以下は、イスラエルによるパレスチナ人への占領や人権侵害などに反対し、ボイコット、投資引き揚げ、制裁を通じてイスラエルに圧力をかける国際的な市民運動を調整するBDSナショナル委員会(BDS National Committee)と、大学教員であり、グローバル・スタディーズの博士課程に在籍するリリアナ・オロペサ・アコスタ(Liliana Oropeza Acosta)による記事の日本語訳である。
パレスチナ人に対するジェノサイドとアパルトヘイトを容認する一票
BDS National Committee
イスラエルの選挙では、パレスチナ人に対するジェノサイドと、現在も続くナクバ(Nakba)を容認する勢力に票が投じられた。パレスチナ人の正義、難民の帰還、賠償、解放を求める闘いに連帯するため、私たちはイスラエルによるジェノサイドと、植民地主義的な入植者アパルトヘイト体制を国際社会でさらに孤立させるよう呼びかける。そのためには、世界規模でBDS運動への取り組みを強化する必要がある。
ジェノサイドが続いて3年以上が経過した。イスラエルの著名な人権活動家が「ガザにおけるホロコースト」と表現した状況の中で、イスラエルは今回の選挙でも、パレスチナ人に対するジェノサイドを継続する姿勢を示した。
イスラエルのシオニスト政党は、社会、経済、思想などの問題では大きく意見が分かれている。入植者植民地をどのように統治するか、司法にどの程度の独立性を認めるか、超正統派ユダヤ教徒にも兵役や納税の義務を課すかなどをめぐって対立している。しかし、植民地支配による抑圧体制の根幹については、ほぼ全面的に一致している。
イスラエルのシオニスト野党勢力の中で、最も右寄りの立場にある人物の一人が、ガディ・アイゼンコット(Gadi Eisenkot)将軍である。アイゼンコットは、戦争犯罪や人道に対する罪に関与したとされる数々の事例を抱えている。ガザでジェノサイドが進行していた時期には、ネタニヤフ政権に8カ月間加わっていた。また、パレスチナ国家の樹立に反対し、イスラエル軍による「ダヒヤ・ドクトリン(Dahiya Doctrine)」を考案した人物でもある。この軍事戦略は、民間人に対する大規模な武力行使を想定したものだ。
一方、同じ野党勢力の中で最も左寄りとされるのが、「民主党」の党首であるヤイル・ゴラン(Yair Golan)将軍だ。ゴランもまた、ガザのパレスチナ人に対する深刻なジェノサイド犯罪の一部を擁護してきた。
2023年10月13日のインタビューで、ゴランは次のように述べている。
「まず、ガザに向かう電力供給をすべて止めよう。今回の戦闘では、人道支援の取り組みを一切認めるべきではないと考えている。彼らにはこう伝えるべきだ。『聞いてほしい。拘束されている人々が解放されるまでは、こちらとしては、あなたたちが飢えても構わない。それは完全に正当なことだ』」
イスラエルのシオニスト野党勢力の間に、ジェノサイドを容認する共通認識があることを受け、イスラエル最大の人権団体であるベツェレム(B’Tselem)の代表は、次のように述べた。
「イスラエルはガザでホロコーストを引き起こしている。これを、現在のファシスト的な指導者たちだけの意思として片付けることはできない。私たちが目撃しているのは、イスラエル社会がナチス化する過程の最終段階である」
選挙の前日、国連(United Nations:UN)の独立国際調査委員会は報告書を公表した。同報告書は、イスラエルがパレスチナ人に対するジェノサイドや絶滅、その他の戦争犯罪および人道に対する罪を引き続き犯していると指摘した。また、停戦後の2026年にも、こうした犯罪が続いているとした。
しかし、予想されたとおり、イスラエルのメディアや有権者、さらに植民地主義的な西側諸国のメディアや政府は、この報告書をほとんど取り上げなかった。
世界各地でイスラエルへの支持がかつてないほど低下する中、西側諸国の政府やメディアがイスラエルの選挙の細部にまで強い関心を示していることには、明確な意図がある。ジェノサイドを容認する政治的な合意を覆い隠し、イスラエルのアパルトヘイト体制を正常化し、問題を抱えながらも「民主主義国家」であるかのように再び見せようとしているのだ。
さらに、ジェノサイドや計画的な絶滅という問題の責任をネタニヤフ(Netanyahu)に集中させ、彼の政治生命が終われば、これらの問題も解決したかのように扱おうとしている。
実際、西側諸国はメディア、シンクタンク、学術・文化機関の関係者などを通じて、世界の人々の関心をジェノサイドからそらそうとしている。とりわけ、ガザで数十万人のパレスチナ人が直面している深刻な飢餓、ヨルダン川西岸地区で激化する民族浄化、レバノンでのジェノサイド的な暴力、さらにシリアからイランに至る地域の人々に対する侵略戦争から目をそらさせようとしている。
また、イスラエルによるジェノサイドの蓋然性や、違法な占領とアパルトヘイトに関する国際司法裁判所(International Court of Justice:ICJ)の判断を、人々に忘れさせようとしている。こうした判断は、イスラエルの違法な占領とアパルトヘイトを可能にしている軍事、貿易、外交、学術、文化など、あらゆる関係を断つ法的義務にも関係している。
今回の選挙では、アパルトヘイト体制下のイスラエルで二級市民として扱われているパレスチナ系住民を代表する政党が、イスラエル議会で過去に例のない数の議席を獲得した。
高い投票率は、パレスチナ人が自らの存在を守ろうとしていることを示している。彼らは、土地や仕事、共同体から追い出そうとするイスラエルの植民地主義的な動きが強まる中でも、あらゆる困難に抗して抵抗を続けている。
しかし、彼らの多くは、政権を担う連立勢力がどれほどファシズム的であるかにかかわらず、アパルトヘイト体制が自分たちを支配し続けると理解している。イスラエルのシオニストによる植民地主義的な入植者体制は、1948年にパレスチナ人の故郷を計画的に破壊して成立して以来、一貫してユダヤ人至上主義と抑圧を基盤としてきた。
先住パレスチナ人にとって、置かれた状況によって本質的な違いはない。アパルトヘイト体制下のイスラエルで二級市民として暮らしていても、違法な占領下に置かれ、それに抵抗していても、あるいは帰還する権利を奪われて国外で暮らしていても、同じ抑圧の構造に直面している。入植者植民地の表面的な姿が変わっても、ジェノサイドを伴う植民地支配の中核的な権力構造は維持されるからだ。
私たちが取るべき対応は、世界のどの場所においても、ジェノサイドを行うイスラエルを正常な国家として扱うことを認めないことである。そして、かつてアパルトヘイト体制下の南アフリカに対して行われたように、イスラエルの植民地主義的なアパルトヘイト体制を国際社会で孤立させなければならない。
そのために、ボイコット、投資引き揚げ、制裁を意味するBDS(Boycott, Divestment and Sanctions)運動への取り組みを強化する必要がある。具体的には、次の措置が求められる。
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イスラエルを国際連合(UN)や、国際サッカー連盟(Fédération Internationale de Football Association:FIFA)、国際オリンピック委員会(International Olympic Committee:IOC)、欧州サッカー連盟(Union of European Football Associations:UEFA)、ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)、学術・専門家団体、欧州の研究助成プログラム「ホライズン(Horizon)」など、地域的・国際的なあらゆる組織や場から排除する。また、南米サッカー連盟(Confederación Sudamericana de Fútbol:CONMEBOL)との協定を破棄する。
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軍事分野とエネルギー分野に対する包括的な禁輸措置を実施する。
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イスラエルによる違法な占領とアパルトヘイトを支えているすべての自由貿易協定を終了させ、貿易、外交、金融、学術、文化など、あらゆる関係を断つ。これは国際司法裁判所が求めている措置である。
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イスラエルの銀行や企業とのすべての取引を停止する。
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可能な地域ではボイコットを実施し、ジェノサイド、アパルトヘイト、またはイスラエルによる違法な占領に加担する企業を、公共調達や投資の対象から排除するよう求める。
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イスラエルに加え、共犯関係にある機関や、イスラエルの「文化大使」として活動する個人を対象に、学術、文化、スポーツ分野でのボイコットを強化する。
世界中の何百万人もの人々が繰り返し訴えてきたように、パレスチナの解放は私たち全員の解放につながる。イスラエルの抑圧体制は、パレスチナ人や中東地域の人々だけでなく、人類全体にとっての脅威である。
イスラエルは世界各地のファシスト政権と協力し、選挙操作や監視技術を通じて、さまざまな地域で民主主義の衰退を加速させている。イスラエルによるジェノサイドが世界に生中継される中、それに勢いづいた帝国主義勢力、とりわけ米国は、もはや隠そうともせず、19世紀のような露骨な植民地征服と資産の略奪を再び進めている。
軍事化と戦争への過剰な支出は、環境破壊をさらに深刻化させる。また、福祉国家、社会保障、医療、教育、民主主義制度、国際法、国連を急速に弱体化させる。その負担は、とりわけ社会的に脆弱な立場にある人々に押し付けられる。
だからこそ、イスラエルによるジェノサイドを止め、アパルトヘイト体制を解体し、イスラエルの体制全体と、それを支える西側諸国に責任を取らせることが重要である。イスラエルとその西側の協力者が主導する「力こそ正義」という時代に抵抗するため、この課題を闘いの中心に据えなければならない。
より良い世界は実現できる。そして今日、その実現の中心にはパレスチナの解放がある。
ラテンアメリカ・カリブ諸国は、現在も続くジェノサイドにどのような立場を取っているのか?
リリアナ・オロペサ・アコスタ
イスラエルによるガザ地区への攻撃が激化してから3年余りが経過し、ブラジルでは決選投票が目前に迫っている。こうした状況の中で、パレスチナ問題に対するラテンアメリカ・カリブ諸国の立場を整理することには大きな意味がある。というのも、この地域で現在も続くジェノサイドを明確に「ジェノサイド」と呼んでいる政府は、ブラジル政府を含め、ごくわずかだからだ。10月25日に予定されている選挙では、この問題も問われている。
9月末には、国際連合総会のハイレベル週間が開催された。各国首脳らが演説するこの場は、近年、聴衆も信頼性も失いつつあるとはいえ、各国政府の立場を把握するための重要な指標となる。
国連は、主要な機能を担う仕組みが弱体化し、権威を失いつつある状況で、この会合を迎えた。その原因は、世界的な対立の深まりだけでは説明できない。国際平和と安全の維持を担う国連安全保障理事会(United Nations Security Council:UNSC)は、イスラエルによるガザ攻撃を止めようとする相次ぐ決議案に対し、米国が拒否権を繰り返し行使しているため、数カ月にわたって機能不全に陥っている。
さらに、次期事務総長の選出をめぐる不透明感も加わっている。アントニオ・グテーレス(António Guterres)事務総長の任期は今年で終了するが、次の事務総長に求められる人物像についてさえ、数十年ぶりに合意が形成されていない。
ラテンアメリカ諸国は、次期事務総長には女性で、グローバルサウス出身の人物を選ぶべきだと主張している。これは、ラテンアメリカが国際法を歴史的に擁護してきたにもかかわらず、国連の意思決定に大きな影響力を持つ役職から遠ざけられてきた権力構造を改めようとする試みである。
有力候補の一人だったミシェル・バチェレ(Michelle Bachelet)は、母国政府の支持を得られなかったことなどを理由に、立候補を断念せざるを得なかった。
こうした状況の中、ラテンアメリカ・カリブ地域は足並みがそろわず、地域とは無関係な安全保障政策に同調し、パレスチナで続くジェノサイドに対して独自の立場を示せないまま、国連の会合に臨んだ。
沈黙を予感させた国連総会の投票
9月17日、国連総会は決議案A/81/L.2を採択した。この決議は、パレスチナ国(Estado de Palestina)がビデオ会議を通じてハイレベル討論に参加することを認めるものだった。
開催国である米国は、パレスチナ代表団に対し、2年連続でビザの発給を拒否していた。しかし、米国は1947年の国連本部協定(Agreement regarding the Headquarters of the United Nations)に基づき、各国代表が国連に参加することを妨げない義務を負っている。
今回の要請は、ごく基本的なものだった。国家元首が画面越しに演説できるようにするという、実質的には手続き上の措置にすぎなかった。
採決結果は、賛成152、反対3、棄権4だった。反対したのは米国、イスラエル、パラグアイである。棄権した4カ国は、すべてラテンアメリカ諸国だった。コロンビア、ホンジュラス、パナマ、ペルーである。アルゼンチンとボリビアは投票に参加しなかった。外交の世界では、投票しないこともまた一つの立場を示す。
ペルーとコロンビアでは数カ月前に新政権が発足し、両国ともワシントンとの関係強化を目指している。棄権すれば、反対票を投じることによる政治的な負担を避けながら、賛成票を投じる必要もなくなる。
つまり、この決議を支持しなかった7カ国のうち、5カ国がラテンアメリカ諸国だった。
さらに注目すべき点がある。パナマとコロンビアは、2026年と2027年まで、それぞれラテンアメリカ・カリブ地域に割り当てられた国連安全保障理事会の非常任理事国の議席を占めている。それにもかかわらず、両国は今回、態度を明確にしなかった。
「アメリカ大陸の盾」と、その象徴的な集合写真
近年、「アメリカ大陸の盾(Shield of the Americas)」ほど、ラテンアメリカ諸国がまとまっている姿を見せたことはなかった。この枠組みは、今年3月にワシントンが主導して立ち上げた連合である。
その際、ボリビア大統領は、国際コンサルタントのフェルナンド・セリメド(Fernando Cerimedo)を伴って会合に出席した。セリメドは最近、その活動をめぐって大きな注目を集めていた人物である。
「アメリカ大陸の盾」は、国連総会の一般討論が始まったのと同じ火曜日、ニューヨーク(New York)でマルコ・ルビオ(Marco Rubio)米国務長官の呼びかけによって再び会合を開いた。
米国を含む15カ国の政府が共同声明に署名した。参加国は、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、ホンジュラス、パナマ、パラグアイ、ペルー、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、そして米国である。チリは正式加盟を決め、コロンビアとペルーは政権交代後に加わった。
「アメリカ大陸の盾」の登場は、この地域の政策課題が安全保障を中心に再編されていることを最も明確に示している。
米国は、外交面で影響力が後退していた数年間を経て、ラテンアメリカでの存在感を取り戻そうとしている。その際、安全保障という言葉を使うことで、立場の異なる政府を一つの枠組みにまとめている。脅威の定義が曖昧であるため、軍事介入や軍事協力、情報機関同士の連携などを、民主的な監督が十分に行われないまま進める余地が生まれている。
複数の政府が短期間でこの枠組みに参加したことは、従来の地域協力の仕組みが弱体化していることも示している。
ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños:CELAC)は、現在、共通の立場を調整する能力を失っている。かつて大陸で最も野心的な政治的枠組みだった南米諸国連合(Unión de Naciones Suramericanas:UNASUR)も、今では過去の存在となった。
こうした空白の中で、安全保障を中心とする政策課題は、従来のラテンアメリカの地域協力機構が提供できなくなった組織的な枠組みや連帯感、そして各国首脳が並ぶ集合写真を提供した。
フェルナンド・セリメドは、この構図の中で、政治コンサルティング、デジタルネットワーク、地政学が交わる存在となっている。ボットや人工知能(Artificial Inteligence:AI)の活用によって、地域の右派政治勢力による選挙運動で重要な役割を担う人物となった。
一方、ブラジル、メキシコ、ウルグアイが参加しなかったことにも意味がある。
地域大国であるブラジルは、「テロとの戦い」という論理を繰り返すこの連合に加われば、独自の外交政策を損なうことになる。メキシコは米国との関係が複雑であるものの、自動的に他国の立場に同調しないという外交上の伝統を維持している。ウルグアイも、歴史的に原則を重視してきた外交政策を持つため、域外への介入を正当化しかねない枠組みに参加することは難しいだろう。
この地域の勢力図をめぐって浮かび上がる問いは、10月25日の選挙後、ブラジルがどうなるのかということだ。
今回の新たな連携で注目すべきなのは、その根拠とされる問題である。麻薬取引、テロリズム、組織犯罪。こうした概念は、厳密な定義を欠いたまま使われると、国内外に敵を作り出し、人権をめぐる議論を脇に追いやるために利用されかねない。
安全保障をめぐる言説は、「コンドル作戦2.0(Plan Cóndor 2.0)」のトロイの木馬ではないだろうか。
「麻薬テロとの戦い」を口実に、同盟関係を組み替え、介入を正当化し、都合に応じて沈黙する対象を選ぶ仕組みではないのか。組織犯罪については熱心に語る一方で、リアルタイムで世界に伝えられているジェノサイドについては口を閉ざす。そんな枠組みになっているのではないか。
ネタニヤフの演説に抗議して退席した国々は?
9月24日木曜日、国際刑事裁判所(International Criminal Court:ICC)から逮捕状が出されているベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)イスラエル首相が、国連総会の演壇に立った。会場の外では市民による抗議活動が行われていたが、演説そのものは妨げられなかった。
その時点で、数十カ国の代表団がすでに会場を退席していたか、そもそも会場にいなかった。これは外交上の抗議を示す行動だった。
イスラエルの政府関係者は、小学校の教師が出席確認をするかのように、退席した国々の名前を一つずつ記録した。その後、イスラエルは退席した代表団が77に上ったと発表した。
逮捕状は2024年11月21日、国際刑事裁判所の予審裁判部が発付した。同裁判部は、ネタニヤフ首相に戦争犯罪および人道に対する罪を帰属させる合理的な根拠があると判断した。そこには、戦争の手段として飢餓を利用したことも含まれている。
米国はローマ規程(Rome Statute)の締約国ではないため、逮捕状を執行する義務を負わない。一方、ラテンアメリカ諸国のほぼすべては締約国であり、同規程に基づいて容疑者の逮捕と引き渡しに協力する義務を負っている。この義務はニューヨークでの演説の場で直ちに発生するものではないが、各国政府が自らの立場を表明する際に、矛盾が生じないようにするための法的な境界を示している。
退席者のリストは、ミシェル・フーコー(Michel Foucault)の思想でいう規律化の行為を思い起こさせる。監視し、記録し、一人ひとりを分類して可視化することで、その行動を矯正しようとする仕組みである。リストに名前が載った国は公にさらされ、載らなかった国も警告を受けることになる。
このリストには、ブラジル、チリ、ペルー、パナマ、ベネズエラ、キューバ、ニカラグア、ボリビアのほか、カリブ諸国の多くが含まれている。
ただし、ボリビアのケースは、リストに名前が載っているというだけで判断してはならない。ロドリゴ・パス(Rodrigo Paz)大統領は、その少し前に国連総会で初めて演説を行っていた。そして同じ日、パラグアイとパナマの大統領とともにネタニヤフ首相と会談し、テロ対策を目的とする「ラテンアメリカとイスラエルの戦略的同盟」に向けた協議を進めた。
ネタニヤフ首相は、この3カ国に対し、地域との関係を深め、イランに対抗する政策を進めるため、「アイザック合意(Isaac Accords)」への参加も呼びかけた。
イスラエルは4月、アルゼンチンとこの合意に署名した。これは、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化を目指した米国主導の「アブラハム合意(Abraham Accords)」を、ラテンアメリカ向けに展開する構想である。
ボリビアは2023年10月、地域で最初にイスラエルとの国交を断絶した国だったが、2025年12月に国交を回復した。パラグアイは、この3カ国の中で最も長くイスラエルと同盟関係を維持しており、2024年からエルサレム(Jerusalem)に大使館を置いている。
数日前の投票で棄権したペルーとパナマも、今回の退席者リストに名前が載っている。しかし、この場合、会場にいなかったことが必ずしも抗議を意味するわけではない。
この会談の議題を見れば、ボリビアの立場は、退席者リストに名前が載っていることよりも明確に理解できる。
アルゼンチン外務省によると、アイザック合意は、アルゼンチン、イスラエル、そして「西半球の価値観を共有するパートナー」との協力を強化するための枠組みである。その目的には、「テロリズム、反ユダヤ主義、麻薬取引」への対策が掲げられている。
これは「アメリカ大陸の盾」と同じ言葉遣いである。ある国の立場を決めるのは、特定の演説の際に会場にいたかどうかではない。どのような投票をし、何に署名し、誰と同じ舞台に立つかである。
演壇で語られたこと、語られなかったこと
ラテンアメリカでパレスチナのために声を上げたのは、わずか2カ国だった。
ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)ブラジル大統領は、ネタニヤフ政権がガザの女性や子どもに対して行っている行為をジェノサイドと呼んだ。また、国際刑事裁判所と、国連のパレスチナ被占領地域に関する特別報告者フランチェスカ・アルバネーゼ(Francesca Albanese)を擁護した。
さらに、ヨルダン川西岸地区(Cisjordania/West Bank)における違法な入植地の拡大によって、二国家解決の実現が困難になっていると警告した。同時に、イスラム組織ハマス(Hamas)によるテロ行為も非難した。
キューバは、ブルーノ・ロドリゲス(Bruno Rodríguez)外相を通じて、「パレスチナ人民に対するシオニズムのジェノサイド犯罪」を非難した。
2024年1月、南アフリカが提起した訴訟をめぐり、国際司法裁判所(International Court of Justice:ICJ)は、ガザのパレスチナ人にはジェノサイド行為から保護される権利があると認め、イスラエルに暫定措置を命じた。
さらに2025年9月、国連の独立国際調査委員会(United Nations Independent International Commission of Inquiry)は、イスラエルがガザでジェノサイドを行ったと結論づけた。
1948年のジェノサイド条約(Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide)は、締約国に対し、ジェノサイドを処罰するだけでなく、その発生を防ぐ義務も課している。国際司法裁判所は2007年、この義務はジェノサイドが発生する深刻な危険を国家が認識した時点で生じると判断した。
このような背景から、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領が、国際刑事裁判所(ICC)とフランチェスカ・アルバネーゼ(Francesca Albanese)を擁護したことは、単なる象徴的な行動にとどまらない。国際刑事裁判所の裁判官や検察官は米国の制裁対象となっており、アルバネーゼも2025年7月に制裁を科されている。ルラ大統領の発言は、こうした圧力の中で、国際的な司法判断と各国が負う法的義務を尊重する立場を示したものだった。
クラウディア・シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領が出席しなかったメキシコは、ロベルト・ベラスコ(Roberto Velasco)外相が代表して演説した。しかし、その内容は従来の外交方針を繰り返すにとどまった。
メキシコは「数十年にわたり二国家解決を支持してきた」と述べ、パレスチナ国家を承認し、安全で国際的に認められた国境の内側で平和に暮らす権利を認めると表明した。一方で、殺害やジェノサイドには言及しなかった。
ハビエル・ミレイ(Javier Milei)アルゼンチン大統領はイスラエルに言及したものの、イスラエルと米国に「いかなる曖昧さもなく」同調する立場を示した。
その他の国々は、戦争を経済問題に置き換えて語った。燃料、肥料、インフレといった問題である。
パラグアイはホルムズ海峡(Estrecho de Ormuz)の再開を求めた。パナマは、中東において「自由世界」と共存する国々の間に「持続的な平和」が実現することを求めた。ウルグアイは、どちらか一方の側に立つことが必ずしも戦争の解決につながるわけではないという、距離を置く立場を示した。
コロンビア、エクアドル、ペルー、ホンジュラス、グアテマラは、パレスチナ問題にまったく言及しなかった。
国際法に代わって経済が議論の中心になると、紛争には責任を負う主体がいなくなり、気象現象のようなものとして扱われる。人々はその被害を受けるだけで、誰かの責任を問うことができなくなる。
ウルグアイが示した中立的な立場も、成り立たない。ジェノサイドを防ぐ義務は、締約国すべてに課されている。どちらの側に立つかは関係ない。
デルシー・ロドリゲス(Delcy Rodríguez)の対応も注目に値する。暫定大統領として初めて行った演説では、前任者のニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)について一切触れなかった。マドゥロは、数週間前に世界各国の首脳が集まったニューヨークの刑務所に拘束されている。
パレスチナについても一言もなかった。チャベス派(Chavismo)政権が20年にわたり国連総会の演壇で訴えてきた問題である。それに代わってロドリゲスは、「ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領とその政権」に対し、外交関係の再開について謝意を示した。
ベネズエラは「戦争に苦しむすべての人々」への連帯を表明したが、具体的な国や地域の名前は挙げなかった。歴史的な同盟国であるキューバがジェノサイドを非難する一方で、カラカス(Caracas)は沈黙した。
パレスチナについて明確に発言したのは、英語圏のカリブ諸国だった。
ガイアナは、パレスチナ人民の自決権と、安全な祖国を持つ権利を訴えた。バルバドスはガザとヨルダン川西岸地区に言及し、ジェノサイドをめぐって安全保障理事会の機能が拒否権によって妨げられてはならないと主張した。セントルシアはパレスチナの国連正式加盟を求め、セントビンセント・グレナディーンは恒久的な停戦を求めた。
大陸の中でも特に小さな国々が、パレスチナの名前を挙げることを恐れなかった。さらにガイアナは、同じ週に「アメリカ大陸の盾」の共同声明にも署名していた。このことは、同連合の集合写真に加わることが、パレスチナ問題について沈黙することを意味しないと示している。
2024年には、バルバドス、ジャマイカ、トリニダード・トバゴ、バハマがパレスチナ国家を承認した。
軍事力も経済力も持たないこれらの国々にとって、国際法は強大な国々から自国を守るための、ほぼ唯一の有効な手段である。パレスチナ問題で国際法を擁護することは、自分たち自身を守ることにもつながる。
今年、パレスチナに反対する国々が一つのブロックを形成したわけではない。ただ、パレスチナの名前が語られなくなったのである。だからこそ、私たちはパレスチナについて語ることをやめてはならない。
ペトロの不在が惜しまれる。1年前、グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)コロンビア大統領は、同じ国連総会の場で明確にこう述べていた。
「ガザにおいて、外交はすでに役割を終えた。……毎秒、ミサイルが落ち、罪のない赤ん坊の体を破壊している」
ところが現在のコロンビア新政権は、マフムード・アッバス(Mahmoud Abbas)パレスチナ自治政府大統領がビデオを通じて演説することさえ支持しなかった。
10月25日、ブラジル国民は、こうした声が今後も続くのか、それとも消えてしまうのかを決める。問われているのは、単なる政権交代ではない。この地域の政府が、こうした不正義に対して今後も声を上げ続けることができるかどうかである。
2014年、キューバのハバナ(La Habana)で開かれたラテンアメリカ・カリブ諸国共同体の首脳会議は、ラテンアメリカ・カリブ地域を平和地帯と宣言した。
それから12年が経過した現在も、この地域は平和地帯であり続けている。しかし、私たちの時代における最大の不正義を前にして、沈黙している。
かつて私たちを結びつけたのは連帯だった。今、私たちを結びつけているのは服従である。
しかし、その服従は政府の中だけにとどめなければならない。人々まで沈黙してはならない。
参考資料:
1. ELECCIONES EN ISRAEL: UN VOTO POR EL GENOCIDIO Y EL APARTHEID EN CURSO CONTRA EL PUEBLO PALESTINO
2. ¿Cómo van las posiciones de América Latina y el Caribe respecto al genocidio en curso?

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