(Photo:EFE)
エクアドルでは2026年11月2日、死者の日(Día de Difuntos)を迎え、各地の墓地に大勢の家族が訪れた。人々は花や食べ物を持ち寄り、音楽を奏でながら、亡くなった家族や親しい人々をしのんだ。首都キトでは、伝統的な行事に加え、歴史ある墓地や地下墓所を巡る見学ツアーなども企画された。
死者の日の背景
エクアドルで11月2日に祝われる死者の日は、スペイン語で「Día de Difuntos」と呼ばれる。カトリックの伝統では、亡くなった人々を追悼し、その魂のために祈る日とされる。一方、メキシコの「Día de Muertos」は、亡くなった家族や先祖を迎え、その記憶や人生を大切にする文化的な伝統として知られる。
両者は背景に違いがあるものの、完全に別々の行事ではない。特にメキシコでは、先住民の死者をしのぶ伝統とカトリックの宗教的な習慣が融合し、祭壇や供物、花などを通じて故人を迎える文化が形成されてきた。
エクアドルでも、地域や家庭によって習慣は異なるが、墓地を訪れて故人のために祈り、花や食べ物を供え、家族で過ごす伝統がある。今回も各地の墓地で、食事や音楽を通じて亡くなった人々をしのぶ家族の姿が見られた。
食べ物を囲み、故人と過ごす家族
キト(Quito)のカルデロン墓地(Cementerio de Calderón)を訪れたマリア・モラレス(María Morales、56)は、家族とともに袋いっぱいの食べ物を持参した。モラレスは、亡くなった人々の魂がこの日に戻ってきて、家族と一緒に食事をすると信じられていると説明した。
「亡くなった人々の魂はこの日、ここにいて、私たちと一緒に過ごし、食べ物を口にします。今も皆がここにいるかもしれません」とモラレスは語った。彼女は子どもや孫、ほかの親族とともに、トウモロコシ、ピーナツ、豆、ジャガイモを使った伝統料理を囲んでいた。
オヨカト(Oyocato)の先住民族キチュア(Kichwa)系の家族に生まれたモラレスは、この習慣が世代を超えて受け継がれてきたと話した。伝統衣装を身に着けた母親もそばで、家族全員のために料理を準備していた。母親は毎年、亡くなった家族をしのぶ集まりを欠かしたことがないという。
モラレスは、母親から聞いた祖父の話も紹介した。「母はいつも、祖父が亡くなってから5日間のことを話してくれました。墓に供えた食べ物が天まで届き、亡くなった人々が一年中それを食べられる様子を見たというのです」と語った。
墓地を訪れた多くの家族の中には、55歳のホルヘ・ティトゥアニャ(Jorge Tituaña)の姿もあった。妻や子ども、孫とともに訪れ、11年前に亡くなった息子ビクトル(Víctor)の墓を塗り直していた。息子は生後1年15日で亡くなったという。
「人生で最も幸せな時間でした。今は天国に小さな天使がいて、私たちを見守り、守ってくれています」とティトゥアニャは語った。
さらに、「妻にも話しているのですが、いつか私もこの世を去るときが来たら、息子が両手を広げて待っていてくれるかもしれません」と話した。
墓地に響く音楽、変わりゆく習慣
墓地では、ギターやマンドリン、サクソフォンの音色が、墓や納骨堂を訪れる家族に寄り添っていた。亡くなった人々を思い、感情をあらわにする人々のそばで、音楽家たちが演奏していた。
45歳のマヌエル・フアレス(Manuel Juárez)は、ほかの2人の音楽家とともに墓を巡り、家族のリクエストに応じて伝統音楽を演奏していた。フアレスはオタバロ(Otavalo)出身だという。「亡くなった人が悲しい音楽を好まなかったと話す家族もいます。そのため、明るい曲も演奏します」とフアレスは説明した。
一方、65歳になったばかりのエルサ(Elsa)は、こうした習慣が失われつつあると感じている。「私が子どものころ、墓地には食べ物があふれていました。それぞれの墓で祈り、亡くなった人が生前に好んでいたものを一緒に食べていました」と振り返った。「以前の方が、もっと美しい伝統でした。今は世代が変わってしまいました」と話した。
キトの22カ所の墓地と伝統行事
キトには市街地と郊外を合わせて22カ所の墓地があり、エクアドル国内で最も多い。市内の歴史的な墓地として知られるサンディエゴ墓地(Cementerio de San Diego)やエル・テハル墓地(Cementerio de El Tejar)のほか、郊外にはカルデロン墓地(Cementerio de Calderón)やアランガシ墓地(Cementerio de Alangasí)がある。これらの場所では、現代の習慣と古くからの伝統が交わる行事が続いている。
キトの葬送や埋葬の習慣は、スペイン人の到来とともに始まったものではない。キト首都圏自治体の情報によると、紀元前1500年にはコトコリャオ文化(Cultura Cotocollao)で埋葬の習慣が行われていた。紀元後200年にはフロリダ文化(Cultura Florida)がその慣習を引き継ぎ、故人が埋葬された墓を訪れ、手入れをする習慣も取り入れたという。
カルデロン地区では、死者の日に合わせた催しが開かれた。10月31日から始まった物産フェアでは、伝統菓子のグアグアス・デ・パン(guaguas de pan)や紫色の飲み物コラダ・モラーダ(colada morada)のほか、刺しゅう製品やさまざまな食品が販売された。
11月2日午前7時30分からは「墓地巡り(Recorrido de los Cementerios)」が実施され、カルデロン墓地を出発して、キト北部にある6つの伝統的な共同体を訪れた。
歴史ある墓地や病院の地下墓所を巡る
市内中心部では、サンディエゴ墓地が11月2日と3日の午前7時から午後5時まで開放された。同墓地は1872年ごろに運営を開始し、詩人や芸術家、政治家、元大統領などが眠る場所として知られている。
市立博物館(Museo de la Ciudad)は、連休最終日の11月3日午前10時30分から見学ツアーを企画した。参加者は展示室を巡った後、サンディエゴ墓地につながる旧サン・フアン・デ・ディオス病院(Hospital San Juan de Dios)の地下墓所を訪れ、キトの人々の記憶に残る、さまざまな時代の葬送習慣について学ぶ。参加費は5米ドルと設定されている。
子ども向けには、科学インタラクティブ博物館(Museo Interactivo de Ciencias)が11月2日と3日の正午から、ワークショップ「科学いっぱいのグアグアス(Guaguas con mucha ciencia)」を開催した。子どもたちは、パン菓子グアグア・デ・パンの形をした段ボール製の型を使い、物理学者や化学者、生物学者、人類学者、天文学者など、さまざまな科学者に扮する。
入館料は大人が4米ドル、学生と3歳以上の子どもが2米ドルとなっている。高齢者、障害のある人、3歳未満の子どもは無料となる。
赤道記念碑周辺でも記念行事
ピチンチャ県(Provincia de Pichincha)のサン・アントニオ・デ・ピチンチャ(San Antonio de Pichincha)にあるミタ・デル・ムンド市(Ciudad Mitad del Mundo)でも、亡くなった人々をしのぶ催しが企画された。
11月2日午前10時から、赤道記念碑の周辺で文化行事が開かれた。午後6時には、死者の魂を導く人々の行列「アニメロスの列車(tren de los animeros)」が行われ、仮装コンテストや悪魔のパレードへと続いた。
この日のプログラムは、インバブラ県(Imbabura)のチョタ渓谷(Valle del Chota)を拠点とする音楽グループ、マラブー・ボンバ(Marabú Bomba)の演奏で締めくくられた。入場料は大人が5米ドル、子どもと高齢者が2.50米ドルだった。
参考資料:
1. Día de los Difuntos: música, comida tradicional y flores para compartir en los cementerios de Ecuador
2. Día de los Difuntos | Rituales ancestrales y recorridos por criptas históricas ofrece Quito en lo que resta del feriado



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