エクアドル:2021年の鉱物輸出高は1億5,000万米ドルに

(Photo by pato chavez

エネルギー・非再生可能天然資源省(Ministerio de Energía y Recursos Naturales No Renovables)は2022年2月16日(水)、同国の鉱物資源の輸出について、当初設定した取引高予測から31%上回ったと報告した。2020年の輸出額を99%上回る結果となりその額は1億5,000万米ドルになる。この結果は2021年におけるエクアドルの輸出品目のうち、鉱業が石油、バナナ、エビに次いで4位となったことを表す。なお、非伝統的輸出品目で見ると鉱業製品が第1位である。

大規模鉱山であるフルタ・デル・ノルテ(Fruta del Norte)から7億4000万米ドル、ミラドール(Mirador)から8億4000万米ドル、そして小規模鉱山から5億1300万米ドル分を輸出したと言う。大臣フアン・カルロス・ベルメオ・カルデロン(Juan Carlos Bermeo Calderón)は「鉱業部門はエクアドル経済の柱として確固たる地位を築いており、エネルギー転換の基礎となる」と述べている。エクアドルにおける資源は主に銅精鉱、金精鉱、金、銀、鉛、亜鉛であり、それらを中国、スイス、米国、フィンランドに輸出している。

エネルギー・非再生可能天然資源省によると2025年までに鉱業輸出の持続的な成長が見込まれており、鉱業投資が4,256百万米ドル、輸出が4,040百万米ドルに達すると予測されている。その数字はボリバル県のクリパンバ(Curipamba)、コトパクシ州のラ・プラタ(La Plata)、アスアイ県のロマ・ラルガ(Loma Larga)などの新鉱山での生産が開始されることを前提に見積もられている。

なお2021年9月時点で鉱業に関連する職業についている人間(直接雇用)は約4万人いる。2025年までにはこの数字は大きく増え直接・間接雇用で30万人以上が従事するとされている。エネルギー・非再生可能天然資源省の大臣は効率性、透明性、法的確実性の原則に基づき、イノベーション、生産性、競争力、ガバナンス、社会・環境の持続可能性に重点を置き、利用可能な鉱業資源を活用し、社会的に包括的な条件で、鉱業の発展を促進していくことを述べている。昨年行われた「エクアドル・オープン・フォー・ビジネス(Ecuador Open for Business)」でも大臣は2022年1月から確実、透明な方法で鉱山部門への投資を呼び込むことを目的に、あらゆる保証と安全策を備えたかたちで鉱山登記を再開すると昨年発表している。

2022年から始まる鉱山登記に伴うオペレーションでは「鉱山管理システム」が導入され、鉱区など国から与えられた鉱業権の登録と管理がシステムを通じて行われる。登記は2段階に分けて行われる予定で、2022年1月から行われる第1段階では鉱山省が過去提示されていたコンセッション付与プロセスを精査する。対象となるのは2018年1月24日の登記中止前に提出された506件で、内訳は345が小規模採掘、97が大規模採掘、その他が職人的採掘に関するものだ。その後の第2段階は第4四半期頃に行われる予定で、操作や改ざんを防ぐためのセキュリティシステムが搭載された統合鉱山管理システムを導入する。トレーサビリティも可能にし、信頼性を高める。なお本システム構築には米州開発銀行(Inter-American Development Bank:IDB)からの支援を受けた。政府はこれらのプロセスを経て、持続的な開発の実現を合法的に、そして責任ある形での採掘がなされるよう推進していると強調した。

 

2022年2月4日、アマゾン地域シナゴエ(Sinangoeに住むアイ・コファン(A’I Cofán)による訴えに基づき憲法裁判所は政府が十分な情報提供に基づく同意を得ずに金開発のための利権を企業に付与したことへの取り消しを命ずるとともに、それらが水に対する権利、自然に対する権利、環境の侵害をしていることを認めている(詳細はこちら)。また、昨年末にもロス・セドロス(Los Cedros)生物保護区における国営鉱山会社ENAMIの採掘の違憲性に基づき森林内の採掘権や環境・水の搾取許可自体を取り消している(詳細はこちら)。

この国においてはフェブレス・コルデロ(León Esteban Francisco Febres Cordero Ribadeneyra)政権期の1985年に最初の鉱業法が制定され、鉱業開発振興政策に着手した。2000年には産業開発基本法(トロ ーレ法)を発布し外国投資が全面的に自由化され、鉱業法改訂や優遇措置などもあり、この国における実績を着実に延ばしてきた。

エクアドル政府は2022年、フルタ・デル・ノルテとミラドールの銅鉱山の増産とともに、5つの新しい鉱業開発プロジェクトを予定している。これにはダンディー・プレシャス・メタルズ(Dundee Precious Metals:DPM)によって既に実現可能性調査が行われているアスアイ県のロマ・ラルガや、トーチ・マイニング(Toachi Mining Inc)によるラ・プラタ鉱山の開発、銅、鉛、亜鉛、銀、金が眠るクリパンバの開発も含まれている。

カナダに本拠を置く国際的な金鉱山会社DPM社はエクアドルのみならずブルガリア、ナミビア、セルビアにおけるプロジェクトを展開している。同社の目的は資源を解き放ち、価値を生み出し、共に繁栄し成長することとしている。

カスカベル(Cascabel)鉱区アルパラ(Alpala)鉱床は世界の銅生産の約半分を占めるアンデス銅ベルトの北部に位置する。キトから北へ封鎖道路を利用して約3時間行ったところにあるカスカベル鉱区内のロカ・フエルテにで本プロジェクトは行われる。SolGoldのバイスプレジデントであるアンドリュー・タウントン(AndrewTaunton)は、過去2年間、採掘、処理、および輸出の最善の方法を決定するために、調査、評価、および事前実現可能性調査を進めてきたことを明らかにしている。

同鉱床における鉱物量は近年発見されたものの中でもトップ10に入り、約2,500万オンスの金、1億オンスの銀、1,100万トンの銅を抱えている。フィージビリティスタディが完了した後、鉱山は少なくとも4年の建設期間で建設を開始する予定で、最速の場合、鉱山は2028年に生産を開始する。カスカビルプロジェクトはそれが位置するインバブラ(Imbabura)県のリタ(Lita)とラ・カロライナ(La Carolina)地域の雇用創出にもつながるととダルトンは言う。

カナダのラッキー・ミネラルズ(Lucky Minerals Inc.)のゼネラルマネージャーであるサンチアゴ・イェぺス(Santiago Yépez)は、ミラドールおよびフルイタ・ノルテでの生産は今後数年間でより堅調になると考えていると言うが、一方でエクアドルの抱える問題についても指摘する。彼らからすれば、伝統的にある程度の違法採掘を含め、国際基準に従わない小規模な鉱山開発をエクアドルが行なってきたことにより、この国の人々は鉱業開発を環境に有害であるものと考えていると述べており、それゆえ社会のいくつかのセクターによる鉱業への反対が止まない。プロジェクトの中止を求める住民投票についても鉱業分野から見れば間違った法解釈であるとした。

アスアイ鉱業会議所(Cámara de Minería del Azuay)のパトリシオ・バルガス(Patricio Vargas)は「エクアドルは鉱物資源に大きな可能性を秘めていると信じているが、現在の鉱業政策は必要な項目が調整、反映されて」おらず、鉱業登録制度の閉鎖など、依然として欠点とがあると述べた。彼もまた法律が森林地帯での採掘に関して明確に規定していないことが採掘活動を妨げているし、多くの地方自治体は、その管轄区域での採掘禁止を違法に宣言しているとロス・セドロスなどを事例に述べた。

https://twitter.com/LeonidasIzaSal1/status/1494494872648122369

https://twitter.com/Caminantes_Ecu/status/1492385949858287616

 

先住民たちが立て続けに勝ち取った勝訴はこの国における天然資源の未来、地球温暖化への対策、生態系維持・保護の形への指針となる可能性がある。ギジェルモ・ラッソ政権が掲げる石油・鉱業開発を通じた経済対策とどう折り合いをつけていくのだろうか。中南米では違法採掘が進み、生態系の破壊をはじめ安全保障の観点でも問題がある。2014年、トゥンダイメ(Tundayme)の32家族がミラドールのメガマイニングプロジェクトのために、政府によって領土を追われている。今もナポのコミュニティにおける違法な採掘が行われており、また、ユツピノ(Yutzupino)川も汚染している。先住民団体のエクアドル先住民連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)、アマゾン川流域の先住民組織のコーディネーター(Coordinadora de las Organizaciones Indígenas de la Cuenca Amazónica:COICA)、エクアドル・アマゾン先住民族連合会 (Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonia Ecuatoriana :CONFENIAE)、ナポ先住民族組織連合(Federación de Organizaciones Indígenas del Napo:FOIN)はナポで行われている本鉱業を非難するとともに、当局、省庁による環境緊急事態のためのアクションを要求をしている。

 

参考資料:

1. Exportaciones mineras crecieron 99% en 2021
2. Cámara de Minería: Ecuador tiene yacimientos de clase mundial
3. Ecuador espera reaperturar el catastro minero en enero de 2022
4. Exportaciones crecieron en medio de pérdidas por crisis logística
5. Ecuador rompió récord de exportación de flores en San Valentín
6. TBY talks to Santiago Yepez Dávila, Country Manager of Lucky Minerals Inc., on its Fortuna Project, the attractiveness of Ecuador’s mining sector, and ensuring more responsible practices.
7. Un voraz consorcio quiso devorar el corredor ecológico Llanganates Sangay

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください