エクアドル:むなしく響くは国民投票後のラッソの呼びかけ

エクアドルで2月5日に行われた投票結果を受けて(こちらを参照)、翌日大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)は改憲に向け自身が提出した8つの提案(詳細はこちら)が国民に受け入れられなかったことを受け選挙における敗北と共に、主要な政治団体に対話の機会を呼びかけた。7分間の大統領メッセージでは誰もがよりよい国作りを望んでいることは確かだと述べている。共和国大統領は国民投票が全てなのではなく、国の運営や司法など、民主主義という観点において協力していかねばならないとも述べ対話を呼びかけた。

 

しかし、大統領の声は各団体から非難を受けている。そもそも政治的合意がない中で、国民投票を用い自らの提案に対する国民の正統性を獲得しようと努めていた。

他の政治家のみならず、主要野党指導者のラファエル・コレア(Rafael Correa)、ハイメ・ネボット(Jaime Nebot)、レオニダス・イサ(Leonidas Iza)は、対話に応じないことを表明している。

最初にこの提案を拒否したのは、市民革命運動のリーダー、ラファエル・コレア前大統領だ。コレアは「国家の大合意には選挙の前倒しが含まれる」とし、4年ごとに選挙が行われるという単純な考えを克服しなければならないと述べた。ベルギーに亡命中の前大統領は、ギジェルモ・ラッソを「偉大な詐欺師であり、国を破壊する共犯者であり、憲法上解任されるべきだ」とした。

 

政党市民革命(Revolución Ciudadana)の代表でグアヤス州の県知事に選ばれたマルセロ・アギニャガ(Marcela Aguiñaga)は、「エクアドル先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)と過去対話をした際の政府の対応を見て「(政府は)彼らを馬鹿にした。我々はそのような政府に身を貸すつもりはない」と述べた。

社会キリスト教党は、「共和国大統領の提案と行動は、常にエクアドル国民の利益に影響を与える結果となるため」、国民大合意に参加しないと発表した。さらに「ラッソの言葉も政府の言葉も信じられないということを永久に証明した」と述べた。

民主左翼(Izquierda Democrática)も「いかなる対話も導くことができない」として、ギジェルモ・ラッソの提案を拒否した。ラッソは「国を深刻な経済・社会危機に陥れている彼の即興と誤った判断の結果を受け止める」べきだと言う。党として投票を通じて示された民意を無視するような提案には参加しないと述べた。

CONAIEの代表レオニダス・イサは、「(対話の)場には戻らない」と述べ、CONAIEの総会を2月18日から開き、住民投票の結果を受けて取るべき行動を決定すると発表した。2月8日の発表によると「国民投票でのNOはエクアドル国民の勝利であり、政府は対話の合意を履行していない」とも述べている。ラッソが国民投票の前に述べた「NO」への投票者は「非愛国的」とする発言を取り上げ、CONAIEも最大の非愛国者がラッソであると述べている。

 

エクアドルのさまざまな立場の議員たちが、ラッソの辞任と、2025年に予定されている大統領選挙の前倒しに賛成している。代表権の早期解散によって選挙を前倒しできる憲法上の権限を「muerte cruzada」とエクアドルでは呼んでいる。大統領による宣言、または議会での投票によって実施させることができる。2022年6月、反政府デモのさなか、議員たちは早期解散を求めようとしたが、解任に必要な票を集めることができなかった。4年の任期のうち最初の3年間に行使することができるこの権利は、行政府と立法府が共に行われる。ギジェルモ・ラッソが解散を宣告した場合、大統領は6ヶ月以内に新しい選挙を要求し、その間、彼は法令に基づいて統治することになる。

 

もともとこの政権は賛同を得づらいという背景もある。2021年5月の新政権発足以来、CREOは各党、各社会団体を裏切ってきた。社会キリスト教(Partido Social Cristiano:PSC)は元々政府とイデオロギーも近くCREOを支持していたものの、連立破棄に伴い支持を撤回している。CONAIEの政治部門である左翼政治団体パチャクティック(Pachakutik)との同盟もグアダルペ・ロリ(Guadalupe Llori)の国民議会議長としての登用(2022年5月31日の解任)を通じて実現されるも、2022年6月に発生した全国ストから分かる通り極めて不安定なものだった。

 

2021年の国会議員選挙における議席数(137議席)の分布は以下の通り
希望のための連合(Unión por la Esperanza:UNES)- 49議席    コレア主義
パチャクティック – 27議席
民主左翼 – 18議席
CREO運動 – 12議席
社会キリスト教 – 18議席

 

なお、今回選挙においてグアヤス代表団のディレクターが解任されている。エクアドル全国選挙評議会(Consejo Nacional Electoral:CNE)によると票数の矛盾があったという。解任されたジョン・ガンボア(John Gamboa)によると政府や選挙管理団体から一刻も早く結果を出すようにと言う圧力があったことから、集計表の処理方法を変更した。解任に伴いCNE会長のディアナ・アタマイト(Diana Atamaint)、副会長のエンリケ・ピタ(Enrique Pita)、評議委員のホセ・カブレラ(José Cabrera)とエセラ・アセロ(Esthela Acero)は、グアヤス代表団本部へ行き、「絶対的な透明性と民意の尊重」を指示したと言う。

開票の遅さについて大統領は当初より批判していた。並行集計センターの存在というものがあり、国民投票の8問すべてで「ノー」が勝利するようそこで操作されているのではないかという疑いに基づく。CNEは並行集計センターの存在を否定し、「精査システム自体のセキュリティ上、他の投票所の報告書を印刷することは不可能であり、さらに、投票所のメンバーの原本に署名があるため、そのデータを修正することも不可能である。」と説明を繰り返していた。その一方、投票結果開示の遅れから一刻も早く完全な結果を得るよう圧力をかけたという。

 

大規模な投票活動であったことからこのような動きが出るも、ラッソが提示した8つの項目に対する民意は「No」であり、こうして2月6日の「国家指導者全体への団結」は実現することなく終わることとなる。

 

参考資料:

1. Moving past the Pro-Correa / Anti-Correa divide in Ecuadorian politics: The indigenous Pachakutik party as a third force
2. El diálogo improbable
3. Ecuador: la oposición rechazó la convocatoria de Guillermo Lasso a un gran acuerdo nacional
4. El CNE de Ecuador removió del cargo al director de la delegación de Guayas por inconsistencias en el conteo de votos

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