはカラクムル生物圏を貫くことで絶滅危惧種として登録されているジャガーをはじめとした動物の生活環境を奪う。また、メキシコにおける水不足は深刻で、この地域の森林を鉄道開発により伐採すれば、なおさらにシビアな将来が見えて来よう。さらに文化的視点から見てもそうだ。この度新たに建設予定地から考古学的な遺物、遺構が見つかった。計画とその分析の甘さは当初から指摘されていたところではある。

AMLOは建設の進捗過程をYouTubeなどを用いながら報告している。
出身地域である南東部の地域開発を強く掲げる彼に、皆の声は届いているのだろうか。
自然も過去の遺産もお金で買うことはできない。お金至上主義ではない解決を目指してほしいものである。

 

気になる人のために書いておくと、建設に当たってはもちろん入札形式で行われている。

 

落札結果は以下の通りだ。

[第1区間] パレンケーエスカルセガ

5社によるコンソーシアムがで金額は155億3,813万ペソで落札。
コンソーシアムを構成するのはポルトガルのモタ‐エンジル(Mota-Engil)のメキシコ現地法人、中国の交通インフラ大手である中国交通建設、メキシコのグルーポ・コシュ(Grupo Cosh)、エジャサ(Eyasa)、ガビル・インへ二エリア( Gavil Ingeniería)。

[第2区間] エスカルセガーカルキニ

185億5,373万ペソで落札。
落札者はグルーポ・カルソ(Grupo Carso)傘下のオペラドーラ・シクサ(Operadora Cicsa)、スペインの大手建設会社であるフォメント・デ・コンストルクシオネス・イ・コントラタス(Fomento de Construcciones y Contratas)。

[第3区間] カルキニーイサマル

落札金額101億9,293万ペソ。
スペインの建設会社であるアスビ(AZVI)、その小会社であるコンストゥルクシオネス・ウラレス(Construcciones Urales)、メキシコ企業のガミ・インヘニエリア・エ・インスタラシオネス(GAMI Ingeniería e Instalaciones)による。

[第4区間] イサマルートゥルム

メキシコ大手ゼネコンのインへ二エロス・シビレス・アソシアドス(Ingenieros Civiles Asociados:ICA)が入札無しで受託。

[第5区間] カンクンートゥルム

入札は今後実施予定。

 

なおメキシコにおける水不足やEL TREN MAYAに関連する環境破壊に関する問題についてはガエル・ガルシア・ベルナルによるショートムービー ガエルが教えるメキシコの気候変動も参照に。そこから派生した個別問題へのはチワワ州の水不足事例コスメルの海洋汚染がダイレクトリンク。

 

参考資料:

1. Cancún, Tulum, Calakmul, Palenque y Chichen Itzá. Tren Maya: así es el ambicioso proyecto que propone AMLO y tiene un costo de miles de millones de dólares para México 
2. Todo lo que tienes que saber sobre el Tren Maya
3. メキシコ、マヤ観光鉄道頓挫も 生物圏破壊の指摘
4. ユカタン半島でマヤ文明の遺構2000以上が見つかる マヤトレインの建設予定地

5 Comments

  • miyachan 06/12/2021 at 03:18

    交通インフラの建設の是非は、外から判断が難しい。ユカタンの人は歓迎しているんだろうか?自分は四国で生まれ育った。が本州との橋が3本も架かっている。遅れた四国にとって必要な橋である。しかし、橋の建設前や建設中は「3本もいらない。環境破壊だ。一本で十分。」などと否定的な意見が多くあったらしい。現在、東北の三陸自動車道も全通が見えてきたが、東北自動車道があるからもう一本の高速道はいらない、という意見が多かった。マヤ鉄道建設では、遺跡も壊さず、ジャガーにも配慮してほしい。チワワ鉄道は山岳で大変だったらしいが、ユカタンは割と平坦で建設し易いかな。ただ、水問題はメキシコ北部が中心で、ここでは関係ないと思う。ただ、1500キロを4年で本当にできるんだろうか?

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    • MARINA 06/16/2021 at 07:31

      インフラ建設についてはもちろん両論ありますね。確かに北部に比べればユカタンのあたりはジャングルも多いですね。NASAの衛生写真を見ていただくとわかると思いますが、乾燥した地帯もあります。ここでは今水不足だからという話ではなく、森林伐採に伴う生態系の乱れや、それをきっかけに起こるだろう副反応について危惧しているますね。また、地下水が汚染しやすいという問題もあります。miyachanはそれこそよくご存知かと思うのですが、地下水が汚染されると、農業にもやはり影響は出るんですよね。

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    • MARINA 06/16/2021 at 07:39

      確かJETROかJICAのメキシコにおける農業に関する報告書があったのですが、どこに行ったのかわからなくなったので、見つけたら共有いたします。

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  • miyachan 06/17/2021 at 02:40

    人口が増えた場合は生活排水が問題になりますね。上水道などの水源と十分離れたところで排水するか処理すれば大丈夫ですが。カンクンのホテル群の排水は、地下注入で大部分済ましている、と聞いたことがあります。将来が心配だ、と専門家が言ってました。排泄物や有機物は、場合によっては肥料になります。江戸の町は、その時代に都市と周辺農村が理想的な循環社会を形成していた。
    ユカタンの農業は、自給的な零細なのが多い。それ以上知りません。

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    • MARINA 06/17/2021 at 08:44

      JICAによるマヤ族居住地域女性支援計画(仮称)に関する報告書に地下水と農業に関する記述がありました。当初の話題からは逸れてしまいますが。資料は「第4章 プロジェクト実施の背景」ですかね。ちなみに第1章〜第3章はと突っ込みたくなりますが、パッと見つけられなかったので。

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