エクアドル国会解散:サンドバルの分析、コレア後継者が大統領になれる可能性

(Photo:@MashiRafael/ Twitter)

[ 本記事はGKによるハビエル・ロドリゲス・サンドバル(Javier Rodríguez Sandoval、ウィスコンシン教育研究センター所属の統計分析家)による論説に基づいている ]

 

共和国大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)による国会解散を受け全国選挙管理委員会(Consejo Nacional Electoral:CNE)は、次回投票日を8月20日と定めた。それに伴い候補者の選定、選挙活動に費やせる期間は極端に短くなっている。このような状況下において力を発揮しやすいと考えられているのは安定した政治基盤を持ち、しっかりとした選挙運動を行うことのできる団体と考えられている。また、大統領選においては、候補となりうる潜在的な幹部候補を持つ組織が強いとも言える。

2月5日に開催された統一地方選挙は市民革命党(Revolución Ciudadana)が快勝だった。そのため大統領選でも市民革命党の勝利が予想され、世間では議論が始まっていまる。この選挙は、地方自治体における政治勢力図を塗り替える結果となった。しかし大統領が第一回選挙で確定するのは難しいのではないかとするのが、一般的な意見だ。

 

背景にアスアイにおけるフアン・クリストバル・ジョレト(Juan Cristóbal Lloret)の県知事選勝利が、圧倒的とは言い難かったことが挙げられる。有権者数50万人近い県で、マルセロ・カブレラとわずか3,000票差しかつけられなかった。ジョレトは個人の資質も高く、下院議員としての実績も全国レベル、メディア等への露出度も高かった。それにもかかわらず、知名度がはるかに低い候補者との差がほとんど見られなかったFuerza Compromiso Socialから出馬したマヌエル・アルバラド(Manuel Alvarado)とも27,000票の差しかなかった。

マナビ県やピチンチャで県における市民革命は2019年と同等の票を維持している。

キト市長選でパベル・ムニョス(Pabel Muñoz)が勝利したのは、現市長である同候補が、首都圏において最もコレア主義的傾向にあるで小教区で2019年の前任者ルイサ・マルドナド(Luisa Maldonado)よりも効率的に選挙を進められたからだった。

ロス・リオスでは、過去2回、市民革命の候補者、ウンベルト・アルバラド(Humberto Alvarado)がPSC候補者ジョニ・テラン(Jonny Terán)に敗れている。2019年選挙において、アルバラドは7人中5位だった。2023年は5人中3位で、当選者と13ポイントも差が開いていた。

グアヤス県市長候補である市民革命のアキレス・アルバレス(Aquiles Álvarez)がPSCのシンシア・ビテリ(Cynthia Viteri)を破って勝利している。この結果は驚きを持って迎えれた。しかし、それ以外の地域では、マルセラ・アギニャガ(Marcela Aguiñaga)が、社会・キリスト教系の県知事候補であるスサナ・ゴンサレス(Susana González)と実質的に同点となった。グアヤキルにおけるアルバレスの票がなければ、アギニャガが県知事選に勝てたかどうかは疑問が残る。それに対し、2019年選挙では社会キリスト教系候補カルロス・ルイス・モラレス(Carlos Luis Morales)が圧倒的な勝利を収めている。アルバレスのグアヤキルでの勝利は注目に値するものの、グアヤキルにおける選挙支持率の上昇にはつながっていない。近年、いくつかの区間選挙と大統領選挙のサイクルにおいて、グアヤキルの有権者は社会キリスト教からの候補者、コレア主義者に対し好意的であった。

 

ハビエル・ロドリゲス・サンドバルの分析におると市民革命が力を取り戻しているのは確かだ。しかしその選挙支持率が相対的に上昇しているとまではいうことはできない。なおこの状況は前回選挙(2021年)と同等であり、その時の大統領選挙第1回投票で1位だったアンドレス・アラウスは決選投票で現大統領ラッソに敗戦している。

2013年の大統領選挙第1回投票でコレア元大統領が57%の支持を獲、歴史的勝利を収めて以来、この10年間、コレア主義への支持は低下してきた。コレアの後継者として2017年にコレアが指名した候補者レニン・モレノ(Lenín Moreno)も第1回投票で有効票の39%しか獲得できておらず、2013年のコレアより18ポイントも少なかった。2021年のアンドレス・アラウスは第1投票で2017年のモレノより約7ポイントも少ない33%しか票を獲得できなかった。

世論調査結果によるとコレア主義への支持が低下し始めた2014年から2016年にかけて、人々の幸福感に対する認識にも変化が現れ、悪化し始めた。LAPOPのAmericasBarometerによると、2008年から2014年にかけて上昇傾向にあった国の経済状況に対する市民の評価もまた2014年から2019年にかけて反転し、ますますネガティブになった。

しかし理解すべき重要な点はコレア主義者が純粋に減っているということのみならあう、親コレイスタを自認し、当時の大統領の政権を承認し、彼の党に共感し、彼に投票し、再び彼に投票する意思がある人々もいること、そしてこのグループのでさえ、国の状況を以前より悪く認識するようになってきたということだ。

 

ある候補者の可能性を測る場合、その候補者の組織の強さを考慮することに加え、選挙が行われる世論の風行きを測ることが必要となってくる。エクアドルでは国に対する不信感が強まっている。世論調査会社Perfiles de Opiniónの発表によると、国の経済状況が改善すると考えている人はわずか5%、政治的な状況が改善されると考えている人は6%、国が正しい方向に向かっていると考えている人は4%しかいない。

ラッソが大統領になる前の2021年を喚起することは、現在の大統領選挙ではそれほど貢献しない。それどころか、コレア主義は以外の選択肢に有利な環境となっている。市民革命の課題は、前回の大統領選挙で失った票を回復するこにある。2021年、アンドレス・アラウスは第1ラウンドで1位通過した。むしろ2位だったラッソは3位のヤク・ペレス(Yaku Pérez)と接戦状態で決選投票にすら進めるかの瀬戸際にあった。それにもかかわらず決選投票でアラウスに負けた。

サンドバルによる分析によると2021年の大統領選挙でラッソが勝利できたのは政治家が当然のように唱えるシナリオに基づき「格差の克服」「民主化連合の結成」の結果ではない。ハビエル・エルバス(Xavier Hervas)やペドロ・フレイレ(Pedro Freile)の票の一部など、他のアクターの支持を得られたことはたしかだが、当選理由を説明するのに十分ではない。彼に勝利をもたらした機械的な理由は、第1ラウンドでヤク・ペレスに投票し、第2ラウンドで無効票となった有権者の組織的な傾向にある。

 

市民革命の勝利は確実ではない。今回の大統領選でまだ未解決の問題は、市民革命と先住民運動との同盟が成立した場合にどうなるかということにある。あるいは逆に、先住民運動が独自の候補者を擁立した場合、どれほどの影響をコレア主義派に与えるかである。最近、レオニダス・イサ(Leonidas Iza)が大統領選の予備候補を受け入れたことを考えると(詳細はこちら)、この具体的な分析は重要である。

さらに、コレアに対抗しうる人物を検討する場合、汚職との戦いや犯罪に対する厳しい対応という言説で成功すると考えられている中道右派の代替候補に焦点が当てられている。

 

世論調査会社Click Reportによると(詳細はこちら)出馬する人物が誰であれラファエル・コレア(Rafael Correa)の後継者に対する投票意思が強そうだ。その人物は次点であるヤク・ペレスと7ポイント以上の差をつけており、32.23%に支持されている。

 

今回のMuerte cruzadaに関する別記事はこちらから。

参考資料:

1. ¿Cuáles son las posibilidades del correísmo para las elecciones 2023?

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください