ラテンアメリカ:腐敗認識指数(2021年度)が発表された

トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International:TI)は2022年1月25日、アメリカ大陸における腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index:CPI)調査の2021年度版を発表した。この報告によるとここ10年間、同大陸における汚職への改善はほとんど見られない。

CPIとは1995年以来TI社が毎年発表しているもので、世界各地の公務員や政治家が、どの程度腐敗しているかを示す指標である。180の国と地域を対象とし、公共部門における腐敗の度合いを0から100で評価している。0が「非常に腐敗している」ことを示し、100は「非常に透明であること」を意味する。この指数は世界銀行、世界経済フォーラム、プライベートエクイティやコンサルティング会社、シンクタンクなど13の外部情報源のデータをもとに分析され、専門家や企業人の視点も反映されている。CPI の算出プロセスは、可能な限りの堅牢性と一貫性を確保するために定期的に見直されていて、直近では2017年に欧州委員会の共同研究センターが実施している。

アメリカ大陸においては、汚職対策が選挙の争点となるほど重要で、各国とも大規模な法整備と汚職撲滅への地域的コミットメントを示している。それにもかかわらず犯罪は未だなくなることがない。この地域では6年連続で平均スコアが43で、3分の2の国がスコア50を下回っている。「アメリカ大陸の汚職は民主主義と人権を損ない続けている」、そうTI社は述べる。

この10年間で、大きな改善を見せたのはガイアナ(CPIスコア:39)とパラグアイ(30)のみで、ウルグアイ(73)は安定している。評価の高い3カ国カナダ(74)、米国(67)、チリ(67)の指標は今年悪化した。ベネズエラ、ハイチ、ニカラグアは、人道的危機に直面している非民主主義国とされ、それぞれの点数は14、20、22と世界でも最低レベルに位置づいている。この地域の政府は、反対意見を封じ込め、腐敗した権力体制を維持するために、市民社会組織や活動家に圧力を加えてさえいる状態だ。

本記事では高い点数を取っている国々と、逆に腐敗の多いとされる国々について見ていくこととする。なお特筆事項のある国については、別記事で取り上げることとする。

 

 

点数の高い国

まず透明性が高い国として特定の地位を築いてきた国にウルグアイがある。「世界でいちばん貧しい大統領」ホセ・ムヒカ(José Alberto Mujica Cordano)大統領で一躍名を馳せた国のスコアは73だ。去年は71だった。司法の独立を進め、基本的権利を享受できるよう努めた結果で、このような土台があったからパンデミック下においてもこの国に透明性をもたらし、腐敗と戦い続けることができたと分析されている。

世界の警察官だった(※)米国の指数は67だ。ウルグアイより低い。バイデン政権は、汚職を国家安全保障の中心的な懸念事項として位置づけている。昨年、米国議会は2022年に創設される中央局への企業の実質的所有者の情報提供を義務付ける法案を可決した。この措置は米国当局の金融犯罪の検知・捜査能力に大幅に貢献可能とされている。それでも、同国がCPIで進展を見せないのは、米国連邦議会議事堂への暴力事件をはじめ、自由で公正な選挙に対する執拗な攻撃や、不透明さを増す選挙資金制度のせいとされている。2020年と同スコアではあるものの、2021年初めて上位25カ国から外れた。

67点を獲得しているチリも昨年と点数は変わらず低迷中だ。この国が現在作成している新憲法(詳細はこちら)に公的機関における誠実さと透明性を促進する条項が盛り込まれれば、腐敗対策に大きく貢献できるとされている。提案されている内容としては例えば投票で選ばれた議員が罪を犯した場合、職の永久的資格剥奪などの罰を与えるなどだ。

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74点と評価されているカナダは過去最低スコアとなった。企業活動における贈収賄・汚職のレベルが高いことが理由で、パンドラ文書においても同国が不正な資金フローの拠点となっていること、そしてそれが地域や世界の腐敗を助長していることが明るみにされている。

 

点数の低い国

ニカラグア(20)、ハイチ(20)、ベネズエラ(14)は、この地域で最も低いスコアで、3カ国とも人道的危機に陥っている。ニカラグアやエルサルバドルの「権威主義」、ベネズエラの報道機関や政治的野党に対する弾圧に警鐘を鳴らし、市民的・政治的権利は「腐敗なき民主主義の基本」だとTI社は主張している。国際社会から疑問視されていた選挙でダニエル・オルテガ(Daniel José Ortega Saavedra)が4期連続大統領として再戦を果たした。この国においてはオルテガ家族など最高権力者への権力の集中がおきている。改憲し連続再戦を可能にし、野党大統領候補を次々と逮捕するなど人権侵害はもとより、公平な選挙制度もまた脅かされている。TI社は、オルテガ政権を「地域で3番目の独裁政権」と呼び「汚職に対抗するために必要な透明性と行政府への対抗手段を欠いている」と指摘した。去年は22点だった。

ハイチにおける汚職はさまざまな要因によって発生しているとされる。公務員の劣悪な労働条件、実力が認められないこと、縁故採用と関係があるとされているも、根本的な問題として行政の過度な中央集権化や、国政の透明性、公的資金の管理者側の説明責任の欠如、公的情報へのアクセスの規制の欠如などがある。また、司法制度の弱さと依存性、汚職と不処罰に対抗するための法的条項の非施行もその要因だ。昨年暗殺されたジョヴネル・モイーズ(Jovenel Moise)元大統領が2018年4月にリマ・コミットメント「汚職に対峙する民主的ガバナンス」に署名するも、腐敗に向けた取り組みをしていないという評価を汚職に関する市民監視団(Observatorio Ciudadano de la Corrupción:OCC)からも受けている。2020年18点だったが、この国は2点ポイントをアップした。

人道的・政治的危機に陥っているベネズエラは、この地域で最もスコアが悪い(14)。ソマリア、シリア、南スーダンと同レベルである。ベネズエラの司法制度が「反対意見や批判的な声に対する弾圧の道具」になってしまっていると言われている。近年、政治犯、恣意的な拘束、基本的自由に対する制限が増加していて、大規模な汚職も教育から保健に至るまで社会的権利全般に及ぶ。COVID-19の大流行はこの国に医薬品や医療機器の不足を加速させ、また、医療サービスも悪化した。過去20年間、医療分野における汚職は50億米ドルにも及び、数百万人のベネズエラ人の健康と生命を脅かしている。司法の独立性もまた欠如しており、この10年間でCPIは大きく低下し、過去最低、世界でも最低レベルの14点を記録している。なお去年は15点だった。ニコラス・マドゥロ罷免に向けた国民投票を持とうと言う流れはあるものの、政府による制度を用いた妨害行為が続いている。(詳細はこちら

この地域で最も腐敗した国のトップ4(上記+ホンジュラス)における腐敗が移民行動を起こさせる主な要因の1つであるとされている。ベネズエラは世界で2位に人が流出しており、すでに500万人以上もの人間が移民とし国外に出ていった。

 

TI 社は腐敗問題に関して「先進国のほうが途上国に比べて取り組みが優秀である」という言説に疑問を呈し、世界中の腐敗を暴くことを目標としている。同社長のデリア・フェレイラ・ルビオ(Delia Ferreira Rubio)は「アメリカ大陸の国々は、汚職との闘いにおいて全く停滞している。腐敗した指導者は活動家を標的にし、報道の権利、表現の自由、結社の自由を攻撃しながら権力を固めている。この流れを変え、市民社会を守り、人権と民主主義を守るために、強力な行動が必要だ。」と述べた。

なお2020年度の調査でTI社はCOVID-19への対応だけ見てもこの地域の政府機関が脆弱であることが露呈されたと分析している。社会的・経済的不平等を浮き彫りにし、女性、少女、先住民族、高齢者、移民、アフリカ系アメリカ人などの弱者に不釣り合いの影響が出たからだ。

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なお、2021年度の調査によると日本は73点、世界ランキング18位となっている。

※バラク・オバマ前大統領は、2013年9月に対シリア内戦への軍事不介入声明を発表した際、「もはや米国は世界の警察官ではない」と宣言している。

 

参考資料:

1. IPC 2021 PARA LAS AMÉRICAS: UNA REGIÓN EN CRISIS
2. EL ÍNDICE DE PERCEPCIÓN DE LA CORRUPCIÓN 2021 REVELA UNA DÉCADA CON NIVELES DE CORRUPCIÓN ESTANCADOS EN UN CONTEXTO DE VIOLACIONES DE DERECHOS HUMANOS Y DETERIORO DE LA DEMOCRACIA EN LAS AMÉRICAS
3. Propuestas a la Convención
4. Corrupción en Haití
5. Venezuela entre los países más corruptos del mundo: informe de Transparencia Internacional

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