(Photo: Sofía Montoya- Radio Pichincha)
2026年3月8日、キト(Quito)の中心部で国際女性デー(8M)のデモが行われ、女性たちは歴史的権利の回復を訴えた。事前にエクアドル国内では、女性団体、社会団体、活動家たちが、沿岸部(Costa)、シエラ(Sierra)、アマゾニア(Amazonía)、諸島地域(Insular)の10都市以上でデモや集会、式典、フォーラム、公共行動などを呼びかけていた。
デモには約6,000人が参加した。参加者の主張は多様であるものの、共通のメッセージは明確である。女性や性の多様性を尊重する人々は、暴力や生活の不安定化、不平等に対抗して、命、権利、尊厳を守るために立ち上がるというものである。
行進中には、政権に対する直接的、かつ象徴的なスローガンも掲げられた。「ドナルド・トランプの政策は許さない(Abajo las políticas de Donald Trump)」「トランプの従者である大統領ノボアを退けろ(Abajo el empleado de Trump)」といった抗議の声が響いた。一方で、警察が催涙ガスを使用する場面もあった。
デモに向けたスローガンと音楽、詩の準備
3月8日を前に、各フェミニスト団体は、デモで唱えるスローガン、歌、詩を発表している。これらは、詩や音楽と政治的抗議を組み合わせるラテンアメリカのフェミニスト運動の伝統を反映している。
主なスローガンは以下の通りである。
- 「恐怖を逆転させろ(Que el miedo cambie de bando)」
- 「反ファシズムの女性たち(Warmi antifascista)」
- 「ファシズムと生活の不安定化に反対(Contra el fascismo y la precarización de nuestras vidas)」
- 「リズムと情熱で反ファシズムの反乱を(Métele sazón, batería y rebelión contra el fascismo)」
- 「闘うと言うなら、私は行く(Si llamas a luchar, yo iré)」
デモに参加する主体
8Mデモには、以下のような団体や運動が参加した。
- フェミニスト運動
- アフロ系住民団体
- 地域共同体組織
- 土地防衛活動団体
- 性と生殖に関する権利擁護団体
掲げられた要求は多岐にわたる。性と生殖に関する権利の擁護、フェミサイドや男性優位社会による暴力への反対、採掘事業などの自然資源開発(extractivismo)や軍事化への反対、ケア制度の充実や尊厳ある生活の保障である。また、団体らは「ファシズム」、「生活の不安定化(precarización)」、「国家や社会権利の解体」に反対するという、広範な政治的主張も掲げた。
深い感情が広がる中、数百の声が一つになり、エクアドルで起きたフェミサイド(女性に対する殺人)の犠牲者の名前を盛り込んだ「恐れなき歌(Canción sin miedo)」を歌った。
平和的デモを実施する国民に対し催涙ガスを使う政府
デモは、エクアドル社会保障機構(Instituto Ecuatoriano de Seguridad Social、IESS)が運営する建物、カハ・デル・セグロ(Caja del Seguro)前から始まった。この施設は、社会保障に関する行政サービスを提供するオフィスであり、キト中心部のサント・ドミンゴ広場(Plaza de Santo Domingo)までの行進の出発地点として使用された。
沿道には色とりどりの旗や音楽があふれ、長年の権利回復を訴える女性たちの姿が見られた。しかし、ダニエル・ノボア政権(Daniel Noboa)は軍隊を動員し、安全確保の名目で首都各所に部隊を配置した。この措置について、多くの市民団体やフェミニスト団体(コレクティボス)は、平和的抗議の性質と矛盾しているとして批判している。
デモは午前9時45分頃、カハ・デル・セグロから出発した。しかし、首都各所に展開された軍隊の姿は、子どもや若者、女性、多様な性の参加者による平和的かつ世代を超えた行進の雰囲気と大きく対照的であった。
デモはサント・ドミンゴ広場で最高潮の緊張を迎えた。女性グループがシュクレ像(Monumento a Sucre)を覆っていたプラスチックを取り除き、象徴的にジェンダー暴力に抗議する行動を行った。その瞬間、国家側は即座に行動を起こし、オートバイで駆け付けた警察部隊が女性たちに催涙ガスを放った。この対応についても、諸団体から「平和的抗議に対する過剰な対応」として強く批判されている。
初期の混乱と息苦しさにもかかわらず、デモ参加者の決意は揺るがなかった。現場からは「催涙ガスが発射された後も警察を退かせることができた」という証言が伝えられている。
今回のデモは、物理的な暴力に抗議するだけでなく、社会構造として存在する暴力に対する抗議としての側面も強いものとなった。
🟣#8M | Desde la Caja del Seguro partió la marcha de organizaciones y colectivas feministas. Avanza por la avenida Patria hacia la avenida 6 de Diciembre, hasta llegar a la plaza de Santo Domingo, en el Centro Histórico de Quito. Durante el recorrido se escuchan consignas como:… pic.twitter.com/tC20gYijyh
— Radio Pichincha (@radio_pichincha) March 8, 2026
🟣 #8M | Elementos de la @PoliciaEcuador lanzaron gases lacrimógenos contra las mujeres que se concentran en la Plaza de Santo Domingo. Algunas resultaron afectadas y reciben ayuda.#LaRadioDeLasNoticias pic.twitter.com/lwY7amsMAZ
— Radio Pichincha (@radio_pichincha) March 8, 2026
警察が退去した後、女性団体はシュクレ像にフェミニズム運動を象徴するメッセージを施し、サント・ドミンゴ広場を文化的抵抗の舞台に変えた。
広場では、バツカーダ(batucadas、ブラジル発祥の打楽器パフォーマンス)やさまざまなパフォーマンスも行われ、抗議活動は平和的かつ創造的な表現の場となった。
生活の不安定化に反対する声
今回のデモは、物理的な暴力だけでなく、社会構造として存在する暴力にも抗議するものであった。
キト・ネーション・キツ・カラ(Kitu Kara)出身のシンチ・ゴメス(Sinchi Gómez)は、参加者たちの疲労感を次のように表現した。「私たちは生活の不安定化やケア制度の解体に疲れています。女性の命は大切であり、私たちは抵抗を続けます」。
また、エクアドル先住民族キチュア民族連盟(Confederación de los Pueblos de Nacionalidad Kichwa del Ecuador:Ecuarunari)の指導者、エリアナ・パカリナ・チャンプティス(Eliana Pakarina Champutiz)は、父権制(Patriarcato)との闘いには包括的で共同体的な視点が必要であると強調した。「私たちの共同体的な生活や感じ方を反映する、包括的で集合的、そして循環的な世界観を維持することが不可欠です」。
これらの発言は、エクアドルにおける国際女性デーが、国家による放置に対抗する政治的な尊厳の表明であることを示している。
全国的な要求リスト
キトのデモの波は、コスタ(Costa)、シエラ(Sierra)、アマゾニア(Amazonía)、そしてガラパゴス諸島を含む諸島地域(Insular)の10都市以上に広がった。参加した女性たちの多様性に応じて、要求内容もさまざまであった。
- 身体的自律(Autonomía Corporal)
フェミニスト団体「スルクナ(Surkuna)」は、「自由な中絶なしに“ニ・ウナ・メノス”はない(Sin aborto libre no hay Ni Una Menos)」を掲げた。妊娠中絶や性・生殖に関する医療サービスへのアクセスは、女性の自律性を保障する基盤として位置づけられている。 - 産科暴力(Violencia Obstétrica)
エクアドル産科暴力オブザーバトリー(Observatorio de Violencia Obstétrica del Ecuador)は、国内で女性の権利を侵害する医療行為が続いていると警告している。同団体によれば、同意なしの検査や侵襲的な医療介入、合法的な中絶の拒否が問題として残っており、とくに先住民、アフロ系住民、農村部の女性、若年女性への影響が大きいという。 - 反人種差別と土地・環境問題(Antirracismo y Territorio)
アフロ系住民団体は、キト(Quito)のデモで反人種差別ブロックの参加を呼びかけた。これらの団体は、黒人の記憶や祖先伝来の文化を守り、構造的人種差別に抗議することを目的としている。また、その他の団体は鉱山開発や資源開発(extractivismo)による自然破壊や環境損失への反対を明確に示し、先住民や農村部コミュニティの領域保護を訴えた。 - 性と生殖に関する権利(Derechos sexuales y reproductivos)
フェミニスト団体は「自由な中絶なしに“ニ・ウナ・メノス(Ni Una Menos)”はない」というスローガンのもと、性・生殖に関する権利の保障を訴えた。中絶やリプロダクティブヘルスへのアクセスは、女性の自律性を守るための不可欠な条件と位置づけられている。
🟣#8M | “Este día venimos a resistir y a luchar. La lucha solamente se resiste estando juntas”, expresó Karla Viteri, del Bloque de las Kilomberas, durante la movilización del #DiaInternacionalDeLaMujer.#LaRadioDeLasNoticias pic.twitter.com/C1ikzD9N0f
— Radio Pichincha (@radio_pichincha) March 8, 2026
8M前の準備活動:ワークショップ、ポスター作り、ダンスによる訓練
国際女性デー(8M)に先立つ行動は、3月6日以前から各地で始まっていた。パスタサ(Pastaza)のプヨ(Puyo)では、地域ごとの闘いをつなげるための集会が行われた。キト(Quito)では、主要なデモに参加する前に、キト・ネーションの拠点であるカサ・キト・カラ(Casa Kitu Kara)で「ケア」を権利として考えるワークショップが開催され、政治的な意義について議論がなされた。
フェミニスト団体はキトやリオバンバ(Riobamba)でポスター作り(carteladas)、ワークショップ、集会を行った。これらの活動はデモに向けた準備であり、参加者はスローガンやアート表現、デモ隊のブロック編成を練習した。ワークショップや集会は、組織力、創造性、共同体の力を高めることを目的としている。絵画、ダンス、パフォーマンス、交流を通じて、各団体は3月8日に街を権利、平等、暴力のない生活を求める声で満たす準備を進めていた。
性的多様性を祝うポスター作りとワークショップ
3月7日土曜日午前11時、キトの現代美術センター(Centro de Arte Contemporáneo:CAC)では、8Mに向けたポスター作りが行われた。性的多様性に関わる団体が主催し、女性、LGBTIQ+の人々、アライ(支持者)、活動家が集まり、デモで掲げるポスターやスローガンを制作した。主催団体は作業用の段ボールやスペースを提供し、参加者は絵の具や筆を持参して制作に参加した。この集会は、デモにおける性的多様性の存在感を強化し、交流や連帯を深める場ともなった。
3月6日金曜日には、ラ・ガスカ(La Gasca)地区のカサ・デル・アルテ・アンブランテ(Casa del Arte Ambulante)で「通りを占拠するためのパフォーマンスラボ(Lab performágico para ocupar la calle)」が開催された。参加者はフェミニスト・パフォーマンスの共同創作に取り組み、3月8日のデモで実践するための表現を準備した。目的は「身体・心・情熱を使い、怒りを集合的行動に変える」ことであり、街頭での存在感を組織化することがテーマであった。
これらの事前活動は、フェミニスト運動が単にデモ当日に始まるものではなく、アイデア共有、スローガン創作、組織力の強化を目的としたものであることを示している。
リオバンバでの共同ポスター作り
リオバンバでもコレクティボスが共同ポスター作りを呼びかけた。日時・場所は3月7日金曜日午後4時30分、ポリデポルティーボ・デ・ラ・シウダデラ・ラ・ポリテクニカ(Polideportivo de la Ciudadela La Politécnica)である。参加者は自身のポスターやスローガンを制作するだけでなく、集まった人々との交流を通じ、この闘いが歴史的、集団的、かつ深く政治的なものであることを確認した。
ダンスによるデモ準備
3月7日土曜日午前10時からキト中心部のクマンダ公園(Parque Cumandá)で行われたのは「8M前トレーニング – ブロック:生きる身体(Cuerpas Vivas)、音楽と動き(Música y Movimiento)」である。内容は身体と動きを通じたデモの準備であり、振付やステップ、デモ中に行う動きを練習した。目的は、公共空間を身体、音楽、集合的エネルギーで占有し、身体そのもので抗議の表現を行うことであった。
無料で事前経験が不要な本活動に対し、主催者は「私たちは身体を動かすために集まる。骨盤も声を持つし、汗もスローガンである」と述べている。
エクアドル国内のフェミニストデモ集合場所・時間一覧
2026年3月8日、国内各地でフェミニストによるデモが行われた。以下は各都市での主要集合場所と時間の一例である。
シエラ地域(Sierra)
- キト(Quito):午前9時30分、IESS(カハ・デル・セグロ)
- イバラ(Ibarra):午前9時、ポリデポルティーボ・ロス・セイボス(Polideportivo Los Ceibos)
- アンバト(Ambato):午前10時30分、セグンダ・コンスティトゥエンテ広場(Plazoleta Segunda Constituyente)
- リオバンバ(Riobamba):午後3時、子ども公園(Parque Infantil)
- クエンカ(Cuenca):午前9時30分、プエンテ・ビバス・ノス・ケレモス(Puente Vivas Nos Queremos)
- ロハ(Loja):午前10時、市中心部
沿岸部(Costa)
- グアヤキル(Guayaquil):午前10時、センテナリオ公園(Parque Centenario)
- バヒア・デ・カラケス(Bahía de Caráquez):午前9時、オベリスク前(El Obelisco)
- サント・ドミンゴ(Santo Domingo):午後3時、サラカイ公園(Parque Zaracay)
- エスメラルダス(Esmeraldas):午後3時、ラス・パルマス海岸沿い(Malecón de Las Palmas)
アマゾニア(Amazonía)
- スクンビオス(Sucumbíos、エル・レベントラドル El Reventador):午前9時30分
- プヨ(Puyo):3月6日から事前行動
諸島地域(Insular)
- サン・クリストバル島(San Cristóbal)、ガラパゴス(Galápagos):午後1時、エル・プログレソ地区(sector El Progreso)
3月8日前のフェミニスト行動
全国的なデモに先立ち、中心的行動の前にも複数の事前活動が行われた。
- 3月6日:パスタサ州(Pastaza)のプヨ(Puyo)、ラ・シェブロレ(La Chevrolet)地区でフェミニスト集会が開催された。地域ごとの闘いをつなぐことが目的であった。
- 3月7日:全国各地で事前行動が行われた。
- ラタクンガ(Latacunga):午前9時、サルト広場(Plazoleta del Salto)
- ポルトビエホ(Portoviejo):午前10時、ラス・ベガス公園(Parque Las Vegas)、バン・ロホ(Banco Rojo)とマチルデ・イダルゴの壁画付近
- トゥルカン(Tulcán):午後3時、ウニオン・デ・ラス・ドス・カジェス(Unión de las Dos Calles)
- スクンビオス(Sucumbíos):午後6時30分、バンエクアドル(BanEcuador)でのフェミニスト夜の集い
参考資料:
1. Quito: Mujeres exigen reivindicación de derechos históricos; Policía les reprime con gas
2. Día de la Mujer: Esta es la guía de marchas, consignas y causas feministas que se tomarán las calles de todo el país
3. Talleres, carteladas y danza: así se preparan las colectivas para la marcha feminista del 8M

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