ハイチ:燃料価格の高騰と犯罪の横行、物資不足で抗議デモ勃発

首都ポルトープランスで13日、燃料価格の上昇と度重なる犯罪への怒りで再び暴動が起きた。銃声が鳴り響き、道路にはブロック、燃えたタイヤが市道沿いに置かれ、デモ参加者は投石を続けた。今回のデモは、インフレが過去10年間で最も高くなったこと、慢性的なギャングの暴力でハイチの多くの地域に政府の手が届かない状態になったこと、対立するギャング間の血生臭い縄張り争いが勃発し、数百人が死亡、数千人が避難せざるをえない状態になっていることによる。

交通費は高騰し、多くの主食の価格も上昇している。数え切れないほどのハイチ人が終わりのない燃料探しに追われている。ガソリンとディーゼルの不足が深刻化し、一部の企業も閉鎖に追い込まれる可能性がある。なお当局はガソリン価格を2倍に、ディーゼル燃料を90%近くも値上げしている。今回発表された値上げではガソリンは1ガロン(3.8リットル)の価格が約2ドルから4.78ドルになった。一部のハイチ人は出国せざるをえない状態になるのではないかと懸念もされている。ハイチでは、多くの人が移動手段だけでなく、電気や調理にも燃料を頼っている。通信省もツイッターで、石油製品の輸入コストは「1カ月当たり90億グールド(約7620万円)に上り、国家公務員の月給の2倍に相当する」と述べた。この動きは、飢餓、治安の悪さ、インフレ、慢性的な燃料不足に対する抗議として、すでに国内の主要都市で起こっている抗議を激化させた。抗議者たちは、人口の半分近くが食糧難に陥っているときに、この値上げによって基本的な生活必需品の価格がより高くなると述べ、首相の辞任を要求している。

 

火曜日にソーシャルメディアには悲惨な状況が繰り返し流れていた。ある動画では、封鎖された通りをバイクで走ろうとする男性に、別の男性が石を投げつけて転倒させたり、ある動画では銃声の後、数十人のハイチ人が通りに散らばり、銃傷を負った人々が手当てを受けるシーンが流れた。アリエル・ヘンリー(Ariel Henry)首相とフランツ・エルベ(Frantz Elbe)国家警察(Police Nationale d’Haiti – PNH)長官は、暴力を抑制するために警察を支援するよう国際パートナーに要請した。

「ポルトープランス首都圏の複数の場所で、道路封鎖、タイヤ焼き、投石が行われているとの報告が多数寄せられている。在ハイチ米国大使館は、『治安情勢は予断を許さないため、不要不急の外出は避け、警戒を怠らないようにすること』とセキュリティ・アラートを発表している。

 

9月19日、アリエル・ヘンリー首相の国民に向けた演説の数時間後、各地は再び緊張状態に入った。ポルトープランスで死者1名、地方都市も負傷者が出た。略奪、破壊行為、暴力も起きている。国民に対して冷静になるよう日曜日に呼びかけた首相のメッセージは全くの逆効果で火に油が注いだ状態だ。

週末の2日間、デモは静まりを見せた。しかし月曜日になると上述の通り緊張は高まった。商業、商業銀行、行政は門戸を閉ざしたままで、首都は再び激動に見舞われた。

数十人のデモ隊がデルマス(Delmas)高速道路に棺を並べた。首相の葬儀の歌を象徴的に歌った。デモはデルマス32番地から、いくつかのグループを巻き込みながら大きくなり、「Si Ariel pa ale n ap mete dife」と唱和した。デモ隊は、銀行や企業に石を投げ暴力的になるも、略奪や破壊行為を恐れた国家警察によって退散させられた。

別のデモ隊は憲法広場(シャン・ド・マルス)を出て、経済都市ペティオン・ヴィル(Pétion-Ville)に向かった。モルヌ・ラザール(Morne Lazarre)に到着したデモ隊は、平和的ではあったものの、ハイチ国家警察から空砲や催涙ガスを浴びせられ、町に到着することはできなくなった。Radio Zenith FMの記者によると、首相官邸に向かっていたモルヌ・ラザールでは、武装した人物が群衆に発砲し、1名の死亡が確認されている。

北東部のフォート・リベルテ(Fort-Liberté)とテリア・ルージュ(Terrier-Rouge)では、高い生活費、石油製品の値上げ、アリエル・ヘンリー首相の辞任に反対するまたしても激しい抗議デモの端で、2人が銃弾で負傷した。

Morne Caillotでは、部門別緊急時対応センター(Centre d’opérations d’urgences départementales:COUD)と市民保護局の事務所が入った建物が完全に占領された。デモ隊はこれら2つの施設の建物を襲い、主に事務機器(プリンター、コンピューター、スキャナー、テレビなど)、衛生用品、その他の救急用品を持ち去った。

首相は国民向けの演説で、燃料はターミナルで入手できると発表していた。しかしタンカーによる積み込みやサービスステーションへの配給は不可能な状態でることから、実際に手に届く状態にない。同ターミナルのTwitterアカウントに投稿されたメッセージによると、ストレージセンターの周囲にバリケードが建てられ、トレンチが掘られ、オペレーター、従業員、トラックがそこに行くことができないという。状況はすぐには解決しそうにない。

同国は、2021年7月のジョヴェネル・モイーズ(Jovenel Moise)元大統領の暗殺(詳細はこちら)によって状態は悪化した。また司法や議会の機能不全もあって、長年にわたり深刻な危機に見舞われている。4年連続の景気後退、インフレ率は30%を超え、さらに2021年に発生した南部地震の被害が重なっている。

人権団体によると4月から7月にかけて、ギャングの衝突により少なくとも500人が死亡し、数百人が負傷、行方不明になっている。

 

参考資料:

1. Violent protests flare up in Haiti over fuel price hikes, rampant crime
2. Policía dispersa una nueva movilización en capital de Haití
3. Haïti/Protestation: malgré l’appel au calme de Ariel Henry, la population a regagné les rues ce lundi à Port-au-Prince et dans les villes de province/un mort et des blessés
4. Haiti sees more protests as fuel price hike worsens public anger
5. Citizens protest in southern Haiti over persistent crisis

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