エクアドルでは、豪奢な暮らし、美貌、そして社交界での地位を誇った女性たちが、今や裁判所の被告席に座っている。かつてはミスコンテストのステージを歩き、メディアに取り上げられ、インフルエンサーとしても輝いていた彼女たちが、今では「マフィア・クリオージャの人形たち(muñecas de la mafia criolla)」と呼ばれ、犯罪組織との関係を追及されている。彼女たちは、資金洗浄、殺し屋活動、薬物取引などで、特定の役割を担っている。多くの場合、組織の首領たちは、家族やパートナーを利用して麻薬から得た資金を洗浄する。
贅沢、秘密、そして危険に包まれて生活していたこれらの女性たちは、ある者は美人コンテストの優勝者、他の者は主婦、ビジネスのオーナー、または公務員であった。彼女たちは皆、エクアドルの麻薬カルテルのリーダーたちと愛情以上のものを共有し、今では犯罪ネットワークへの関与が疑われており、司法の審査を受けている。以下では女性たちと犯罪組織とのいくつかの事例を見ていくこととする。
レアンドロ「エル・パトロン」ノレロと女性たち
最初に注目されたのは、麻薬取引の資金提供者として知られるレアンドロ「エル・パトロン」ノレロとの関係性である。ノレロは「目に見えない麻薬王」として、ロス・ロボス(Los Lobos)、ロス・ティゲロネス(Los Tiguerones)、そしてロス・チョネ・キラーズ(Los Chone Killers)といったギャングに資金提供をしていた。2020年に彼は死を偽装し、その後、当局の追跡を逃れて資金洗浄を行った。
2020年から2022年の間、ノレロの財産は急増し、彼は家族や複数の企業を利用して、エステサロンというビジネスを通じて違法な資金を洗浄していた。特に、ノレロの最後のパートナーであったコロンビア人女性、リナ・パオラ・ロメロ・バルガス(Lina Paola Romero Vargas)が重要な役割を果たした。
検察は、2020年からロメロとノレロの近しい関係者が、登録されていない不動産取引を通じて、1500万ドル以上を洗浄していたと指摘している。2023年4月18日、グアヤキルで彼女に対する裁判が始まったが、依然として結論は出ていない。
ランディ・パラガ(Landy Párraga)は、ケベドで有名な人物であり、かつては美人コンテストの女王でもあった。元ミス・エクアドル候補であり、2024年4月28日(日)に恋人と共にケベド市のショッピングモール内のレストランで食事中、銃撃され命を落とした彼女は、国内外の旅行、高級ブランドのバッグやドレスなど、贅沢なライフスタイルを自身のSNSで発信していた。Instagramアカウント(@landyparraga.ec)は16万人以上のフォロワーを抱えており、事件直後にはコメント欄が制限された。防犯カメラには、2人組の実行犯が彼女を銃撃する様子がはっきりと記録されていた。警察によれば、ノレロは「ロス・ロボス」「ロス・ティゲロネス」「チョネ・キラーズ」などの犯罪集団を資金的に支援していた。これらのグループは、エクアドル最大の組織「ロス・チョネロス」の支配に挑戦していたとされる。暗殺される数カ月前、彼女は『マフィアの人形たち(Las muñecas de la mafia)』の歌詞に反応する形でSNSに投稿していた。
2023年8月、ランディは上空からの写真を投稿した。キャプションには飛行機の絵文字だけが記されていたが、あるユーザーがこのようなコメントを残した。
飛行機で飛ばせて、マイアミからニューヨークまでの女王になりたい
このメッセージに対し、ランディ自身が次のように返答した。
君を人形にするよ。護衛車もプールもつけてあげる
これは、2009年に放送開始されたコロンビアのナルコ(麻薬)ドラマ『Las muñecas de la mafia』の主題歌の一節である。このドラマは、麻薬密売人たちと関係を持つ女性たちの愛と破滅の物語を描いた作品であり、Netflixの解説でもそのように紹介されている。
麻薬密売人レアンドロ・“エル・パトロン”・ノレロが、2022年10月3日にラタクンガ刑務所で殺害された際、彼はちょうど麻薬取引および資金提供の罪で起訴される予定だった。その翌日、ランディは飛行機からの空の写真とともに「もう少しだけ近くへ」との投稿を行い、さらに翌日にはビーチの写真とともにこう記した。
「心は、最高の鼓動を残した場所を決して忘れない」
この投稿は、ノレーロとの関係を仄めかすものとして注目された。
メタスタシス事件とマイラ・サラサール、そしてランディ・パラガ
ノレロの死後、検察は彼の携帯電話を調べ、彼の通信記録からメタスタシス事件(Caso Metástasis)が発覚した。この事件は、彼に有利な不正裁判の操作を行った腐敗した司法ネットワークを暴いたものである。その中で重要な役割を果たしたのが、エクアドルのグアヤス地方裁判所の元職員マイラ・サラサル(Mayra Salazar)であル。彼女はノレロと愛人関係にあり、司法の決定を購入する役割を担っていた。サラサルは、ノレロの「ビジネス」との関わりから、15か月の懲役刑を受けたが、2025年3月に釈放された後、すぐに国外に逃亡している。
2024年1月初旬、ランディ・パラガの名前もメタスタシス事件に登場するようになった。この事件は、ノレロの死をきっかけに明るみに出た司法・警察・刑務所における腐敗構造を指す。ノレロは刑務所内からチャットを通じてこの構造を指揮していたとされ、その携帯電話から検察が押収した複数の会話の中に、パラガの名前が繰り返し登場していた。麻薬密売人レアンドロ・ノレロ(Leandro Norero)との関係が暴露され、流出した会話から彼女が彼との関係を恐れていたことが明らかとなった。彼女は自身のイメージを守るために極端な行動をとることさえ考えていたという。
2022年7月13日、ノレロは側近のヘリベ・アングロ(Helive Ángulo)とチャットしており、捜査官がランディについて言及したことがわかる。ノレロは繰り返しこう警告していた。
彼女の名前が何としても出てはならない。妻に知られたらすべてが終わる。お願いだ、どうして彼女の名前が漏れたんだ?
また、ランディが持っていたとされる輸入業者についても言及があり、ノレロは「それはランディのではなく、“あの女のデカいスポンサー(machucón)”のものだ」と述べていた。
ロス・チョネロスの女性たち
エクアドルで最も危険な犯罪組織の一つ、ロス・チョネロス(Los Choneros)のリーダー、ホセ・ルイス・サンブラノ(Jose Luis Zambrano)、通称「ラスキニャ(Rasquiña)」の死後、その妻であるサマラ・リベラ(Samara Rivera)は、組織の犯罪活動を管理し、特に司法との関係を操っていた。リベラは2024年10月、夫の不正釈放に関与したとして、5年の刑を宣告されたが、現在も逃亡中である。
フィトとJRの後継者たち
ラスキニャの死後、ロス・チョネロスは、アドルフォ・マシアス(Adolfo Macías)、通称「フィト(Fito)」、およびジュニオル・ロルダン(Júnior Roldán)、通称「JR」という二人の麻薬王に率いられている。彼らの妻や愛人たちは、密かに組織の資金洗浄を行っていた。2023年5月、JRはコロンビアで殺害され、その後、ケース「ブランケオJR」として知られる資金洗浄事件が捜査されることとなった。検察は、JRの妻であるリセス・エルナンデス(Liseth Hernández)、および愛人のレイディ・レステレポ(Leidi Restrepo)を調査し、両者が1270万ドルを洗浄していたと確認した。
フィトの事件も最近爆発的に進展した。2025年6月3日、検察はフィトの家族6人に対して資金洗浄の容疑で起訴し、その中にはフィトの愛人であるベロニカ・ブリオネス(Verónica Briones)が含まれていた。また、妻であるマリエラ・ペニャリエタ(Mariela Peñarrieta)は現在も捜索中である。
エクアドルの当局によるとフィトの家族や愛人たちの資金洗浄活動を追跡した結果、2022年以降、彼らが関与した2300万ドル以上の不正な資金洗浄が明らかになっている。
美人コンテストの優勝者から犯罪のコーディネーターへ
美しさの裏に隠された暗い背景。それがエクアドルのいくつかの美人コンテスト出身の若い女性たちの運命であるように思われる。彼女たちは組織犯罪と結びつき、国を震撼させる見出しの主役となっている。
24歳のミルカ・シャニア・C・C.(Myrka Shania C. C.)は、2024年11月13日、作戦名「グラン・フェニックス381」で、凶悪なギャング「ロス・ペペス(Los Pepes)」の構成員とされる者たちと共に逮捕された。ロス・ペペスという殺し屋集団の一員として特定しされたからだ。2017年7月に全国コーヒー・クイーン(Reina Nacional del Café)に選ばれた通称「ミルカ・マル(Myrka Marú)」が軽く微笑んで写っている逮捕時の写真は、他の逮捕者たちとの対比で大きな反響を呼んだ。警察によると、「ロス・ペペス」は「ラガルトス(Los Lagartos)」の武装部隊であり、これらは「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」と関係があるからだ。マンタ市での少なくとも24件の暴力的殺人に関与しているとされているこの集団はロス・チョネロスを「絶滅させる」ことを目的に活動していた。検察の理論によれば、セデニョはロス・チョネロスのメンバーに対する11件の殺人事件や虐殺の調整に関与しており、その結果として18人が死亡、2人が負傷した。
犯罪現場の一つで警察が発見した携帯電話に、ミルカ・マルと、同じく起訴されたジョン・ハラミジョ(John Jaramillo)、通称「エリアス(Elías)」との会話が記録されていた。この会話の中で、セデニョは「ミシェル」という男性を殺す計画を語っており、この人物は「フィト(Fito)」ことアドルフォ・ビジャマル(Adolfo Villamar)、ロス・チョネロスの首領と関係があるとされていた。検察によれば、ミルカ・マルとエリアスはカップルであり、コロンビアのある都市に一緒に住む計画を立てていたという。二人はその地に家を持っていた。ミルカ・セデニョとジョン・ハラミジョに対する組織犯罪の捜査はすでに終了しており、現在はその起訴に関する判断が待たれている。
美人コンテストは、組織犯罪にとって完璧な隠れ蓑となっている。国際ビジネスの専門家アレハンドロ・パエス(Alejandro Páez)によれば、犯罪組織にとってこの種のイベントは二重の意味で魅力的である。すなわち、美しい女性たちをそばに置くことができ、かつ違法活動を隠蔽する手段にもなるという。経済・金融分析ユニット(UAFE)は、地方のコンテストのスポンサーを追跡するという重要な任務を担っている。ドレスの費用や、賞品としての自動車や不動産などの金額が、その資金源の正当性に疑問を投げかけている。
2024年のこれまでの時点で、440人以上の女性たちが犯罪組織との関係が疑われ、エクアドルで逮捕されている。その中にはロボスやチョネロスといったギャングと関係を持つ者たちも含まれる。
逮捕者の一人、ミシェル・マシアス(Michelle Macías)は、チョネロスのリーダーの娘であり、注目すべきケースの一つである。マンタ市の女王としての彼女の生活は、2021年の誘拐事件と、家族との犯罪的関係によって対照的なものとなった。
参考資料:
1. Las mujeres en la sombra del narco: parejas de capos ecuatorianos enfrentan la justicia
2. Día Internacional de la No Violencia contra las Mujeres: las cifras que muestran la realidad de las ecuatorianas
3. “Sumergible”, narcotráfico y realidad
4. Reinas del narco: de las pasarelas a los expedientes criminales
5. Landy Párraga y su comentario con una canción de ‘Las muñecas de la mafia’
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