コロンビア大統領選挙2026:歴史協定イバン・セペダによる政策提案

(Photo:Caracol Radio/Claudia Hernández.)

イバン・セペダ(Iván Cepeda)は、2026年5月31日に実施予定のコロンビア大統領選挙において、「歴史協定(Pacto Histórico)」を代表する候補として立候補している。彼の政府綱領は「真実の力(El Poder de la Verdad)」と題されている。

同綱領の目的は、「コロンビアが開始した歴史的変革を深化させること」とされており、グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)政権で進められた諸改革の継続が明確に位置付けられている。

計画は11の分野を対象とし、社会変革、和平、経済改革、汚職対策、エネルギー転換、人権保障などを中心に構成されている。

また、セペダは国家変革の枠組みとして「4つの民主革命」を提示している。

・倫理革命
・経済・社会革命
・政治・民主主義革命
・領域(地域)革命

 

汚職対策

セペダは汚職を単なる個人犯罪ではなく、制度を支配し市場を歪め、地域社会から資源を収奪する「マクロ犯罪構造」と定義している。現状の不処罰率は約94%と見積もられており、その削減を目標としている。また、「共和国的緊縮(austeridad republicana)」を政府運営の原則として掲げている。

汚職対策として「国家マクロ汚職対策システム」の創設を提案しており、以下の5本柱を含む。

  • 情報公開と予防の強化(金融情報分析部門(Unidad de Información y Análisis Financiero:UIAF)、コロンビア汚職対策ポータル(Portal Anticorrupción de Colombia:PACO)、早期警戒システムの強化)
  • 検察庁内におけるマクロ汚職専門捜査ユニットの創設
  • 組織的汚職を扱う特別裁判機関の設置
  • 汚職被害者補償基金の創設
  • 不処罰が集中する地域への重点的介入と市民参加の強化

イバン・セペダは、グスタボ・ペトロ政権下で発生している汚職問題について、その存在を認めた上で、個別事案というよりも国家全体に根付いた構造的な問題であるとの認識を示したと報じられている。コロンビアの汚職については「特定の政権に限定されるものではなく、権力のあらゆる領域に浸透し、慣行として制度化・正当化されてきた」と述べたとされる。

その上で、ペトロ政権においても汚職事案が存在することを認め、「それは恥ずべき事実であり、大統領自身も認めており、歴史協定もその現実を理解している」と発言したとされる。一方で、こうした問題は左派・右派を問わず繰り返されてきたものであり、政権交代だけでは解決できない構造的課題だと位置づけている。

またセペダは、将来の政権運営に関して、現在の政権で発生している不正や腐敗を放置せず「根絶する必要がある」と強調したと報じられている。ただしこれは単なるスローガンではなく、制度改革や監視強化を通じて再発を防ぐ必要があるという趣旨で語られたものとされる。

被害者と人権

セペダは被害者政策を政権の中心に据えるとしており、真実・正義・包括的補償・記憶・再発防止の保障を優先する方針を示している。

また、政治組織「愛国連合(Unión Patriótica)」や農村・先住民コミュニティに対して行われた政治的ジェノサイドの国家承認を提案している。さらに、国家犯罪被害者運動との連携を重視し、倫理革命を国民和解の基盤と位置付けている。和平は司法的側面に限定されず、社会正義としても実現されるべきであるとされる。

外交政策と移民

外交政策では多国間主義、ラテンアメリカ統合、人権重視の路線を維持する方針が示されている。地域的外交関係の強化を通じて、コロンビアを気候変動対策および平和外交に積極的に関与する国家として位置付けることを目指す。

また、軍事化に反対し、国際人道法および多国間秩序の尊重を強調しており、外交政策はグスタボ・ペトロ政権の継続として位置付けられている。

移民については、犯罪ではなく「本質的に人間的現象」であると定義している。

その上で、「移動の自由は国際的最低基準によって保障されるべきであり、差別防止措置、迅速かつ公正な庇護手続き、個人の尊厳の尊重が必要である」としている。

包括的和平

イバン・セペダは、グスタボ・ペトロ政権が推進してきた「包括的和平(Paz Total)」政策の強化および制度化を、自身の主要政策の一つとして位置付けている。

同政策のもとで、セペダは非合法武装組織との交渉プロセスを強化し、旧コロンビア革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia:FARC)との和平合意の完全な履行を優先課題として掲げている。また、紛争被害者に対する真実・正義・補償のメカニズムの強化も重視している。

保健医療制度

コロンビアの医療制度改革については、現ペトロ政権が推進する予防重視型モデルの継続を明確に示している。

このモデルでは、一次医療の強化が中心となり、基礎医療チームが地域に常駐する体制の拡充が想定されている。また、公的医療システムの強化と医療サービスへのユニバーサルアクセスの実現が目標とされている。

経済政策

経済分野では、累進的な税制改革の実施が提案されており、これにより社会投資の拡大を図るとしている。

産業政策としては、農村開発、産業化、エネルギー転換を軸とした生産経済の強化が重視されている。また、食料主権の強化と農地改革の推進が掲げられ、農村家族への土地分配が政策の中心に位置付けられている。

さらに「人民銀行(Banco del Pueblo)」の創設が提案されており、低所得層および農村部への信用供与と金融包摂の拡大を目的としている。

加えて、「生命のための経済(economía para la vida)」という概念を提示し、資源採掘依存型経済からの転換と、環境的に持続可能な開発モデルの優先を掲げている。

 

政治的注目を求める広大な地域としてのアマゾニア

コロンビア最大の地域であるアマゾニア(Amazonia)は、大統領候補の関心を強く求めている地域である。国土の約40%を占める一方で、有権者は全体の約2%にとどまり、選挙における政治的優先順位との間に構造的な不均衡を抱えている。この地域は違法武装勢力による紛争や森林破壊といった危機の舞台である一方で、異なる統治モデルや自治制度が試みられる空間としても機能している。2024年12月には、アマゾニア地域のラ・リベルタ(La Libertad)コミュニティの住民状況が報告された。

アマゾニア地域は選挙のたびに構造的な矛盾を示している。国土の約40%を占めながら、有権者比率が約2%に過ぎないためである。このため、選挙戦略上の優先度が相対的に低く扱われる傾向が生じている。

しかし重要性は人口比に限定されず、気候システム、紛争構造、多民族国家としての統治実験という三つの側面で国家形成の中心的役割を担っている。

気候変動における国際的重要性

ポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research:PIK)は、アマゾニアにおける森林破壊が現在の約17%から22〜28%へ拡大し、地球の平均気温が産業革命前比で1.5〜1.9℃上昇した場合、森林の約3分の2が劣化林またはサバンナ型生態系へ移行する可能性があると警告している。

このためアマゾニアは地域問題にとどまらず、地球規模の気候安定性に直結する地域と位置づけられている。

地域構造と多様性

アマゾニアは単一の地域ではなく、複数の生態・社会構造を持つ空間として整理されている。東部のアマソナス県(Amazonas)、グアイニア県(Guainía)、バウペス県(Vaupés)では、先住民族による自治制度である先住民族領域機関(Entidades Territoriales Indígenas:ETI)の制度化が進んでいる。

一方、西部のカケタ県(Caquetá)、プトゥマヨ県(Putumayo)、グアビアレ県(Guaviare)は「森林破壊の弧」と呼ばれる地域を形成している。さらにメタ県南部とビチャダ県(Vichada)はアマゾニアとオリノキア地域の接続帯として機能している。これらの分類は「アマゾニア・リスニング(Escucha la Amazonía)」と呼ばれる9団体の連合体による整理に基づいている。

先住民族自治と国家統治

コロンビアは1991年憲法(Constitución de 1991)において多民族・多文化国家としての枠組みを規定している。アマゾニアはその理念の実装が最も進んだ地域の一つとなっている。

グスタボ・ペトロ政権は、先住民族領域機関(ETI)を8件正式化し、さらに14件が手続き段階にある。これらは先住民族政府が財政権限を含む自治運営を行う制度である。

エトノジャノ財団(Fundación Etnollano:FE)の副代表フアン・カミロ・ゴンサレス(Juan Camilo González)は、国家機関が他の統治形態との調整に遅れていると指摘している。また先住民族地域では森林破壊率が相対的に低いというデータも示されている。

さらにアマゾニアには63の先住民族と農民・アフロ系住民が居住し、6つの農民保護区が設置され、9件以上が申請中である。

森林破壊の動向

森林減少は年ごとに変動している。2023年には過去23年間で最も低い水準を記録したが、2024年には全国で43%増加し、そのうち68%がアマゾニア地域に集中した。

一方で2025年の初期データでは再び減少傾向が示されており、環境・気象・水文研究所(Instituto de Hidrología, Meteorología y Estudios Ambientales:IDEAM)によれば、1月から9月の間に森林減少は約25%減少したとされる。

政策課題としての森林・統治問題

環境・社会研究センター(Ambiente y Sociedad)の副代表バネッサ・トーレスは、違法経済の抑制と住民の権利保障を同時に進める必要性を指摘している。また森林保護を軍事的手段のみに依存すべきではないと述べている。

デフスティシア(Dejusticia)のパウロ・イリッチ・バッカは、土地利用計画の更新が進まず、61自治体のうち9自治体のみが更新を完了していると指摘している。

ガイア・アマゾニア財団(Fundación Gaia Amazonas)のクラウディア・ロドリゲスは、2024年の憲法裁判所判決によりカーボンクレジット事業に先住民族の事前同意が必要となったことを強調し、政策実装の遅れを課題としている。

環境省(Ministerio de Ambiente y Desarrollo Sostenible:MADS)は自主的炭素市場の規制を試みているが、法制度としての確定には至っていない。

安全保障と武装勢力

アマゾニアでは安全保障問題が依然として主要課題となっている。イバン・モルディスコ(Iván Mordisco)が率いる反政府勢力とフロンテラ・コマンドス(Comandos de Frontera)の間で対立が継続している。

政府は前者との和平交渉を停止し、後者についてはボリバル軍国家調整機構(Coordinadora Nacional Ejército Bolivariano:CNEB)の枠組みで対話を維持しているが、進展は限定的である。

ACTコロンビア(ACT-Colombia)のフアナ・ホフマン(Juana Hofman)は、アマゾニアに最大17の犯罪組織が存在し、その多くが国境を越えて活動していると指摘している。

また先住民族の初期接触コミュニティは特に脆弱であり、森林破壊と犯罪拡大の影響を受けやすいとされる。

国際連携と環境政策

環境・社会研究センター(Ambiente y Sociedad)のトーレスは、エスカス合意(Acuerdo de Escazú)の実施強化の重要性を指摘している。

またアマゾン協力条約機構(Organización del Tratado de Cooperación Amazónica:OTCA)首脳会議では、先住民族がアマゾニアを採掘禁止区域とする提案を行ったが、法的拘束力は確立されていない。

世界自然保護基金(World Wildlife Fund:WWF)のマウリシオ・マドリガル(Mauricio Madrigal)は、違法採掘対策と地域社会の権利尊重、さらに水銀被害地域の修復の必要性を強調している。

エネルギー転換と次期政権への課題

先住民族は鉱業・石油開発を含むすべての採掘活動の禁止を求めているが、政府は国際的には支持姿勢を示しつつも、国内法制化は未確定である。

現政権は国際舞台において気候政策で一定の前進を示したと評価されているが、今後はそれらを国内政策として実装することが次期政権の中心課題となる。

 

「これは5月31日に向けた調整会合だ」

大統領候補イバン・セペダは、カリブ地域スクレ県シンセレホ(Sincelejo)およびコルドバ県モンテリア(Montería)で行われた大規模集会をめぐり批判が出ていることを受け、説明を行った。

モンテリアでは北部のイベント会場において1,000人以上が参加する集会が開かれ、同候補はカリブ海地域での遊説を締めくくった。セペダはこの集会について「5月31日の投票日に向けた調整会合である」と述べた。同氏は次のように発言した。「誤解のないように言うが、最近は集会を開くたびに批判が出る。しかしこれは5月31日に向けた調整会合だ。この会場にいる人々は重要な指示を共有している。投票日に誰も家にとどまってはならない。朝早くから投票所に向かう必要がある」。

さらに選挙当日の行動についても支持者に呼びかけた。「投票日には最後まで現場に残り、投票箱が閉まった後も監視を続ける必要がある。不正を防がなければならない。5月31日には極右勢力を選挙で打ち負かす」。

セペダ陣営「セペディスタ(Cepedista)」は、コルドバ県で約60万票の獲得を目標としていると発表した。同県の有権者数は約139万4,973人とされる。

またセペダは、勝利した場合の政権運営について、グスタボ・ペトロ政権との移行作業を最優先すると述べ、「最初に行うのはペトロ大統領への敬意を示すことだ。ペトロ大統領は国民の権利と尊厳を守った人物だ」と語った。

政治的立場としては、2026年大統領選挙の構図を二つの路線の対立として説明している。一方はアルバロ・ウリベ(Álvaro Uribe)に代表される右派で、過去の暴力・貧困・汚職の延長線上にある政治と批判し、もう一方は歴史協定を中心とする左派で、社会改革や平等、経済転換を目指す路線だと位置づけている。

選挙討論会への不参加については、対立候補側が誤った前提や情報に基づいて議論を組み立てる傾向があること、また一部の政治勢力が外国の影響力に依存していることを理由に挙げ、コロンビアの選挙過程への外部介入の問題にも言及したとされる。

さらに自身の立場については、ペトロ政権との政策的継続性を明確にしつつ、政権運営上の問題点は修正すべきだという姿勢を示している。ペトロ大統領との関係性にも触れ、現政権の政策的枠組みを基本的に維持しながら、腐敗対策を強化する方向性を主張していると報じられている。

 

グスタボ・ペトロは5月26日、大統領選挙について「我々は生命に投票するか、死に投票するかである」と発言した。大統領はマグダレナ県シエナガ(Ciénaga)で開催された公開イベントを活用し、2026年5月31日に実施される選挙の重要性について言及した。

同イベントはシエナガの漁民および生産活動に従事する住民との会合であり、同大統領はコロンビア(Colombia)の現状に触れ、「我々は生命に投票するか、死に投票するかの局面にある」と述べた。

一方で大統領選挙そのものへの言及は限定的であり、自身に対して「起訴されようとしている」と述べた。これは、下院(Cámara de Representantes)内の調査・告発委員会(Comisión de Investigación y Acusación)が、政治活動への関与の疑いで職権調査を開始したことに関連する発言である。

シエナガのイベントでは、ペトロ大統領が漁業従事者の生活改善に関する複数の要請を行った。まず国家水産養殖庁(Autoridad Nacional de Acuicultura y Pesca:AUNAP)長官に対し、適応基金(Fondo de Adaptación:FA)の責任者と会合し、海岸回復の暫定的プロジェクトを推進するよう要請した。また、漁業者団体の強化を求め、生産性および産業化の向上を図る必要性を強調した。

さらに同イベントの最後には、サンタ・マルタ(Santa Marta:サンタ・マルタ)の漁民であり、2025年9月にカリブ海での米国の爆撃により死亡したとされるアレハンドロ・カランサ(Alejandro Carranza:カランサ)への追悼を行い、その遺族への早期補償の必要性を強調した。

 

イバン・セペダという人

セペダは、政治指導者マヌエル・セペダ・バルガス(Manuel Cepeda Vargas)およびイラ・カストロ(Yira Castro)の息子として生まれた。彼は左派に対する最も激しい迫害の中で成長し、幼少期を亡命生活の中で過ごし、キューバのハバナ(La Habana)およびチェコスロバキアのプラハ(Praga)で生活したとされている。5歳のときにはプラハでソ連軍の戦車侵攻を目撃したとされる。

その後、ブルガリアで哲学を学び、共産主義的正統派から離れ、批判的かつ独立した思想を形成したとされている。

1994年8月9日、愛国同盟で現職上院議員であった父親が、パラミリタリズムによって殺害されるという重大事件が発生した。この事件はセペダにとって最も深刻な打撃であったとされる。

その後セペダは報復ではなく司法的正義の追求を選択し、補償金を集団的な目的に寄付し、被害者運動モビセ(MOVICE)を設立したとされる。さらに、法的闘争を主導し、政治的権力に対する司法的圧力を生み出し、アルバロ・ウリベ・ベレス(Álvaro Uribe Vélez)の逮捕に至る歴史的な展開に関与したとされている。

#コロンビア大統領選挙2026 #IvánCepeda

 

参考資料:

1. Programa de Gobierno de Iván Cepeda: Propuestas del candidato del Pacto Histórico
2. “Esta es una reunión para coordinar el día 31 de mayo”: Cepeda tras masiva concentración en Montería
3. Cepeda reconoció casos de corrupción en el gobierno Petro y prometió “erradicarlos” si la izquierda sigue en el poder
5. La Amazonia, la región más grande de Colombia, reclama la atención de los candidatos a la Presidencia

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