エクアドル国会解散:大統領選に向けた予備選挙終了で次のプロセスへ

(Photo:Presidencia de la República del Ecuador/ Flickr)

6月10日(土)、5月25日から始まった政党や運動による内部民主化プロセス(予備選挙)の実施期限が終了した。全国選挙評議会(CNE)は、8月20日の大統領選挙に向けた候補者登録もまた締め切っている。

今回選挙には8人の大統領候補が登場することになる。コレア主義者たちによる候補者確定が最後になった。ラファエル・コレア( Rafael Correa)元大統領は最終最後まで、SNSを通じてどの候補者が良いかなどフォロワーにアンケートをとっていた。最終的にコレアがTwitterを通じて発表したのは大統領候補にルイサ・ゴンサレス(Luisa González)、副大統領候補に経済学者で前回の大統領選挙に挑戦したアンドレス・アラウス(Andrés Arauz)をペアに大統領選挙に挑戦すると言うものだった。コレア主義陣営は最も候補者の擁立が遅くなった一方、候補者確定前から支持率ナンバーワンとなる気配を醸し出している。とは言え流石に、一回投票で大統領確定になるほどの支持は得ていない。5月末の調査会社Click Reportが発表した内容による、それへの支持はすでに32.23%もあった(詳細はこちら)。繰り返すが候補者が誰になるか確定していない時点での話だ。次点につけるのはUnidad Popular、Democracia Sí、Somos Aguaの3党の連合候補となるヤク・ペレス(Yaku Pérez)だ。

コレア主義のペアに関する詳細は別途確認するとして、それ以外のメンバーの概要を確認していこう。

まず8名の候補者のうち最も早く各チェックプロセスが完了し正式な候補ペアとしてCNEから認められている大統領候補ダニエル・ノボア・アジン(Daniel Noboa Azín)と副大統領候補ベロニカ・アバド(Verónica Abad)から。彼らは人民・平等・民主化運動(PID)と緑・倫理・革命・民主化運動(Mover)の連合「アリアンサ・アクシオン・デモクラティカ・ナシオナル(Alianza Acción Democrática Nacional:ADN)」が推す候補だ。PIDはレニン・モレノ(Lenín Moreno)元大統領の従兄弟であるアルトゥーロ・モレノ(Arturo Moreno)による運動でレニン・モレノとラファエル・コレアの対立により離反した数百人の過激派が母体となっている。「ムーバー(Mover)」という名前の連合体からなるもの。

35歳のダニエル・ノボア(Daniel Noboa)はアルヴァロ・ノボアの息子で実業家である。ノボア・コーポレーション(Corporación Noboa)で働き、海運部長と2018年まで商業部長を務めていた。 ノースウェスト大学で経営学の修士号を取得していた彼の初めての政治参加は2021年のこと。連合エクアドル運動の支援を受け、サンタエレナの下院議員を目指した。同選挙でその政治団体は、牧師のゲルソン・アルメイダ(Gerson Almeida)の大統領候補を支持していた。ノボアは2019年、元妻で娘の母親であるガブリエラ・ゴールドバウム(Gabriela Goldbaum)から、心理的暴力と、当時生後数ヶ月だった娘の面会交流と養育費をめぐる契約を軽視していると訴えられた。

「総改革運動(Movimiento Reto)」はグアヤキル出身の50歳のエンジニア、政治家、実業家であるハビエル・エルバス(Xavier Hervas)を大統領候補に、そして副大統領候補に先住民キチュアの医師のルス・マリナ・ベガ(Luz Marina Vega)を据え、選挙に挑む。2021年選挙で民主左派(Izquierda Democrática:ID)の大統領候補として登場したエルバスは第1回投票で4位になった。その結果は政治経験が皆無だったことを考えると社会を驚かせた結果となった。2022年8月2日にエルバスは同政党から離脱したが、2023年6月7日にパウル・カラスコ(Paúl Carrasco)が創設した同運動体から出馬すると発表した。2週間前には全国紙『エル・ウニベルソ(El Universo)』に対し「自分の後ろに政治団体がいないことから出馬しない」と断言していたことを思えば、これもまた驚きをもたらした。エルバスは人生の大半をキトで過ごし、コロンビアのサバナ大学で農業産業生産工学を学んでいる。彼のビジネスキャリアは、冷凍食品を世界中に輸出することに捧げられてきた。コトパクシに本社を置くノバ・アリメントス社に務めている。一方のベガはコタカチ(インバブラ)出身でハバナ(キューバ)のラテンアメリカ医科大学を卒業した。夫であるアウキ・ティトゥアニャ(Auki Tituaña)の市長時代には、パトロナート・デ・コタカチ(Patronato de Cotacachi )の会長を務めていた。2019年、医療制度における功績が認められ、世界人文大学から「医学名誉博士」の称号を授与されている。

グアヤキル出身で40歳の実業家、ジャン・トピック(Jan Topic)の大統領出馬もまたエクアドルを驚かせた。5月21日に投稿されたTwitter動画で知られている。社会キリスト教党(Partido Social Cristiano:PSC)やルシオ・グティエレス前大統領が率いる愛国社会党も彼への支持を表明している。トピックは、国政からは縁遠かった。直接的に公の場に登場することなく、ディエゴ・オルドニェス(Diego Ordóñez)の後任として公安・国務長官として鳴りを潜めていたが、そうはいかなかった。フランス国籍を持つトピックは、ウクライナ、シリア、アフリカでの紛争に兵士として従軍しているが、どちらの側かは不明である。学問的には、ハーバード・エクステンション・スクールで国際安全保障と戦略マネジメントの講義を受けたと候補者予備軍は主張している。これに加えて、ジャン・トピックは、ペンシルベニア大学の経済学者・数学者であり、ロンドン大学経済学部で計量経済学と定性経済学の修士号を取得していると述べている。トピックは、父親のトミスラフ・トピック(Tomislav Topic)が作った会社、Telconetの社長である。 Telconetは、マネーロンダリングでオデブリヒト(Odebrecht)事件に関与していた。トミスラフ・トピックは、ブラジル企業から1300万ドルを受け取ったこと知られているが、この数字は、2019年の税務調査のさなか、トミスラフ・トピックが国家に送金したと主張していた金額と等しい。ジャン・トピックはまた、家庭内身体的暴力による起訴に直面している。2019年2月、ジャン・トピック・フェロー(Jan Topic Feraud)と弟のアンドイェルコ・トピック・ヴェルドゥガ(Andjelko Topic Verduga)が口論になったと報道された。アンジェルコは、医事鑑定を受ける途中で、母タマル・ヴェルドゥガの家から叩き出されたことを語っている。トピックは「私を、(そして)母を殺すと言った」とEl Universoは報じた。Twitter報じられる特定のジャーナリズムのコンテンツについて大きな赤い文字で「FALSE」と表記している。当初、PSCの副大統領候補はペドロ・フレイレ(Pedro Freile)になる予定だったが、候補者間の男女比を尊重するという選挙紛争審判所の裁定により、フレイレは候補から外れた。2023年6月6日、トピックは弁護士でジャーナリストのディアナ・ジャコメ(Diana Jácome)を伴走者にすると発表した。

46歳の弁護士ボリバル・アルミホス(Bolívar Armijos)もまた大統領選への立候補を表明した。彼は2021年の選挙でペドロ・ホセ・フレイレ(Pedro José Freile)を支援し、マネーロンダリングで判決を受けた元議員のダニエル・メンドーサ(Daniel Mendoza)と関係があるアミーゴ運動(Movimiento Amigo)の支援を受け出馬する。アルミホスの政治的履歴書において考慮すべき2つの事実がある。1つ目は、彼が約20年間、地方の小教区評議会に関連する草の根活動をしてきたこと。もうひとつは、2021年のUNESの国会議員候補であり、前回の大統領選挙ではアンドレス・アラウスの対抗馬の一人であったことだ。つまりコレア主義関係がある人と位置付けられている。アルミホスは教区議会での立場からコレイスモを支持するデモ行進を組織したこともある。アルミホスはまた、全国地方教区自治協議会(Conagopare)の会長も2度務め、そこから自身の政治運動「フエルサ・ルーラル」を創設するために闘ったが、CNEへの登録には失敗した。 アルミホスはインバブラで生まれたが、学業と政治生活はエスメラルダス州で行われた。アルミホスは、ガバナンス、政治管理、地方開発の専門家であると自称している。

1969年2月26日、クエンカ州タルキ教区のカチプカラという集落で生まれたヤク・サシャ・ペレス・グアルタンベルは、前回の大統領選挙(1回目投票)で元大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)とデッドヒート状態だった。僅差でペレスが負け、ラッソが決選投票に進んだ結果、反コレア主義からの票を集められたこともありラッソは大統領となることができた。つまり、万一ラッソが1回目投票でペレスに負けていれば、現在全く違う風景がこの国にはあったはずだ。彼は、Unidad Popular(旧Movimiento Popular Democrático、MPD)、ラファエル・コレアの元政府大臣グスタボ・ラレア率いるDemocracia Sí、Somos Agua(ペレスがPachakutikを離れた後に結成したグループ)の運動の支援の下出馬した。

当初はこれ以外にも弁護士のペドロ・グランハ(Pedro Granja)、先住民族の指導者レオニダス・イサ(Leonidas Iza)、元議員のダルトン・バシガルポ(Dalton Bacigalupo)、教師のエルサ・ゲラ(Elsa Guerra)、さらには元大統領候補のアルバロ・ノボア(Álvaro Noboa)など立候補を表明していていたが、最終的には上述に絞られた。ギジェルモ・ラッソ現大統領は6月2日、再選に出馬しないことを表明している。

CNEの発表によると立候補に必要なすべてのプロセスを通過した登録候補者の公式なリストは、8月6日に発表される予定だ。その2日後には9日間にわたる選挙キャンペーンが8月17日まで実施される。

今回のMuerte cruzadaに関する別記事はこちらから。

参考資料:

1. Estos son los precandidatos presidenciales para las elecciones de 2023
2. Elecciones Ecuador 2023: Jan Topic, el excombatiente que quiere ser presidente de Ecuador
3. En 48 horas el CNE cerrará la inscripción de candidaturas para las elecciones del 20 de agosto

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください