(photo by Eneas De Troya)
1月26日に実施された現大統領ニコラス・マドゥーロ(Nicolas Maduro)罷免の第一歩となる署名は必要数に大幅に届かず訴えは退けられた。賛成する人間の署名数が有権者の20%以上(400万人)を上回れば、国民投票プロセスへ進むこととなっていた。(詳細はこちら)
署名締め切り時間が過ぎ、全国選挙管理委員会(Consejo Nacional Electoral:CNE)によって発表された署名数は必要数の1.01%の42,241人にとどまった。本結果を受けCNEは、マドゥーロ大統領に対する罷免申請を「認められない」とした。
Asímismo, fueron informados los rectores que el promedio nacional de manifestaciones recibidas es 1,01% del Registro Electoral, por consiguiente ningún estado logró el 20% requerido, tal como lo establece el ordenamiento juridico.
— cneesvenezuela (@cneesvzla) January 27, 2022
1,200の署名場所が全国に設置された。ただ、罷免を推進していたメンバー自身もその署名に行かないよう支持者に呼びかけていた。それは規則に記載されていた「設置ポイントについて市民に周知するまでに最低15日間を要すること」の条件が守られていないことによる。CNEは署名実施を22日に発表し、署名を26日と設定していた。
マドゥーロはこの失敗に対して「CNEは反対派にすべての条件を与え」「丸一日」与えたにもかかわらず微々たる署名しか集まらなかったことについて「リコールのための国民投票の試みが大失敗した責任は、近年野党が打ち出してきた愚かさ、幼稚さ、クーデター計画にある」とコメントした。全ての失敗は野党、特にフアン・グアイド(Juan Gerardo Guaidó Márquez)にあると指摘した。
一方のグアイドは「今日もまた民意を恐れて独裁者は不正を働いた。彼らは少数派であり、体裁を保つこともなく国民投票というイベント奪い取った。我々は、ベネズエラ人の意思が尊重される自由で公正な選挙の条件を主張する」と述べている。なお野党がしてきていた通り、署名活動の実施については認識している人もいる一方でいつ、どこで実施するかを知らない国民、さらにはこの活動自体を知らない人間もいたと言う事実もある。
Por miedo a la voluntad del pueblo hoy nuevamente la dictadura cometió un fraude. Son minoría y arrebataron el evento plebiscitario sin guardar ninguna forma.
Vamos a insistir en condiciones para elecciones libres y justas, donde la voluntad de los venezolanos se respete. https://t.co/JhYH9e1mzE
— Juan Guaidó (@jguaido) January 27, 2022
国民投票を推進する団体の1つに所属するニッカー・エヴァンス(Nicmer Evans)も「26E法とタイムテーブルは違憲であり(この署名時痛いが)無効である。そのため国民投票はまだ有効である。(…)茶番劇やショーのために国民の権利を死なせるわけにいかない。」と自身のTwitterに投稿していた。
そんな中、2020年5月に起きたマドゥーロ左派政権の転覆を狙った「テロ行為」について、中央情報局(Central Intelligence Agency:CIA)、財務省、司法省、アメリカ国家安全保障会議(National Security Council:NSC)、麻薬取締局(Drug Enforcement Administration:DEA)を含む「多くの米国政府機関の最高レベルで共有されていた」と言う報道が出た。これは裁判中のクリベル・アルカラ(Cliver Antonio Alcalá Cordones)の弁護士が2021年11月に検察へ送付した手紙の中に記載されていたものだ。アルカラ自体は2020年3月コロンビアで米DEA捜査官らに投降している。コロンビアの反政府勢力と協力して年間250トンのコカインを米国に密売した疑いだ。なお同タイミングにおいて米法務省はマドゥーロ制憲議会議長のディオスダド・カベジョ(Diosdado Cabello Rondón)もまた麻薬の違法取引に関与していたとして起訴されている。
5月に発生した「ギデオン (破壊者)作戦」と言う名のテロ未遂事件の目的ははマドゥーロを拉致し、米国へ連行、米国政府に引き渡すことにあった。5月3日未明にカラカスの北30キロにあるバルガス(Vargas)州マクト(Macuto)の海岸に到着した小型高速艇から降り立った傭兵の武器支援は、ベネズエラ人でDEAの要員であったホセ・アルベルト・ソコロが実施するはずだった。しかしソコロの代わりに彼らを待ち受けていたのは事前に計画を察知していた国家警察、特殊行動部隊 (FAES)、軍事諜報総司令部、ボリバル諜報サービス(SEBIN)、ボリバル軍の合同部隊であった。上陸した傭兵たちと政府連合が出会うや否や銃撃戦が始まり45分間で撃退された。元ベネズエラ陸軍将校ロベルト・コリナ(Roberto Colina)を含む8 名が死亡し、DEA捜査官1名を含む16人が逮捕されている。なお、翌日にもカラカスの北西30キロのアラグア(Aragua)州チュアオ(Chuao)市に不審船が到着するなどし5 月14日までに91 人が逮捕されている。
この時逮捕されている米国人2名はその後、「ベネズエラ解放のためにマドゥーロを拉致する」と言う契約をフロリダ州にある警備会社シルバーコープ(Silvercorp USA)社と締結したこと、さらに同作戦のために、1 月からコロンビアのリオアチャのキャンプでベネズエラ人に訓練をしていたと証言している。なお本事件についてはご存知の方も多いだろうが上記でも登場したフアン・グアイドたちに画策されたものだと言うこともわかっている。これはシルバーコープ代表ジョーダン・ グドロー(Jordan Goudreau)が明かしているもので、2019 年10月16日に合意されている。なお有効期間は495日の計画実行の報酬は同社に合計2億1,290 万ドル支払うと言うもので、署名後5日以内にその手付金150万ドルを支払い、また、第1回分支払い分は5,000万ドルと決まっていた。ちなみに、この事件自体はグアイドが約束の費用を支払うことができず金銭トラブルとなったことからテロ計画が流出、未遂事件へと至った。グリーンベレー出身のジョーダン・グドローによって運営されているシルバーコープ社は50カ国以上の政府と企業に危機管理サービスを提供している。トランプ政権による集会でも警備を請け負うなど、元大統領との関係も深く、また、グドローに計画の指令を与えたのはトランプ大統領であったとも言われている。2022年1月の報道ではこのことを当時の米高官などが知っていたと言うことが露わになった。
本件についてはフアン・グアイドー、彼の戦略委員会、コロンビア政府および米国政府関係者は実際の攻撃への役割をすべて否定している。
テロ支援国家(State Sponsors of Terrorism)の制定は米国国務省がアメリカ合衆国法典第50編2405条に基づき1979年12月29日から制定している。マイアミの亡命キューバ人社会においてはキューバ革命に対する憎しみの感情を持ち、キューバに対する破壊活動や対人テロ行動を仕掛けようとするものがいる。それら反キューバ組織はキューバ解放という名の下で米国の支援を受けていることは周知の事実だ。それらの企てを止めるべくして米国に入った5人の実話に基づく映画「Wasp Network」に関する記事はこちらを参照のこと。
参考資料:
1. CNE declara “improcedente” solicitud de revocatorio contra el presidente Maduro
2. Alleged Maduro co-conspirator says CIA knew about coup plans
3. マドゥーロ大統領拉致未遂事件―経済困難、米国の干渉、コロナウイルスとの闘いの中で―
4. Fracasa intento de revocatorio contra Nicolás Maduro en Venezuela
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