[第17回生物多様性条約締約国会議] 2030年の自然保護目標に向け行動強化で合意

(Photo:Mike Muzurakis / IISD / ENB)

第17回生物多様性条約締約国会議(Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity:COP17)が2026年10月31日、アルメニアのエレバン(Yerevan)で閉幕した。参加した182の締約国は、2030年の自然保護目標に向けた取り組みを強化することで合意し、資金調達や有害な補助金の改革、人権に基づくアプローチに関する措置も承認した。一方、各国の取り組みは目標達成に向けた軌道から大きく外れており、自然保護に必要な資金も不足している。自然破壊につながる補助金や資金援助が巨額に上るなか、サミットの運営方法そのものについても改革を求める声が高まっている。

会議は2週間にわたって開かれ、2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組(Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework:GBF)の進捗状況が検証された。同枠組は、2030年までに世界の陸地と海域の30%を保護し、劣化した生態系のほぼ3分の1を回復させることなどを目指している。

しかし、会議直前に公表された国連の進捗評価では、23の目標のうち22が達成に向けて遅れていることが明らかになった。英国についても、達成できる見込みがあるのは23の目標のうち3つにとどまる。生物多様性条約の34年の歴史を通じ、各国政府が設定した目標を一度も達成していないという状況も続く見通しだ。

 

エレバン・パスウェイで行動強化を促す

COP17では、世界的な進捗評価に関する決定が採択され、現在の取り組みが不十分であることを認めたうえで、各国に行動の迅速化と規模の拡大を求めた。この決定は「エレバン・パスウェイ(The Yerevan Pathway)」と呼ばれ、既存の目標達成に向けた指針を示している。

対象には、世界の陸地と海域の30%を保護する目標や、劣化した生態系を回復させる目標が含まれる。また、生物多様性の損失を加速させる少なくとも年間5,000億ドル相当の有害な補助金を改革することも盛り込まれた。

各国は、生物多様性のための資金を今後10年間の終わりまでに年間300億ドルへ増やすという目標も再確認した。会議では、2030年以降の生物多様性資金をどのような仕組みで組織化するかについて合意形成が難航したが、将来の恒久的な資金メカニズムの構造を決めるための基準リストで合意した。

さらに、国際的な生物多様性資金の拠出国の範囲を自主的に拡大することや、現在の資金メカニズムである地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)と世界生物多様性枠組基金(Global Biodiversity Framework Fund:GBFF)を正式に見直すことにも合意した。

世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature:WWF)は、世界的な進捗評価に関する決定の採択を歓迎した。WWFインターナショナルの自然保護担当最高責任者ダウディ・スンバ(Daudi Sumba)は、この評価が各国にさらなる努力を求める強いメッセージになったと述べた。一方、実行に必要な資金を明確に増やせなければ、資金問題は今後も国連の生物多様性サミットにつきまとう最大の課題であり続けると懸念を示した。

スンバは、各国の交渉担当者が帰国後、世界的な進捗評価を具体的かつ専門的な行動へと転換し、食料システムと金融システム全体にわたって、自然の衰退を引き起こす最も有害な部門や活動を変革する必要があると述べた。

John Cannon / Mongabay

 

自然保護資金の不足とCOP17での拠出発表

昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)は、生物多様性の損失を食い止め、2030年までにその傾向を逆転させるため、あらゆる資金源から年間少なくとも2,000億ドルを支出する目標を設定している。しかし、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)の報告書によると、2025年の生物多様性関連資金は合計でも920億ドル以下だったとみられる。グローバルノース(Global North)からグローバルサウス(Global South)への国際資金移転についても、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)は2025年までに年間200億ドル、2030年までに年間300億ドルという目標を設定しているが、2025年の移転額は目標を40億ドル下回った可能性が高い。

こうした不足が続くなか、COP17議長国のアルメニアは、会議を通じて自然保護のために約18億ドルの新たな資金を動員したと発表した。主な拠出発表には、オランダによる熱帯林永久基金(Tropical Forest Forever Facility:TFFF)への5億ドルの拠出表明や、地球環境ファシリティ(GEF)による5億ドルの資金確保が含まれる。地球環境ファシリティ(GEF)の資金のうち約6,000万ドルは、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の実施支援を目的とする世界生物多様性枠組基金(GBFF)に充てられる。

熱帯林永久基金(TFFF)は、2025年の国連気候変動会議で設立が発表された基金で、森林破壊率を低く抑えている熱帯林保有国に報奨を与えることを目的としている。支払いの少なくとも20%を先住民族や地域コミュニティーに配分する規定も設けられている。

このほか、民間の寄付者や団体で構成される種の回復同盟(Species Recovery Alliance)は、COP17の正式開幕に先立つ10月16日、絶滅の危機にある生物種を支援するため、5億ドルを拠出すると表明した。バリュー・ネイチャー基金(Value Nature Fund)は、欧州と北米の森林や農地における再生型の取り組みに3億ユーロ(約3億3,400万ドル)を投資すると発表した。また、ドイツは10月27日、レガシー・ランドスケープ基金(Legacy Landscapes Fund)向けに、公的資金と民間資金を組み合わせた3億ユーロ(約3億3,400万ドル)の資金パッケージを発表した。この資金は、各国が国家生物多様性戦略・行動計画(National Biodiversity Strategies and Action Plans:NBSAPs)を実施するための支援にも一部充てられる。

これらの発表があった一方で、保護区の設置や管理に向けた資金は減少している。NGO「キャンペーン・フォー・ネイチャー(Campaign for Nature)」が主導した分析によると、「30 by 30」目標に貢献する保護区への資金は、2023年の12億ドルから2025年には10億ドルに減少した。

 

自然破壊につながる資金の流れ

自然保護に必要な資金が不足する一方で、自然破壊につながる活動への資金援助は巨額に上る。国連環境計画(United Nations Environment Programme:UNEP)の報告書『2026年版・自然のための資金の現状(State of Finance for Nature 2026)』によれば、自然にマイナスの影響を与える活動への資金援助は年間7兆3,000億ドルに達する。

国際環境NGOグリーンピース・インターナショナル(Greenpeace International)の生物多様性政策専門家アン・ランブレヒツ(An Lambrechts)は、世界経済が自然破壊に30ドルを使うごとに、自然保護に使うのはわずか1ドルだと指摘した。

WWFインターナショナルが発表した『生きている地球レポート(Living Planet Report)』によると、野生の脊椎動物の個体数は1970年から2022年までに平均73%減少した。報告書は、気候変動や農業に加え、自然に配慮しない産業や慣行へ資金が流れていることも要因として挙げている。

昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の目標18は、生物多様性を損なう補助金やその他の資金援助を、年間5,000億ドル削減することを掲げている。持続不可能な漁業や工業型農業などは、植物、動物、菌類の生物相が減少する直接的な要因となっている。しかし、こうした資金の流れを変える取り組みは十分に進んでいない。自然破壊につながる可能性のある税制優遇措置も問題となっており、石油・ガス生産を促進する優遇措置などが例として挙げられている。

ランブレヒツによると、各国が提出した国家生物多様性戦略・行動計画(NBSAPs)のうち、こうした資金の流れを考慮しているのは約4分の1にすぎない。ランブレヒツは、破壊的な事業に対する税制優遇措置や違法な資金の流れも、誤った方向に向けられた補助金と同様に正当化できないと述べ、自然保護の最前線に立つ人々に資金を振り向ける必要があると指摘した。

COP17では補助金改革を促す動きもあった。アルメニアは10月26日、「生物多様性にプラスのインセンティブに関するエレバン・コール(Yerevan Call on Incentives Positive to Biodiversity)」を立ち上げた。また、マテヴォシャンは、条約締約国による協力グループ「目標18の友(Friends of Target 18)」への支持を表明した。同グループは、有害な補助金への対処に向けた協力を促すことを目的としている。

マテヴォシャンは、エレバンでの取り組みが、天然資源の利用方法、商品の生産と消費のあり方、公的・民間資金の配分先に影響を及ぼすことができると述べた。

アルメニアは、生物多様性への影響を調べるため、公的資金を受けている24の事業も分析した。国連開発計画(United Nations Development Programme:UNDP)のBIOFINのウェブサイトによると、この分析から自然にとってより望ましい成果を目指す提言が導き出された。

野生生物保全協会(Wildlife Conservation Society)の国際政策担当ディレクター、アルフレッド・デジェミス(Alfred DeGemmis)は、補助金改革の実施には現実的な政治的課題があると述べた。一方、アルメニアの指導力によって、補助金問題が条約交渉の主要議題として浮上したとも指摘した。デジェミスは、補助金問題はもはや誰も口にできない、あるいは複雑すぎて取り組めない問題ではなく、解決策を見いだすべき課題として認識されていると述べた。

WWFインターナショナルの多国間政策担当グローバルディレクター、グイド・ブロークホーフェン(Guido Broekhoven)は、自然破壊への補助金を出し続けながら、自然保護のための資金を探すことはできないと指摘した。有害な補助金に実効性のある対策を講じれば、ほかの目標にも連鎖的な好影響が及ぶとの見方を示した。

 

カリ基金は拠出わずか1万ドル強

資金調達をめぐるもう一つの課題が、遺伝資源に由来するデジタル配列情報(Digital Sequence Information:DSI)を利用する企業から資金を集めるカリ基金(Cali Fund)である。

この基金は、製薬品、洗剤、化粧品などの製品開発でデジタル配列情報(DSI)を利用して利益を得る企業から、年間少なくとも10億ドルを集めることを目指している。集めた資金の少なくとも50%を先住民族や地域コミュニティーに充てることになっている。

しかし、基金の運用方法をめぐる交渉は停滞している。一部の国は、基金を本格稼働させる前に1億5,000万~2億ドルの最低基準額に達する必要があると提案した。COP17では企業の参考拠出率を再確認し、支払いの重複を避けるための暫定的な証明書を発行することに合意したものの、重要な運用上の決定は先送りされた。基金の見直しは2028年のCOP18で行われる予定だ。

COP17閉幕時点で、カリ基金に集まった資金はわずか1万ドル強にとどまった。年間10億ドルという目標には遠く及ばず、基金の運用を具体化するための会期間中の協議が重要となる。

WWFインド(WWF-India)のガバナンス・法律・政策担当ディレクター、ヴィシャイシュ・ウッパル(Vishaish Uppal)は、1992年に生物多様性条約が採択された当初から、資源提供国や地域社会が生物多様性から得られる利益を公正かつ衡平に分配されることは、主要な柱の一つだったと指摘した。そのうえで、自然から利益を得る企業が、自然を守る先住民族や地域コミュニティーと利益を分かち合う状況は、いまだ十分に実現していないと述べた。

 

資金拠出国の範囲や負担をめぐる対立

生物多様性資金を誰が負担するかについても、各国の意見は分かれた。欧州諸国は、国際的な資金拠出国のリストに新たな国を加えることを求めている。中国や湾岸諸国の一部は、数十年にわたって急速な経済発展を遂げたにもかかわらず、国連の枠組みでは依然として発展途上国に分類されているためだ。

しかし、エレバンで採択された最終合意では、この問題は未解決のまま残された。富裕国の間でも、どの国がより多くの資金を拠出するかをめぐって意見が分かれた。

 

人権に基づく取り組みと先住民族の参加

COP17では、資金問題だけでなく、生物多様性保全における人権や先住民族、地域コミュニティーの参加についても合意があった。

交渉に先立って国連が公表した世界報告書は、各国の生物多様性保全活動において、人権に基づくアプローチや、権利を有する人々の実質的な参加が大きく不足していることを示した。

これを受け、WWFは、生物多様性条約第8条(j)に関する補助機関の運営体制について、締約国が妥協点を見いだし、合意したことを歓迎した。この機関は、条約の活動に先住民族や地域コミュニティーが全面的かつ効果的に参加できるようにするため、COP16で設置が決まったものだ。

COP17議長国は、本会議場外でも、気候変動、生物多様性、土地劣化に関する3つのリオ条約の取り組みを効率化する「リオ条約間の相乗効果に関する共同宣言(Joint Declaration on Rio Synergies)」などを発表した。また、有害な補助金の改革を加速させることを目指す国々のグループも立ち上げられた。

さらに、COP17では環境相と財務相による初の対話も開催された。WWFは、主要な経済部門全体にわたる変革に向け、こうした対話が今後も続くことを期待している。

WWFインターナショナルの多国間政策担当グローバルディレクター、ブロークホーフェンは、生物多様性は野生生物だけの問題ではなく、人々の生活と経済を支える生命維持システムに関わる問題だと述べた。自然は食料や水、作物の受粉、世界の食料安全保障を支える健全な土壌をもたらしていると説明し、各国政府が国内でさまざまな圧力に直面するなか、エレバンで自然保護に向けた共同の取り組みに合意したことに言及した。

 

全会一致の交渉方式に改革を求める声

資金不足や目標の未達が続くなか、国連の生物多様性サミットの運営方法を抜本的に見直すべきだという声も強まった。

長年にわたって自然保護に取り組んできたパナマの環境相フアン・カルロス・ナバロ(Juan Carlos Navarro)は、現在のCOPのプロセスは「失敗するように設計されている」と批判した。全会一致を原則とする意思決定方式では、たった一人の反対者によって合意が妨げられるとして、多数決方式への変更を主張した。

ナバロは今週初め、AFP通信に対し、COPでの議論の多くは「まったくのでたらめ」で、耳障りのよい演説に終始していると述べた。地球上のすべての国があらゆる議題で合意することは現実的ではなく、現在の制度はその問題を解決できていないと指摘した。

また、気候変動、生物多様性、プラスチックなどの問題を別々の会議で扱うのではなく、国連は毎年一つの環境COPを開催すべきだとも提案した。ナバロは、各国が何もせずにいる間にも自然環境の危機は進んでいるとして、現在の状況に強い不満を示した。

こうした改革論は、2024年にアゼルバイジャンで開催された気候変動COP29の際に、著名な政策専門家らが示した提言とも重なる。当時、専門家らはサミットが「もはや目的に適合していない」と述べ、合意形成だけでなく実施に重点を移す必要があると訴えていた。

一方、英国の自然担当特使ルース・デイビス(Ruth Davis)は、会合が非常に苛立たしいものになることは認めながらも、世界各地で膨大な量の施策が実施されていると述べた。各国政府が主体となる制度を、人々に成果をもたらすものにしなければ、制度への信頼が失われると指摘した。また、特に政策の影響を直接受ける国々の市民にとって制度が機能するよう、協力者や同盟者を見つけられるとの考えを示した。

国連環境計画(UNEP)事務局長のインガー・アンダーセン(Inger Andersen)も、環境政策の議題が複雑化し、会合が増えすぎていると指摘した。野生生物の違法取引、渡りをする種、生物多様性、湿地など、それぞれの条約は必要な時期に設けられたものだと説明した一方、条約間の事業の重複など、取り組みやすい問題から見直すべきだとの考えを示した。現在はあまりにも多くの条約が存在しており、そのあり方を考え直す余地があると述べた。

 

2028年のCOP18はエクアドルで開催

COP17では、2028年に開催される次回の生物多様性サミット、COP18の開催地も決まった。参加国による投票の結果、エクアドルの首都キト(Quito)が55票を獲得し、53票のパナマシティ(Panama City)を僅差で上回った。

生物多様性COPは2年ごとに開催され、自然を保護し、生物多様性の損失を食い止めるための世界的な目標について交渉する。これは毎年開催される国連気候変動サミットとは別の会議である。次回の気候変動サミットは、2026年11月にトルコで開催される予定だ。

2028年のCOP18では、カリ基金の運用状況や生物多様性資金の仕組みが改めて検討される予定だ。

#生物多様性条約

 

参考資料:

1. WWF: Countries agree to scale action on 2030 nature targets at COP17, but finance issues continue to haunt implementation
2. ‘Bunch of baloney’: calls grow for Cop summit reforms as countries on track to fail nature targets
3. Leaders grapple with finance and harmful subsidies at UN’s COP17 biodiversity conference

 

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