エル・サルバドル:ビットコインが使えるようになった日と国民の思い

9月6日、ついにビットコインがエル・サルバドルの法定通貨として機能し始めた。6月9日に承認された「ビットコイン法」(詳細はこちら)は3ヶ月の準備期間を経て有効となった。街にはビットコイン用のATMが200台設置され、政府による仮想ウォレットも登場した。大統領ブケレ(Nayib Armando Bukele Ortez)は9月6日午後11時57分「あと3分で歴史はつくられる」とツイッターでつぶやき、場を盛り上げた。

 

一気に気運が高まりお祭り騒ぎになるかと思えたが、システム障害に見舞われ、さらには反対派を説得するには至らず抗議活動発生と出鼻を挫かれた。初めてのことにはなんでも混乱がつきまというのは、誰もがわかっていたことだ。

発生したシステム障害とは政府が設けた電子財布「チボ(CHIVO※)」がアップル、グーグル、華為技術(ファーウェイ)のアプリ配信サイトからダウンロードできない、さらにダウンロードできた後も「利用者登録」トランザクションの多さに耐えられなかったというものだ。

日付が変わって、このシステム障害に気付いた大統領は早速デジタルツールを活用、人口の約4割にも及ぶ自国のフォロワーにシステム障害発生情報の共有し世論を形成、デバイスベンダーに迅速なる対処を迫り、また足りなかったサーバリソースには急遽容量追加を実施した。とにかく、バタバタした滑り出しだった。時に大統領は自らテストケースについて指南し、大統領自ら国民に「もちょっと待ってね」と忍耐を促した。(ディスリスペクトするつもりはないが、こんなこと日本では100%有り得ない。スマートフォンが使えるかどうかすら疑わしい。)

 

暗号通貨を取り扱うアプリケーションへのダウンロードと登録は、30ドル相当のビットコインの入手を意味した。だから0時になるや否や各ベンダのストアに負荷を与えることとなったのだろう。政府はチボ登録と利用促進キャンペーンの実現や法定通貨化に先駆け、400ビットコイン(市場価格換算で約22億円)を購入。これに伴いビットコイン市場も一時5月以来初めて5万2000ドルを突破、お祭り騒ぎとなった。

ビットコインの法定通貨化が何が問題かといえば、ボラタリティの高さもそうだが、ビットコインの受け入れが「必須になる」ことだろうことだ。企業は決済手段としてのビットコインを受け取ることは義務化され、そのためには仮想ウォレットの保有も義務となる。これを破れば企業は消費者保護法の違反で審判を受けることになる予定だ。とは言え後者については、法律には書かれていない。利用者や商業を営むものがその受け入れの可否を選べる状態であったならば、ここまで混乱は起きなかったのではないかと思うも、ただそこは法定通貨。皆が従わなければならないということなのだろう。なおエルサルバドルの人口の約半分はインターネットへのアクセスがなく、さらに多くの人はネット接続が限定的とされているから、これらの人をどう救済するのかも検討する必要がある。

 

もちろんその利用については、各自思うことが違う。徐々に軌道に乗っていくだろうとするものもいれば、断固反対派もいるようだ。世論調査では国民の75%がその利用に不安を感じているという。

3年前からビットコインを使っている34歳の美容師、ホルヘ・ガルシア(Jorge García)は、ビットコインには「未来がある」と信じており、「価値が上がる」ことを期待している。

https://twitter.com/ComunicacionSV/status/1435721877192839168

 

ブケレ政権はビットコインの利用が海外送金手数料による資産の減少を回避できるものと定義した。この国の経済を支えるのは国内総生産(GDP)250億ドルの20%以上に及ぶ他国在住エルサルバドル人による送金で多くの場合、安くない手数料がコミッションとして取られている。さらに国民の70%が銀行口座を持たないことを思えば、それらに金融サービスを提供できる。しかしブケレの思いは届いておらず、新聞社「La Prensa Gráfica」が行った別の世論調査で、1,500人以上の調査対象のうち約65.7%が暗号通貨に反対だと答えていると言う。この国では20年前に経済をドル化している。

 

市民はビットコインの受け入れに反対すべく9月15日、抗議活動を行う予定だ。市民による32以上のセクターが団結し、首都サン・サルバドル(San Salvador)を練り歩く。予定された平和的な行進はスタート地点を様々な場所とするも、最終目的地モラサン広場(Plaza Morazán)を目指す。彼らが訴えかけるのは「法の支配の回復」と「民主主義の擁護」、そして実施された施策への反対だ。

今年に入りエル・サルバドルでは色々な変更が訪れた。ビットコイン法の発効はもちろんのこと、憲法会議所による大統領の再選承認などだ。これらは市民たちの反発を生んできた。8月31日には、議会は国内の裁判官の3分の1を追放するよう法律が改正され、それらのものは一気に職を失った。ナイブ・ブケレ大統領によるとこの改革は腐敗した裁判官や検察官の排除を目的とているが、そもそもこれらの措置の強引な決定が権威主義的であると国民は考えている。

議会議員は選挙に基づき選ばれた。大統領の過去における汚職対策が評価されたことで、彼の政党Nuevas Ideasは多くを決定できる立場になった、2021年2月28日に実施された選挙では議員定数84名中、56議席をそれをそれに割り当てた。ちなみにエルサルバドルでは任期3年の一院制を引いている。

ヌエバ・イデア、日本語で言うと「新しいアイデア」は、2017年10月25日に設立された。その政党の規約によると「時代遅れのイデオロギーを持たず、民主的、分権的、多元的、包括的な政党であるが、排除や特権なしに、すべての市民のすべての権利を認めるための闘争の最前線にいる」と定義されている。

民主主義の基本は多数決にあるのではない。個人および少数派の権利の擁護されるものである。そもそもこの政党はポピュリスト路線を引いていたはずでもある。常に多数派の判断が正しいとは限らないし、それを保証するものもない。このような状況下で、人々はソーシャルネットワークを通じてデモを組織、平和的な方法で街に繰り出した。ツイッターを通じて、異なる組織が対話を重ね、一つの統一されたグループのようにまとまっている。今回の活動はハッシュタグ「#el15marchamos」を用いて共有され。国鳥「トロゾフ(Torogoz)」がキャンペーンキャラクターを務める。

集会は午前7時に始まる。集合場所のひとつであるエル・サルバドル大学(Universidad de El Salvador)では、午前9時に学生、環境、先住民の各部門が集まる。その後、フェミニズム運動が午前7時に集合しているクスカトラン公園(Parque Cuscatlán)でのデモに合流する。一般行進は子供公園から始まり、モラサン公園または市民広場(Plaza Cívica)に到着するまで、いくつかのセクターが合流してく予定だ。集合場所では、集会に参加するいくつかのセクターによるイベントも開催される。

今回はセクターを超えた抗議活動となる。奨学生、石工、環境保護団体、運送業者、先住民族、退役軍人、牧場主、裁判官など、少なくとも35もの分野から参加する。「私はすべての人に、色と喜びをもって参加してもらい、国が正しいことを守り抜くとうに呼びかける。」そう語るのは、Bloque Ampliado de Asociaciones Cívicasのルイス・リベラ(Luis Rivera)だ。

なお、マクドナルドやスターバックスなど外国籍チェーンはいち早くこの利用に対応しており、客はビットコイン決済の様子をSNS(交流サイト)を通じ楽しそうにに投稿している。なお、政府が配布した30ドルは店舗でビットコインのまま使用されることなく、多くの利用者が現金化のためにATMに並んだ。COVID-19のパンデミックで政府がばら撒いた10万円が使われることなく預金されたことの類似性が見れたエル・サルバドルであった。

https://twitter.com/BitcoinMagazine/status/1435316230307688454

※Chivoは現地スラングで「かっこいい」を意味する。

 

参考資料:

1 .Organizaciones hacen llamado a marchar el 15 de septiembre
2. Bitcoin and ether plummet 17% as broad sell-off batters crypto on the day El Salvador adopts bitcoin as legal tender
3. El Salvador adopta desde hoy el bitcoin como moneda legal, en medio de dudas y rechazos
4. Gobierno: será obligatorio recibir Bitcoin y negocios se exponen a infracciones a la ley del consumidor

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA