2022年ブラジル選挙:バイーア州、国内初の先住民族知事を選出

労働者党(Partido dos Trabalhadores:PT)候補のジェロニモ・ロドリゲス・ソウザ(Jerônimo Rodrigues Souza)は、元サルヴァドール市長でブラジル統一党(União Brasil)の書記長であるアントニオ・カルロス・マガリャンイス・ネト(Antônio Carlos Magalhães Neto、通称ACM Neto)を破り第52代州知事となる。第2回投票で52.77%という投票率を獲得したジェロニモは1965年4月3日生まれの自認する先住民である。57歳の彼は農夫ゼフェリーノ・ロドリゲス(Zeferino Rodrigues)と裁縫師マリア・セルケイラ(Maria Cerqueira)の息子としてサルバドールから約400キロ離れたバイーア州内陸部の人口5千人の町アイカラ(Aiquara)で生まれた。先住民出身者が同国で知事というポストを獲得したのは史上初。

第1回目の世論調査では、ACMネトがジェロニモ・ロドリゲスに大差をつけるという結果だった。しかし選挙中盤から終盤にかけて労働党は勢いを増し、10月2日の第1回投票日でジェロニモは勝利した。バイーア州の415の自治体のうち、352の地区で勝利しており、ACMネトの40.80%に対して49.45%の支持率だった。第1回投票の結果を受けACMネトからジェロニモへ支持を変えた人間もいる。サルバドール都市圏のイタナグラ(Itanagra)市長であるマルクス・サルメント(Marcus Sarmento、Partido Progressistas:PP)も、支持率変化の主因は第1回選挙での投票にあると明言している。

対抗馬だったACMネトは故アントニオ・カルロス・マガリャンエス(ACM)の孫、ルイス・エドゥアルド・マガリャンエス(Luís Eduardo Magalhães)の甥、アントニオ・カルロス・マガリャンエス・ジュニオール(Antônio Carlos Magalhães Júnior、レデ・バイア取締役)の息子という血統を持ち、国内で最も伝統ある政治家一族の後継者である。2012年にサルバドール市長に当選し、2016年に再選を果たしている。

ジェロニモの出馬は、今年に入ってから急遽決まったことだ。2007年から2014年にかけてバイーア州を統治し、2018年に上院議員に当選したジャケス・ワグネル(Jaques Wagner)が、労働者党の有力候補として浮上した。しかし、労働者党は同盟政党との結束を保つため、ワグネルを上院議員にとどめ、それまでルイ・コスタ(Rui Costa)の教育秘書だったジェロニモを立候補させることとした。そのためジェロニモは、バイーア州の教育相を辞職して州知事選に出馬することとなる。

ロドリゲスはフェイクニュースや州最大のメディアのオーナーである対立候補の攻撃に常にさらされ続けた選挙戦を耐え抜き勝利した。政治学者のレナト・フランシスキーニ(Renato Francisquini)がBrasil de Fatoのインタビューを通じ「州内における労働者党のキャンペーンの課題は、ジェロニモの名前を知らしめ、彼をルラ前大統領と結びつけること」の2つであったと分析している。

https://twitter.com/Jeronimoba13/status/1586866956174589954

 

ジェロニモはカトリック教徒で、聖母マリアに献身している。9歳の時、初めて故郷を離れ、この地方最大の都市ジェキエ(Jequié)に留学、レギス・パチェコ教育研究所(Estudou no Instituto de Educação Régis Pacheco)とポリバレンテ学校(colégio Polivalente)(いずれも公立校)で学んだ。

1987年、ジェロニモは(Universidade Federal da Bahia:UFBA)で農学工学を専攻し、農学修士号を取得している。大学はジェロニモが通うクルス・ダス・アルマス(Cruz Das Almas)という街にあった。在学中は、学生運動にも参加した。アイカラに戻り、コレジオ・ムニシパル・アメリコ・ソウト(Colégio Municipal Américo Souto)の教師、モアシール・ヴィアナ(Moacyr Viana)市長の下で市農業長官となった。修士課程に在籍しながら、フェイラ・デ・サンタナ州立大学(Universidade Estadual de Feira de Santana:UEFS)の応用社会科学部(Departamento de Ciências Sociais Aplicadas:DCIS)の教授となる。

 

ジャケス・ワグネル(PT)政権ではバイーア州科学技術イノベーション事務局顧問に就任、また、計画事務局チームにも参加した。1990年から労働者党のメンバーとなった。2011年には農業開発省副長官、領土開発省長官(Ministério do Desenvolvimento Agrário, Secretário Nacional do Desenvolvimento Territorial SDT/MDA)、プロテリトリー/イベロアメリカ首脳会議プログラム事務局長、農業開発省大臣(Ministro do Desenvolvimento Agrário)特別顧問を務めた。ルイ・コスタ(PT)政権においても、農村開発事務局の運営を担当した。2018年の選挙では、現バイーア州知事であるルイ・コスタの再選キャンペーンのコーディネーターを務めた。2022年、PT内での州政府候補選では全会一致で選ばれている。

ジェロニモは、農業エンジニアでレコンカボ・バイアーノ連邦大学(Universidade Federal do Recôncavo Baiano:UFRB)の教授であるタチアナ・ヴェローゾ(Tatiana Velloso)と結婚している。二人はクルス・ダス・アルマスで出会った。二人には愛息ジョアン・ガブリエル(João Gabriel)がいる。

 

なお、同日実施された大統領選挙は元大統領のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ(Luiz Inácio “Lula” da Silva)が返り咲いた。詳細はこちらから。

 

参考資料:

1. Jerônimo Rodrigues: Bahia elege primeiro governador indígena do país 
2. Indígena e professor: conheça Jerônimo Rodrigues, eleito governador da Bahia neste domingo
3. Quem é Jerônimo Rodrigues, governador eleito da Bahia

 

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください