COP27気候変動サミット:ルラ時期大統領の当選でアマゾンや気候変動対策はどうなるか

(photo by UNclimatechange

ブラジルアマゾンの森林破壊と悪化が急激に進んでいる。ジャイル・ボルソナロ(Jair Messias Bolsonaro)大統領による経済対策を盾に生物の多様性を軽視し、そこに住む人々の人権を侵害してきた。2021年だけでもブラジルでは160万ヘクタール以上の森林が伐採され、そのうちの59%がアマゾンに相当する。Mapbiomasプラットフォームのレポートによると、1時間あたり111ヘクタール、1秒あたり約18本の木を伐採したこととなる。また、国立宇宙研究所(Instituto Nacional de Investigaciones Espaciales:INEP)によると、今年1月から8月にかけて森林火災が16%も増加し(昨年対比)、発生件数は7万5000件以上と、ルーラ第1次政権後の2010年以来の割合となった。また、違法採掘も激増し2021年には2020年に比べ40%増加した。昨年ブラジルで生産された112トンの金のうち、7%が違法由来、25%が潜在的に違法由来となっている。ボルソナロは違法採掘や土地への違法侵入を取り締まるどころか、新自由主義という名の免罪符を用いて推奨するかの如く繰り返してきた。

2022年10月に決選投票の行われた現職大統領ボルソナロと元大統領ルラ・ダ・シルバ(Luís Inácio Lula da Silva)の戦いは、僅差でルラが勝利した。ルラは演説で、「アマゾンでの森林破壊を終わらせるために」戦うと力説するとともに「気候危機との戦いにおいてリーダーシップを再開する用意がある」と述べた。ブラジル・アマゾンを構成する9州のうち、アマゾナス州、パラ州、トカンチンス州、マランハオ州でルラは勝利している。

 

ブラジルのアマゾン環境研究所(Instituto de Investigación Ambiental de la Amazonia:IPAM)によると「2021年のアマゾンでの森林減少率(13,038km²)は、ルラ1期目の2004年の27,772km²から急激に減少した2006年以来の高い水準となった」。IPAMの科学部門ディレクターであるアネ・アレンカル(Ane Alencar)はインタビューの中で、モニタリング、コントロール、環境政策の最適化で、2005年から2012年の間にブラジルの森林破壊が80%減少したと説明している。ルラになって以前、テラ・ブラジリス・プラットフォーム(plataforma Terra Brasilis)によると、ブラジルの森林破壊は年間2万平方キロメートル(約200万ヘクタール)を超えていたという。2期目以降の2011年には、約4,600平方キロメートル(約46万ヘクタール)となった。

コロンビア、ブラジル、ペルーの森林をつなぐ「持続可能なランドスケープ」プログラムに取り組んでいるシンキ研究所のディレクター、ルス・マリナ・マンティジャ(Luz Marina Mantilla)は、ルラの環境政策の最適化の中で、「土地の種類によって割合を決める、地籍簿に似た非常に興味深い施策が取られた」と説明している。例えば、25ヘクタールの土地があったとして、その何割かをアグロフォレストリーで処理し、残りはランドスケープをつなげなければならない」と説明した。土地の連続性が途切れることは森林破壊に最も影響を与える要素となるからだ。

 

ブラジル社会環境研究所(Instituto Socioambiental de Brasil)のアドリアナ・ラモス(Adriana Ramos)研究員は、El Espectador紙のインタビューで、ルラの勝利は、「森林破壊の抑制と保護地域を含む領土権の承認という点で、これらの問題に対処する政府機関を再建し、領土の保護を保証するための投資を再び行うことができるだろうとの期待を抱かせる」と述べた。

ブラジルで国連開発計画(UNDP)の「フロレスタ+アマゾニア(Floresta+Amazonia)」の保全・修復・環境サービス支払プロジェクトをコーディネートしているアンドレア・ボルゾン(Andrea Bolzón)も同意見だ。ボルゾンは、ルラの勝利が「環境政策の指揮統制機構の機能を担う機関が再び声を上げ、近年の破壊に歯止めをかける」ことを期待させるものだと指摘している。

ルラの勝利の翌日、スサナ・ムハマド(Susana Muhamad)環境相は、政府がエジプトで「アマゾン・ブロック」をまとめ、森林のための資金調達を増やすよう呼びかけると述べた。アマゾンは地球環境の変動を大きく左右する地球上の重要な場所であり、この土地に対して行われるべき投資についてCOP27でアピールできるというのは重要な意味を持つ。

GAIAの国際アドボカシーアドバイザーであるジョニー・メネセス(Johnny Meneses)は、「COP27はアマゾンにとって好ましい政治環境である」とアマゾンへの投資の重要性とともに指摘する。メネセスは「アマゾンを守るためには、地域規模で解決策を提案し、各国の合意を形成する必要がある」し、「先住民族との連携や、先住民族を国際的なアジェンダのパートナーとして認める公約」を達成することも重要だとメネセスは続ける。ブラジルのアマゾンには40万人以上、コロンビアのアマゾンには約4万人の先住民が暮らしている。

社会環境研究所のラモスは、ブラジル、コロンビア両政府はいくつかの公共政策の展開を保証するために必要な要素があるとした。彼は「2つの道」を掲げそのひとつに、より一般的な取り組みでアマゾン流域の国々が共通のアジェンダを構築、気候問題への関心や、プログラム行動を構成する投資能力をつけることと述べた。もうひとつはブラジル・アマゾンに存在する「組織犯罪」に対処することだ。こには「国境管理に貢献する二国間の行動」が必要で保護だけではなく、国境に存在する重要問題を解決しなければならない。

 

16日(水)、ルラはCOP27の演説でブラジルは「必ず変わる」と述べた。彼は同国の違法な森林伐採の撲滅を約束し、先住民の保護も保証している。

先住民を大切にすることは自然保護に持つながる。ルラは先住民保護にあたっては先住民省の創設したいとし、一躍その場で脚光を浴びた。ボルソナロでは地球環境破壊、気候変動への楔は打つことはできない、と誰もがわかっていることによる。

https://twitter.com/lulaverso/status/1593255917868679177

 

同日ルラはパラ州のエルデル・バルバーリョ(Helder Barbalho)知事たち9つの知事からの公約書を受け取っている。そこにはアマゾンの気候変動のための共通のアジェンダが書いてある。その実行には連邦政府と他の国や国際企業の協力も必要で「特にイノベーションに重点を置き、バイオエコノミーによって、林産物や生物多様性への価値の集約を強化し、地域の持続可能な開発を促進するための手段を活用する」ことが必要とされている。

ルラの課題の一つとして、「右派や保守派との団結、さらにはアマゾンにおける企業活動が環境負荷を与えないようにすることを保証するための規制をどう進めるか」だとISAは述べている。この国では現在右派政党が上院の53%を占め、下院では190人中保守派が99人を占めるという状態になっているからだ。議会と折り合いをつけながら、国際社会のリーダーとしてより良い世界を築いていって欲しい。

気候変動サミットに関する情報はこちらから。

 

参考資料:

1. Con Lula en la presidencia, ¿qué viene para la Amazonia? – Por María Paula Lizarazo
2. Lula chega à COP27 como protagonista nas discussões sobre o clima mundial

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