エクアドル:グアヤキルの刑務所で少なくとも116人が死亡した

エクアドル第二の都市グアヤキルにある刑務所 1号「Centro de Privación de Libertad Número 1」でギャング同士の抗争が起きた。少なくとも受刑者116人が死亡し、80名が負傷している。

この事件を受け大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Alberto Santiago Lasso Mendoza)は、グアヤキルの治安委員会を招集。人権を保証しながらも、リトラル刑務所のコントロールを早急に取り戻すと語った。また、他の刑務所で同様の出来事が繰り返されないように、刑務所の状況評価を実施し、異なる国家機関間での調整プロセスも開始すると述べた。今回の事象を受けラッソは全国の刑務所に60日間の非常事態宣言を出した。

 

グアヤキルは比較的治安が良いとされるエクアドルの中で、例外と言える場所だ。残念な話ではあるが、私がエクアドルと出会った20年前くらいにも既に「治安が良くない場所」として知られていた。ここ最近は他国の麻薬カルテルがこの土地を中継地としたために、犯罪が増え、治安の悪化も顕著となっている(関連記事はこちら)。コロンビアで生成されるコカインの3分の1以上がエクアドルを経由しヨーロッパやアメリカに運ばれているとされ、その量は年間約500トンとも言われる状態だ。

グアヤキルの刑務所におけるギャング同士の抗争事件は初めてではなく、むしろ2021年に入ってから3回目となる。過去2回は2月と7月で、それぞれ79人と22人が死亡した。2月の暴動での死者数は、2020年における刑務所死亡者数を上回るほどだった。なぜこのようなことがグアヤキルで起こっているのか。それについては2月にBBCが3つの要素として以下の通り分析している。

 

1)麻薬密売の増加

レニン・モレノ(Lenín Boltaire Moreno Garcés)前大統領は「闇の勢力が我々の共存を脅かしている」と言う言葉を用いて表現したように、事件には国際組織犯罪や麻薬取引が関係している。暴動の発生は「偶然ではなく、刑務所の外から組織されたもので、国の領土で麻薬の指導や売買に異議を唱える者が内部で仕組んだもの」だった。

2月の抗争ではロス・ピポス(Los Pipos)、ロス・ロボス(Los Lobos)、ロス・チョーン・キラーズ(Los Chone Killers)、ロス・ティグエロネス(Los Tiguerones)、ロス・チョネロス(Los Choneros)がホルヘ・ルイス・ザンブラーノ(Jorge Luis Zambrano)ことラスキーナ(Rasquiña)の後継を争った。ザンブラノは2020年12月、出所直後にショッピングモールで暗殺されていた。

 

2)緊縮財政

麻薬取引に絡み刑務所への入所者が増えている。その一方で、刑務所を十分管理するための監視・モニタリング能力が足りていない。むしろ、国際通貨基金(IMF)との間で合意された緊縮財政計画は、刑務所や犯罪対策へ投じる予算も縮小させた。エクアドルの刑務所を管轄する「自由を奪われた人のための総合ケアサービス(Servicio de Atención Integral para Personas Privadas de Libertad:SNAI)」によると刑務所の警備員の必要数量から70%も不足している状態だ。国際基準では9人に1人の割合での配置推奨されている警備員は、この国では約27人に1人という除外になっている。

 

3)過密状態

上述の通り刑務所への入所者数は日に日に増え、結果過密状態を引き起こしてきた。2020年からのCOVID-19パンデミックはそれへの感染リスクの最小化を目的に、司法当局に未決拘禁の制限を決定させた。それは結果として収容者数を大幅に減少させた。それでもSNAIによると約38,000人いる囚人の33%は過密状態にある。このような状態は人権問題や刑務所の管理不足を引き起こす、と語るのはラテンアメリカおよびカリブ海における組織犯罪を専門とする非営利調査機関「Insight Crime」で、ライバル状態のギャングを同じ施設に入れざるを得ないことが、今回のような衝突に繋がったとも言える。

 

ギャング同士の抗争は極めて悪質で、そこで行われた暴力はSNSを通じてすぐに拡散される。首を切られた死体やバラバラにされた死体に関する画像も然りだ。今回の事件でも新聞エル・コメルシオ(EL COMERCIO)が早速に、体を切断された数人の犠牲者と首を落とされたり、手足が切断されている5人のケースを報じた。

グアヤキルを管轄するゾーン8の警察司令官ファウスト・ブエナニョ(Fausto Buenaño)によると、ギャングたちは刑務所の病棟を占拠しようとしていたようだ。攻撃はドローンを用いたものや、受刑者による銃や手榴弾によるもので、病棟では銃撃音や爆発音が鳴り響いていた。受刑者の中には「殺されてしまうから、警察をすぐに呼んでくれ」と電話したものもいたと言う。病棟には弾痕や手榴弾の影響を受けた多数の遺体が転がっていた。抗争に介入しようとする警察官も攻撃の対象とされ、建物に入ろうとするたびに囚人たちからの標的となっていた。なお犠牲者は刑務所で拘束されていた人たちで、民間人や刑務官ではないと報じられている。近所の人たちが撮影した映像には、囚人たちが屋根の上を歩いたり、刑務所の窓からショットガンで撃ったりしている様子が映っている。現場ではライフル、ピストル、リボルバーなど、さまざまな種類の武器が発見されており、この抗争の鎮圧には警察官400人の動員と、半日近くの時間を要した。

https://twitter.com/GKecuador/status/1443587643376222209

 

今回の事象は数年間の過ちの蓄積による。ラッソ率いる新政府は8月に刑務所の管理を強化するための4カ年計画を立案。そこではモレノが後回しにしてきた刑務所への対策として7500万ドルを割り当てると記載されている。ラッソは現状を鑑み計画の前倒しと、リトラル刑務所については早急なる対策の実施を約束した。

 

参考資料:

1. Ecuador: al menos 116 muertos en una cárcel de Guayaquil en enfrentamientos entre bandas rivales con granadas y decapitaciones
2. SNAI confirma el asesinato de más de 100 presos; presidente Lasso viajó a Guayaquil
3. Amotinamientos en cárceles de Ecuador: 3 claves que explican qué hay detrás de la peor masacre carcelaria de la historia del país
4. Lasso decreta “estado de excepción” en cárceles de Ecuador
5. Un nuevo motín en una cárcel de Ecuador se salda con 30 muertos y medio centenar de heridos
6. El Gobierno invertirá USD 75 millones en el sistema de rehabilitación
7. Con 75 millones de dólares se busca mejorar las cárceles

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