ベネズエラ:マドゥーロ解任に向けた署名収集は1月26日に実施される

(photo by Jeso Carneiro

ベネズエラの全国選挙管理委員会(Consejo Nacional Electoral :CNE)は大統領解任を求める国民投票要請のための署名活動(意思表示)を1月26日(水)に実施すると発表した。これは解任のためのベネズエラ運動(Movimiento Venezolano por el Revocatorio:MOVER)、解任国民投票のための全員団結(Todos Unidos por el Referendo Revocatorio)、民主的権利(Derecha Democrática)、政治団体MIN Unidadなどが提示した要請に基づき実施されるもので、要求に必要な諸条件に合致したことから国民投票のためのプロセスが開始されたことを意味する。署名活動は朝6:00から18:00までで、全国1,200のセンターで実施される。

ただ解任を求めているMOVERや野党、他の社会活動家は手続きまでの準備期間が短すぎると非難している。CNEが署名実施の発表を行なったのが22日でその4日後の開催となるからだ。2007年から施行されている解任のための住民投票規則には反するからだ。規則には「設置ポイントについて市民に周知するまでに最低15日間を要すること」、「設置の目的(署名集め)を達成するために推進者と協議すること」と規定されている。2,100万人の国民が意思表示する署名所が秘密裏に、そして短期間で設置されるというのは政治的に見て異常なことであり、90%以上の国民の権利を否定するものだ、と彼らは述べている。また、国外に居住する市民や、地理的に容易に署名所に行けない何百万人もの市民の権利も阻害していると主張する。

これについてはベネズエラ統一社会党副党首ディオスダド・カベロ(Diosdado Cabello)は「彼ら(野党)は時間がないと言っているが、5月からずっと要求している」し、その主張には正当性はないとした。

12時間で400万もの署名と指紋を集めなければいけないことにも無理があると解任要求者は主張している。この点についてはCNEの代表を務めるロベルト・ピコン(Roberto Picón)自身も「実現不可能な」スケジュールとTwitterを通じ述べている。それは以下の理由からだ。
1) 12時間、毎分5人の有権者を全国の機械で処理しなければならず、誤差が許されない。
2) 1月21日(土)から23日(月)までの間に設置される署名場所を市民に知らせる時間がない。
3) プロセスの完全性・不可侵性を保証するための、ソフトウェア監査を行わずに実施しなくてはならない。
4)1200地点における立会人を指名する時間がない。
5)バイオセキュリティー対策をしていない。招集通知が出れば、オミクロンのピーク時であっても300人の行列ができる。

 

ベネズエラは停電も多く、電力の供給も不安定だ。米国の制裁もあり、他国のソフトウェアなども自由に手に入らない。

 

MOVERは「タイムテーブルの修正依頼への回答がない限り、我々はこの点で展開される次のアクションを留保する 」、「CNEが設定したスケジュールの違憲性に反対するために全国市民デーにすべてのベネズエラ人に呼びかける」と述べている。野党もまた同国の最高裁に変更の見直しを求め、国民投票実現のためにあらゆる手段を講じると警告している。

一方カベロは「ベネズエラ統一社会党(Partido Socialista Unidos de Venezuela)、特に共和国大統領は、彼を解任しようとする人たち、彼の職務権限の解除を求めている人たちが誰であるかを知る権利がある」し、政権は解任の請願書に署名した人々のリストをCNEに求めると発言している。解任を求める権利があれば、逆にその対象者を知る権利があるというのが彼らの主張だ。またカベロはすべての署名収集地点に証人を立ち合わせることも発表している。それはプロセスが法律に則って行われているかをチェックさせるためだという。

なお、2003年に起きた当時のウゴ・チャベス大統領解任のための国民投票推進の際には、署名者の詳細は「タスコンリスト」として知られるウェブサイトで公開された。メディアや団体はリストに名前が載っている公務員に対する解雇や報復を糾弾していた。

大統領解任の国民投票の実施にあたっては、署名数が選挙人名簿の20%に達している必要がある。これは2016年に最高裁判所憲法会議(Tribunal Supremo de Justicia:TSJ)が定めている。

今回の署名活動は昨年11月21日に実施された地方・地域選挙で承認された名簿をもとに行われる。つまり登録有権者数は21,929,987人だ。署名が集まれば国民投票へと進むことができる。国民投票を通じて解任に可能となるのは有権者のうち25%以上が賛成し、また、大統領当選時の得票数を上回る必要がある。

ニコラス・マドゥーロ(Nicolás Maduro Moros)は2013年3月5日に当時大統領だったウゴ・チャベス(Hugo Chávez)が大病に打ち勝つことができず命を落として以来、紆余曲折をへながらもこの土地を治めている。ベネズエラの憲法では、任期の半分を過ぎれば投票によって大統領を罷免することを可能としていて、それに基づき今回要請しているものだ。マドゥロ大統領は今月初めに大統領2期目の最初の3年間を終えていることによる。世論調査では、ベネズエラ国民の10人中7人が政権交代を支持すると回答しており、国の経済・社会崩壊を食い止めることは不可能と思われる状況である。

マドゥーロが罷免されれば今年中にも再度選挙が行われる可能性がある。それは政権発足から4年以内(マドゥロの場合は2023年1月10日)に大統領がいなくなった場合に新たな選挙ができるという規則があることによる。ただし、選挙で与党に勝つためのリーダーを誰にするかを野党が決定できていないのも事実である。大統領不在がその政権発足から4年後となる場合は、残りの任期を副大統領であるデルシー・ロドリゲス(Delcy Rodríguez)が引き受けることが憲法で定められている。

なお、公言はしていないものの早急なる罷免を求めず次の選挙にしっかりと備えたいと考えている野党もある。例えば一時暫定大統領を就任してたフアン・グアイドーもそれに当たる。ただしこの国の悲惨な経済・社会状況の中で、2024年まで諦めて政権交代を待ち続けることはできないこと、国民投票を推進するイニシアチブに則らねば現在の野党の亀裂を深めるものであるとし、協調路線をとっている。マドゥーロが職を外れればこの国が良くなるかと言われれば、それだけでもないようだ。

 

参考資料:

1. El régimen chavista pedirá al CNE la lista de personas que firmen el revocatorio contra Nicolás Maduro
2. Exigen al CNE que rectifique: rechazan cronograma de recogida de firmas de referéndum contra Maduro
3. 2004, 2016 y 2022: la ruta minada hacia el referendo revocatorio presidencial
4. CNE anunció los puntos de recolección de firmas para el revocatorio
5. Venezuela: piden intervención del Supremo tras maniobra contra referendo que depondría a Maduro
6. La inviable activación del revocatorio contra Nicolás Maduro

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