コロンビア:コカ栽培への航空散布再開を発表、武装組織との和平交渉も打ち切り

コロンビアの新大統領であるアベラルド・デ・ラ・エスプリエジャ(Abelardo de la Espriella:デ・ラ・エスプリエジャ)は2026年8月7日、就任宣誓を行った。同日、カリ(Cali)のピチンチャ軍事区(Cantón Militar Pichincha)で大統領として初めての演説を行い、国内の非合法武装組織や犯罪組織との「対話という選択肢は完全に尽きた」と述べ、強硬路線を明確にした。

デ・ラ・エスプリエジャは選挙期間中から、武装組織や犯罪組織に対する強硬政策を掲げていた。就任演説では、歴代政権がゲリラ組織や犯罪組織との間で進めてきた和平交渉に言及し、「国家は歴史的に十分に寛容であった。終わった政権下の国家は十分に共犯的であった」と述べた。

そのうえで、「『虎』の時代には、犯罪に対して断固として正面から立ち向かう」と述べ、犯罪組織への対応を強化する姿勢を示した。また、「私は、コロンビアの自由を脅かす犯罪組織である麻薬テロリズムを容赦なく打倒する意思を改めて表明する。国民全員に、祖国を恒久的に守る者となるよう呼びかける。なぜなら、治安と自由を完全に回復する時が来たからである」と述べた。

 

コカ栽培への航空散布を再開

デ・ラ・エスプリエジャは在任中、国内の違法作物に対する空中散布を再開すると表明した。カリのピチンチャ軍事区で、コカ栽培の撲滅を「国家的優先事項」と位置付け、あらゆる手段によって違法作物を撲滅すると述べた。

デ・ラ・エスプリエジャは、違法作物の増加を測定することにとどまる従来の戦略を批判した。「コカは、粉飾された統計や操作された地図によって撲滅するものではない」と述べ、「現在、暴力と犯罪を助長しているコカを、土地から引き抜くことで撲滅するのである」と説明した。

航空散布では、最新世代の除草剤を使用すると説明した。デ・ラ・エスプリエジャは、「私は、人の健康に害を及ぼさない最新世代の除草剤を使用した航空散布を実施する」と述べた。また、この方法は名誉ある憲法裁判所(Corte Constitucional)の命令に反するものではなく、「いかなる形でも環境に影響を及ぼさない」と主張した。

さらに、コカ栽培の撲滅に向けて資源を惜しまない考えも示し、航空散布による違法作物への直接的な介入を政権の重要な政策として位置付けた。

Photo:EFE

 

コカ栽培の拡大

国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime:UNODC)が公表した最新の報告書によると、コロンビアでは2024年末時点でコカ葉の栽培面積が約26万1,000ヘクタールに達した。2023年の栽培面積から3.5%増加している。

コロンビアとエクアドルの国境地帯では、広大なコカ葉の違法栽培が広がっている。主な栽培地はコロンビアのナリーニョ県(Nariño)とプトゥマヨ県(Putumayo)に集中しており、両県はエクアドルのエスメラルダス県(Provincia de Esmeraldas)、カルチ県(Provincia del Carchi)、スクンビオス県(Provincia de Sucumbíos)と国境を接している。

これらの栽培地は、国境の両側で非合法武装組織が支配する犯罪経済や加工施設に原料を供給している。

 

犯罪組織に「二つの道」

デ・ラ・エスプリエジャは犯罪組織に対しても警告を発した。「間違えてはならない。虎はやって来た。コロンビア国民を守るとなれば、その牙がどのように襲いかかるかを知ることになる」と述べ、犯罪組織との対話を終え、国家による強制力を行使する考えを示した。

また、コロンビア国民の安全に対する脅威が最も大きい者を収容する「巨大刑務所」を政府が建設すると述べた。

犯罪組織や麻薬テロリズムの構成員に対しては、「法の支配に従うか、コロンビア国家とその治安部隊による断固たる力に直面するか」の二つの道しかないと警告した。さらに、「免責は許さない。私は彼らを見つけ、断固として司法の前に連れて行く」と断言した。

 

違法作物を合法作物に転換

コカ栽培の撲滅と並行して、デ・ラ・エスプリエジャは違法作物に代わる合法的な農業生産を進める方針も示した。

「奇跡の祖国(Patria Milagro)」という構想の下で、コカ栽培に代わり、ココナツ、ヤシ、カカオなどの合法作物を栽培するとした。また、カカオ、コーヒー、トウモロコシ、ヤシなどを違法作物に代わる作物として挙げた。

 

エクアドル側から航空散布への懸念

一方、デ・ラ・エスプリエジャが航空散布に使用する化学物質の安全性を強調する一方で、エクアドル側からは、その影響を懸念する声が出ている。

数週間前、エクアドルのスクンビオス県の弁護士で元知事であるウィリアム・バルバ(William Barba)は、エクアドル政府には、コロンビアによる航空散布などの措置から生じる副次的な影響に対応するための適切な計画がないと指摘した。

バルバは、コロンビアのプトゥマヨ県やナリーニョ県などで爆撃や航空散布が行われれば、エクアドルのカルチ県やスクンビオス県に直接影響する可能性があると警告した。その影響として、強制的な避難や治安悪化につながる可能性を挙げた。

 

過去の航空散布による影響

コロンビア計画(Plan Colombia)の過去の事例では、グリホサートの使用によって、曝露した家族の84.7%が呼吸器、消化器、皮膚の問題を抱えたほか、奇形や基礎的な食料作物の破壊も発生した。

 

アワ民族も航空散布再開を懸念

国境地帯の両国側には約6,000人のアワ(Awá)が暮らしており、同民族からもコロンビア新政権による航空散布再開への強い懸念が示されている。アワ連盟(Federación Awá:Fecae)の会長であるホセ・ルベン・パスカル(José Rubén Pascal)は、デ・ラ・エスプリエジャ政権による発表について、悲劇が再び起きる脅威であると述べた。

パスカルは、過去にも航空散布が行われ、アワのコミュニティが深刻な影響を受けたと説明した。「それは確かに私たちに影響する。何年か前にも航空散布が行われ、それは深刻なものだった。実際、私たちのようにアワのコミュニティの大半が国境地帯に位置しているため、かなりの影響を受けた」と述べた。また、過去の航空散布によって住民の皮膚に「しみ」が生じたほか、土地の農業生産能力が低下したと振り返った。

デ・ラ・エスプリエジャは、コカ栽培を国家的優先事項として撲滅するとともに、航空散布を再開し、違法作物を合法作物へ転換する方針を示している。一方で、国境を接するエクアドル側では、過去の航空散布による影響を踏まえ、住民や地域への影響を懸念する声が上がっている。

 

ペトロ政権によるグリホサート地上散布

コロンビアでは、デ・ラ・エスプリエジャ政権が航空散布の再開を表明する以前から、グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)政権がグリホサートを使用した違法作物の撲滅策を再開していた。

2025年、ペトロ政権はコカ栽培の撲滅に向けてグリホサートによる地上散布を再び導入した。政府は従来の航空機による航空散布ではなく、地上からの散布を採用し、2025年6月にはグリホサート約2万2,000リットルを購入した。購入した農薬は、15県での違法作物の地上撲滅に使用するとされた。

2025年7月には、コロンビア政府も、違法作物の撲滅について、グリホサートを使用した地上散布と作物の自主的な代替を組み合わせる方針を示した。

さらに2025年12月22日、法務省はドローンを使用した違法作物の重点的な撲滅を正式に承認した。法務省はこれを「ドローンによる地上散布」と位置付け、従来型の航空散布ではなく、低高度から実施する方法であると説明した。ドローンはコカの樹冠から約1.5メートルの高さで散布し、対象区域を限定するとした。

法務大臣のアンドレス・イダラガ(Andrés Idárraga)は、この方法を主に、非合法武装組織が農民にコカ葉の栽培を強制している地域で実施すると説明した。「コロンビアは、グリホサートを使用したドローンによる地上散布を開始する。これは管理された地上散布であり、基本的には、非合法武装組織が農民にコカ葉の栽培を強制している地域で実施する」と述べた。

Photo:CULTIVOS COCA

 

憲法裁判所の要件と散布方法

ペトロ政権がグリホサートの使用を再開する一方、憲法裁判所(Corte Constitucional)は、その使用について厳格な要件を課していた。具体的には、散布区域を明確に区切ること、その影響が有害でないことを証明すること、計画の実施期間を定めること、さらに先住民、アフリカ系コロンビア人、農民のコミュニティの領域では事前協議を実施することなどが求められている。

政府はこれらの条件を踏まえ、地上散布による違法作物撲滅計画(Programa de Erradicación de Cultivos Ilícitos mediante Aspersión Terrestre:Pecat)を進めた。ドローンを使用し、犯罪組織による支配が強い地域で、あらかじめ区画を定めた農地に散布する方式である。こうした地域ではコカ栽培が武装組織の活動資金となっており、治安部隊の情報によれば、武装組織が地域住民に栽培を強制している。

アルマンド・ベネデッティ(Armando Benedetti)内相は、武装組織による治安危機を受けた治安会議後、「犯罪組織が民間人にコカ葉の栽培を強制している場所では、そこでも散布を行う。これが第一の措置であり、最も重要な措置だと考えている」と述べた。なお、治安会議は、武装ストライキの期間中に民族解放軍(Ejército de Liberación Nacional:ELN)が少なくとも15件の行動を起こしたことや、主要なコカ栽培拠点の一つであるカウカ県(Cauca)のブエノスアイレスを「イバン・モルディスコ」派の反政府武装勢力が掌握したことを受けて開かれた。

政府は、こうした武装組織の活動とコカ栽培との関係を背景に、グリホサートを使用した散布を、武装組織が農民にコカ栽培を強制している地域に限定して実施する方針を示した。

 

国民擁護官事務所による評価

国民擁護官事務所(Defensoría del Pueblo)は2025年9月当時、グスタボ・ペトロ大統領が違法作物へのグリホサート散布を再び実施することを提案したことについて、疑問を呈した。国民擁護官(Defensora del Pueblo)のイリス・マリン(Iris Marín)は、コカ栽培面積の増加について、和平プロセスにおける約束の不履行と、領域に対する統制の欠如が背景にあると指摘した。マリンは、政府がこの時点でグリホサート散布の再開を提案したことに加え、政策変更の責任を憲法裁判所に負わせようとしていることについて、「奇妙であり、驚くべきことだ」と述べた。また、航空散布による対策について、コミュニティに対するその他の措置を伴わなければ持続可能ではないとの見解を示した。

そのうえでマリンは、政府が取り組むべきなのは、違法作物の代替作物への転換という当初の政策に戻ることだと述べている。その実現には、治安部隊が領域に対する統制を取り戻すことに加え、特に対話・交渉のプロセスにある武装集団が、コミュニティによる生計手段の転換を可能にするための約束を果たすことが必要だと指摘した。

コロンビアでは違法作物の栽培面積が増加しており、米国政府は麻薬対策上の「認証解除(descertificación)」を検討していた。認証解除となれば、原則として米国からの一部の対外支援が停止されることを意味する。

 

地上散布の再開とその後

2025年2月26日、国家警察(Policía Nacional)の麻薬対策局は、地上散布を再開するため、「有効成分としてグリホサートを含むことが保証された農業用化学農薬」の購入に向けた調達手続きを正式に開始した。地上散布は、薬物政策が手作業による撲滅と作物転換へと転換されたことを受け、過去2年間にわたって中止されていた。しかし、2024年のコカイン生産可能量が3,000トンを超えたとされる中、政府はグリホサートの使用を拒否する方針を転換し、カウカ県やナリーニョ県など、コカ栽培が拡大し続けているとみられる「レッドゾーン」で使用することを決定した。

この生産量は、違法作物監視統合システム(Sistema Integrado de Monitoreo de Cultivos Ilícitos:Simci)の報告書から流出したデータに基づくものである。同報告書は、この数値を調整するための方法論上の説明を理由に、当時も法務省が公開を保留していた。

一方、ドローンによる散布については、2026年2月にカウカ県で実施が試みられたものの、地域住民の抗議などによって阻止されたと報じられている。このように、ペトロ政権はグリホサートを使用した地上散布を再開し、ドローンによる低高度散布を実施する段階まで進めた。一方、従来の航空機を使用したグリホサートの航空散布は再開していなかった。

 

デ・ラ・エスプリエジャ政権が航空散布を再開

こうした経緯を経て、2026年8月7日に就任したアベラルド・デ・ラ・エスプリエジャは、従来型の航空散布を再開する方針を表明した。デ・ラ・エスプリエジャは、カリのピチンチャ軍事区で行った就任演説で、コカ栽培の撲滅を「国家的優先事項」と位置付けた。そのうえで、最新世代の除草剤を使用した航空散布を実施すると述べた。

デ・ラ・エスプリエジャは、使用する除草剤について、人の健康に害を及ぼさず、憲法裁判所の命令にも反せず、環境にも影響を及ぼさないと主張している。

ペトロ政権がグリホサートによる地上散布とドローンによる散布を進めたのに対し、デ・ラ・エスプリエジャは航空散布そのものを再開する方針を明確に打ち出した。

#delaEspriella #Awá #枯葉剤

 

参考資料:

1. Abelardo de la Espriella anuncia el regreso de las fumigaciones contra la coca en Colombia
2. Así fue la posesión de Abelardo De la Espriella presidente de Colombia: Primer discurso presidencial
3. De la Espriella entierra el proceso de paz con la guerrilla de Colombia y anuncia el regreso de las fumigaciones de plantaciones de coca
4. Gobierno Petro reactiva la fumigación con glifosato contra cultivos de coca en áreas de conflicto
5. Gobierno autoriza erradicación focalizada de cultivos ilícitos con drones, bajo estrictos controles ambientales y técnicos

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!