ラ米・カリブ:エスカス協定 第1回締約国会議発足へ

チリ大統領ガブリエル・ボリッチは ラテンアメリカ・カリブ海地域における環境問題への情報公開、市民参加、司法へのアクセスに関する地域協定(通称エスカス協定)の第1回締約国会議(COP1)を主導する。本会議は4月20日から22日までチリのサンチアゴにある国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(Economic Commission for Latin America and the Caribbean:ECLAC)本部で開催される。この地域で初めての環境条約にすでに加盟している国や、加盟を目指す国の当局者や公式代表が集まり、協定の実施状況の確認や運用の進捗状況を確認することが目的だ。エスカス協定は、環境情報へのアクセス、市民参加、司法へのアクセスの権利の「完全かつ効果的」な実施を保証し、健全な環境で生活する権利の保護に貢献することを目指している。2020年、環境保護活動家の殺害数が最も多かったのはラテンアメリカだった(詳細はこちら)。

 

初日(4月20日)には、「エスカス協定の効果的な実施と協力の強化に向けて」と題した特別セッションが開催される予定だ。ボリッチ大統領のほかコスタリカのエプシ・キャンベル・バー(Epsy Campbell)副大統領、アルゼンチンのセシリア・ニコリーニ(Cecilia Nicolini)気候変動・持続可能な開発・イノベーション担当長官、エスカス協定事務局であるECLACのマリオ・チモリ(Mario Cimoli)事務局代行が参加する。特徴的なのはECLACが企画した公開投票によって選出された6人の一般市民の代表も参加するということだ。そのほとんどが社会環境活動家であり、透明性と環境民主主義のために活動する組織のメンバーだ。その代表の一人が、シンクタンク エスパシオ・プブリコ(Espacio Público)のディレクターであるアンドレア・サンフエサ(Andrea Sanhueza)だ。サンフエサは何十年も前からエスカスのプロセスに積極的に関わってきた。登録さえすれば誰でも発言権を持って会議に参加できることも、会議が持つ表現の場の一つだ。サンフエサは、この点で、市民がより積極的な役割を果たし、協定に影響を与えることができるようになったと述べている。

エスカス協定のCOP1の全プログラムは、同会議の特設サイト(こちら)で公開されている。20日は上述の通り特別セッションとともに、今まで締約国が実施したアクションの発表がなされる。続く4月21日には、実施・遵守支援委員会の構成と機能に関する規則が審議される。22日協定の機能発揮に必要な資金調達について議論される。一方、本会議の枠組み内で公式のバーチャルイベントも開催される予定だ。時期は4月19日から22日で約30のセッションが持たれる。

この会議では、参加国は、有意義な市民参加のための様式を含むCOPの手順規則(協定第15.4a条)、条約の機能 と実施に必要な資金規定(第15.4b条)、実施・遵守支援委員会の構成と機能に関する規則(18.1条)を議論する。また、協定の効果的な実施と地域における更なる協力のための戦略についても協議する予定だ。

 

ボリッチは大統領就任直後、エスカス条約に署名した(詳細はこちら)。ただし批准待ちの状態だ。COP1には3段階の参加者、つまり締約国、署名国、オブザーバー国が参加するが、署名国として参加する。

チリにおいてはボリッチから加盟法案を議会に提出する必要がある。ただこの国においては一筋縄にはいかない可能性がある。国立人権研究所(INDH)によると、チリでは128の社会環境紛争があり、全地域にまたがっている。これらの紛争の85%は、汚染のない環境で生活する人権に影響を及ぼしており、またこれらの紛争のうち30%は、先住民の参加と協議の権利に直接影響を及ぼしていることによる。

チリとともに批准していないコロンビアは5月29日に大統領選挙を控えている。選挙キャンペーンでは環境保護や人権、エスカス協定に関しても批准するか否かを表明することになる。責任ある投票をすることは、生命、生物多様性を守り、持続可能な成長を目指し、人間と動物、そして自然という生命体の関係において新しいパラダイムへの移行を可能にするのかと直結する。

この土地では、気候危機とその影響から発生する深刻な脆弱性、社会的・環境的リーダーの恒常的な人権侵害が発生している。エスカス協定の批准、フラッキング、森林破壊、食糧主権、パラモスや戦略的バイオマスや生態系の保護、農業辺境の拡大とそれに適切に対処する実行戦略、水源のケアと保護に関する立場を考慮して投票することが重要なのである。

 

2018年3月4日にコスタリカのエスカスで採択されたエスカス協定は、6年間の交渉の末、2021年4月22日に発効した。会議最終日の4月22日には、発効1周年と国際母なる地球の日を記念して、ハイレベルなイベントが開催される予定だ。

各国は数カ月前から草案作りに取り組んできたため、会議は迅速に進むと思われる。実際、今年の3月上旬にはPreCopが開催され、COPで議論されるポイントについて、各国や一般市民の代表が作業を開始した。

これまでに、エスカス協定には中南米・カリブ海地域の24カ国が署名し、そのうち12カ国が批准している。批准しているのは アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、ボリビア、エクアドル、ガイアナ、メキシコ、ニカラグア、パナマ、セントビンセント・グレナディーン、セントクリストファー・ネイビス、セントルシア、ウルグアイだ。

 

COP1についてはさまざまなデジタル・プラットフォームからも参加が可能となっている。
特設サイト:https://acuerdodeescazu.cepal.org/cop1/es
ECLACウェブサイト: https://www.cepal.org/es
ライブ中継: https://live.cepal.org/escazu
公式Twitterアカウント:https://twitter.com/cepal_onu
Facebook公式アカウント:https://www.facebook.com/cepal.onu  

 

なお、サイドイベントにはアマゾン川流域の先住民組織のコーディネーター(Coordinator of Indigenous Organizations of the Amazon River Basin:COICA)も参加予定だ。ペルーでのエスカス協定批准を目指すとともに、現在アマゾン地域でどのようなことが起きているかを話す予定だ。エクアドル、ペルー時間4月19日朝8時(日本時間夜10時)。レジストレーションはTwitter内リンクから。

https://twitter.com/CuencasSagradas/status/1516180773379977220

 

参考資料:

1. Presidente de Chile inaugurará la Primera reunión de la Conferencia de las Partes del Acuerdo de Escazú
2. Acuerdo de Escazú: entérate de todos los detalles de la COP1
3. El Acuerdo de Escazú celebra su primera cumbre de países en Chile

 

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