メキシコ:市民団体、先住民擁護者に対する拷問について国連で国家を糾弾

(Photo:@CdhFrayb/Twitter

チアパス州トゥクストラ・グティエレス(Tuxtla Gutierrez)で開かれた記者会見で、フレイ・バルトロメ・デ・ラス・カサス人権センター(Centro de Derechos Humanos Fray Bartolomé de Las Casas:Frayba)は、恣意的拘禁に関する国連作業部会(Working Group on Arbitrary Detention:WGAD)に苦情を提出したことを発表した。Fraybaによる苦情はメキシコ国家とチアパス高地先住民司法検察局による、同地域の先住民人権擁護者に対する拷問と犯人捏造のパターンを糾弾する目的で行われた。

Fraybaは、32年にわたり、親族や拷問被害者に付き添ってきた。この間、さまざまな色の政権が誕生し、憲法や法律の改革が進められてきた。しかしFraybaによれば、拷問を伴う違法な拘束は依然として「チアパス州司法省の主な捜査方法」であり、その結果「正義を偽り、人権侵害の犠牲者で刑務所を埋め尽く」している。

 

Fraybaが国連に提示したのはチアパス州でパターンされている先住民の人権擁護者に対する犯罪化ケースだ。

ケース1:マヌエル・ゴメス・バスケス(Manuel Gómez Vázquez)

サパティスタ民族解放軍(Ejército Zapatista de Liberación Nacional:EZLN)支援基地のメンバーであるマヌエル・ゴメス・バスケスは2020年12月に恣意的に拘束された。無実の罪で不当に告発され、拷問と強制失踪を受け、その後刑事訴追された。逮捕から2年半以上が経過した現在も、メキシコ憲法が定める期限に違反し、判決を受けることなく公判前勾留されている。

ニュー・エルサレム(Nueva Jerusalén)にあるサパティスタ善政評議会 「El Pensamiento Rebelde de los Pueblos Originarios」の調査によれば、彼に対する告発はサパティスタへの信奉による犯罪行為であった。メキシコ憲法が2年という期限を定めているにもかかわらず、彼は予防拘禁という予防的措置の下で、つまり判決を受けることなく、恣意的に2年半以上拘禁されている。

https://twitter.com/CdhFrayba/status/1719380545938002253

 

ケース2:サン・フアン・カンクック(San Juan Cancuc)領土の5人の擁護者

マヌエル・サンティス・クルス(Manuel Santiz Cruz)、アグスティン・ペレス・ドミンゲス(Agustín Pérez Domínguez)、フアン・ベラスコ・アギラル(Juan Velasco Aguilar)、マルティン・ペレス・ドミンゲス(Martín Pérez Domínguez)、アグスティン・ペレス・ベラスコ(Agustín Pérez Velasco)は先住民ツェルタルである。彼らは恣意的に国家警備隊と軍隊を伴った警察によってコミュニティから連れ去られ拘束され、麻薬所持や警官殺害などの無実の罪を着せられ、その後受刑者社会復帰センター(Centro Estatal de Reinserción Social para Sentenciados:CERSS)No.5に連行された。Fraybaによる訴状によると、5人は「拘留報告書が虚偽の事実で捏造されており、別の自治体で麻薬所持容疑がかけられた」。被拘禁者たちはその後「犯してもいない殺人の罪」で裁判にかけられ、判決を受けた」。それも捏造された犯罪であったため、証拠に矛盾があることが判明したにもかかわらず、彼らは全員、加重殺人罪で有罪判決を受けている。これらの逮捕は、この地域の先住民の領土防衛と生活を抑圧する戦略の一環である。当局は「領土における道路インフラ・プロジェクトへの反対、そして領土を守るための組織化をしないよう」このような抑圧的手段をとっている。

 

両事例が示すように先住民司法検察局の加担、冤罪、拷問、公判前勾留の過剰な使用、武装勢力や地域当局の参加などはチアパスで「よく使われる」犯罪化パターンだ。これは「人権、土地、領土の擁護を模範的に処罰しようとする」恣意的なものである。パターンとして見えてくるのは先住民としての政治的権利、自治権、自決権の行使を犯罪化させること。そして検察庁の共犯的参加があげられる。ブレイクダウンすれば「冤罪、拷問、非公式な公判前勾留と虚偽の証人の過剰な使用、コミュニティ当局の参加、恣意的な自由の剥奪(PAL)、軍隊、国家警備隊(GN)、加担する司法のメンバーの参加による勾留、その一方での司法措置を与えない」というものだ。

Fraybaは、恣意的な拘束による被害と家族への心理社会的影響に対する補償を目的として、正義と6人の先住民の無罪を要求するため、国連国内人権委員会に提訴した。先住民の擁護者に対する恣意的拘束のパターンに鑑み、同NGOは、このような動きに終止符を打つためにはサン・クリストバル・デ・ラス・カサス教区の人権擁護者たちが受けている脅迫と自由剥奪の状況を可視化することが必要であり、根本原因の特定と再発防止措置の適用を求めている。彼らはまた、メキシコ政府の三部門が、この地域の先住民共同体に対してより一層の敬意を示すこと、そして「人権擁護者を犯罪者にすることをやめ、チアパス州における人権擁護者の活動を保障すること」を要求している。ミゲル・モントヤ(Miguel Montoya)神父は「政府がコミュニティの内部規則を尊重し、土地と農民の保護を支持すること、チアパス州の採掘主義と軍事化政策の推進するのを政府は支援しないこと」を求めている。チアパス州は集団的権利と天然資源を人々から剥奪しようとする国営企業や多国籍企業の参入を支持している。

コミュニティ擁護者の犯罪化は「個人とその家族に影響を与えるだけでなく、コミュニティ全体に対する侵略である」。政府とその司法機関は「コミュニティに対するショック状態」を作り出そうとしており、抑圧のメカニズムを維持し、先住民のアイデンティティの拠り所である領土や、そこで生活を守る人々を抹殺しようとするものだ。

https://twitter.com/CdhFrayba/status/1714420591006999031

 

2019年、チアパス州の拷問対策検察庁は800万ペソの予算を費やしたが、その根絶のための成果を示すことはなかった。それどころか、「違法な拘束や拷問行為に参加・実行する公務員に対する免罪が保証された」。2006年から2019年まで、チアパス州では拷問犯罪の責任者に対する有罪判決は記録されていない。同じ期間に、チアパス州人権委員会(CEDH)は、身体的・精神的拷問に関する674件の苦情を受理した。

メキシコ国家は、検察による捜査方法として拷問が用いられていることを否定しているが、人権センターは今年に入り、チアパス州において、家族からの通報や裁判官の要請による拷問の事例を30件受理している。同様に、2014年から2019年1月までの5年間に、イスタンブール議定書として知られる「拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の効果的な調査及び記録のためのマニュアル」の適用を求める要請をさらに55件登録している。マニュアルの適用に関するこうした要望は、公的機関においてマニュアルの適用を専門とする専門家の訓練や採用が行われていないことが原因である。チアパスは、法の支配が最も尊重されていない州のひとつであるとされている。メキシコ法の支配指数2021-2022によれば、司法制度の劣化が著しい。「制度的な対抗手段の不在、汚職との闘いの停滞、治安の悪化が、最も弱い立場の人々を恣意的に拘束する傾向につながっている」。メキシコ国家による先住民の拷問を糾弾するこの活動は、Fraybaに殺害予告までもたらす結果ももたらしている。

10月13日、14日、15日、「Hasta la Justicia: Juntando Fuerzas Contra la Tortura(正義の実現まで:拷問に反対する力を合わせよう)」の2023年会議が開催されており、公開書簡も開示されている。詳細はPronunciamiento del encuentro “Hasta la Justicia: Juntando Fuerzas Contra la Torturaから。

 

参考資料:

1. Frayba denuncia ante la ONU la fabricación de delitos a defensores de derechos humanos de San Cancuc, Chiapas
2. Frayba denuncia ante la ONU al Estado mexicano por tortura a defensores indígenas

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