(Photo:NTV Música)
ペルー人歌手レイ・トーレス(Ray Torres)が、最新シングル『Si te vas』を正式発表した。2月20日より全デジタルプラットフォームで配信開始され、アーバンポップにキューバ発祥のワラチャ(Guaracha)のリズムを融合させた楽曲となっている。テーマは恋愛の別れに伴う感情整理で、ノスタルジックな歌詞とエネルギッシュなリズムが特徴だ。
ワラチャは、キューバおよび大アンティル諸島地域で発祥した歌とダンスのスタイルである。1920年代から1950年代にかけて世界的に流行し、特にプエルトリコやニューヨーク、さらにメキシコ社会にも広く浸透した。その起源は18世紀に遡り、四行連の詩に合わせて踊る形で始まった。また、コミックソングとして世間の人々や風習を題材に歌われ、広く人気を集めた。1583年、植民地時代のハバナ(La Havana)で、総督ガブリエル・デ・ルホァン(Gabriel de Luján)が政敵を批判することを目的に街頭で歌わせたものがワラチャの原型ではないかとも言われている。
ダンスの起源はスペイン・マドリード(Madrid)のブフォ劇場(Bujo)におけるサパテアド(Zapateado)にあり、当初は劇中の一部として演じられた。しかし、次第にワラチャ単独で舞踏会などでも演じられるようになった。20世紀に入ると、他ジャンルの音楽と共に演奏され、作曲家やミュージシャンの登場によって世界的流行に至った。19世紀以降、ワラチャは伝承文学の中で語り継がれ、今日に至るまで進化を続ける歌と踊りのジャンルとなっている。
トレスはサン・マルティン県(San Martín)タラポト(Tarapoto)出身で、主要な音楽市場から離れた環境で育った。母親と姉の支えを受け、音楽活動に打ち込んできたトレスは故郷の小さな音楽環境では商業的に活動するのが難しかったため、より本格的な音楽活動を目指し首都リマ(Lima)へ移住した。「音楽を本格的にやるならリマが正しい場所だった」と振り返るものの、彼の生活は決して楽ではなく、レストランで働きながら音楽活動を続けた。「音楽が自分にもっと大きな目的を与えてくれた」とトレスは語る。
デビューEP『To’ Se Vale』は、制作会社NTV-Músicaと音楽プロデューサーのカンニ(Canni)の支援のもと制作された。リリース後、PEIN、Pride 2025、Zumba Tú Tema、Ya Toca Fest(タラポト開催)などのフェスティバルに出演し、国内アーバンポップ界で注目される存在となった。また、ペルー出身のトランスジェンダー・アーバンポップ歌手ダキ(Daki)とのコラボ曲『Cuándo y dónde?』はYouTubeで7万8千回以上再生され、若年層からの支持も高い。
新曲『Si te vas』についてトレスは、「少しずつ自分の“違い”を見つけている。今回の曲や、数か月後にリリース予定の新曲のワラチャのサウンドは、今の自分をよく表している」と語り、自身の音楽的個性と成熟を示す作品であると説明した。恋愛の別れと心理的葛藤を描く本作は、アーバンポップの流れにワラチャのリズムを融合させることで、ペルーのアーバン音楽に新鮮で革新的なサウンドを提示している。
2026年1月には故郷タラポトで開催されたフェスティバル「Ya Toca」に出演したトレスは「本当に感慨深かった。自分を育ててくれた街に戻り、夢を追って旅立った自分としてステージに立てたのは特別な体験だった」と述べ、観客との再会と成長の実感を語った。「緊張はいつもあるが、以前よりずっとコントロールできるようになった。初ステージは不安で出演したくなかったが、今回は心から楽しめたし、もっと長く歌いたいとさえ思った」とも話した。
音楽活動における哲学も明確だ。「大衆が目にするのは成功した姿だけで、その過程は見えにくい。たとえばマルマ(Maluma)はペルーのコンペ番組『コンバテ(Combate)』に出演していた。その後、年月を経て今の姿になった。だからこそ、正しい決断をし、規律を持ち、自分を信じることが大切だ」と述べ、努力と学びの重要性を強調した。また、映像制作、マーケティング、演技、SNS運用など多方面の能力を身につける必要性についても語り、「学び続けることがプロジェクトに方向性と意味を与えてくれる」と述べた。
今回の『Si te vas』のリリースは、トレスが自身の音楽的アイデンティティを確立すると同時に、数か月後にリリース予定の新曲でもワラチャを取り入れ、さらに個性的なサウンドを提示する意欲作である。「今の自分を表す音楽を届けたい」と意欲を示すトレスの活動は、単なるエンターテインメントにとどまらず、自己表現と成長の軌跡そのものを映し出している。
レイ・トーレスは、トラップやレゲトンといったジャンルに対する生まれ持った情熱を胸に、2021年に音楽活動を開始した。作詞や作曲の能力を探求しつつ、レゲトンの官能的なリズムに自身のエキゾチックな個性を融合させたスタイルを築き上げてきた。
参考資料:
1. Ray Torres: “La música me ha llevado a tener un propósito superior”
2. Ray Torres estrena “Si te vas”, una propuesta que fusiona pop urbano y guaracha


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