イスラエル:「ハマス」を口実に続けられる民族浄化の背景

(Photo:@bonifacemwangi/ Twitter

国連事務総長のアントニオ・グテーレス(António Guterres)はイスラエルに対し、2週間にわたるイスラエルの砲撃による死者が4,100人を超えたガザへの人道援助を認めるよう求めている。イスラエルはガザへの食料、水、燃料の流入を阻止し続けており、この2週間で13,000人以上のパレスチナ人が負傷した。

イスラエルは、地上侵攻が迫っているかもしれないと言っている。「パレスチナ人アナリストで『Hamas Contained: The Rise and Pacification of Palestinian Resistance(ハマスの封じ込め:パレスチナの抵抗の台頭と平和化)』の著者であるタレク・バコーニ(Tareq Baconi)は「ヨルダン川西岸地区で暴力が高まっているのを見るにつけ、これはガザ地区とガザ地区以外での民族浄化作戦を追求する努力だ」と述べている。

グテーレスは「これらのトラックは単なるトラックではない。命綱なのだ。ガザの多くの人々にとって、生死を分けるものなのだ」とイスラエルとエジプトに働きかけていると述べた。

 

BBCの報道によるとハマスが停戦と引き換えに、10月7日の攻撃で拉致した人質の何人かを解放することを申し出たと報じているが、イスラエルはこの取引を拒否している。10月21日の時点でイスラエル軍は、拘束された200人の人質の大半はまだ生きているとの見方を示している。イスラエルの国防相は木曜日、ガザへの地上侵攻が間近に迫っていることをほのめかし、部隊に対しまもなくガザを 「内部から」見ることになるだろうと語った。一方イスラエルはヨルダン川西岸地区での弾圧も強化している。イスラエル軍はトゥルカルム市近郊の「ヌール・シャムス難民キャンプ(Nur Shams refugee camp)」を襲撃し、13人のパレスチナ人を殺害した。また、イスラエルはここ数日、議員やジャーナリストを含む750人のパレスチナ人を拘束している。

木曜日の夜、米国バイデン大統領は議会がイスラエルに140億ドル、ウクライナに600億ドル、台湾にいくらかの予算を承認するよう求めた。しかしハフポストによるとバイデン大統領のイスラエル政策をめぐって国務省内部でも「反乱が起きている」。

 

以下はイスラエル/パレスチナに関する国際危機グループの元シニア・アナリストでもあるタレク・バコーニはガザにおける現在の状況について聞かれ答えたものである。

ガザ地区の状況は非常に悲惨だが、今日私たちが目にしたのは、ガザ地区を完全な封鎖下に置こうとするイスラエルの努力の継続である。これはもう16年も続いている。そして、10月7日のハマスによる攻撃の後、イスラエルはガザ地区を完全包囲下に置いた。これはつまり、ガザ地区への水、燃料、電気、医薬品の流入を阻止するということだ。

これは一種の集団的懲罰である。ガザ地区には約230万人のパレスチナ人がいる。そのうちの約3分の2が、現在のイスラエルに住む難民だ。そして、その約半数が未成年者や子どもたちだ。これは集団的懲罰の一形態であり、本質的にはガザのパレスチナ人の人間性を完全に奪うことに依存している。

私たちが現在目の当たりにしているのは、人道支援が政治化され、ガザの民間人への人道支援が政治的目標と結びつけられているということだ。昨日、米国が国連安全保障理事会の決議に拒否権を行使したことは、イスラエルがガザ地区への砲撃を続けることを容認し、人道援助の入国を阻止することでガザの民間人の首を絞めることを容認する意思の表れだ。

 

グテーレス事務総長が指摘するのはラファ国境がいまだ閉鎖されたままであることで必要物資がガザに運び入れることができないと言うことである。エジプトからガザへの援助トラック20台のみ受け入れが合意されましたものの、内部の医療団体は、1日100台のトラックでも、ガザの危機と必要性に対処できないだろうと述べている。

このような状況にもかかわらず安全保障会議で米国が人道的停戦を求める決議に反対票を投じた背景にブラジルによる要求がある。即時停戦の要求はイスラエル当局の砲撃を停止し、ガザ地区への人道的援助を許可し、制限を緩和することを意味する。しかしイスラエルの判断ミスによって大型化した被害に対し、イスラエルや自らの政権の体裁を保ち批判を免れたい米国はそれを純粋に認めるわけにはいかず、一定の成果を上げる必要があるとされている。成果、これは口で述べているようなハマスの解体、殲滅以上のものを指すことは一目瞭然である。

https://twitter.com/Bernadotte22/status/1713288571317346805

 

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は火曜日、ハマスについて以下のように語っている。

イラン、ヒズボラ、ハマスは悪の枢軸の一部だ。彼らの公然の目標はイスラエル国家を根絶することだ。ハマスの公然の目標は、できる限り多くのユダヤ人を殺すことであり、私たちを一人残らず殺したいということだ。彼らは1,300人もの民間人を殺害しており、これは、アメリカで言えば、何度も9.11が起きたようなものだ。

 

ネタニヤフのこの言葉は、自分たちが何をしてきたのかと言う説明を全くしないものであるばかりではなく、自分たちが今行おうとしていることを語るものである。イスラエルは人の領土を武力で収奪し、何十年もパレスチナ人の命を奪い続けてきており、比較するのは若干憚れるものの、ロシアがウクライナ侵攻で繰り返し使ってきている言説である。

バコーニによると、ハマスを一方的に悪者するイスラエルの語り口があることで、米国は武力や安全保障ドクトリンに基づく白紙委任状を与えることが可能になる。パレスチナの闘争を非政治化し、暴力的なアパルトヘイト政権に対するあらゆる形態の武装抵抗をテロリズムの一形態として位置付けることは、自らの攻撃に対する正当性を与える。支援者に対しても正当性を与える。偽りかどうかはそこでは問題にはならない。とにかく理由が必要なのだ。バイデン大統領が10月7日に起きた攻撃を9.11と関連づけたこともまた、ガザ地区でイスラエルがやりたい放題やってもいいよ、という後ろ支えをするものである。アメリカ自身が9.11を通じ学んだすべての教訓が、本当に失われてしまったことを示すものだとバコーニは語る。バコーニは理解しなければならない事項として強調するのは、これらの語りはハマスの鎮圧や破壊のために米国やイスラエルがこのような言説を用いているのではないと言うことだ。つまりガザ地区やヨルダン川西岸地区での民族浄化プログラムの追求が彼らの狙いである。

 

イスラエル軍はいつでもガザに進駐する許可を与えたというこのコメントの中で、ニル・バルカット(Nir Barkat)経済相はABCニュースとのインタビューで、人質や民間人の犠牲に関する懸念は、ハマス壊滅のためには二の次になるだろうと述べている。このことからもわかる通り、人質を取られたとか、攻撃されたからと言うのは口実の一つでしかならない。事実国連職員などもイスラエルの攻撃によって命を落としているし、キブツでイスラエル人を殺したのは、イスラエル軍だったというリークも出てきている。報道されることの少ないイスラエル軍事施設に対する空爆とその被害はイスラエル軍自体によってもたらされてものであり、イスラエルが軍人であったとしても国民を殺害したことがイスラエルの公式見解としても出ている。この軍事施設は短時間であったとしてもセンセーショナルに取り沙汰されるキブツや音楽祭前への攻撃以前にハマスによって占拠されていたものである。

 

バコーニがハマスによる10月7日攻撃について驚いたと語るのは、そのタイミングでもなく、攻勢でもなく、攻勢の性質とその方法についてだ。攻撃規模の大きさや、ハマスがガザ地区周辺のイスラエル支配地域に侵入したこと、そしてハマスやそれ以外の戦闘員がイスラエルの町で過ごすことができた時間の長さになにより驚かされた、と彼は語る。今までこの地区にはイスラエル軍は無敵で突破できないと言う神話があった。しかし今回最も簡単にそれが崩れさった。イスラエル軍は無敵などではなく、ガザ地区を囲む封鎖は完璧に突破可能だという現実を我々に知らしめた。また攻撃の規模や、ハマスが捕らえてガザ地区に連れ帰ることができた人質の数は、おそらくハマス自身の予想を上回るものだっただろうと、バコーニは語る。

少なくとも過去16年間における両者の均衡はガザのロケット弾(目的は封鎖の解除や制限の緩和)などでイスラエルに圧力をかけるハマスに対し、200万人のパレスチナ人の首を絞めている暴力の一形態という形で示されるか、イスラエルによる不釣り合いな軍事力(ダヒヤドクトリン)のもと、ガザ地区の何千人ものパレスチナ人が殺されるという構造があった。しかしそれが今回崩れた。

 

ハマスが力を持つようになった背景にイスラエルの存在は欠かせない。元イスラエル高官イツハク・セゲフ(Yitzhak Segev)准将は、ヤーセル・アラファト(Yasser Arafat)と彼のファタハ運動に対抗するため、ガザのイスラム主義運動に資金援助したことを語っている。他の元イスラエル軍高官デイヴィッド・ハチャム(David Hacham)は「一連の出来事を振り返ると、我々は過ちを犯したと思う。しかし当時は、起こりうる結果について誰も考えていなかった」と語っている。

ハマスの起源は、ガザ地区のムスリム同胞団支部から派生したもの。その集団は政党ではなく社会集団だった。ガザ地区とパレスチナ自治区全域での活動は、当時イスラエル占領軍によって許可されていた。1987年にハマスが設立され、イスラエルの占領に対する積極的な抵抗を行う政党、軍事政党になると、イスラエル政府内のハマスへの方針は変化を見せる。それでもイスラエル当局はイスラム主義民族運動、つまりハマスを支援しファタハを中心とする世俗的民族主義との間の分断形成に手を緩めることはなかった。このような戦術は植民地勢力が過去から現在に至るまで常に用いてきたものであり、イスラエルもまたこれを用いて直接的に、また暗黙のうちに分断統治政策を試みてきた。

 

2006年の民主的選挙で勝利したハマスが政権を握った2007年、イスラエル当局は米国とともに政権転覆を目的にハマスとファタハの内戦を助長させていた。ユダヤ人優位の国家建設はイスラエルの長年の夢である。だからガザ地区をパレスチナの他の地域から切り離し、自らを民主主義に支えられた国家であると主張するためにも200万人のパレスチナ人(その3分の2は帰還を求める難民)を排除する必要がイスラエルにはあった。この土地にユダヤ人以外はいらない、それがイスラエルの考えだ。この行為はハマスが政党として設立されるずっと前からイスラエルによって行われてきたことであり、ここ最近の出来事、ハマスの攻撃があったから始まったのではない。イスラエルによるハマスのガザ統治の承認は一方、テロ組織であり、悪の枢軸であるハマスによって権力が握られたガザ地区を封鎖することは理にかなっているという植民地主義的語りにつながる。だからイスラエル当局はハマスがガザ地区の統治当局となるという考えを積極的に受け入れてきた。

 

 

イスラエルにおけるアパルトヘイトは事実である。イスラエルは歴史的にパレスチナの地で唯一の主権国家を築いてきたと主張し、イスラエル系ユダヤ人にのみ権利を認め、パレスチナ人には認めていない。10月7日のハマスによる攻撃はイスラエルは市民の犠牲も払うことなく、平然と現在の体制を続けられるのだという思いを覆すものである。

バコーニは現在ガザで起きている状況はイスラエルによるハマスへの報復ではないと主張する。今我々の目の前で行われていることは民族浄化であり、1948年に始まったナクバを継続させようとするイスラエルの努力であり、それ以来、あちこちで細々と続いているものの一部である。イスラエル当局がヨルダン川西岸地区と東エルサレム、そしてガザ地区でパレスチナ人に対して行っている、日常的な民族浄化の大規模な断絶である。そして今、私たちはこの断絶によって、民族浄化作戦が日常的な継続的なものから、何百万人ものパレスチナ人を排除しようとする、より焦点を絞ったものへと変化しているのを目の当たりにしている、そうバコーニは語り、またガザの一般市民に影響を及ぼしている人道的支援の滞りの解消を求めた。

目の前の現実は暴力の連鎖、憎しみの連鎖などによるものではない。

 

イスラエルによって行われている虐殺は現実であり、ユダヤ人の団結や国際社会からの支援を得るためにイスラエルは「ユダヤ人に対する民族浄化」を標語のように使っている。しかしエルサレムをはじめユダヤ人コミュニティからパレスチナ支援を示すことばが上がっているのも確かである。これを見てもまだイスラエルや米国の言説を信じたいのですか。

https://twitter.com/Umair___56_/status/1716381628983919063

国連パレスチナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees:UNRWA)職員はイスラエルの攻撃で10月23日時点、29人(半分が教師)殺害された。また、少なくとも10月7日以降23人の記者も殺されている。

ネタニヤフ首相による植民地主義を批判するラ米諸国の反応はこちらから。

 

参考資料:

1. “Divide and Rule”: How Israel Helped Start Hamas to Weaken Palestinian Hopes for Statehood
2. Did Israel Kill Yasser Arafat? Stunning Investigation Exposes Israel’s Secretive Assassination Program
3. Nelson Mandela, Palestinian Struggles and Decolonisation (2021)

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