2021年はラテンアメリカとカリブ諸国にとって重要となる選挙が目白押しだ。備忘として下記にまとめておく。まずはカレンダーから。
まず初めに伝えておかねばならないこととしては、今年は10個もの大型選挙がある。
そのうち6つは国の代表、つまり大統領を決める選挙があるということだ。また、2019年のデモンストレーションがきっかけとなり改憲が決定したチリにおいては、その憲法をどのようなものにするかを決めるメンバーを指名するもの、さらには3つの場所で立法府を選ぶこととなっている。
なお、コロンビアでは4月28日から続くゼネストにおいて、大統領の辞任も求めていて、万一国民の声が届く事があれば、その選挙も入ってくるかもしれない。ただし、大統領の弾劾においては １）調査が必要という判断を立法府や司法府がするようなスキャンダルが明るみになったとき ２）情報が開示されていない場合 に弾劾裁判の可否を議会で決定し、それに基づきプロセスを進めることになるという。コロンビア議会においては上院も下院もおおよそその過半数を与党で閉めているから、いくら混迷を極め、大臣も2名交代したからといえ、国民の声でひっくり返すのは難しいかもしれない。また、コロンビアにおいては来年大統領選挙を控えていることから、そこまでは持ちこたえたいというのも本音だろう。なお、コロンビアでは1985年から現在まで大統領弾劾発議の件数はゼロである。
エクアドル選挙についてはエクアドル大統領選2021：5月24日ラッソ新政権誕生で述べたとおりすでに次期大統領は元銀行家 のギジェルモ・ラッソ（Guillermo Lasso）が、久しぶりに左翼政権をひっくり返すという快挙をやってのけた。
また、ハイチにおいては大統領ジョヴネル・モイーズの任期をめぐり、引き続き反大統領派の抗議行動とともに政府による弾圧が繰り返されている。大統領任期は5年ではあり、モイーズが2017年2月7日に就任したことに間違いはない。ただし、2016年に就任するはずだった氏が着任できなかったのは、モイーズ自身の不正を原因とした選挙無効が結果として、その着任を1年間先延ばししただけであると野党は主張する。なお、これ以外にもモイーズは20年1月に任期が切れた国会上下両院議員の選挙も実施してこなかった。なお、モイーズは予定通り9月19日に大統領・国会議員選挙を実施、22年2月に退陣すると表明はしている。ハイチにはついて特筆すべき事がこれ以外にもある。それは改憲に対する国民投票だ。なお、草案作成は5月13日にスタートし、それを受け6月27日に国民投票が行われる。
どこもかしこも興味深く、重要な選挙ではあるがもう一つだけあげるとすればニカラグアがある。前回ダニエル・オルテガ（Daniel José Ortega Saavedra）が勝利した際に私は（選挙見学もかね）ニカラグアにいた。そして、選挙当日もオルテガが当選確実となった際にもオムテペ（Omtepe）島にいた。この時は、街でトランペットがなったりと大変賑やかだったと記憶している。当初よりオルテガ優位は伝えられていたものに、極めて勢いのある選挙だった。その後、夫人が副大統領となり、家族経営の政府体制には疑問を感じずにはいられない。（個人見解）。また、一部批評家の取り締まりも開始しているのが気になるところではある。オルテガの対抗馬は元大統領ビオレタ・チャモロ（Violeta Barrios de Chamorro）の娘クリスティーナ・チャモロ（Cristiana Chamorro）となる予定だ。オルテガは1990年の大統領選挙で同大統領ビオレタに負けている。長期政権が必ずしも悪いとは思わない。ただし、権力の集中や長期化した政権は追おうにして不正を招いたり、暴挙に出やすいのも確かだろう。日本だってそうである。自分たちがサンディニスタとしてアナスタシオ・ソモサ・デバイレ（Anastasio Somoza García）を倒した時のことも今一度思い出し、国にとってどうするのが良いかも考える時期に来ているのではないだろうか。
参考資料：
1. 2021 LATAM Election Calendar
2. Así se moverá el calendario electoral de América Latina y el Caribe durante el 2021
3. ラテンアメリカ諸国における 大統領弾劾成立の条件 ―分野横断型データセットを用いた ブラジルの事例をもとに―
4. Ortega Targets Opposition Figures As Nicaraguan Elections Approach
5. Cristiana Chamorro sueña con repetir la victoria de su madre ante Daniel Ortega: “Es urgente devolverle a los nicaragüenses su país”
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