国連先住民族問題常設フォーラム:「The Indigenous World 2024」を発刊

先住民族に関する国際作業部会(International Work Group for Indigenous Affairs:IWGIA)は、2024年4月16日からニューヨーク国連本部で開催される国連先住民族問題に関する常設フォーラム第23回会合の開催に合わせ『The Indigenous World 2024』を発表した。38回目の発表になる。

発行を祝うイベントでは「土地と自決に対する先住民の権利の尊重と促進:すべての人のための持続可能な未来の確保」をトピックに焦点を当て行われた。本イベントはデンマークが大きな貢献をしている。

本イベントは先住民族の指導者、専門家、その他の主要な権利保有者や利害関係者によるパネルが実施されるとともに、本書の編集テーマ(今年は土地、領土、資源に対する先住民族の権利に関するもの)に取り組むまたとない機会ともなっている。 

 

オープニングではIWGIA事務局長のカトリン・ヴェッセンドルフ(Kathrin Wessendorf)が司会を務め、デンマーク国連常駐副代表のエリック・ラウルセン(Erik Laursen)大使と、国連先住民族問題に関する常設フォーラムの現メンバーで前議長(2022-2023年)のダリオ・ホセ・メヒア・モンタルボ(Darío José Mejía Montalvo)が話した。

パネルに登壇するスピーカーは、さまざまな角度から土地の権利問題を探求している。まず、コロンビア大学人権研究所先住民族権利プログラム・ディレクターでありIWGIA理事のエルザ・スタマトプールー(Elsa Stamatopoulou)から、土地の権利と先住民族の尊厳について幅広い視点から説明がなされた。

その後、先住民族の土地の権利が、各国の状況においてどのように経験され、行使されているのかを聞く機会を持つ。サーミ先住民の弁護士であるエイリク・ラーセン(Eirik Larsen)は、現在サーミ評議会の人権ユニット長であり、ノルウェーのサーミ議会議員でもある。

アジア先住民盟約(Asia Indigenous Peoples Pact:AIPP)理事会青年代表のチャンドラ・トリプラ(Chandra Tripura)は、バングラデシュの土地の権利について語っている。

マサイ族の弁護士であり、先住民族NGOフォーラム(Pastoralists Indigenous NGOs Forum:PINGOs Forum)の事務局長であるエドワード・ポロクワ(Edward Porokwa)は、タンザニアの土地の権利について話している。

また、 ボリビア立法議会(Bolivia Legislative Assembly)の政治家で先住民の権利活動家であるトリビア・レロ・キスペ(Toribia Lero Quispe)が、ボリビアの土地の権利について話した。

そしてクリステンセン基金(The Christensen Fund)グローバル戦略ディレクターのケイシー・ボックス(Casey Box)がイベントを締めくくる。

 

先住民族の闘いの中心は、自己決定権の主張であり、その中でも土地、領土、資源に対する権利は中心的な部分である。先住民族は、自分たちの土地とその生物多様性に住み、統治し、保護するという自己決定権を主張する権利があり、将来の世代が、土地、領土、生活様式、統治システム、言語、文化に対する彼らの権利が尊重され保護される、より持続可能な世界を完全に享受できるようにする権利がある。

先住民族が自由意思に基づき、事前に十分な情報を得た上で同意する権利を有しているにもかかわらず、土地の強奪は先住民族が生活するあらゆる場所で起きており、政府、企業、支配的エリートなどの強力な勢力によって推進されている。先住民族の自然資源は、飽くなき世界的な需要のもとでますます狙われるようになっており、それはグリーン・トランジションのパラダイムによっても大きく後押しされている。

国連総会で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択され、先住民族の土地、領土、資源に対する権利の重要性が最も基本的な人権の一つとして特に認識されてから17年、先住民族は今日、植民地主義、気候変動、採掘産業からの増大し続ける圧力の累積的な影響の下で、時には命がけで土地防衛の最前線に立っている。

2023年には、世界に残された豊かで生物多様性のある生態系の大部分と、先住民族の故郷を守るために高い代償を払っている先住民族の人権擁護者と環境擁護者に対する攻撃が増加した。この闘いにおいて、先住民族の女性は、組織的な差別と、コミュニティにおける資源の世話人や管理者としての役割のために、不釣り合いな影響を受けている。『The Indigenous World 2024』には54の地域・国別報告書と17の国際プロセスに関する報告がまとめら得ている。本報告書に記載のない国においては先住民がいないわけでも、先住民問題がないわけでもない。未だ差別に苦しみ、先住民と明かすことで脅かされる生命がそこにあることを忘れてはならない。

 

『The Indigenous World』は、先住民族と非先住民族の活動家や学者が、先住民族の権利の状況を自主的に記録し、報告する共同作業のユニークな成果である。2024年発行版は2023 年を通して先住民族が経験した発展を記録・報告するものであり、先住民族の自決のための闘いの中心である土地、領土、資源に対する先住民族の権利に特に焦点を当てるものである。

Photo by Felipe Dana/AP

 

国連先住民族問題に関する常設フォーラムに合わせ各国では先住民に関するイベントが盛んに行われている。日本においても、ヤノマミ(ブラジル)からダヴィ・コペナワ(Davi Kopenawa)やウィトト(ブラジル)からヴァンダ・オルテガ(Vanda Ortega)が来日している。ヴィンダはウィトト出身だ。ウィトトと言えば飛行機の墜落事故40日間子どもたちだけで生き残ったとして一躍有名になった先住民である(詳細は#Operación Esperanza)。ヴィンダ自身もコミュニティに対する貢献度も高い。ソリモンエス川のほとりで生まれた彼女は学校に通うためマナウスに移住、8年間家政婦として働きながら、高校、大学に通った。マナウス市内にある先住民居住区にて教師・医療従事者として勤務する中、COVID-19パンデミックに突入した。行政の先住民に対する不当な扱いに抗議するとともに、COVID-19ワクチン接種を初めて受けた先住民女性としても広く知られている。現在はアマゾンの森と先住民の権利・文化の保護を訴える先住民女性のリーダーとして活躍している。

京都ではクラウディア・アンドゥハル(Claudia Andujar)がヤノマミのシャーマンであり彼らの代弁者であるダヴィの言葉やヤノマミアーティストとの共同作業の物語をアートを通じて語る。アンドゥハル自身は1931年スイスに生まれるが、ホロコーストの脅威からブラジルへと移住した。その後、写真家になった人物だ。

 

『The Indigenous World 2024』のダウンロードはこちらから

#PFII

 

参考資料:

1. The Indigenous World 2024 launching at the UN Permanent Forum on Indigenous Issues

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