ハイチでは武装集団によるテロや暴力が加速しており緊張状態が続いている。
首都圏の4つの変電所とヴァリュー発電所もギャングに襲撃され、一部が破壊された。現在機能不全に陥っている。この状況は数十の地域において通常通り電力を供給できないことを意味する。ギャングは重要書類、電気設備、ケーブル、インバーター、バッテリー、コンピューターや事務機器などを持ち去った。『ハイチ・リブレ(Haití Libre)』紙によるとエネルギー部門総局は関係当局に対し、国内に複数ある拠点の安全を確保するよう要請したと報じている。
公営電力会社 Electricite d’Haiti はこの攻撃を糾弾し「このような窃盗や妨害行為は、電力会社の財政的・技術的状況をさらに悪化させるものでしかない」と述べた。
被害に遭っているのはエネルギー施設のみではない。国連児童基金(ユニセフ)が保有する17個のコンテナのうち1個が空になっていたとも報じられている。そこには妊産婦、新生児、子どもの生存を確保するための蘇生器や関連機器などが入っていた。また幼児期、給水、その他の機器や、住民の発達と教育に不可欠な製品もあった。ユニセフはこの略奪行為について、保健システムが崩壊した国において命を救うための保健用品を子どもたちから奪った、子どもたちの権利の侵害であると説明している。
ハイチ国家警察(Police Nationale d’Haïti:PNH)はまだ詳細を明らかにしていないもののグアテマラ領事館への襲撃や略奪もあった。ギャングたちは領事館すべてを破壊することはできなかった。というのも、ドミニカ共和国の大使館に資料などが移管されていたからだ。襲撃の際、グアテマラ領事館の外交部隊のメンバーは幸いにも誰一人として被害を受けなかった。各国大使館や外交官を駐在させている国々はハイチでの暴力と治安の悪化のため、同国からの撤退を続けている。
国家警察もこれらの略奪や暴力に対して単に指を咥えて見ているわけではない。数日前までギャングの手中にあったポルトープランスの港湾地区を2度目の奪還に奮闘した。この地区は一度は解放されたものの、週明けには再度略奪者たちがこの地域に戻ってきている。
ポルトープランスの丘陵地帯にあるペティオン・ヴィル(Petion-Ville)で12人の遺体も発見されている。犠牲者の身元を含め、まだ明らかになっていない状況だが、国家警察によって殺害された武装ギャングのメンバーである可能性は否定できないとされている。女性を含む遺体は、食料品などのインフォーマルな取引に特化した地域の周辺、道路の真ん中に散乱しているのが発見された。
この惨劇について住民のなかには銃撃戦があったと話す者もいれば、3月2日土曜日に発生した首都ポルトープランスの刑務所から数千人の囚人が脱獄した際にハイチ国家警察に殺されたギャングたちの遺体だと主張する者もいる。
この地域以外にもポルトープランスの裕福な地区であるラブル(Laboule)とトマッサン(Thomassin)の一部もギャングに襲われており住宅や商店が銃撃された。ラブル18区にある監査院顧問ピエル・ヴォルマル・ドゥメシュ(Pierre Volmar Demesyeux)の住居も例外ではなく、自宅警備員の介入で命拾いした。
Des cadavres dans les rues de Pétion-Ville, attaques armées à Laboule et Thomassin https://t.co/CCJ2uElHY1
— Le Nouvelliste (@nouvelliste) March 18, 2024
『ル・ヌーヴェリスト(Le Nouvelliste)』紙が報じたところによると、アリエル・アンリ(Ariel Henry)首相の辞任に伴い、NOULHA党のリーダーであるルイ・ジェラルド・ジル(Louis Gérald Gilles)元上院議員をハイチ暫定大統領評議会に任命することに合意した。この決定内容は3月18日月曜日にカリブ共同体(Caribbean Community:CARICOM)に対しても通知されている。
大統領暫定評議会の6人の候補者の一人であり12月21日協定に署名した市民社会組織の支援を受けたヴィカソン・ガルニエ※(Vikerson Garnier)元議員はこの決定によって「状況が凍結されることはなく、カリコムは大統領評議会の設置プロセスを前進させることができる」と語っている。
CARICOMがが大統領評議会をどのように機能させようとしているか知っている人間はいない。しかし元上院議員のソレル・ジャシンテ※(Sorel Jacinthe)はル・ヌーヴェリストに対し次のように語っている。「しかし、次に何が起こるにせよ、最初のポイントは大統領評議会のメンバーの名前を記した政令の公表であり、これはミシェル・パトリック・ボワヴェル(Michel Patrick Boisvert)率いる閣僚評議会がハイチから出さなければならない」。ソレル・ジャシンテは12月21日の合意の枠内で、辞任したアリエル・ヘンリ首相と毎日連絡を取り合っていることを強調した。「彼はまだプエルトリコにいて、元気にしている」とメディアに語っている。ヘンリーのハイチへの帰還が議題に上っているかとの質問に対し、ジャシンテは、現時点では答えられないと答えた。
なお、カトリック教会は教皇フランシスコと共にハイチの平和と和解を求めるものの、大統領評議会の代表となることを望んでいないとしている。彼らが述べるのはハイチ社会のあらゆる部門が、同国に「包括的な形態の暫定政府」を提供することによって、現在の危機に対する永続的な解決策を見出す努力を奨励すること、そしてカトリック教会は、現在の政府機構に直接関与することを望んでいないということだ。
Haiti in Crisis: Call from the signatories of the december 21 agreement and allies to CARICOM.- – https://t.co/5strtcspxV
— Louis Gérald Gilles (@Dr_LGeraldGill) March 11, 2024
ステファン・デュジャリック(Stéphane Dujarric)国連報道官は木曜日、マリア・イザベル・サルバドル(María Isabel Salvador)国連ハイチ特使は、多くの重要な政治家や市民社会の代表と連絡を取り続けており、「ハイチ国民の最善の利益のために行動し、この危機をできるだけ早く解決するよう促している」と述べた。また、ハイチとドミニカ共和国との間に、物資や人員を運ぶためのエアブリッジを設置すると発表しているが、その一方、それはまだ有効にはなっていない。テロが始まったとき、アンリ首相はケニアに滞在し、国連が支援する東アフリカの警察部隊の派遣を確保しようとしていた。しかし、派遣は中断されている。
参考資料:
1. Pandillas en Haití dejan fuera de servicio una central eléctrica
2. Consejo Presidencial de Transición: Caricom tiene oficialmente seis nombres
3. Crise: l’église catholique ne souhaite pas être représentée au Conseil Présidentiel
4. Violencia sin tregua en Haití; encuentran 12 muertos en vía
5. Avanza plan para crear un consejo presidencial de transición en Haití
No Comments