ブラジル:ASEANとの貿易・投資関係を拡大へ、近い将来に米国・欧州連合を上回る可能性

(Photo:EFE / ApexBrasil)

ブラジルと東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations:ASEAN)の関係が進展している。

2026年8月18日、ブラジリア連邦区のイタマラチ宮殿で、ブラジルのマウロ・ヴィエイラ(Mauro Vieira)外相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)のカオ・キム・ホーン(Kao Kim Hourn)事務総長と会談した。カオ・キム・ホーン事務総長はブラジル政府の招待を受け、8月17日から21日まで実務訪問している。東南アジア諸国連合(ASEAN)事務総長によるブラジル訪問は今回が初めてである。

ブラジル外務省(Ministério das Relações Exteriores)によると、会談ではブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)の関係における主要な議題を確認し、貿易と投資、エネルギー、食料安全保障、生物多様性、開発協力などを重点分野として取り上げた。また、森林、デジタル変革、持続可能性などについても協力を拡大する可能性を協議した。

マウロ・ヴィエイラ外相はカオ・キム・ホーン事務総長の訪問を、ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)の関係にとって「画期的な出来事」と位置付けた。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)および東南アジア地域の国々との関係が強化されていることを指摘し、今回の訪問は「特に適切な時期」に行われていると述べた。

カオ・キム・ホーン事務総長は、東南アジア諸国連合(ASEAN)とブラジルは「自然なパートナー」であると述べ、双方の経済の活力と豊かな生物多様性を強調した。貿易、投資、デジタル変革、食料安全保障、持続可能性に加え、農業、再生可能エネルギー、バイオエネルギー、気候変動対策、環境の持続可能性などを協力分野として挙げた。

カオ・キム・ホーン事務総長によれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)は現在、ブラジルとのパートナーシップに関する概念文書を検討している。加盟国は評価を実施し、このプロセスを前進させる権限を付与したという。

ブラジルは2012年に東南アジア友好協力条約(Treaty of Amity and Cooperation in Southeast Asia:TAC)に加盟し、東南アジア諸国連合(ASEAN)のセクター別対話パートナーとなった。また、2024年以降、東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局に常駐する特命全権大使を置いている。マウロ・ヴィエイラ外相は、ブラジルが東南アジア諸国連合(ASEAN)の対話パートナーの地位を取得することを目指していると述べた。

ブラジルは、東南アジア諸国連合(ASEAN)のセクター別対話パートナーとなっている中南米唯一の国である。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、東ティモール、ベトナムの11カ国で構成される。ジャカルタに本部を置き、政府間協力を促進するとともに、加盟国間およびパートナー国との経済、政治、安全保障、教育、社会文化面での統合を促進する組織である。

2025年のブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟11カ国との貿易額は約384億ドルに達した。東南アジア諸国連合(ASEAN)はブラジルにとって、中国、米国、欧州連合、南米南部共同市場(Mercado Comum do Sul:Mercosul)に次ぐ第5位の貿易相手となった。ブラジル外務省によると、この貿易は同年のブラジルの貿易黒字の15%を占め、ブラジル側には103億ドルの黒字をもたらした。

別の資料では、ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との貿易額は2003年の30億ドルから2025年には380億ドルに増加したとされている。22年間で10倍を超える規模となっており、東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易が大幅に拡大したことを示している。

ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)の貿易額は2020年以降、年間平均で約15%の成長を続けている。マウロ・ヴィエイラ外相は、このペースが維持されれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易額は「近い将来」に米国や欧州連合など、ブラジルの伝統的な貿易相手との貿易額を上回る可能性があるとの見通しを示した。

マウロ・ヴィエイラ外相は、ブラジルが現在、ドイツよりもシンガポールへの輸出額が多く、フランスよりもインドネシア、ベトナム、マレーシア、タイへの輸出額が多いことも指摘した。

東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係強化は、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領が進める対外パートナーシップの多角化戦略の一環と位置付けられている。マウロ・ヴィエイラ外相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)が世界的な成長と科学・技術発展の中心地であると述べ、ブラジルの経済パートナーシップの多角化、多国間問題における調整、南南協力の強化につながる関係だと説明した。

東ティモールが東南アジア諸国連合(ASEAN)に加わったことについても、ブラジル政府は満足しているとマウロ・ヴィエイラ外相は述べた。ポルトガル語圏の東ティモールの加盟を踏まえ、ブラジルは東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係をさらに深めることを目指している。

マウロ・ヴィエイラ外相は、ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)が南南協力を強化し、グローバル・サウスをさらに強化するための投資を促進できると述べた。カオ・キム・ホーン事務総長も、両者が多国間主義、対話、国際協力、ルールに基づく国際秩序へのコミットメントを共有していると強調し、国家主権を尊重する重要性を指摘した。

また、カオ・キム・ホーン事務総長は、2025年10月に開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議にルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領が出席したことを「歴史的」な訪問と評価した。観光と学術交流についても、さらなる拡大が必要だとの考えを示した。

東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係強化は、米国との関係をめぐる状況とも重なっている。

2026年8月11日には、マウロ・ヴィエイラ外相がフィリピン外務省(Department of Foreign Affairs of the Philippines)の外交関係担当次官、マリア・テレサ・P・ラザロ(Maria Theresa P. Lazaro)氏を迎えた。ブラジル大統領府ではワシントンとの交渉がなお試みられている一方、政権中枢の関係者からは、米国側があらゆる対話の可能性を閉ざしたとの見方も示されている。

このため、ブラジルでは代替市場を探すことが必要となっており、関税措置によって大きな影響を受けている国内経済の各分野を支援することが重要だとの評価が示されている。東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との貿易と投資の拡大への関心は、こうした状況の中で高まっている。

 

ASEANとの輸出・投資に広がる可能性

ブラジル輸出投資促進庁(Agência Brasileira de Promoção de Exportações e Investimentos:ApexBrasil)によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)は2024年にブラジルの輸出先として第3位となり、ブラジルの総輸出額3370億ドルの7.8%を占めた。ブラジルから東南アジア諸国連合(ASEAN)への輸出は年平均17.3%で増加しており、同期間のブラジルの輸出総額の年平均成長率8.8%を上回っている。

一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国からブラジルへの外国直接投資は2024年に172億ドルとなり、東南アジア諸国連合(ASEAN)が他国の経済に投資した総額の1%にとどまった。ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)は、貿易だけでなく投資についても拡大の余地があるとしている。

ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)のジョルジ・ヴィアナ(Jorge Viana)総裁は、世界の経済関係が全面的な変化の中にある中、ブラジルを戦略的パートナーに近づけることが必要だと述べた。また、ブラジルの投資家と現地の投資家の双方にとって、ブラジルには大きな可能性があると述べている。

ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)は、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内でブラジル製品の輸出機会が約2000件存在すると特定している。現在のブラジルの輸出品目は、石油、鉄鉱石、農産物を中心とするコモディティーに集中している。ブラジルは、東南アジア諸国連合(ASEAN)における主要な外国供給国の10位以内に入ることを目指している。

ジョルジ・ヴィアナ総裁は、ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)が新たな機会のサイクルをアマゾン地域を含むブラジル国内のすべての地域に広げることを目指していると述べた。

一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場でブラジルが直面する課題として、中国と米国との競争がある。ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)の調査によると、中国と米国は燃料用石油や大豆かすなどの戦略的分野で優位を占めている。

また、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は所得水準、規制基準、官僚制度などが大きく異なるため、東南アジア諸国連合(ASEAN)全体を一つの市場として扱うのではなく、市場ごとに異なる戦略が必要となる。

報告書では、シンガポールは物流ハブ、ベトナムとタイは産業拠点、インドネシアとフィリピンは大規模な消費市場として位置付けられている。マレーシアとブルネイは中高所得国であり、技術とエネルギーを重視している。

 

インドネシア・マレーシアとの企業ミッション

ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済統合におけるブラジルの役割を強化するため、ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)とブラジル外務省は2025年10月、インドネシアとマレーシアへの企業ミッションを実施した。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領も参加し、約150人のブラジル人企業家が代表団に加わった。

シンガポールに続き、インドネシアとマレーシアは、投資額、輸出先、企業の進出状況、将来的な拡大可能性という観点から、ブラジルにとって戦略的な国と位置付けられている。

ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)のジョルジ・ヴィアナ(Jorge Viana)総裁は、この訪問について、ブラジル国内の生産部門が持つ力と多様性を現地政府や企業との対話に持ち込み、パートナーシップを特定するとともに、ブラジル製品の市場への道を開く機会だと位置付けた。

インドネシアのジャカルタでは、インドネシア・エネルギー・コーポレーション(Indonesia Energy Corporation:IEC)、アギラ・エネルジア・エ・パルティシパソンイス(Aguila Energia e Participações)、ブラジル輸出投資促進庁(ApexBrasil)の3者が、ブラジル北東部でハイブリッド発電のパイロット事業を開発するためのパートナーシップに署名した。即時投資額は5600万ドルを超えた。

ジョルジ・ヴィアナ総裁は、このパートナーシップが、エネルギー転換とデジタル経済において主導的役割を担うブラジルの新たな局面を反映していると述べた。

インドネシアでの会合では、両国の政府機関と民間企業の間でさらに7件の覚書が締結された。対象分野は農業・畜産、鉱業・エネルギー、科学・技術、地理・統計、投資などに及んだ。

ジョルジ・ヴィアナ総裁は、グローバル・サウスの二つの主要経済国であるブラジルとインドネシアの接近が、雇用、地域開発、クリーン技術を生み出す革新的で持続可能かつ戦略的なプロジェクトにつながる可能性があると述べた。

 

協力分野の拡大

カオ・キム・ホーン事務総長は、ブラジルには農業、バイオ燃料、再生可能エネルギー、森林保全、社会的包摂の分野で国際的に認められた経験があると述べた。これらは、東南アジア諸国連合(ASEAN)とブラジルが協力を拡大できる分野として挙げられている。

両者の協議では、エネルギー、食料安全保障、生物多様性、森林、貿易、投資に加え、農業、再生可能エネルギー、バイオエネルギー、気候変動対策、環境の持続可能性、デジタル変革などが協力分野として示された。また、観光と学術交流の拡大も課題として挙げられている。

カオ・キム・ホーン事務総長は、東南アジア諸国連合(ASEAN)とブラジルが多国間主義とルールに基づく国際秩序へのコミットメントを共有していると表明した。

ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)の貿易は長期的に拡大している。2020年以降の年間平均成長率は約15%であり、ブラジルから東南アジア諸国連合(ASEAN)への輸出は年平均17.3%で増加している。ブラジル側は、こうした貿易・投資関係の拡大を経済パートナーシップの多角化と南南協力の強化につなげる方針を示している。

#LuladaSilva #ASEAN

 

参考資料:

1. Brasil mira Sudeste Asiático para aumentar fluxo comercial e de investimentos
2. Brasil prevê comércio com ASEAN a superar em breve o dos EUA ou da UE
3. Comércio com ASEAN avança e pode superar trocas com EUA e União Europeia “num futuro próximo”, diz Mauro Vieira

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