ポソルハにおける凶悪犯罪の急増について(エクアドル)

新聞を読んでいて驚いた。なぜなら私の知るエクアドルとは似ても似つかない姿に変わっていたからだ。確かに2003年の時点でも第二の都市グアヤキルに対しては良いイメージはない。犯罪率も首都のキトより多かったと思うし、そこに関する情報を入手しても、エクアドルのダイバーシティ豊かで楽しいイメージからはかけ離れていた。エクアドル人にも観光客があえて行く場所でもないと教えられていたのには、そこが商業都市であり観光に不向きなこと、治安もあまりよくないというのが理由だった。それでも、行かない理由の中に “麻薬” や “マフィアによる抗争” などといったキーワードが出てくることはなかった。

エクアドルはコカイン栽培と輸出における2強、コロンビアとペルーの中間に位置している。この地理的要因がそもそも麻薬の生産国でもなく、地場のカルテルも存在しなかったエクアドルを麻薬関係国の一味にしてしまった。コロンビア、ペルーにとってエクアドルを攻略することは太平洋ルートとアマゾンルートの開拓を意味し、太平洋ルートはメキシコ、グアテマラ、コスタリカを経由し最終消費国米国への流通を可能にした。またアマゾンルートの利用は世界の麻薬消費国2位のブラジルへの輸送と、さらにそこからアフリカやヨーロッパへの販路拡大を可能にした。

 

そして今日取り上げるのは米国市場への出荷地El Oro(エル・オロ州)、Esmeraldas(エスメラルダス州)、Guayas(グアヤス州)、Manabí(マナビ州)、Santa Elena(サンタ・エレーナ州)など太平洋地帯における治安の悪化についてだ。

人口わずか25,000人のPosorja(ポソルハ)はグアヤキル市(グアヤス州)にある小さな村だ。ここは麻薬の出荷港であるPuerto de Aguas Profundas(プエルト・デ・アグアス・プロフンダス)に近い。それゆえ、メキシコのカルテルの戦略拠点とされメキシコのギャングが蠢いている。今年5月までに麻薬売買に関与した殺人事件がすでに5件発生していたが、今週になるとその暴力はエスカレートし48時間で3人が命を落とした。

5 月 24 日月曜日、Posorjaで 2 人の男性が殺された。一人は未成年のLeonardo Amador Suárez、19 歳だ。自宅から 1 ブロック離れた場所で数発の銃撃を受けて死亡が、殺人の理由は分かっていない。その4 時間後、21 歳のItel Castillo Garcíaも死亡した。彼は犯人が家に向かって投げた手榴弾の爆発を受け、頭を負傷し死に至った。26日にはグアヤキルからやってきたコロンビア人がPosorja 警察の検問所から 2 ブロック離れた場所で、バイクに乗った男に数発撃たれ暗殺された。

Santa Elenaでも5月21日検針請負業者として働くByron Darío Y. Fが体に8発打ち込まれ銃殺された。朝家で仕事の準備をしている際のことだったという。前日もこの土地の28 de Mayo(ベインティオチョ・デ・マヨ) 地区で銃声を聞いた近隣住民の通報も間に合わずFrancisco L. Z.が複数の銃弾により死亡した。この市民には麻薬密売と誘拐の犯罪歴があった。また同日Jaime Suárez45歳もLos Ficus地区でトラック強盗に抵抗し銃殺された。3 月からこの日までに8人がこの土地でも犠牲者になっている。

Lioja(リオハ)州 Puebloviejo(プエブロ・ビエホ)でもまた28日金曜の夜から29日土曜の朝までの間に5 人が死亡した。4名は現場となったチマロン農場で死亡が確認され、残る一人は搬送された病院で死亡した。実はこの数時間前にもこの土地では農夫のJavier William Quinaloa Chisag(ハビエル・ウィリアム・キナロア・チサグ)37歳がオートバイに乗った2人のひったくり犯に抵抗したとして射殺された。彼は作物となるトウモロコシへの利用のために銀行から2000ドルを引き出したばかりだった。

5月30日にはManabíのSanta Anna(サンタ・アナ)にあるAyacucho(アヤクチョ)教区 la comunidad Palo Largo(パロラルゴ コミュニティ)で4人の男性と1人の女性の射殺が確認され、現場では爆発物が爆発した。

 

この状況は明らかにおかしい、異常だ。

Posorjaの事例では逮捕されたヒットマンが3人の暗殺のためにこの地に派遣されグアヤキルからやってきたこと、組織Los Choneros(ロス・チョネロス)のメンバーだろうこと、さらにバイクを運転していたのがこの港近くの住人だったことが分かっている。これは、外部マフィアによる抗争のみならず、この地区の人間もまた犯罪者と化していることを伺わせる。

Posorjaにおける暴力は1か月半ほど激しさを増している。もともと刑務所内で起きていた麻薬犯罪者同士の殺戮は、Jonathan Quintero Cedillo(別名Popeye)がこの土地で輸送中の麻薬を紛失させたとすることがきっかけで、刑務所を飛び出した。彼の所属組織Los Choneros(※)が紛失物の代償としてその命を懸賞金をかけて狙っている。事実銃撃により負傷し入院したPopeyeが24時間前までいたとされる病院のベッドでもまた、別の人物が彼と間違われて殺された。Popeyeが無くしたとされる麻薬が、4月第1週目にエクアドル当局によって押収されたそれと一致しているかは現在のところわかっていないが、いずれにしてもPopeyeの命を狙ったLos Choneros内での抗争、さらには共食いしている間にこの土地を乗っ取ろうとしている他マフィアLos Lagartosが入り込み、三つ巴状態になっている。Posorjaは今極めて危険な状況下にある。警察は100名以上の体制で警戒に当たっている。

 

エクアドルが麻薬売買の中間点として使われることは1980年代からあった。2000年に採用された法定通貨としての米ドルは隣国コロンビアマフィアの資金洗浄を手助けし、コレア元大統領とFARCとの蜜月はこの土地での麻薬取引を加速させた。

UIAN(麻薬捜査班 )も国家警察も犯罪者の摘発に力を入れており、効果を出していることも確かだ。ただ犯罪が多すぎる。5月30日にもまた2トン以上のコカインが、グアヤキル北部のアルボラダ城塞の8階にある家で押収された。2020年ゾーン8(Guayaquil、 Samborondón、Durán)で起きた暴力による死亡事件は318件。そのその大部分は麻薬取引に関連したものだった。

 

Posorjaに最新の設備を持って作られたDP World Posorja(Puerto de Aguas Profundas)は国内で唯一港にスキャナーを備えている。ゆえに麻薬をコンテナに忍ばせ輸送する手段を取られることは稀で、逆に隔離地域に停泊している貨物船に麻薬の入ったジュートバッグを小船に結びつけ運ばせる。このような小型船舶が出入りできるエリアとしてもPosorjaは重宝される。

Posorjaは新設の港を中心に麻薬ビジネスやマフィアのためのものではなく、エクアドルと太平洋地域における最高の港の 1 つとしての地位を確立し、品質、進歩、サービスの手本となることを目指している。また、漁業や観光も盛んである。経済的にもエクアドルを引っ張っていかねばならない立ち位置にある。

そのためにはCOVID-19のみならず、麻薬抗争というパンデミックをもまた早急に沈静化させることは、この国の破綻しそうな財政を立て直す手がかりにもなる。

 

皆が安全・安心にこの地を踏めるよう、この土地の人間が巻き込まれこれ以上ドラッグビジネスに手を染めてしまわぬよう、そして全く関係のない人間で命を落とすなどといった痛ましいことがこれ以上ないよう、国をあげた取り締まりの強化と締め出しを一刻も早く行ってほしいものである。

Guillermo Lasso(ギジェルモ・ラッソ)による新政府は5月24日スタートした。詳細はこちらから。

 

※Los Choneros(別名Choneros)はManabí州Choneにベースを置くエクアドルの犯罪組織。恐喝、殺人、襲撃者、麻薬密売との関係が強くエクアドルの海岸地帯に蔓延っている。警察は彼らをメキシコカルテルからの支援を受けているとしている。

参考資料:

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