(Photo:MATIAS DELACROIX / AP)
ホルヘ・グラス(Jorge Glas)元エクアドル共和国副大統領をめぐり、コロンビア共和国のグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)大統領は、人権状況の監視および保護を国際人権機関に要請した。
ペトロ大統領は、グラスをコロンビア国籍を有する人物であり政治犯であると位置付けたうえで、収監状況の監視に国際人権機関が関与する必要があると主張した。また、同氏の健康状態について生命を危険にさらす状況にあると述べ、深刻な栄養失調および著しい筋肉量の減少が確認されているとして、収監環境における人権侵害の可能性を指摘した。さらに、拘禁下にある人物を飢餓によって死に至らしめる行為は人道に対する罪であると述べ、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)エクアドル共和国大統領政権を批判した。
Jorge Glas es un ciudadano colombiano y es un preso político.
— Gustavo Petro (@petrogustavo) April 7, 2026
Solicito a los organismos internacionales de DDHH velar por sus derechos.
Su estado de salud compromete ya su vida porque, al estar prisión, no le han dado el suficiente alimento y sufre ya una severa desnutrición y… https://t.co/5KuxNgaK5f
これに対しノボア大統領は、国外から形成される「政治犯」という評価について、汚職事件に関する司法判断を覆い隠す政治的言説であると主張した。そのうえで、いわゆる政治犯という概念の再定義は主権への攻撃であり、米州機構(Organización de Estados Americanos:OEA)憲章第19条および国際法に基づく不干渉原則に反すると述べた。また、ノボア大統領は司法判断の正当性を強調し、「刑務所にはエクアドルに対して責任を負うべき有罪者がいる」と述べて政治的迫害との見方を否定した。
さらにノボア大統領は、エクアドル共和国がコロンビア共和国からの輸入品に対する関税を50%から100%へ引き上げ、5月1日から適用すると決定したことを受けた措置であると説明したうえで、この件に関するペトロ大統領の発言について主権への攻撃であり不干渉原則への違反であると批判した。
一方、ホルヘ・グラスの健康状態および拘禁環境については複数の証言が示されている。
ラファエル・コレア(Rafael Correa)元エクアドル共和国大統領は、グラスについてラテンアメリカで最も深刻な政治犯の一人であると述べ、身長1.83メートルに対して体重が約69キログラムまで減少していると指摘した。
またホルヘ・グラス本人は、常に空腹の状態で目覚め、日中および就寝時にも空腹が続いていると述べ、体重減少が約30ポンド(約13.6キログラム)に達していると主張したうえで、持続的な飢餓状態は拷問の一形態であると訴えている。
グラスは2025年9月にコロンビア国籍を付与されており、この手続きはグスタボ・ペトロ大統領の主導によるものである。国籍付与時点では、グラスはグアヤキルの最高警備刑務所「ラ・ロカ(La Roca)」に収監され、身体的危害を受ける危険性がある状況にあったとされる。
グラスの拘束は2024年4月から続いている。この拘束は、2023年12月以降メキシコ合衆国大使館に避難していた同氏に対し、エクアドル軍がダニエル・ノボアエクアドル共和国大統領の命令に基づき外交施設への不可侵原則を侵害して強制突入し、身柄を拘束したことに起因する。この際、当時のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドル(Andrés Manuel López Obrador)メキシコ合衆国大統領政権から外交的庇護を受けていた直後であった。この強制突入はメキシコ合衆国の主権侵害とされ、両国間の外交関係断絶につながった。
一方、ダニエル・ノボアエクアドル共和国大統領は、グラスが複数の事件で有罪判決を受けていることを強調した。具体的には、オデブレヒト事件における違法結社、2012年から2016年の賄賂事件、ならびにマナビ再建事業における背任であると述べた。そのうえで、国外から形成される「政治犯」という評価は汚職事件の司法責任を覆い隠す政治的言説であると改めて主張し、主権への攻撃および不干渉原則への違反であると批判した。
エクアドル・コロンビア間で通商対立と外交緊張が同時進行
エクアドル共和国はコロンビア共和国からの輸入品に対する関税を100%へ引き上げ、両国間の通商対立が一段と激化している。
エクアドル共和国のダニエル・ノボア政権は、2026年5月1日から「安全保障税」の名目でコロンビア産輸入品に対する関税を50%から100%へ引き上げると発表した。エクアドル共和国生産省は、コロンビア共和国が国境治安に関して具体的かつ効果的な措置を実施していないことが確認されたとし、この措置は国境を越えた麻薬密輸対策における共同責任を強化する目的であると説明した。
ダニエル・ノボア大統領はSNS上で、コロンビア共和国との合意形成は困難であるとの認識を示し、「我々がこの措置を導入して以来、北部国境における暴力死は33%減少した」と主張した。そのうえで、今後は犯罪および麻薬対策に真に取り組む政府とのみ対話が可能であると述べた。
これに対しコロンビア共和国のグスタボ・ペトロ大統領は、この決定を強く批判し、「アンデス協定の終焉を意味する」と述べたうえで、コロンビア共和国は域内枠組みから距離を取り、南米南部共同市場(Mercosur)への完全加盟を検討すべきだとの認識を示した。また、コロンビア共和国は麻薬対策を行っていないとの主張を否定し、エクアドル共和国政府が外部勢力の影響により現実を歪めていると反論した。
今回の関税引き上げは、すでに進行していた通商摩擦の延長線上にある。エクアドル共和国は1か月前にもコロンビア産品に対して関税を50%へ引き上げており、さらに原油輸送に関する追加課税も導入していた。
通商対立は当初、エクアドル共和国がコロンビア産品に対して30%の「安全保障税」を導入したことに端を発し、その後1か月以内に50%へ引き上げられた経緯がある。
アンデス共同体(Comunidad Andina de Naciones:CAN)は両国間の調停を試みたが、唯一の協議は合意に至らなかった。
エクアドル共和国外務省のガブリエラ・ソマフェルト(Gabriela Sommerfeld)外務大臣は、技術作業部会の協議日程が設定されていたものの、2026年4月8日に中断されたことを認めており、その要因はグスタボ・ペトロ大統領によるホルヘ・グラスに関する発言であると説明した。
外交関係の緊張
通商対立と並行して外交関係も緊張している。
エクアドル共和国は、コロンビア共和国政府に抗議文を送付し、在コロンビア・エクアドル共和国大使を召還した。これは、ペトロ大統領がホルヘ・グラスを「政治犯」と再び表現したことに対する対応であり、エクアドル側はこれを内政干渉と受け止めた。
一方コロンビア側も対応を強めており、グスタボ・ペトロ大統領は、コロンビア共和国のエクアドル駐在大使マリア・アントニア・ベラスコ(María Antonia Velasco)に対し「直ちに帰国するように」と指示した。これはエクアドルによる関税引き上げへの対応として行われたものである。
このように、両国はそれぞれの駐在大使の扱いを通じて相互に圧力を強めており、外交関係の緊張が一段と高まっている。
Los compromisos contra el narcotráfico los hice desde que inicié mi vida de lucha por la justicia social en Colombia. Yo no nací en casa de grandes bananeros o banqueros. Nací dentro del pueblo trabajador que no es narcotraficante ni lavador de dólares. Vive de su trabajo y de su… https://t.co/PP188CwQat
— Gustavo Petro (@petrogustavo) April 10, 2026
ホルへ・グラスとは
ホルヘ・グラスはエクアドル共和国副大統領であった人物である。ラファエル・コレア政権およびレニン・モレノ(Lenín Moreno)政権下で副大統領を務めた人物であり、石油資源分野を担当した。コレアはラテンアメリカにおける「21世紀型社会主義」を掲げた指導者であった。
グラスはその後、複数の汚職捜査の対象となり、政治的失脚状態に陥ったとされる。2024年12月17日にはキト市内のメキシコ大使館に避難を求めたが、治安部隊により拘束された。この事案は国際的な反発を招いた。
エクアドル共和国はこの問題について、ホルヘ・グラスに関する言及の停止を求め、対話を安全保障問題に限定すべきとの立場を示している。
この一連の動きにより、コロンビア共和国とエクアドル共和国の関係は、通商措置と外交対立が同時に進行する形となり、交渉による解決が困難な段階に達している。
#GustavoPetro #DanielNoboa #JorgeGlas
参考資料:
1. Petro solicita a organismos internacionales de DDHH velar por los derechos de Jorge Glas, exvicepresidente de Ecuador
2. Petro solicita a organismos de DD.HH. velar por derechos de Jorge Glas como preso político y colombiano
3. Petro ordena “venir de inmediato” a embajadora de Colombia en Ecuador: crisis entre ambos países
4. Petro ordena a embajadora en Ecuador venir de nuevo a Colombia tras aumento de aranceles del 100 %
5. Ecuador raises tariffs on Colombia to 100% and deepens the trade war

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