エクアドルのダニエル・ノボア大統領(Daniel Noboa)率いる政府は2026年10月30日、2027年度の国家一般予算案を国民議会(Asamblea Nacional)に提出した。予算総額は502億1,300万ドルで、2026年度の修正後予算と比べて2.47%減少する。一方、年次投資計画には29億9,854万ドルを計上し、公共インフラや地方開発への投資を拡大する方針を示した。
予算案は、保健、教育、安全保障、社会保護、インフラ整備などに資金を配分しながら、財政赤字の縮小を目指す内容となっている。政府は、名目国内総生産(Producto Interno Bruto:PIB)を1,427億2,500万ドル、実質経済成長率を2.5%、年間平均インフレ率を2.2%と予測している。
財政赤字は44億1,185万ドルで、GDPの3.1%に相当する見通しだ。政府は、2026年度予算と比べて赤字を10億200万ドル縮小できると試算しており、ノボア政権下で最も低い水準になると説明している。
保健・教育・安全保障への配分
予算案では、幼児教育、基礎教育、中等教育に66億8,100万ドルを配分する。国民保健制度(Sistema Nacional de Salud)には58億5,500万ドルを計上するほか、大学および工科大学には16億5,200万ドルを充てる。
大学・工科大学向けの配分額は、2026年9月時点の修正後予算と比べて9,900万ドル増加し、増加率は約6.37%となる。さらに、学生の住居環境を改善し、高等教育を継続できるよう支援する国立大学寮プログラム(Programa Nacional de Residencias Universitarias)には5,480万ドルを計上した。
保健分野では、病院、医薬品、人員の採用、医療インフラ、医療機器などに資金を充てる方針だ。ただし、経済・生産開発省(Ministerio de Desarrollo Económico y Productivo)の発表では、国民保健制度に計上された58億5,500万ドルを各分野にどのように配分するか、具体的な内訳は示されていない。
市民の安全対策には42億5,100万ドルを配分する。対象には、国防省(Ministerio de Defensa Nacional)、国家警察(Policía Nacional)、内務省(Ministerio del Interior)、自由を剝奪された人々への対応を担う機関(Servicio Nacional de Atención Integral a Personas Adultas Privadas de la Libertad y a Adolescentes Infractores:SNAI)、統合安全保障システムECU 911(Sistema Integrado de Seguridad ECU 911)などが含まれる。
ノボア大統領は2024年以降、組織犯罪に対する「戦争」を宣言しており、安全保障は政府の主要政策課題の一つとなっている。今回の予算案でも、国防、警察活動、国内治安、刑務所制度などを担う機関への配分を通じて、安全対策を継続する方針を示した。
社会保障と給付金に14億ドル超
給付金、年金などの社会保護支出には、合計14億7,089万ドルを見込んでいる。
主な内訳は、人間開発給付金(Bono de Desarrollo Humano)とその変動部分に6億7,081万ドル、高齢者年金および「私の最良の年月(Mis Mejores Años)」プログラムに3億6,330万ドル、ホアキン・ガジェゴス・ララ給付金(Bono Joaquín Gallegos Lara)に1億4,448万ドルである。
また、障害のある人々への年金には8,916万ドルが計上されている。ホアキン・ガジェゴス・ララ給付金と障害者年金を合わせると、2億3,364万ドルとなる。
これらの給付金や年金は、社会的に脆弱な立場にある人々や高齢者、障害のある人々を支援するための支出として位置づけられている。
社会保障機関への移転は39億ドル超
社会保障機関への移転支出としては、合計39億5,500万ドルを計上する。内訳は、エクアドル社会保障庁(Instituto Ecuatoriano de Seguridad Social:IESS)に30億7,000万ドル、軍社会保障庁(Instituto de Seguridad Social de las Fuerzas Armadas:ISSFA)に5億4,600万ドル、国家警察社会保障庁(Instituto de Seguridad Social de la Policía Nacional:ISSPOL)に3億3,900万ドルとなっている。
この移転支出の総額は、2026年9月時点の修正後予算と比べて2億5,500万ドル増加する。
別の予算説明では、社会保障庁(IESS)に30億ドル以上を配分するとされている。これは、被保険者である労働者への医療支援や退職者への年金支給を担う同機関への資金として示された概数である。社会保障機関への移転支出の内訳に記された30億7,000万ドルとは、集計の示し方が異なるため、区別して扱う必要がある。
公共投資は約30億ドル、約23%増
年次投資計画(Plan Anual de Inversiones:PAI)には、29億9,854万ドルを計上した。2026年9月時点の修正後予算と比べて約5億6,300万ドル増え、増加率は約23%となる。政府は、公共事業やインフラ整備を通じて地域の交通、住宅、公共サービスの改善を進める方針だ。
主な投資事業には、グアヤス県(Guayas)のグアヤス川(río Guayas)に架ける第5橋(Quinto Puente)と南部高架道路(Viaducto Sur)が含まれる。また、ヤンボ―アンバト間道路(Yambo–Ambato)の拡幅、グアランダ―アンバト間バイパス道路(Paso lateral Guaranda–Ambato)、モナイ―IESS交通分岐施設(Distribuidor de tráfico Monay–IESS)の整備も計画されている。
このほか、住宅プログラム、アマゾン地域開発プログラム(Programa de Desarrollo Amazónico)、大学寮の建設、医療サービスの強化、エクアドル国立博物館(Museo Nacional del Ecuador)の建物、ヒピハパ中央市場(Mercado Central de Jipijapa)、エスメラルダス県(Esmeraldas)のタチナ公園(Parque Tachina)なども盛り込まれた。
機関別の投資予算では、インフラ・技術省(Ministerio de Infraestructura y Tecnología)に7億7,208万ドルを配分する。労働・人間開発省(Ministerio de Trabajo y Desarrollo Humano)には5億415万ドル、国防省には2億6,500万ドルを計上する見込みだ。
さらに、公衆衛生省(Ministerio de Salud Pública)には2億984万ドル、教育・スポーツ・文化省(Ministerio de Educación, Deporte y Cultura)には1億6,358万ドルを配分する。
これらの機関別金額は、各省庁の投資計画に関する配分であり、保健・教育分野全体に対する予算額とは集計範囲が異なる。
地方分権自治政府への配分は17%増
地方分権自治政府(Gobiernos Autónomos Descentralizados:GAD)には、2027年に43億4,600万ドルを配分する見込みだ。これは2026年9月時点の修正後予算と比べて約6億1,800万ドル、率にして17%の増加となる。
この資金は、領土的公平モデル(Modelo de Equidad Territorial)や各自治政府の権限に基づいて配分される。使途としては、上水道、下水道、道路インフラ、灌漑システム、環境管理、固形廃棄物処理などの公共事業やサービスが挙げられている。
地方自治体への配分額について、資料によっては増加額を6億1,700万ドルとしている。43億4,600万ドルという配分総額と17%という増加率は共通しているが、増加額には資料間で約100万ドルの差がある。
財政赤字は44億ドル、約136億ドルの借り入れを計画
政府の予測によると、2027年の財政赤字は44億1,185万ドルで、GDPの3.1%に相当する。政府は、2026年度予算と比べて赤字を10億200万ドル縮小できると試算している。
赤字などの資金需要を賄うため、政府は約136億ドルの借り入れを予定している。このうち77億1,100万ドルを国内から、58億8,800万ドルを海外の資金源から調達する計画だ。また、公的債務の元本返済には84億ドル以上を充てる。これは2026年と比べて約29%少ないとしている。
政府は、借り入れによって財政上の資金需要に対応しながら、赤字を縮小する方針を示している。今回の予算案では、歳入と歳出の見通しに加え、債務返済や資金調達の必要額も予算計画の前提としている。
税収と石油収入を歳入の柱に
2027年度予算案では、税収を200億ドル超と見込み、国家財政を支える最大の収入源に位置づけている。石油収入については、原油の年間生産量を1億6,560万バレル、輸出用原油の平均価格を1バレル当たり66ドルと想定した。
別の資料によると、エクアドルの原油生産量は日量約47万5,000バレルで、その約70%が輸出されている。石油は税収と並ぶ重要な歳入源であり、原油の生産量や国際価格の動向は、政府の収入見通しに影響する。
政府は、こうした税収や石油収入などを基に、保健、教育、安全保障、社会保障、公共投資および債務返済に必要な支出を見積もっている。
予算案の審議と承認手続き
今回の予算案は、国民議会に提出された段階のものであり、2027年度に実施される前に議会の審議を経る必要がある。報道資料によると、国民議会には提出後30日間の審査期間が設けられている。
政府は、公共サービスの提供体制を強化し、投資事業に資金を供給するとともに、財政赤字の削減を目指す計画だと説明している。保健や教育、安全保障、社会保護への配分を維持しながら、公共インフラや地方開発への投資を拡大することも柱となっている。
最終的な予算配分は、議会での審議やその後の予算執行の過程で変更される可能性がある。
参考資料:
1. Presupuesto Ecuador 2027: 20 cifras clave de la Proforma de Noboa
2. El Gobierno de Ecuador presenta un presupuesto de 50.213 millones de dólares para 2027
3. Gobierno de Noboa presenta Presupuesto 2027: ¿cuánto dinero se destinaría a salud, educación y seguridad?
4. Gobierno entregó la Proforma Presupuestaria 2027 a la Asamblea Nacional

No Comments