アルゼンチン:「ミッシングリンク」とされる小型恐竜アルナシェトリを確認

(Photo: EFE)

アルゼンチン・パタゴニア(Patagonia)北部リオネグロ県(Rio Negro Province)の白亜紀化石産地、ラ・ブイトレラ(La Buitrera)で発掘された小型恐竜アルナシェトリ・セロプロリシエンシス(Alnashetri cerropoliciensis)の化石は、ほぼ完全な骨格で保存されていた。この標本は鳥類に似た小型恐竜の一群であるアルヴァレズサウルス類(Alvarezsauroids)の進化史における「ミッシングリンク(missing link)」である可能性が示された。

ミッシングリンクとは、進化の過程で既知の2つの生物群をつなぐ中間的な形態を持つ化石や生物を指す。19世紀にチャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)の進化論をめぐる議論の中で広まり、「失われた環」を意味する表現として用いられてきた。現在の進化生物学では、進化は直線的に進むものではなく枝分かれする系統樹であると理解されているため、より正確には「中間的形態」と呼ばれる。しかし進化の空白を埋める重要な標本という意味で、分かりやすく「ミッシングリンク」という表現が使われることが多い。

研究は、米国ミネソタ大学ツインシティーズ校(University of Minnesota, Twin Cities)のピーター・J・マコヴィッキー(Peter J. Makovicky)教授と、アルゼンチン・マイモニデス大学(Universidad Maimónides)のセバスティアン・アペステギア(Sebastián Apesteguía)が主導し、ジョナサン・S・ミッチェル(Jonathan S. Mitchell)、ホルヘ・G・メソ(Jorge G. Meso)、フェデリコ・A・ジアネキニ(Federico A. Gianechini)、イグナシオ・セルダ(Ignacio Cerda)らと共同で行われた。研究成果は学術誌『Nature』に発表された。

 

発見の経緯

化石は2014年、ラ・ブイトレラでほぼ完全な状態で発見された。初めての標本は2004年に不完全な後肢2本として発見されており、今回の標本は12年間にわたる精密な準備と分析を経て公開された。化石は、砂丘で迅速に埋没したことにより極めて良好に保存され、関節も生前の姿勢のまま残っていた。

アペステギアは「ラ・ブイトレラは小型恐竜やその他の脊椎動物について、南米で他に類を見ない洞察を与えてくれる」と述べた。ラ・ブイトレラは、初期ヘビナジャシュ(Najash)、小型哺乳類クロノピオ(Cronopio)、小型草食爬虫類プリオスフェノドン(Priosphenodon)、小型恐竜ジャカピル(Jakapil)、ブイトレラプトル(Buitreraptor)など、多様な小型脊椎動物の化石を産出する重要な研究拠点である。

 

アルナシェトリの特徴

アルナシェトリは、南米で知られる最小級の恐竜であり、体重は約0.7kg、全長は約70cm、その大部分は尾で占められる。見つかったのは満4歳の成体であった。前肢は発達しているが飛行は不可能で、尾は長く、軽快に砂丘を移動できる体型であった。

鋭く頑丈な歯は小型のヴェロキラプトル(Velociraptor)に似ており、後のアルヴァレズサウルス類が昆虫食(myrmecophagous)に適応する以前の特徴を保持していた。体型はニワトリに似ており、乾燥した砂漠環境のココルコム(Kokorkom、マプチェ語で「骨の砂漠」)で生活していた。

アルヴァレズサウルス類は一般に小型で、短く強靭な前肢、細長い後肢、軽量な頭骨を持ち、羽毛を備えていた可能性が高い。アルナシェトリもこの特徴を部分的に持ち、鳥類に似た形態を示すが、鳥類とは遠縁の関係である。

 

進化史への影響

系統解析の結果、アルナシェトリはアルヴァレズサウルス科に属さない基盤的系統に位置することが明らかになった。これまで仮定されていた進化的な小型化(evolutionary miniaturization)のモデルは修正され、むしろ体サイズの狭い範囲での反復的進化が示唆された。

生物地理学的解析により、アルヴァレズサウルス類はパンゲア大陸起源であり、初期進化史は分断(vicariance)が主要因であったと推定される。南米標本は多系統(polyphyletic)であり、北半球の標本との比較により、大陸の分裂による分布の変化が確認された。

マコヴィッキー教授は「断片的で解釈が難しい骨格から、ほぼ完全で関節のついた動物を得ることは、古生物学におけるロゼッタ・ストーンを見つけたようなものだ」と述べている。

 

アルナシェトリの意義

アルナシェトリは、南米で知られる最小級の恐竜であり、最も完全なアルヴァレズサウルス類の標本の一つである。
この標本は、後期白亜紀の昆虫食アルヴァレズサウルス以前の形態を保持しており、その進化的意義は非常に重要である。

また、アルナシェトリは多系統性の存在を示しており、初期進化史の修正にとって重要な参照標本となる。
さらに、パタゴニアは大型恐竜だけでなく、小型恐竜の化石のホットスポットであることを再確認させてくれる。

アペステギアは「アルナシェトリのような最小級恐竜が生きていた時代は、『南半球の巨人の時代』と呼ばれるが、多様な小型生物が共存していた時代でもあった」と述べている。

#恐竜 #Patagonia

 

参考資料:

1. Identifican en Argentina el ‘eslabón perdido’ de un misterioso grupo de dinosaurios
2. ‘Exquisite’ fossil of one of the smallest dinosaurs found in Argentina
3. Makovicky, P.J., Mitchell, J.S., Meso, J.G. et al. Argentine fossil rewrites evolutionary history of a baffling dinosaur clade. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10194-3

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