メキシコ:エル・チャポの息子オビディオ・グスマンの逮捕

エル・チャポ(El Chapo)グスマンことシナロア・カルテルの前代表ホアキン・グスマン・ロエラ(Joaquín Guzmán Loera)の息子で「エル・ラトン(El Ratón)」「チャピート(Chapito)」のニックネームで知られるオビディオ・グスマン(Ovidio Guzmán)がクリアカンで逮捕されてから1ヵ月以上が経過した。

2023年1月5日(木)早朝、メキシコの治安部隊によって実行された捕物劇は太平洋カルテルとつながりのある「ロス・メノレス(Los Menores)」派閥のリーダーであるオビディオ・グスマンに焦点当てたものだった。オビディオは逮捕場所からメキシコシティに移送され、そこで組織犯罪特別検察庁(FEMDO)に出頭、その後アルティプラーノ刑務所に移送されている。約半年にわたる情報収集活動の結果の逮捕だった。

 

逮捕から1カ月、父親エル・チャポが2015年に脱獄したエル・アルティプラーノ(El Altiplano)刑務所からオビディオ・グスマンはシナロア州のヘスス・マリアの町の住民に謝罪のメッセージを送った。メキシコのメディアによると、これはオビディオが獄中から送った2通目のメッセージとなる。

Milenioによるとオビディオは、「家族を通じ、彼の逮捕で終わった第二次エル・クリアカナソ(El Culiacanazo)で当局自身によって引き起こされた損害について全牧場(彼はそう呼ぶ)に謝りたい」と述べた。最初のメッセージは音楽を用いて構成し、北部の音楽グループ コディゴ・FN(Código FN)のコリドー「Soy el Ratón(私はラトン※)」を用いた。この歌は2019年に起きた「エル・クリアカナソ」と呼ばれる事件の後、オビディオのために書かれたものだ。

Soy el Ratónの話を続けると、これはホセ・エルネスト・レオン・クエン(José Ernesto León Cuén)が作曲し、グループCódigo FNが演奏するものだ。2021年にオヴィディオが最初に捕まりすぐに釈放※された2年後の2023年に公開されたもので、オヴィディオの人生を歌っている。

歌を通じ彼の兄弟アルフレドとアルキバルド、そしてエル90と呼ばれるヒットマンとの友情、エル・ラトンが戦わなかった理由(娘の命にあるとしている)、そして自分に代わって連邦軍を仲裁してくれた「ラ・プレバーダ(la plebada)」への感謝を表現した。また2019年の暴力事件が起きた後の「謝罪」についても強調している。

その一方現在、米国コロラド州フローレンスの最大警備刑務所ADX Supermaxに収監されている父親の不在についても以下の通り言及している。「俺はオビディオ、俺はグスマン、エル・チャポの息子、彼がここにいないのは辛く、彼がここにいないのは痛く、俺はいつも彼を尊敬している」と。この歌は販売するものではなくプライベートなパーティーで演奏しただけだとメンバーは語るも、すでにYouTubeをはじめとしたメディアでは拡散されている。麻薬組織のファッション、音楽など、世界にはサブカルチャー的に溢れている。

 

[歌詞]

“Soy El Ratón,
soy Ovidio soy Guzmán hijo del Chapo,
soy hermano de Alfredito y de Archivaldo,
y, por cierto, me disculpo
por lo del Culiacanazo.

Yo no peleé,
pues la vida de mis hijas fue primero,
y agradezco a la plebada el jueves negro,
se rifaron por mi cuero
con todos los del gobierno”.

 

作詞したエルネスト・レオン、またの名を「ティト(Tito)」レオンはCódigo FNのリーダーであり創設者である。Código FNは数年のキャリアを経て、2017年6月、それぞれの個人プロジェクトのために解散することを発表していた。当時ティト・レオンは「メンバー全員にとって非常に難しい決断だった」としながらも、「すべてのサイクルには終わりがあり、その章を閉じる時が来た」と強調していた。

しかし2021年、ボーカル、エドゥイン・カス(Eduin Caz)が友人とのパーティーで披露したことでこの歌は話題となった。バンドの解散は近いと思われたが、プロジェクト、コラボレーション、新作リリースは止むことなく、メキシコの地方音楽シーンで力を取り戻した。

 

グスマンの逮捕をきっかけに、衝突や襲撃が相次ぎ、メキシコ国民は警戒を強めていた。この緊張は地元の空港にも及び、空港は数時間閉鎖せざるを得なかった。なぜなら抗争を通じ、アエロメヒコの航空機に銃撃されたことによる。

2023年1月に発生したエル・ラトンの奪還をめぐる衝突は3日間続きヘスス・マリア(Jesús María)、クリアカン、その他の地域を戦場とした。オヴィエドが逮捕された木曜日は「黒い木曜日( jueves negro)」として知られている。なおこの先頭を通じて命を落とした29名のうち10人が軍人で、残りの19人はシナロア・カルテルのメンバーだった。

一方ジャーナリストのアズセナ・ウレスティが調査したところによると負傷者は軍側で35人で、2023年初めに起こったこの暴力の波は、その時点で21人の拘束者をもって終了している。衝突で命を落とした市民の中には、パレドネスという集落に住む14歳の少年も含まれる。当時の情報によるとオビディオ・グズマンの母親グリセルダ・ロペス・ペレス(Griselda López Pérez)は、軍隊と対立した殺し屋の葬儀費用も支払うことになったとされている。

米国の刑務所で終身刑に服しているエル・チャポには少なくとも4人の女性との間に10人の子供がいる。「ロス・チャピトス」として知られるヘスス・アルフレド(Jesús Alfredo)、イバン・アルキバルド(Iván Archivaldo)、アレハンドリナ・ジゼル(Alejandrina Giselle)、セザール(César)の4人はマリア・アレハンドリナ・サラザル・エルナンデス(María Alejandrina Salazar Hernández)との間にもうけた息子だ。最初の二人は100万ドルの報奨金とともにDEAに指名手配されている。コカインの帝王(イワン)として、さらにヘスス(通称アルフレディージョ)は、父親に代わって同国への麻薬流通のための物流を調整したとされている。警察の調査によると、アルフレドは、麻薬の販売による利益を集めるだけでなく、中南米から米国への麻薬の密輸をコーディネートしている。また、父親に関するあらゆるアイテムを販売する「Chapo Guzmán」ブランドのオーナーでもある。セザールは、麻薬密売に関連するビジネスには距離を置いていると言う。

グリセルダ・ロペス・ペレスとの間にはホアキン(Joaquín)、エドガー(Édgar)、オビディオ、グリセルダ・グアダルーペ(Griselda Guadalupe)が生まれた。クリアカンで捕まったオビディオは2008年から2018年にかけてコカイン取引に携わっていた。

 

エル・チャポの2番目の妻グリセルダ・ロペス・ペレスについては以下のことがわかっている。

1.80年代半ばに「エル・チャポ」の2番目の妻だった。
2. この結婚から、オビディオ、ホアキン、グリゼルダ・グアダルーペ、エドガーの4人の子供が生まれた。後者は2008年、ベルトラン・レイバ・カルテルとの抗争のさなか、クリアカンでチャポの手下によってショッピングモールで誤って射殺された。
3. グリセルダ・ロペス・ペレスは、アメリカ政府が発表した報告書以外には、ほとんど知られていない。
4. 外国資産管理局(OFAC)が彼女をシナロア・カルテルのオペレーターと認定した文書には、1959年8月19日生まれと記載されています。エルラトン奪還時、彼女は63歳だった。
5. 2010年5月、カーラ・ペレス・ロホ(自称)は、クリアカンの自宅で当局に見つかり、捕らえられた。
6. そこからSIEDO(Subprocuraduría Especializada en Investigación de Delincuencia Organizada)に移された。逮捕の理由は、金融システムに登録された金額が、財政公債省(SHCP)に報告した収入より多かったからだ。
7. 検察庁で供述した後、「法の留保の下に」釈放されたので、1日以上拘留されることはなかった。
8. それ以来、逃亡生活を続けており、行方がわからない。にもかかわらず、「黒い木曜日」の後に集められた証言は、彼女がヘスス・マリアの共同体と密接に連絡を取り合っていることを示唆している。
9. 2年後の2012年、米国財務省は彼女をエル・チャポが率いるカルテルの運営に関わる重要人物と認定した。

なおエル・チャポは2011年、Emma Coronelとの間に双子の娘も授かっている。

※逮捕後の釈放は国民にとって不必要な流血を避けるためとされている。
※スペイン語ラトン(ratón)は小型のネズミのことを言う。

麻薬に関する記事はこちらから。

 

参考資料:

1. Ovidio Guzmán, el hijo de “El Chapo” Guzmán envía mensaje desde la prisión: ¿Qué dice el hombre capturado en Culiacán?
2. Capturado Ovidio Guzmán, ¿quiénes son los otros hijos del “Chapo” Guzmán que siguen libres?
3. ¿Quién es la madre de Ovidio Guzmán? Griselda López pagaría los funerales de los sicarios que defendieron a su hijo
4. Cuál es el origen del corrido “Soy el Ratón”, dedicado a Ovidio Guzmán
5. Ovidio Guzmán: ¿Quién es José León Cuen, compositor del narcocorrido ‘Soy el Ratón’?

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