(Photo:LR)
ペルー共和国の公共交通分野で、運転手を標的とした殺害および恐喝が急増している。ペルー国家警察(Policía Nacional del Perú:PNP)のオスカル・アリオラ(Óscar Arriola)総司令官は、2026年に入ってから公共交通機関の運転手64人が殺害されたと報告し、この多数の殺害が約100件規模の組織犯罪による襲撃と関連していると説明した。この報告は議会安全市民委員会で示され、ペルー議会(Congreso de la República del Perú)の場でも取り上げられている。
殺害事例はバス、乗合バン(コレクティーボ)、マイクロバスなど幅広い公共交通機関を対象としており、爆発物の使用や弾薬入り封筒の投棄、走行中車両への銃撃など手口は多様化している。警察は一部事件で容疑者の逮捕が進んでいるとし、犯罪者側の多くは収監済みであると説明している一方で、攻撃そのものは継続している。
リマ・カヤオ首都圏での恐喝ネットワークの拡大
被害が集中しているのは首都リマ(Lima)およびカヤオ(Callao)であり、公共交通業界は組織犯罪による恐喝ネットワーク(extorsión)の標的となっている。組織は「クーポス(cupos)」と呼ばれる“保護料”の支払いを要求し、拒否した場合には銃撃や殺害を含む報復行為に出るとされる。リマ・カヤオ都市交通企業調整協議会(Coordinadora de Empresas de Transporte Urbano)のヘクトル・バルガス会長は、リマ首都圏の公共交通企業「すべてが100%恐喝被害を受けている」と主張している。
恐喝の手口は企業全体ではなく、現金を扱う車両や運転手個人に直接接触する形で行われ、1日あたり約20ソルの支払いを要求するケースがあるとされる。支払いを拒否した場合には、襲撃や殺害に発展することもあるという。
さらに犯罪組織は運行ルート、ナンバープレート、運転手の個人情報まで把握しており、事前に標的を特定できる状態にあると指摘されている。この情報管理能力が治安当局を上回っている可能性も業界側から示されている。
業界への影響と「正常化する暴力」
バルガス会長は、殺害や襲撃が繰り返される中で、暴力が異常事態ではなく「日常化」しつつあると警告している。社会全体が事件に慣れ始めているとの認識も示され、危機感が薄れていることへの懸念が語られた。
この状況により、多くの運転手が身の危険を理由に離職し、企業によっては運行能力が30〜40%程度まで低下しているとされる。公共交通の維持そのものに影響が及びつつある状況である。
業界側は政府の治安対策について「効果がない」と批判し、昨年成立した治安関連法についても実効性が伴っていないと主張している。また規制運用が意図的に弱体化している可能性も指摘された。
対策としては、刑務所内での犯罪者隔離強化、監視カメラと連動した区域別治安管理(クアドラント制)、オートバイの二人乗り禁止など、即効性を重視した措置が提案されている。
事件の具体例と組織犯罪の関与
警察発表によれば、公共交通会社エトゥプサ73(Etupsa 73)への襲撃事件では、運転手シモン・ゴメス(Simón Gómez)が死亡し、ベネズエラ国籍の4人が逮捕された。この事件は犯罪組織「ロス・オクシデンタレス(Los Occidentales)」との関連が疑われている。
このような事例はリマ北部および南部でも発生しており、攻撃が撮影されSNS上で拡散されるなど、威嚇目的の情報発信も確認されている。
治安統計と現場感覚の乖離
ペルー国家警察(PNP)の統計では、年初から運転手64人が殺害され、約95〜100件の襲撃が確認されているとされる。一方で、業界側は依然として攻撃が続いていると主張し、治安改善の実感はないとしている。
警察は「日々の継続的な戦い」であると強調し、警戒維持の必要性を訴えているが、ヘクトル・バルガスは暴力が収束していないとして強い懸念を表明した。バルガスは「もはや統制が存在しない状況だ」と述べ、運転手や事業者が日常的に脅迫を受けながら業務を続けている実態を指摘している。
参考資料:
1. Suman 64 choferes asesinados en 2026 y transportistas cuestionan al Estado por escalada criminal: “Ya no hay control”
2. Gremio de transportistas tras reporte de 64 choferes asesinados en 2026: “El 100% de las empresas son extorsionadas”

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