エクアドルの最高裁判所は保護された雲霧林での銅と金の採掘計画は違憲であり、自然の権利を侵害しているという判決を下した。
保護された地域とは1988年に設立されたロス・セドロス(Los Cedros)生物保護区のことで、エクアドル北西部に位置する。4,800ha(11,861エーカー)の高地湿潤熱帯林と雲霧林は生物の多様性があり、そのうち4094ha(10,117エーカー)以上が原生林とされている。メガネグマ、絶滅危惧種のカエル、数十種類の希少な蘭、珍しいキノコはもちろん、世界で最も希少な霊長類のひとつとされるヒガシシナガザルなども生息している。この土地の希少性を理解する数字としては以下がある。
- 絶滅の危機に瀕している6種
- 40種の絶滅危惧種
- 脆弱種121種
- 75種の絶滅危惧種
Ecuador: Amenazado por la Minería from Dylan Stirewalt on Vimeo.
この判決、画期的な結末といえよう。というのも、国営鉱山会社であるENAMI社が保護区の3分の2に及ぶ採掘権を保有していたにも関わらず、最高裁が採掘の違憲性について言及したこと、さらに森林内の採掘権や環境・水の搾取許可自体を取り消したことにある。
自然の権利に関する本裁判はロス・セドロス地域コミュニティが自然に代わり提訴しはじまった。2019年6月、インバブラ州裁判所は鉱山会社の操業許可を剥奪したが政府はこの判決を不服として控訴していた。そして2021年12月下級裁判所での勝訴に続き、最高裁でも自然は勝訴した。勝訴の理由はこの土地での鉱物の採掘はこれらを含む生態系への悪影響が出るものであり、エクアドル憲法で規定されている自然権に違反するだからだ。なお、2019年の判決や地域の圧倒的な反対にもかかわらずENAMIと共同で金の探査を行う許可を得ているカナダの鉱山会社Cornerstone Capital Resourcesは、命令に直接反して、適切な許可を得ることなく保護区内で探査を続けている。
エクアドルでは憲法10条で自然そのものが主体であると定められており、また、人や共同体、民族等は自然に代わりその権利を公的機関に請求することができる(71条1項)。この権利は2008年に世界で初めてこの国で制定された。ちなみにエクアドルに続きボリビアにおいても2010年に母なる大地の権利法が制定されている。
今回の判決は、エクアドルにおいて計画されている生態学的に重要な地域での採鉱・採掘プロジェクトにおいて極めて重要な指標を与えることが想定される。
参考資料:
1. Plans to mine Ecuador forest violate rights of nature, court rules
2. Two Biologists Explore the Remote Rainforests of the Ecuadorian Andes to Document Fungi
3. RESERVE LOS CEDROS
4. Saving Los Cedros is ‘case of the century’
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